Author Archives: 栗田 勇

本の紹介15 「正しいこと」をする技術(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は、本の紹介です。
超一流弁護士が教える 「正しいこと」をする技術―コンプライアンス思考で、最短ルートで成功する
超一流弁護士が教える 「正しいこと」をする技術―コンプライアンス思考で、最短ルートで成功する

「超一流」の弁護士が書いた本です。

単なるマニュアル本ではありません。 

この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

良質なサービスの提供をないがしろにしていると、最終的には必ずといってよいほど法令違反が起きます。サービスとコンプライアンス、この2つはものすごく密接な関係があることに気づきましょう。」(52頁)

一見、サービスとコンプライアンスは関連性があまりないように思えるのですが、そうではないのですよ、ということです。

また、「法律に違反してるかしてないかという話ではなく、消費者との信頼関係を破ったか破ってないかが重要」(49頁)とも言います。 これもサービスの話ですね。

「顧客の信頼を裏切らない」というのは、どの仕事にもあてはまります。

自分の利益の追求だけでは、いい仕事はできません。

私の目標は、他の弁護士の追随を許さない程の圧倒的なサービスを提供していくことです。

まだまだ目標達成には程遠いですが、5年以内に達成することを目標とします。

解雇58(NTT東日本(出張旅費不正請求)事件

おはようございます。

さて、今日は、出張旅費不正請求と懲戒解雇に関する裁判例を見てみましょう。

NTT東日本(出張旅費不正請求事件)(東京地裁平成23年3月25日・労判1032号91頁)

【事案の概要】

Y社は、電話等の事業会社である。

Xは、昭和57年4月、Y社に入社し、その後関連会社に出向して、営業担当の課長代理を務めていた。

Y社は、平成20年5月、Xに対し、Xが日帰出張旅費を不正に請求して私的流用をしたという理由で懲戒解雇処分をした。

なお、Xは、Y社に対し、旅費を申請して受給しており、平成16年4月から平成19年9月までの42か月間に、171万2560円の旅費を申請し受給した。

Xは、本件懲戒解雇について、旅費を不正に請求して私的流用をしたことはなく懲戒事由が存在しないこと、弁明の機会を一切与えられずに私的流用の事実の自白を強要されたことなどから無効であると主張し争った。

【裁判所の判断】

懲戒解雇は有効

【判例のポイント】

1 Xは、トップクラスの営業成績を上げて、Y社の利益によく貢献しており、そのために相当の努力を重ねていたものと考えられる。その努力のひとつとして、Xは、顧客を訪問する際、いつも当該顧客に関する資料が整理されたキングファイルを携行していたが、これは非常に分厚く重いものであったから、1日に複数の顧客を訪問する場合、オフィスと各顧客との間をそれぞれ往復する必要があったと主張する
しかし、通信機器販売の営業活動にはさまざまな段階や場面があるはずであり、いつも分厚く重いキングファイルを携行して各顧客との間を往復する必要があったなどというのは、それ自体説得力に乏しいものといわざるを得ない。G証人の陳述書の記述や法廷での証言には、Xが顧客との間を頻繁に往復していたという部分があるが、この証言等に裏付けはないし、そもそも、Xの主張は、単に携行したことを強調するだけで、ファイルを顧客先でどのように活用したかなど、携行の目的や効果について説明をしておらず、合理的なものとはいえない

2 Xは、70万円を上回る額の旅費の過大請求をして、その私的流用をしたものと認めることができる。この行為は、就業規則76条1号、7号、11号に該当するものというべきである。したがって、本件懲戒解雇は、懲戒事由の存在が認められる

3 認定事実によれば、Xは、始末書や旅費請求の内訳の作成過程を通じて、私的流用をしたか否か、営業上の費用の額はいくらか、その内訳はどのようなものかなどについて、弁明の機会を付与されていたことが明らかである。
Xは、J課長がXに対し、事実を認めて謝罪しなければ懲戒解雇になると脅したり、始末書を提出すれば処分が軽くなるなどという利益誘導をしたりして、旅費の私的流用の自白を強要し、その旨の始末書を提出させたなどと主張するが、このような事実を認めるべき証拠はない

上記判例のポイント1の事実認定は、原告側にとっては納得のいかないものでしょう。

原告は控訴しています。

一般的に、経費の私的流用に対する処分は重くなります。 犯罪なので。

会社とすれば、しっかりとした調査と適正な手続をとることに留意する必要があります。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介14 こうして会社を強くする(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は、本の紹介です。
こうして会社を強くする (PHPビジネス新書)
こうして会社を強くする (PHPビジネス新書)

稲盛さんの本です。 盛和塾事務局が編集したもののようです。

塾の参加されているみなさんと稲盛さんとの経営問答がまとめられています。

この本の中で「いいね!」と思ったのはこちら。

経営12ヵ条

第1条 事業の目的、意義を明確にする

公明正大で大義名分のある高い目的を立てる

第2条 具体的な目標を立てる

立てた目標は常に社員と共有する

第3条 強烈な願望を心に抱く

潜在意識に透徹するほどの強く持続した願望を持つこと

第4条 誰にも負けない努力をする

地味な仕事を一歩一歩堅実に、弛まぬ努力を続ける

第5条 売上を最大限に伸ばし、経費を最小限に抑える

入るを量って、出ずるを制する。利益を追うのではない。利益は後からついてくる

第6条 値決めは経営

値決めはトップの仕事。お客様も喜び、自分も儲かるポイントは一点である

第7条 経営は強い意志で決まる

経営には岩をもうがつ強い意志が必要

第8条 燃える闘魂

経営にはいかなる格闘技にもまさる激しい闘争心が必要

第9条 勇気をもって事に当たる

卑怯な振る舞いがあってはならない

第10条 常に創造的な仕事をする

今日よりは明日、明日よりは明後日と、常に改良改善を絶え間なく続ける。創意工夫を重ねる

第11条 思いやりの心で誠実に

商いには相手がある。相手を含めて、ハッピーであること。皆が喜ぶこと

第12条 常に明るく前向きに、夢と希望を抱いて素直な心で」(215頁)

こういう直球勝負、大好きです。

法律事務所を経営する上でも、本当に参考になります。

壁に貼っておきます。

賃金38(ザ・ウィンザー・ホテルズインターナショナル事件)

おはようございます。

さて、今日は、料理人の賃金減額と割増賃金に関する裁判例を見てみましょう。

ザ・ウィンザー・ホテルズインターナショナル事件(札幌地裁平成23年5月20日・労判1031号81頁)

【事案の概要】

Y社は、北海道の洞爺湖近くで「ザ・ウィンザーホテル洞爺リゾート&スパ」を経営する会社である。

Xは、平成19年2月、Y社との間で労働契約を締結し、平成21年4月までの間、本件ホテルで料理人又はパティシエとして就労していた。

Y社は、Xの賃金を減額した。

Xは、賃金減額が不当である旨の抗議などはせず、文句を言わないで支払わせる賃金を受領していたところ、平成20年4月になって、Y社から、労働条件確認書に署名押印するよう求められた。

Xは、この書面に署名押印し、会社に提出した。

Y社は、その後、さらに賃金減額の提示をした。

Xは、長時間残業をさせているのに残業代も支払わず、一方的に賃金を切り下げようとするY社の労務管理のあり方に強い反発を覚え、平成21年4月をもってY社を退職した。

【裁判所の判断】

賃金減額は無効

【判例のポイント】

1 賃金減額の説明を受けた労働者が、無下に賃金減額を拒否して経営側に楯突く人物として不評を買ったりしないよう、その場では当たり障りのない返事をしておくことは往々にしてあり得ることである。しかし、実際には、賃金は、労働条件の中でも最重要事項であり、賃金減額は労働者の生活を直撃する重大事であるから、二つ返事で軽々に承諾できることではないのである。そのようなことは、多くの事業経営者がよく知るところであり、したがって、通常は(労務管理に腐心している企業では必ずと言って良いくらい)、賃金減額の合意は書面を取り交わして行われるのである。逆に言えば、口頭での遣り取りから、賃金減額に対する労働者の確定的な同意を認定することについては慎重でなければならないということである。
Xが供述する程度の返事は「会社の説明は良く分かった」という程度の重みのものと考えるべきであり、この程度の返事がされたからといって、年額にして120万円もの賃金減額にXが同意した事実を認定すべきではないと思料する。

2 なお、Y社が、平成19年6月支払分から平成20年4月支払分までの11か月間、甲第11号証に記載の賃金しか支払っておらず、Xがこれに対し明示的な抗議をしていないことも事実であるが、そういう事実があるということから、Xが平成19年4月時点で賃金減額に同意していた事実を推認することもできない。
なぜなら、まず、平成年4月支払分の賃金額をみる限り、Y社には、労働者が同意しようがしまいが、賃金減額を提案した以上、以後、自ら提案した減額後の賃金しか支払わないとの方針で労務管理を行なっている事実がうかがわれる。そうすると、賃金減額に対するXの同意があったからこそ平成19年6月支払分から減額後の賃金が支払われていたのだろうとの推認を働かせることは困難である

3 また、賃金減額に不服がある労働者が減額前の賃金を獲得するためには、職場での軋轢も覚悟の上で、労働組合があれば労働組合に相談し、最終的には裁判手続に訴える必要があるが、そんなことをするくらいなら賃金減額に文句を言わないで済ませるということも往々にしてあることであり、そうだとすれば、文句を言わずに減額後の賃金を11か月間受け取っていたという事実から、経験則により、Xが賃金減額に同意していたのであろうとすることも困難である。

非常に参考になる裁判例ですね。

労働条件と不利益変更の論点における労働者の同意については、裁判所は慎重に判断しますので注意が必要です。

不利益変更事案は、合理性の判断がいつも悩ましいですね。顧問弁護士と相談しながら慎重に進めましょう。

本の紹介13 プロの論理力!(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は、本の紹介です。
プロの論理力! トップ弁護士に学ぶ、相手を納得させる技術 (祥伝社黄金文庫)
プロの論理力! トップ弁護士に学ぶ、相手を納得させる技術 (祥伝社黄金文庫)

懐かしい本ですが、文庫本になり、内容も若干追加されました。

沖縄に行く飛行機の中で読みました。

好き嫌いは分かれると思いますが、僕はこの本、好きです。

この本の中で「いいね!」と思ったのは、こちら。

どんなに論理力を鍛えても、野心のない弁護士には、前例を打ち破るような仕事はできない。そもそも、野心に欠ける人間には、自分であえて高いハードルを設定することができないだろう。平均点の仕事で満足できる人間は、いつまでたっても平均点を取りつづける。そういうものだと思う。」(48頁)

ここで書かれていることは、弁護士に限ったことではないと思います。

すべての仕事とは言いませんが、職務上、裁量が与えられており、自分の気持ち(「野心」)次第で仕事のやり方を自由に変えられる場合にはあてはまると思います。

私も、仕事をしていて、単なる論理力では乗り越えられない壁が存在することは感じます。

もっと上に行きたい、もっといい仕事をしたいといった「野心」がないと、仕事への情熱が持続しないのではないかな、と思っています。

まだ、私は、弁護士になって3年です。 

「野心」を持って仕事をしていることは自分でよくわかります。

これが、年齢が上がっていき、経験も豊富になってきたときに、今と同じような「野心」を持ち続けられているか。

10年後、20年後、今と同じように「野心」を持って、ばりばり仕事をしているか。

「野心」をなくしたら、引退しようと思います。

退職勧奨6(東亜シンプソン事件)

おはようございます。

さて、今日は、降格・減給に関する裁判例を見てみましょう。

東亜シンプソン事件(東京地裁平成21年3月27日判決)

【事案の概要】

Y社は、靴・時計・光学機器の輸入及び販売、スポーツ・レジャー用品の輸入及び販売等を主たる目的とする会社である。

Xは、平成9年4月、Y社と期間を定めずに労働契約を締結し、その後平成19年5月まで就労した。

Xは、以下のとおり主張し、Y社を相手としてY社による降格・減給が無効である等と主張した。

すなわち、Y社は、長年、Xを含む従業員の業務行為を常時監視カメラで監視し、些細なミスや不備も叱責や厳重注意の対象とし、従業員の勤務態度を厳しく規律してきた。Y社の方針に少しでも異議を唱え、Y社の意にそぐわない従業員に対しては配置転換、降格・減給処分のほか、パワーハラスメントによる制裁を科し、従業員の要求、不満を徹底的に抑えるという方法を採用してきた。

【裁判所の判断】

一定の限度でのみ減給の有効性を認め、それを超える減給・降格は人事権の濫用として無効

Xの解雇に至るY社の対応は不法行為に該当するとして慰謝料50万円を認めた

【判例のポイント】

1 Xの勤務成績は、入社当初は極めて良好で、Y社は、Xを課長代理、課長に昇進させた。Xは、平成17年夏以降、その勤務状況、勤務態度が悪化し、仕事に対してまじめに取り組まないようにあった時期があった。具体的には、日中は仕事らしい仕事をしない状況が続き、仕事を放置することも繰り返したほか、長時間にわたり、私用電話を繰り返し、他の従業員の業務に支障が出ることもあった。

2 平成17年夏ころ以降Xの勤務態度が悪化したというのであるから、平成17年12月から能力給を3万円ずつ減額したことは、平成17年12月以降も更に勤務態度が悪化し続けたという証拠もなく、また、減額の幅も大きいことに照らすと、人事権の濫用であるとの評価を免れない

3 次に、平成18年11月に課長代理に降格したことについても、この時期に更に勤務態度が悪化したことを裏付ける証拠は提出されていないことから、上記同様人事権の濫用であるとの評価を免れないというべきである。

4 Y社代表者は顧問と相談した後、Xを呼び入れ、「当初は大変厳しい状況にあるので、X君は退職届を出してください。」とXに言い渡した。これに対し、Xは、「私は、働く気は満々です。やむを得ず解雇だというのであれば、そちらこそ解雇の通知を出してください。」と答えたところ、Y社の顧問であるLは、「あなたに出す文書は一枚もない。」と答えた。
以上によれば、Y社は、労働条件の改善を訴えたXを嫌悪して退職を迫ったものと認められ、これが代表者自らによって行われたこと、その語調の厳しさに照らすと、単なる退職勧奨ではなく、解雇と評価すべきである
したがって、Y社は、解雇予告手当の差額を支払う義務がある。

5 Xを解雇するに至るY社の対応は、法律上当然の要求をしたことでXを嫌悪し、解雇するに至ったというのであり、その態様は悪質であり、不法行為を構成するというべきであり、Xの被った精神的苦痛を慰謝する金額としては50万円をもって相当と認める。

この事案は、一般的には退職勧奨の違法性が争点となるところです。

ところが、原告は、これを単なる退職勧奨の問題とせず、解雇の有効性を争点としました。

Xは、Y社の退職勧奨に応じて退職届を提出したにもかかわらず、です。

非常に興味深い判決です。

退職勧奨の際は、顧問弁護士に相談しながら、慎重に進めることが大切です。

本の紹介12 プロフェッショナルマネジャー・ノート(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は、本の紹介です。
超訳・速習・図解 プロフェッショナルマネジャー・ノート
超訳・速習・図解 プロフェッショナルマネジャー・ノート

ユニクロの柳井さんが解説する本です。

「これが僕の人生でナンバー1の経営書だ!」そうです。

この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

お客様のためでないと、商売は成功しません。自分の好きなもの、好きなことをやったらたいてい失敗する。なぜなら、『好き』におぼれてビジネスの基準が曖昧になるからです。」(14頁)

法律事務所の場合、お客様とは、ご相談者や顧問会社などを指します。

新しいサービスを展開しようとする場合、「お客様のため」という発想から入らないと、なかなかうまくいきません。

ただ、「お客様のため」と言うのは簡単です。

たいていは、「お客様のためだ」と後付けをすることができるからです。 もっとも、これはほとんど屁理屈の世界です。

誰が見ても明らかに「お客様のため」のサービスでなければ意味がないのです。

例えば、飲食店の10周年記念のサービスと言って、「日頃の感謝の気持ちを込めて、500円の商品を400円に値下げサービスします!」と言ったところで、お客様は「これはすばらしい!」と言ってくれるでしょうか?

このサービス内容は、まだまだ自分の利益、つまり、少しでも利益をとりたいという気持ちが表れているのです。

お客様へ感謝の気持ちを本当に伝えたいのであれば、赤字覚悟で無料にすべきなのです。

それが嫌なら、こんなこと辞めるべきです。 中途半端です。

「お客様のため」のサービスは、誰が見てもわかりやすくなければ意味がありません。

有期労働契約24(トーホーサッシ事件)

おはようございます。

さて、今日は、60歳定年再雇用契約後の雇止めに関する裁判例を見てみましょう。

トーホーサッシ事件(福岡地裁平成23年7月13日・労判1031号5頁)

【事案の概要】

Y社は、サッシなどの製造販売を営む、従業員数約40人の会社である。

Xは、平成12年8月に51歳でY社に入社し、平成21年9月に定年を迎えたものである。

XとY社は、定年後、雇用期間を6か月ごとの更新とし、雇用継続は最大65歳の誕生日の前日までとする旨の記載がなされた確認書を作成した。

Y社は、平成22年8月、Xに対し、同年9月をもって、本件雇用契約を更新しない旨通知した。

Xは、本件雇止めは無効であると主張し争った。

【裁判所の判断】

本件雇止めは無効

【判例のポイント】

1 Xには、定年を迎えた後もY社での就労が認められ、少なくとも64歳に達するまで雇用が継続されるとの合理的期待があったものということができる。したがって、かかるXは、自らの就労能力が衰えるなどそれまでと事情が大きく変化しない限り、再雇用が続けられる期待を持つというべきであり、本件雇止めについては、労働契約法16条の解雇権濫用法理が類推適用されると解することが相当である。

2 いわゆる従業員代表との間の労使協定は、法律上明文がある場合に労働基準法等の法律上の規制を免除する効果を及ぼすものであるが、他の労働者に対して規範的効力が及ぶものではなく、そのような効力までは認めることは困難である

3 Xの陳述どおり、本件雇用継続制度にかかる協定書は公表されておらず、Xは平成22年8月の団体交渉で初めて知ったことを、一応認めることができる。
そうすると、いかに他の従業員との関係で統一的な運用をするためとはいえ、肝心の本件雇用継続制度を周知しないままにその基準を雇止めの要素として考慮することは相当とはいい難い。
したがって、本件基準を満たしているか否かを、本件雇止めが合理的理由を備えるか否かの判断資料とすることは相当ではなく、この点についてのY社の主張を採用することは困難である。

4 ・・・以上によれば、Y社の主張する事実を総合考慮したとしても、少なくともXの就労状況がこれまでに比べて大きく衰えたことを認めるに足りる的確な疎明資料はなく、また、Y社の経営状況がこれまでと比して大きく変動し、ワークシェアリング等の解雇回避努力を行っても、Xの雇用を継続することができなかったとまでは認め難いから、本件雇止めに合理的な理由があるとは認められない

賃金仮払いの仮処分が認められた事案です。

地位確認の仮処分は、従来通り、必要性を否定されています。

上記判例のポイント4ですが、継続雇用した従業員を雇止めする場合、ワークシェアリングまで検討し、解雇回避努力を尽くさなければならないとされています。

もちろん、本件では、Xに解雇事由がないため、整理解雇同様の要件を要求しているわけですが。

嘱託社員であろうとも、整理解雇をするには、厳しい要件を満たす必要があるわけです。

有期労働契約は、雇止め、期間途中での解雇などで対応を誤ると敗訴リスクが高まります。

事前に顧問弁護士に相談の上、慎重に対応しましょう。

本の紹介11 1分間松下幸之助(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は、本の紹介です。

1分間 松下幸之助 逆境を力に変える不屈の人生哲学77
1分間 松下幸之助 逆境を力に変える不屈の人生哲学77

松下幸之助さんについて書かれている本です。

あっという間に読めてしまいます。

この本の中で、「いいね!」と思った文章はこちら。

大切なのは、今やっていることを最善と思うのではなく、常にもっとよいやり方はないかと追求する姿勢だ。それこそが「自分の再検討」をする前提となる。」(27頁)

この感覚は、みなさんも、共感するところではないでしょうか。

仕事を続けている間はずっと、常に改良を重ねていく姿勢が大切だと思います。

他者のやり方を見たときに、「このやり方はすばらしいな!」と素直に受け入れる姿勢と、一旦、自分のやり方を否定する謙虚さ、他者のやり方ですばらしいと思う方法を直ちに導入できる行動力の3つがあれば、改良はそれほど難しいものではありません。

他者がたとえライバルや敵であったとしても、いいものはいいのです。

改良する気持ちがなくなってきたら、引退を考えようかと思います。

賃金37(リンク・ワン事件)

おはようございます。

さて、今日は、賞与の支給日在籍要件に関する裁判例を見てみましょう。

リンク・ワン事件(東京地裁平成23年2月23日・労判1031号91頁)

【事案の概要】

Xは、平成18年4月、Y社に正社員として採用され、平成20年4月、自己都合により退職した。

Xの入社当時、Y社の旧給与規程には、給与は年俸制度を採用すること等が定められていた。

Y社は、平成19年6月、旧給与規程を変更し、変更後の新給与規程をY社の社内イントラネット上に掲示した。

Xは、Y社の賞与支給日以前に退職していたため、賞与を支給されなかった。

Xは、Y社に対し、賞与の請求を求めて提訴した。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 本件支給日在籍要件は、Xに対する本件給与改定通知書に記載があるところ、労働者と使用者が合意した場合には、労働条件を変更することができるから(労働契約法8条)、まず、Xが本件支給日在籍要件に同意したといえるかが問題となる。

2 Xは、平成19年6月ころ、Y社から、本件支給日在籍要件が記載された本件給与改定通知書を示された上で説明を受け、同通知書に署名したのであり、Xは、本件支給日在籍要件を含む、本件給与改定通知書に記載された労働条件に同意したと認めるのが相当である。

3 Xは、新給与規程が周知されておらず、意見聴取や届出もなされていないから、新給与規程には拘束されず、旧給与規程の適用を受けることになることを前提に、本件支給日在籍要件は、旧給与規程で定める基準に達しない労働条件を定めるものであるから、無効である旨主張する。
ここで、就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とされるところ(労働契約法12条)、このような就業規則の最低基準効を発生させるには、就業規則が周知されていれば足り、従業員代表からの意見聴取や労働基準監督署長への届出がなされていることまでは必要ないというべきである。本件において、新給与規程は、平成19年6月にY社の社内イントラネット上に掲示され、従業員が見ようと思えばいつでも見ることができる状態になっていたのであるから、周知されていたと認められる。そうすると、同日時点において従業員代表からの意見聴取や労働基準監督署長への届出がなされていなかったとしても、上記最低基準効が生じるのは、新給与規程であるというべきである

4 以上によれば、本件支給日在籍要件は、XとY社の合意により有効であり、Xの請求は、その余の点について判断するまでもなく、理由がない。

一般には、賞与は支給日に在籍していないともらえません。

本件では、支給日在籍要件の問題について、給与規程の変更が絡んでいるケースです。

就業規則の最低基準効についての判断は、特に新しいものではありませんが、おさらいとしては参考になります。

それにしても、なんでこの事件、地裁でやっているんだろう・・・?

Xの請求金額は、賞与の30万円ちょっとなのに。

日頃から顧問弁護士に相談することが大切ですね。