Author Archives: 栗田 勇

賃金49(日本郵便輸送(給与規程変更)事件)

おはようございます。

さて、今日は、無事故・運行手当の割増賃金算定基礎にかかる規定の効力に関する裁判例を見てみましょう。

日本郵便輸送(給与規程変更)事件(大阪高裁平成24年4月12日・労判1050号5頁)

【事案の概要】

Xらは、大阪郵便輸送株式会社との間で労働契約を締結し、郵便輸送業務に従事していた者である。

大阪郵便は、平成21年1月、日本郵便逓送株式会社に吸収合併された。

日本郵便逓送は、同年2月、Y社に吸収合併され、Xらは、現在、Y社との間で労働契約を締結し、引き続き郵便輸送業務に従事している。

日本郵便逓送は、本件第1合併の際、同社の給与規程を基本として作成した給与規程(本件給与規程1)において、無事故手当および運行手当を基準外給与とした。

第2合併の際には、給与規程は変更されず、Y社は本件給与規程1を承継した。

Y社は、平成21年4月、Xらの同意を得ないまま給与規程67条を新設し、日本郵便逓送の従来運用を給与規程上明確化するためとして、新たな給与規程(本件給与規程2)を示した。

【裁判所の判断】

無事故手当および運行手当は、割増賃金の算定基礎とすべきである

付加金は課さないのが相当である

【判例のポイント】

1 本件給与規程変更2は、本件給与規程変更1の際に、予め予定されていたものではなく、本件給与規程1の文言上も規定されていなかった日本郵便逓送の従来運用について、本件組合から抗議され、また、労働基準監督署からも問題点を指摘されたことから、急遽検討され実施されたものである。しかも、日本郵便逓送の従来運用については、本件給与規程1からこれを読み込むことは不可能である上、本件組合やXら従業員に対して説明されないまま、したがって、協議も経ないまま、同規定の下でもその運用がなされ、その運用に合わせる形で本件給与規程変更2がなされたものである。
Y者や日本郵便逓送にとっては、本件給与規程2の内容は自明のことであったとしても、本件給与規程1から日本郵便逓送の従来運用の内容を読み込むこともできず、また、その説明も受けていない本件組合やXら従業員にとっては、本件給与規程変更2を、本件給与規程変更1の段階で予測することは不可能であるから、Y社が各変更の一体性を主張することは、労働者にとって著しく不利益であり、また信義にも反するというべきである。

2 本件給与規程1では、無事故手当及び運行手当を割増賃金算定の基礎から除外している。
しかし、上記両手当は、通勤手当や住居手当等とは異なり、労働の内容や量とは無関係な労働者の個人的事情により、支給の有無や額が決まるというものではなく、労働基準法37条5項、同法施行規則21条にいう除外賃金に該当しないことは明らかである。したがって、上記割増賃金算定の基礎に係る規程は無効であり(労働基準法92条1項)、上記両手当も割増賃金の算定基礎とされるべきことになる

3 労働契約の内容である労働条件を変更するには、労働者と使用者との合意によることが原則であり(労働契約法8条)、就業規則の変更によっても労働者に不利益に労働条件を変更することは、原則としてできない(同法9条)が、労働条件の統一的・画一的処理の必要性も考慮する必要があることから、同法10条は、「使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。」と規定している。
・・・しかし、本件給与規程1の割増賃金の算定基礎に関する定めのうち、無事故手当及び運行手当の全額を割増賃金の算定基礎としない定めは無効であり、この無効な定めとは異なる日本郵便逓送の従来運用をY社においても採用していたとしても、労働基準法37条5項、同法施行規則21条によれば、正しくは上記両手当の全額を割増賃金の算定基礎とすべきものであったといえるから、同運用に合わせる形で労働条件を統一するについては、本件給与規程変更2により労働者の受ける不利益が小さいとはいえないこと及び元々日本郵便逓送の従来運用については、同社と日本郵政公社労働組合間の合意もなされていたことを考慮すると、変更後の本件給与規程2の内容の労働者への周知や本件組合への説明、協議をある程度時間をかけて丁寧に行う必要があったというべきである
ところが、日本郵便逓送及びY社は、・・・従業員や本件組合に対する周知・説明及び協議を、時間をかけて丁寧に行ったと評価することはできない。むしろ、日本郵便逓送の従来運用を絶対視し、本件給与規程1の是正を急ぐあまり、従業員や本件組合に対する対応を蔑ろにしたと評価されてもやむをえないものである。
・・・以上によれば、本件給与規程変更2は無効であると認められる。

上記判例のポイント2は基本的なことですが、見落としがちです。

基礎賃金該当性については是非、顧問弁護士に相談しておきましょう。

本の紹介127 なぜあの時あきらめなかったのか(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます 早朝は、涼しくて仕事がはかどりますね。
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←先日、税理士K山先生と一緒に両替町の「海」(かい)に行ってきました

写真は、少しだけ炙った太刀魚です。 脂のりまくりでめちゃうまです。
 
今日は、午前中は、労働事件の裁判が1件、新規相談が1件入っています。

午後は、離婚調停が1件、新規相談が1件入っています。

今日も一日がんばります!!
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さて、今日は、本の紹介です。
なぜあの時あきらめなかったのか (PHP新書)
なぜあの時あきらめなかったのか (PHP新書)

27人のトップアスリートがいかにして挫折を乗り越えてきたのかが書かれています。

キーワードは、タイトルの通り「あきらめない」ということに尽きます。

どんなことがあっても決して「あきらめない」。

この強い気持ちがあれば、失敗や挫折は、成功への通過点に過ぎません。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

それまでの僕は、技の多さが長所でした。多くの技が繰り出せればフェンシングの幅は広がります。けれど、たとえば8つの選択肢があれば、それが3つしかない人に比べて瞬時の判断に時間がかかってしまう、というリスクがあったんです。特にオリンピックのような大会では、常に正しい判断ができるとは限りません。だから、あえて決め技を絞って選択肢を少なくすることにしたんです。・・・実際、北京で点が取れたのは、すべて、この時期に選んだシンプルな技ばかりでした。体に染みついていた技が、相手を射止めました。」(145頁)

フェンシングの太田雄貴選手の言葉です。

選択肢は多くあったほうが、選択の幅が広がります。

そのため、一般的には、選択肢は、少ないより多いほうがよいと思います。

ただ、太田選手のように、瞬時の判断が求められる場合には、ベストな選択肢を選ぶのに、選択肢の多さは障害となるというわけです。

広げるのは簡単です。

絞るのは大変です。

これは、仕事も同じことです。

あるレベルまで来たときには、自分の守備範囲を狭めた上で深めていきたいです。

それまでは、あらゆる分野をがむしゃらに経験するべきだと思います。

賃金48(スリー・エイト警備事件)

おはようございます。

さて、今日は、解雇された従業員からの未払残業代等請求に関する裁判例を見てみましょう。

スリー・エイト警備事件(大阪地裁平成24年1月27日・労判1050号92頁)

【事案の概要】

Y社は、警備業務等を主たる業務とする会社である。

Xは、平成19年4月から平成21年2月まで、Y社の営業部門で勤務した。

XとY社との間では、雇用契約書は作成されず、労働条件通知書等の書面も作成されなかった。

Y社では、出退勤時刻をタイムカードで管理していた。

本件は、Y社に解雇されたと主張するXが、残業代および解雇予告手当が未払いであるとして、Y社に対し、それらの支払いおよび付加金の支払いを求めた事案である。

Y社は、Xとの間の雇用契約は名目上のものであり、時間外労働の事実も解雇の事実もないなどと主張し争った。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 XとY社との間で、所定労働時間や休憩時間の合意がなくとも、Xは通常、朝礼に間に合うように出社し、9時頃から外回りに出ており、かつ外回りから帰社する時刻は、帰社後に管制業務に従事する場合は午後3時頃、それ以外の場合は午後5時ないし5時30分であり、また適宜休憩を取っていたことから、XはY社の指揮命令の下、営業等の業務に従事し、その対価として賃金の支払いを受けていたと認められ、XとY社との間には雇用契約が成立していたことは明らかである

2 Xが、Y社の従業員として営業等の業務に従事していたことは認められるものの、その労働時間を客観的に裏付ける証拠は存在しない(Xの週間予定表は提出されているが、これにも時刻の記載はなく、実際にどの程度の営業活動がなされていたのかは判然としない。)。かえって、XとY社との間では、所定労働時間に関する合意も、休憩時間に関する合意もなく、Xは外回りに出た際には、適宜休憩を取っていたというのであるから、Xが法定労働時間を超えて労務を提供したか否かは、結局のところ不明であるといわざるを得ない
この点、Aは、同人が午後7時以降まで残業をした際は、Xは必ず在社していたと証言するが、仮にXがY社の事務所に在社していたとしても、そのことから直ちに、実際に労務を提供していたと認められるものではない。Y社は、XがY社の事務所にいる際、仕事をせずに携帯ゲームで遊ぶなどしていたと主張し、Bは、Xが携帯ゲームをしているのを何度か見た旨、これに沿う証言をしている。Bは、Y社申請に係る証人ではあるが、すでにY社を退職しており、また、Xに有利な証言もしていることに照らすと、その証言には一定の信用性が認められるから、Xが、Y社の事務所に在社していた際、実際にどの程度労務を提供していたのかは、必ずしも明らかでないといわざるを得ない。

3 ・・・仮にXのタイムカードが残存していたとしても、タイムカードは、あくまでXの出退勤時刻を示すものにすぎないところ、本件では、前記のとおり、Xの営業のために外出し、適宜休憩を取っていたこと、事務所に在社している時間のうち、実際に労務を提供した時間がどの程度であったのかが不明であることからすると、タイムカードの記載から直ちにXの労働時間を認定することはできない。
以上によれば、XのY社に対する未払残業代請求については、Xによる時間外労働の事実が立証されていないといわざるを得ないから、認めることができない

判例のポイント3のように判断してもらえて、会社側としてはラッキーでした。

毎度毎度、どの裁判官も、タイムカードについてこのように判断してくれるとは限りません。

ですから、あまり先例として鵜呑みにしないほうがよろしいかと思います。

会社側とすれば、タイムカードの記載からそのまま労働時間を認定されないようにしなければなりません。

そのための準備をする必要があるわけですね。 詳しくは顧問弁護士に聞いてみて下さい。

本の紹介126 仕事が10倍うまくいくマイナス思考術(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます 今日で一週間も終わりです。 4日間しかないとあっという間に一週間が終わってしまいますね。

土、日もばりばり働きますよ。
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←先日、駅南の「餃子研究所」というお店に行ってきました

何事もチャレンジです(笑) 3種類の餃子があり、すべて食べてみましたが、男餃子が一番おいしかったです。

今日は、午前中は、ラジオの打合せ、管財事件の打合せ、破産の免責審尋です。

午後は、裁判が2件と家事審判が1件入っています。

今日も一日がんばります!!

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さて、今日は本の紹介です。
仕事が10倍うまくいくマイナス思考術 (PHPビジネス新書)
仕事が10倍うまくいくマイナス思考術 (PHPビジネス新書)

帯には、「できるビジネスマンほど、小さいことをくよくよ悩む!」「ネガティブな自分に自信が持てる!」などと書かれています。

本の内容は、概ねマイナス思考です(笑)

本を売るためには、逆転の発想が大切ですね。

みんながこぞってプラス思考と言っているときには、あえてマイナス思考を押すわけです。

奇をてらうためには、この「あえて」感をできるだけわざとらしさを出さずに伝えるのがポイントです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

仕事というのは、自分の力の範囲で、精一杯するべきものです。・・・私はいつも、『できるかもしれない』ではなく、『自分にはできないだろう』という姿勢で物事を考えてきました。何においてもプライドを捨てて、『できないことはできない』と思うようにしています。自分の力量以上のことに対して、知恵を絞ることは非常にリスクが大きいのです。」(42頁)

う~ん・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

そうなんですかね。

私とは考え方が真逆です。

自分の力量以上のことをやっていかないと自分の力量は大きくなっていかないと思います。

もちろん程度問題ですが。

特に若いうちは、どんどん挑戦すればいいと思っています。

最初から「これは、私の力量以上の仕事です。リスクが大きいので、できません」なんて言う方とは、一緒に仕事をしたくありません。

ルフィーや悟空たちも、自分よりも強い相手とフルパワーで戦ってきたからこそ、どんどん強くなっていったのではないでしょうか。

戦う前から絶対に勝てる相手とばかり戦っていて、どうして強くなれるんでしょうか?

同世代の経営者や弁護士のみなさん、これからもどんどん挑戦していきましょうね!!

不当労働行為50(学校法人森教育学園事件)

おはようございます。

さて、今日は、給与規定改正等と低査定、校務分掌はずしの不当労働行為性に関する裁判例を見てみましょう。

学校法人森教育学園事件(広島高裁岡山支部平成23年3月10日・労判1028号33頁)

【事案の概要】

Y社は、A私立高校を設置する学校法人である。

XらはY社に勤務する教員である。

Xらは、教職員によって組織される組合の組合員である。

本件では、Y社がXらを校務分掌からはずしたこと、賞与の査定においてXらを低く取り扱ったことは不当労働行為として不法行為を構成するか否かが争点となった。

【裁判所の判断】

不当労働行為であったことが強く推認される

校務分掌はずし等に対する慰謝料として、100万円の支払いを命じた

【判例のポイント】

1 Y社は、労働者には就労請求権がないし、授業の持ち時間数の削減などのことで、労働の軽減になりこそすれ、負担が増加することはないから、学校側が校務分掌や授業の持ち時間を与えずとも不法行為は成立しないと主張するが、教員にとって、相当の授業持ち時間や校務分掌を与えられ、これに従事することは、自らの教育に対する技能を維持発展させ、生徒らとの交流を維持することにより、教員生活の充実発展を期することができ、それにより、今後の教員としての地位の維持発展をはかることができるのであり、これらを与えられないことによる不利益は多大なものがあると考えられるから、労働者に就労請求権がなく、労働の軽減をもたらす面があるとしても、組合活動を嫌悪し、その阻害を意図するなどして校務分掌や授業の持ち時間を与えない行為は、当該労働者に対する不利益取扱いに該当するものというべく、不当労働行為と評価されてもやむを得ない。

2 ・・・Xが他の教員と比較して多少低い評価を受ける根拠となる事情がなかったとはいえないものの、最低ランクに固定するほどの評価が相当とはいえないから、Y社の不当労働行為を正当化するものとはいえない。

一審に引き続き、控訴審でも、Y社による不法行為の成立が認められました。

労働者に就労請求権が認められていないことと、仕事を減らしたり、与えなかったりすることは、直接関係ありません。

不当労働行為に該当するか否かは、組合嫌悪の意思を客観的に判断されますので、就労請求権を持ち出したところで、一蹴されてしまいます。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介125 「最高のサービス」を実践する80の鉄則(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます 昨日に引き続き、すごい雨ですね。 水不足解消?
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←同年代のいろんな業界で働く方3人と、事務所の近くの焼肉屋さん「金ちゃん」に行ってきました。

みなさん、例外なくばりばり働いています。 負けていられませんよ。

成長する上で、良きライバルがいるということは、とても大切なことです。

ちなみに、金ちゃんは、牛タンとゲタ肉が最高においしいです。

今日は、午前中、交通事故の裁判と離婚訴訟が入っています。

午後は、労働事件の裁判と不動産関係の裁判があります。その後、交通事故の相談が入っています。

今日も一日がんばります!!

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さて、今日は本の紹介です。
「最高のサービス」を実践する80の鉄則 (PHPビジネス新書)
「最高のサービス」を実践する80の鉄則 (PHPビジネス新書)

タイトルにつられて、買ってみました。

知っていることとできることは違いますので、いくら本を読んでみても、最高のサービスはできません。

だからといって、知ることをやめれば、何も始まりません。

ということで、インプットは、ばんばんやるべきです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

多くの人は、自社のサービスについて話す時、『同業他社』と比較したがるものだ。『同業のA社ですら良くないのだから、仕方がない』『業界の平均よりは良い』などである。・・・それと同時によく言われるセリフが、『当業界、当社はかなり特殊です』というもの。特殊な業界だから『他業種の事例は役立たない』ということだ。
・・・そもそも今の顧客は、業界の壁を超えてサービスを比較している。『ディズニーランドは素晴らしい。それに比べてこのホテルのサービスはなっていない』『あの和食店のサービスは洗練されているが、このファッション店はまるでなってない』などである。
」(72~73頁)

弁護士業界も同様です。

弁護士業界でほかの事務所よりもサービスがよいという程度では、たかがしれています。

もともと私たち弁護士業界は、他の業界と比べてサービスの質が低いです。

これはもうほとんど周知の事実ですよね。

だから、弁護士業界は、民間企業のサービスをもっともっと取り入れるべきなのです。

日頃から、民間企業の方と接し、サービスレベルを肌で感じるべきだと思っています。

それからもう一つの視点。

通常、はじめて御相談に来られる方は、弁護士の比較ができない環境にあります。

そのため、サービスレベルが低くても、相対評価ができないため、「まあ、弁護士なんてこんなもんかな・・・」と思ってしまうのだと思います。

以前にもブログに書きましたが、はじめて弁護士に相談される場合には、いろんな弁護士に直接御相談されることをおすすめします。

相談をしてみて、しっくり来るようでしたら、依頼をされればよろしいかと思います。

退職勧奨8(富士ゼロックス事件)

おはようございます。

さて、今日は、スタッフ職社員の出退勤時刻虚偽入力等と退職意思表示の錯誤に関する裁判例を見てみましょう。

富士ゼロックス事件(東京地裁平成23年3月30日・労判1028号5頁)

【事案の概要】

Y社は、カラー複合機などのオフィス機器の製造・販売等を主たる業とする会社である。

Xは、平成元年3月に短大卒業後、同年4月にY社との間で雇用契約を締結し、営業職等として稼働していた。

Xは、出退勤の情報につき虚偽の申告等を行っており、そのことが発覚後、Y社は、事情聴取を重ねる中で、Xに対し、Y社の懲戒規程を確認するように指示し、Xは、平成21年3月6日の事情聴取後には、本件懲戒規程を読み、懲戒解雇になるかもしれないと考えた。

その後もY社が調査を進めたところ、Xは他にも、外出旅費、通勤交通費の二重請求や生理休暇日にまで旅費を請求していること等が判明したため、Y社は、Xに対し、自主退職をするか、懲戒手続を進めるか尋ねたところ、Xが、自主退職をする旨を回答した。

【裁判所の判断】

退職の意思表示は錯誤により無効

【判例のポイント】

1 Xは、3月11日事情聴取において、「100パーセント辞めたくない。」「減給でも出勤停止でも受けるので、解雇されると保険のこともある。」「できれば解雇は避けたいと正直そう思っている。仕事の重いのでも良い」「会社だけは辞めさせないで下さいと言いたい」「数か月間、無給で働かせてもらうというのでは」などと在職したい意向が強いことを述べた上で、自主退職をするか決断するのに「今週末まで時間を欲しい。自主退職、解雇で退職金が違うということや、冷静に考えたい」と要望したこと、Xは、懲戒解雇と自主退職といずれが得かをY社人事担当者らに尋ね、Y社人事担当者らは「天と地の差がある。重みも、傷も違う。世間の認め方も違う」などと言ったこと、Xは、本件退職意思表示直前に、「私の場合は懲戒解雇があって、2種の選択の中で自主退職をということで、言い出した」と発言したことからすると、Xは、Y社に対し、本件退職意思表示の動機は、懲戒解雇を避けるためであることを黙示的に表示したものと認められる

2 そして、Xは、在職の意向が強かったことに加え、Xは、短期大学卒業直後から、20年間にわたりY社において勤務していたこと、本件退職意思表示当時、40歳の女性であったことが認められ、再就職が容易であるとはいないことも考慮すると、Y社が懲戒解雇を有効になし得ないのであれば、本件退職意思表示をしなかったものと認められる。したがって、Y社が有効に懲戒解雇をなし得なかった場合、Xが、自主退職しなければ懲戒解雇されると信じたことは、要素の錯誤に該当するといえる

3 この点、Y社は、懲戒にかかる調査の過程で、従業員が、懲戒解雇のおそれがあることを意識し、処分が確定する前に退職を願い出て、当該おそれが具体化することを避けたいと希求する場合、使用者がこれを承認するに当たって、その時点までに判明した事実から懲戒解雇が相当であると認められることを常に求めるとすると、使用者は、懲戒にかかるすべての調査を完了して、懲戒処分の内容が確定した後でない限り、上記承認をすることができなくなり、不当な結果をもたらすことととなるから、退職の意思表示が錯誤により無効となるのは、懲戒解雇のおそれがない場合に限られる旨主張する
しかし、錯誤の有無は、客観的に判断すべきものであるし、また、使用者が懲戒解雇を選択する可能性があるというだけで、錯誤が認められないとすると、当該懲戒解雇が解雇権の濫用に該当し無効である場合も、労働者は、退職の意思表示をした以上、当該意思表示の錯誤無効を主張できないということになり、不当である。懲戒にかかる調査の過程において、労働者から自主退職の申し出があった場合、使用者は、労働者が錯誤に陥らないよう、処分内容は不確定であり、懲戒解雇以外の懲戒処分が科されることになる可能性もある旨説明した上で、改めて労働者の自発的意思を確認し、自主退職を認めればよいのであるから、使用者に不当な結果を強いるものでもない

4 Xは、平成21年7月以降も、毎年7月末日及び毎年12月末日限り、少なくとも、上記各賞与額から業績賞与分(Y社の業績に応じて支給される賞与)を控除した金額と同額の賞与が支給される旨主張するところ、Y社は、上記賞与額及び支給条件等について争わない。
以上によると、Xは、Y社に対し、平成21年7月以降、毎年同月末日限り、106万4800円、毎年12月日限り、107万6700円の賞与請求権を有するものと認められる。

非常に参考になる裁判例ですね。

会社としては、上記判例のポイント3を是非、参考にすべきです。

ほんの少しの表現の違いで、結果が違ってきます。

また、本件では、めずらしく解雇後の賞与についても認められていますね。

懲戒処分を行う際は、必ず顧問弁護士に相談することをおすすめします。

本の紹介124 トヨタ生産方式でドラッカーの『マネジメント』を読み解く(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます 今日で一週間も終わりですね。

明日から3連休ですね。 ばりばり仕事しますけど(笑)
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←先日、久しぶりに「つたの」に行ってきました

写真は、馬刺しとウコン割。 馬刺しは口の中でとろけます。

今日は、午前中、浜松の裁判所で裁判が2件入っています

午後は、管財事件の事情聴取、新規相談、裁判の打合せなどが入っています。

夜は、士業の勉強会です。 いろんな士業のみなさんが集まり、勉強をします。

今日も一日がんばります!!

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さて、今日は本の紹介です。
トヨタ生産方式でドラッカーの『マネジメント』を読み解く (幻冬舎新書)
トヨタ生産方式でドラッカーの『マネジメント』を読み解く (幻冬舎新書)

ちょっと意味がわかりませ~ん(笑)

ドラッカーの本は、これまでいくつも紹介していますが、この本もドラッカー本の一種です。

久しぶりにドラッカー本を読みましたが、やはりいいですね。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

経済活動の本質とは、リスクを冒すことである。リスクを皆無にすることは不毛である。最小にすることも疑問である。」(62頁)

経営科学は、その文献においても、企業活動への適用においても、最終目標としてリスクをなくすことや最小にすることに力を入れている。企業活動からリスクをなくそうとしても無駄である。現在の資源を未来の期待に投入することには、必然的にリスクが伴う。まさに経済的な進歩とは、リスクを負う能力の増大であると定義できる。」(176頁)

「経済的な進歩とは、リスクを負う能力の増大である」という定義付け、最高です。

確かに考えてみれば、そうですよね。

経済的に進歩すれば、その分、リスクが現実化した場合にも対処できます。

ステップアップしていく都度、リスクを負って勝負しているような気がします。

自分で負える範囲のリスクは、積極的に負うことがステップアップの必要条件なんだと思います。

私自身、現在、事務所の運営について新しいリスクを負う覚悟を決め、ステップアップする準備をしているところです。

仕事に対する情熱を失わない限り、どんどんリスクを負って、向上していきたいです。

解雇80(ヒューマントラスト(懲戒解雇)事件)

おはようございます。

さて、今日は、社員に対する機密情報持出等を理由とする懲戒解雇に関する裁判例を見てみましょう。

ヒューマントラスト(懲戒解雇)事件(東京地裁平成24年3月13日・労判1050号48頁)

【事案の概要】

Y社は、労働者派遣事業等を目的とする会社である。

Xは、Y社のグループ会社の取締役兼従業員を務めていた。

C社は、労働者派遣事業等を目的とする会社である。

Y社は、Xを、派遣管理システムのC社への販売、C社のシステム構築への従事およびネットワーク関連機器の手配、会社機密情報の大量持ち出し、出社命令違反、Y社からC社への集団移籍を容易にし、Y社に重大な存在を与えたことなどを理由に懲戒解雇した。

【裁判所の判断】

懲戒解雇は有効

【判例のポイント】

1 Xは、本件事情聴取では懲戒解雇のための手続を行っている旨の教示をされていないのであるから、弁明の機会の付与と見るべきではないなどと主張するが、Xは本件造反に関する事情聴取であること、C社との関わり如何によっては懲戒解雇になる可能性もあることを度々伝えられているのであるから、本件懲戒解雇事由の(1)、(2)及び(5)については実質的な弁明の機会が与えられていたとみるべきであり、Xが弁明を行わなかった事実については、X自らが弁明の機会を放棄したのであるから、これを手続上の瑕疵として主張することは許されないというべきである

2 懲戒解雇は、企業秩序維持違反行為に対する制裁として労働者を企業外に排除する処分であるから、懲戒当時使用者が認識していなかった非違行為は、特段の事情がない限り、当該懲戒の理由とされたものではないことが明らかというべきであり、その存在をもって当該懲戒の有効性を根拠付けることはできない(山口観光事件・最高裁平成8年9月26日判決)。そして、使用者側が懲戒当時に存在を認識しながら懲戒理由として表示しなかった非違行為についても、それが、懲戒理由とされた他の非違行為と密接に関連した同種の非違行為であるなどの特段の事情がない限り、使用者側があえて懲戒理由から外したこと(当該懲戒の理由とされたものではないこと)が明らかであるから、使用者側が後にこれを懲戒事由として主張することはできないというべきである

3 ・・・しかし、前記の一連の経緯にかんがみれば、Xは、C社がY社のSS業務を派遣スタッフごと引き抜く計画であることを承知しており、これを容易にするため積極的に援助していたことが強く推認される。本件造反がY社に与えた損害の大きさやその重大性にかんがみれば、本件システムの販売(利用許諾)への関与及び本件造反への加担が強く疑われる行為については、当然、懲戒解雇の相当性を判断するにあたって考慮される情状となる
そして、前記認定事実のとおり、Xは、Y社に無断で、半年間にわたって、継続的に競業他社であるC社のシステム構築を支援していたのであり、Xが本件懲戒解雇の直前までグループ会社の取締役であったことも合わせ考えれば、その背信性は著しいといわねばならない。加えて、本件システムの導入及びシステム構築の支援により、Y社に多大な損害を与えた本件造反を容易にしたこと、Y社による調査になかなか協力しようとせず、警察に複数回通報して妨害していること等にかんがみれば、Xが転籍間もなく、他に懲戒歴などもないこと等の事情を斟酌しても、懲戒の手段として解雇を選択することもやむを得ないというべきである。

懲戒解雇が有効とされたケースです。

懲戒解雇に関する弁明の機会については、上記判例のポイント1が参考になります。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介123 ウォーレン・バフェット成功の名語録(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は本の紹介です。

ウォーレン・バフェット 成功の名語録 (PHPビジネス新書)
ウォーレン・バフェット 成功の名語録 (PHPビジネス新書)

バフェットさんの言葉がまとめられています。

以前にもバフェットさんに関する本を紹介したことがあります。

ウォーレン・バフェット 賢者の教え」という本です。

当然のことながら、投資に関する発言が多いのですが、その中でも、日常生活に活かせる言葉があるものです。

この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

事業の多角化は、無知を隠す一つの手段です。自分が手がけるビジネスをちゃんと理解していれば多角化など無意味に思えるはずです。」(197頁)

最も重要なのは、自分の能力の輪をどれだけ大きくするかではなく、その輪の境界をどこまで厳密に決められるかです。」(132頁)

結局のところ、事業の多角化に対する強い誘惑を断ち切れるかどうかなんだと思います。

1つの事業で成功すると、その成功体験に基づいて、他の事業でも成功を目指したくなる。

これは、自然な感情だと思います。

たった1つのことだけを極めるというのは、とても大変なことです。

むしろ、多くのことをつまみ食いしながら、どれもそこそこ成功をするというのは、そんなに大変なことではありません。

僕自身、多角化しておいて、リスクヘッジだなんてダサいことを言わないように気をつけます。