Author Archives: 栗田 勇

依頼者からの素朴な質問3

おはようございます。

さて、今日も、昨日に引き続き、依頼者からの素朴な質問に答えます。

今日は、こういう質問。

「内容証明が届いたんですけど、弁護士の名前がいっぱい載っています。こちらは先生1人で大丈夫ですかね・・・」

このような質問は少なくありません。

弁護士から内容証明が届いただけで、慌ててしまうのに、書面の冒頭に、何人もの弁護士の名前が書いてあったら、どうしたらいいかわからなくなってしまうと思います。

と、このように驚かせるために、事務所にいる弁護士全員の名前を記載して内容証明を出してくることもあります。

しかし、弁護士1人の名前しか記載されていない場合でも、たくさんの弁護士名が記載されている場合でも、実際には、ほとんど違いはありません。

なぜなら、たくさんの弁護士名が記載されていても、その全員が当該事件を担当するわけではないからです。

多くの場合、せいぜい1人か2人で事件を担当しています。 あとの弁護士は、名前を挙げているだけです。

中には、たくさんの弁護士名が記載されていても、名前の横に(担当)と書かれている場合もあります。

その場合には、その弁護士が担当です。あとの弁護士は、あまり関係ありません。

というわけで、たくさんの弁護士名が記載されていても、恐れる必要はありません。

内容証明が届いたら、落ち着いて、弁護士に相談することをおすすめします。

依頼者からの素朴な質問2

おはようございます。

さて、今日は、依頼者からの素朴な疑問に回答します。

「いい弁護士をどうやって探せばいいのかわからない」という質問。

なかなか難しい質問です。

「いい」弁護士の定義がよくわからない、というより、人によって「いい」弁護士の定義が異なるのではないでしょうか。

「うまいラーメン屋をどうやって探せばいいのかわからない」。

「うまい」ラーメンは人によって違うのと同じ? 違う?

知り合いが、「あそこのラーメンうまいぞ!」と言っていたので、実際行ってみたら、まずくはないけど、別にそれほどでもなかったという経験、ありませんか?

味の趣味が異なるわけですから、当然のことです。

私個人の答えとしては、一度、法律相談に行ってみる、ということです。

一度、とりあえず、うまいかまずいか、ためしにラーメンを食べに行ってみるのが手堅いのではないでしょうか。

ホームページや広告を見ても、いいことしか書いていないわけで。

なんとでも書けます。 

まずは、「なんかよさそう」と思った弁護士のところにアポをとって、相談に行く。

そして、法律相談の際の受け答え、対応、回答等から判断するしかないと思います。

別に、相談だけ行って、依頼しなくてもまったく気にしなくて大丈夫ですよ。

自分の目で確かめるのが一番です!

退職勧奨4(JWTジャパン事件)

おはようございます。

さて、今日は、退職勧奨に関する裁判例を見てみましょう。

JWTジャパン事件(東京地裁平成20年7月29日・ウェストロー)

【事案の概要】

Y社は、世界的に展開する広告代理店のA社の日本法人であり、現在、二百数十名の従業員を擁している。

Xは、平成18年4月、Y社に採用され、クリエイティブディレクター(以下「CD」)として勤務してきた。

Xは、Y社から、不当な退職強要をされ、仕事から外されるという不法行為をされ、さらにY社が退職合意が成立したとして就労を拒まれているがそのような合意は成立していないと主張し、雇用契約上の地位の確認及び賃金の支払並びに不法行為に基づく損害賠償を求めた。

【裁判所の判断】

雇用契約上の地位にあることを確認する。

損害賠償請求につき、慰謝料として60万円の支払を命じる。

【判例のポイント】

1 Xは、退職合意の成立を前提とした行動を一切取っていないものといえる。退職届も作成していないし、Y社との間で、退職の合意を確認する書面を作成してもいない。自ら職探しもしていない。自ら積極的に退職したいとか他社に移りますとも述べていない。Y社が退職合意が成立したと主張する平成18年3月7日のBとの面談においても、同人から退職勧奨されて、仕事は探してみる、と述べたが、X本人によれば、これは直接の上司に対し明確な拒否を示すこともできず、何とかその場を逃れるために述べたものと認められる。客観的な行動としてXが唯一行ったのは、Bから指示されて、A社に送る履歴書をBにメールで送信したのみであるが、同様に、これも直接の上司からの指示であったため、断ることができなくて取った行動と認められる。
・・・Y社は、Xはともかく退職の意思表示はしたのであり、その後再就職先など条件面で思うに任せなかったため翻意したような趣旨をも主張するが、再就職先などについてある程度見通しが明らかにならない状況では、退職するか否かを通常決し難く、そのような場合はいまだ退職の意思自体が確定的なものではないというべきである。殊に、Xの家族や家計の状況からすれば、通常転職には慎重になると考えられ、なおさらというべきである

2 以上によれば、Y社主張の退職合意は成立していないというべきである。そうすると、Y社はXを解雇したなどの事実は存しないから、Xはなお雇用契約上の地位を有するというべきであり、その点に関するXの主張は理由がある。

3 上記認定のように、X・Y社間で退職を合意した事実は認められない。そして、Xは、退職を拒んでいたのに、Y社は上記認定のように多数回にわたり退職勧奨を行った。またY社は、上記合意が成立していないことを認識しながら、上記合意を前提に、Xを仕事から外し、出勤しても何もすることがない状況に置き、挙げ句には再就職活動に必要な期間を経過したとして会社に立ち入ることさえ拒否するに至った。この行為は不法行為を構成するというべきである。これによりXが著しい精神的苦痛を被ったことが認められる。この苦痛を慰謝するには、事案の内容、Xの地位その他一切の事情を考慮し、60万円の支払をもって相当と認める

少し事案が特殊ですが、会社と従業員で、退職合意の有無について争いになった事案です。

退職勧奨が不法行為として認められ、慰謝料60万円が認められました。

退職勧奨の際は、顧問弁護士に相談しながら慎重に対応することが大切です。

派遣労働5(日本化薬事件)

おはようございます。

さて、今日は、派遣労働者と派遣先会社間の労働契約の成否と雇止めに関する裁判例を見てみましょう。

日本化薬事件(神戸地裁姫路支部平成23年1月19日・労判1029号72頁)

【事案の概要】

Y社は、平成16年7月、A社との間で、業務委託基本契約を締結し、同社に対し、姫路工場で生産する製品の製造業務を委託した。そして、Y社は、上記基本契約に基づき、平成17年6月、A社との間で、Xにつき、自動車安全部品の製造及び付帯業務に関する業務委託契約を締結し、同契約は平成18年10月まで更新・継続された。

Y社は、平成18年8月、A社との間で、労働者派遣基本契約を締結し、業務委託から労働者派遣に切り替えた。そして、Y社は、上記基本契約に基づき、同年10月、A社との間で、Xにつき、労働者派遣契約を締結し、平成21年1月まで更新・継続した。

Y社は、受注の減少等を理由として、姫路工場の派遣労働者につき、派遣期間が満了する者の打ち切りを実施することとし、就業状況等を勘案してXについては派遣契約を更新しないこととした。

これを受けて、A社は、平成20年12月、Xに対し、雇用契約も更新しない旨を伝えた。

Xは、平成21年1月、姫路工場の管理部長らと面談し、期間3年を超える違法な労働者派遣なので、自らを正社員として直接雇用してほしい旨を要請した。これを聞いたA社は、Xに対し同月末日までの賃金は保障しつつ当日から出勤停止とし、同月31日をもってXを解雇した。

【裁判所の判断】

XとY社間には労働契約は成立していない。

Y社の行為は、不法行為には該当しない。

【判例のポイント】

1 請負契約においては、請負人は注文者に対して仕事完成義務を負うが、請負人に雇用されている労働者に対する具体的な作業の指揮命令は専ら請負人にゆだねられている。よって、請負人による労働者に対する指揮命令がなく、注文者がその場屋内において労働者に直接具体的な指揮命令をして作業を行わせているような場合には、たとい請負人と注文者との間において請負契約という法形式が採られていたとしても、これを請負契約と評価することはできない。そして、上記の場合において、注文者と労働者との間に雇用契約が締結されていないのであれば、上記3者間の関係は、労働者派遣法2条1号にいう労働者派遣に該当すると解すべきである。そして、このような労働者派遣も、それが労働者派遣である以上は、職業安定法4条6項にいう労働者供給に該当する余地はないというべきである。
そして、労働者派遣法の趣旨及びその取締法規としての性質、さらには派遣労働者を保護する必要性等にかんがみれば、仮に労働者派遣法に違反する労働者派遣が行われた場合においても、特段の事情のない限り、そのことだけによっては派遣労働者と派遣元との間の雇用契約が無効になることはないと解すべきである(最高裁判所平成21年12月18日第二小法廷判決)。

2 Y社は、Xの姫路工場就労後、一貫してXに対する作業上の指揮権を有しており、Xの出退勤につき、ある程度の管理をしていたことも明らかであるから、Y社とA社間の関係は、当初から業務委託(請負)と評価することができず、これにXを加えた三社間の関係は、労働者派遣に該当するというべきである。

3 A社によるXの採用につき、Y社による事前面接があったとは認められず、これを根拠にX・Y社間には黙示の労働契約が成立したとのXの主張には、理由がない。

4 X、Y社及びA社の三社の関係は、Xが姫路工場での就労を開始した当初から、労働者派遣であったと認められるところ、当時、物の製造業務に関する派遣可能期間は1年であったことからすれば、Y社には、平成18年6月の時点で、Xに対し直接雇用を申し込む義務が発生していたと解するほかはない。
しかし、労働者派遣法40条の4は、その文言からして、派遣先の派遣労働者に対する雇用契約の申込義務を規定したにとどまり、申込の意思表示を擬制したものでないことは明らかであって、Xの主張は、立法論としてならともかく、現行法の解釈としては採り得ないものといわねばならない

裁判所は、当初の業務委託契約が偽装請負であったことは認めたものの、そのあとは、お決まりのコースです。

本件では、A社、Y社は何のお咎めもありません。

会社側としては、派遣契約に関する各種裁判例を研究し、敗訴リスクを実質的に検討した上で、現場対応することになります。

派遣元会社も派遣先会社も、対応に困った場合には速やかに顧問弁護士に相談することをおすすめします。

依頼者からの素朴な質問1

おはようございます。

さて、今日は、ご相談者から、たまに質問される内容についてのお話。

私は、ご相談者の方から、たまにこんな質問を受けることがあります。

「年配の先生が強い権力(?)を持っていて、裁判で勝つように話がついているんじゃないですか?」

うん。なるほど。

もし本当なら、私、当分の間、裁判に勝てないことになります。 冬の時代ですか。 しょぼん・・。

独立するの、早すぎたかしら。 しょぼん・・・。

ど、どこからこういう都市伝説を聞いたのでしょうか・・・(笑)

もちろん、裁判所や弁護士会で、先輩弁護士に会えば、礼を尽くします。

しかし、いざ裁判になれば、先輩、後輩は一切関係ありません。 がちんこです。

むしろ「強い権力」(?)を持っている先生方とあたる方が、燃えてしまいます。

というわけで、常にがちんこ勝負なのですよ。

だからこそ、日々、修行しているわけです。 

本の紹介5 選択の科学(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 

さて、今日は、本の紹介をします。
選択の科学
 選択の科学

コロンビア大学ビジネススクールの教授の本です。

「選択」するとはどういうことなのかについて、いろいろな調査結果をあげながら説明されています。

私たちは、自分の自由意思で選択しているように思っているが、実は、いろいろな仕掛けで「選ばされている」ということがよくわかります。

ヒントがいっぱい詰まった本です。

この本の帯に書かれている文章です。

社長の平均寿命は、従業員の平均寿命よりも長い。その理由は、裁量権つまり選択権の大きさにある。

動物園の動物の寿命が、野生の動物よりはるかに短いのは、「選択」することができないからだ。」  

が、何もかもが決められている原理主義的な宗教に属する人ほど鬱病の割合は少ない。

選択することができる生き方とできない生き方、どちらの方がいいですか?

不当労働行為22(川崎重工業事件)

おはようございます。

さて、今日は、交渉主体と団交拒否に関する裁判例を見てみましょう。

川崎重工業事件(兵庫県労委平成23年6月9日・労判1029号95頁)

【事案の概要】

Y社は、平成20年のいわゆるリーマンショック以降、経営状況が悪化したため、21年秋から冬にかけてC工場の操業度が落ち込み、同工場の請負業務は新規に発注する案件がなく、労働者派遣契約も順次中途解除する状況となった。

21年11月、Y社は、請負契約または労働者派遣契約に基づきC工場で鉄道車両の台車製造業務を行っていたA社及びB社に新たな請負業務を発注せず、労働者派遣契約を中途解除した。

C工場で働いていたA社およびB社の従業員Dらは、労働組合を結成した。

A社およびB社は、11月から12月にかけてDら組合員を解雇または雇止めとした。

11月、組合は、Y社に対して組合員の雇用に関する団交を申し入れた。

Y社は、組合員と直接の雇用関係になく、組合員の労働条件を決定する権限がないので、団交に応じられないと回答した。

組合は、Y社の団交拒否は、不当労働行為にあたると主張し争った。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にはあたらない。

【命令のポイント】

1 組合が本件団体交渉においてY社とA社とが一体となって解決することを求めているのは、組合員の解雇等の撤回ないしY社での雇用に関するものであるところ、組合は、これらの事項に関してY社が現実的かつ具体的な支配力を有していた事実として、組合員がY社の従業員と混在して働いていたこと、Y社の従業員から残業の指示を受けたこと、有給休暇を取得するに当たりY社の班長への届出が必要であったこと、Y社の従業員と一緒に朝礼に参加し、会社の課長等から業務指示を受けたことを指摘するにとどまり、これらの事実だけでは、組合員の雇用についてY社が現実的かつ具体的な支配力を有しているとまではいえない

2 団体交渉の当事者としての使用者性の判断は、労働組合法独自の観点から行うべきであって、会社に雇用契約の申込み義務がないというだけで、直ちに雇用関係の成立する可能性が現実的かつ具体的にないとして使用者性を否定するのは適切ではない。とりわけ本件のように派遣可能期間を超えている場合には、雇用契約の申込み義務がないとしても、労働者派遣法の趣旨は直接雇用を含めた雇用の安定を要請していると解することができ、実際に本件では兵庫労働局から同旨の指導が会社に対してなされていたことを考慮すると、なお雇用関係の成立する可能性が現実的かつ具体的にあると判断される余地もある

3 そこで、このような観点から、Y社と組合員との間に、近い将来において雇用関係の成立する可能性が現実的かつ具体的に存するかどうかについて検討すると、組合からY社に対し団体交渉申入れがあった平成21年11月ころ、C工場では操業度が落ち込み、請負業務については新規に発注する案件がなく、労働者派遣契約についても順次解除していく状況にあったことが認められる。・・・したがって、Y社と組合員との間に、近い将来において雇用関係の成立する可能性が現実的かつ具体的に存するということはできない

4 以上のことから、Y社は、組合員に対する労働組合法上の使用者に当たらず、組合員の雇用に関する組合からの団体交渉の申入れに応じる義務を負うとはいえない。

上記ポイント1の事情からすると、Y社内では少なからず、偽装請負の状態が存在したことが窺われますが、労働委員会としては、これらの事情だけでは、Y社を組合員の労組法上の使用者とは認めませんでした。

正直、理解に苦しみますが・・・。 

実質的には、Y社が指揮命令をしていたように読めますが。 どうなんでしょうか。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介4 憂鬱でなければ、仕事じゃない(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は、有名な社長お二人が書かれた本を紹介します。
憂鬱でなければ、仕事じゃない
憂鬱でなければ、仕事じゃない

こういう題名も嫌いではありません。 つかみはOKという感じです。

見城さんの意見は、多くの部分で、共感を覚えます。

また、使う言葉が刺激的なので、読んでいるうちに、猛烈に仕事をしたくなってきます。

まだまだ僕も甘いなって、思ってしまうのです(単純なのです・・・)。

さて、この本で、私が「いいね!」と思ったフレーズは、これです。

僕にとって何より重要なのは『極端』であることだ。『極端』であれば、振り切れている。突き抜けたオリジナリティーを獲得している。だから、明快であり、新しい。・・・では、どうすれば、『極端』なものを生み出せるか?『中間』を憎み、極北を目指して圧倒的努力をするしかない。
圧倒的努力とは、とても単純である。人が寝ている時に寝ないってこと。人が休んでいる時に休まないってこと。そして、どこから手を付けていいかわからない膨大なものに、手をつけ、最後までやり通すことだ。
」(60頁)

わかりやすいですね。

継続して実行することは、肉体的にも精神的にもつらいことですが。

自分をいじめるのが好きなタイプの人間は、見城さんの意見に共感しやすいのかもしれません。

こういう「圧倒的努力」をしていること自体が、安心感につながるのだと思います。

労災47(フィット産業事件)

おはようございます

また一週間はじまりました! がんばっていきましょう!!

今日は、午前中、公証役場へ行き、その後、労災の裁判が1件入っています。

午後は、建物明渡等の裁判が2件入っています。

裁判終了後、月一恒例のK・MIXです。 今回は、浜松まで行ってきます

ずみさん、おてやわらかに・・・

今日も一日がんばります!!

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さて、今日は、派遣社員のうつ病と損害賠償に関する裁判例を見てみましょう。

フィット産業事件(大阪地裁平成22年9月15日・労判1020号50頁)

【事案の概要】

Y社は、コンピュータシステムの受託・開発等を業とする会社である。

Xは、Y社に雇用され、平成13年8月から、A社にY社の派遣社員として派遣され、A社が受注していた運行制御システムの開発業務に従事していた。

Xの平成14年9月から15年3月までの労働時間数は相当長時間に及んでおり(1か月当たり約171時間ないし291時間)、特に15年1月および2月の労働時間は過重ともいうべき程度存在していた。

Xは、心療内科を受診したところ、「不眠症、うつ状態」。「遷延性うつ反応」と診断された。

Y社は、15年4月、Xを休職扱いとした。また、Y社は、同年6月、Xの休職期間が3か月になったことを理由として、就業規則に基づき、Xを退職とする取扱いをした。

労基署長は、18年12月、Xのうつ病発症について、業務起因性が認められると認定した。

Xは、Y社に対し、債務不履行ないし不法行為に基づき、休業損害、慰謝料等の損害賠償を請求した。

【裁判所の判断】

Y社に対し、約1500万円の損害賠償の支払いを命じた。

【判例のポイント】

1 一般的に、使用者は、その雇用する労働者に従事させる業務を定めてこれを管理するに際し、業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務を負っていると解するのが相当である(最高裁平成12年3月24日判決参照)。

2 Xは、Y社の業務によってうつ病を発症したところ、同疾病発症に当たって、Y社は、平成14年9月から平成15年3月までの間におけるXの労働時間、特に、平成15年1月及び同年2月におけるXの時間外労働時間は、かなりの程度に及んでおり、Y社としても、勤務日報等により、かかるXの長時間労働については十分に把握することができたというべきである。また、Xが担当していた本件運行制御システムは、要件定義の確定と同システム完成納期との間の期間が短く、同システムに係る作業については、主としてXが担当していたところXに対するY社の支援体制が確立していなかった
以上の事実を総合すると、Y社は、Xについて、当該業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意すべき義務を負っていたにもかかわらず、これを怠ったということができ、Xがうつ病を発症したものと認めることが相当である。
そうすると、Y社は、Xに対する安全配慮義務違反により、Xがうつ病を発症したこと、それにより被った損害を賠償すべき責任があるというべきである。

3 ・・・以上の事実を踏まえると、Xのうつ病の発症及び発症後長期間経過したにもかかわらず治癒するに至っていないことに関しては、X自身の生活態度・業務態度が一定の範囲で寄与していたと認めるのが相当である。そうすると、X側にも過失があると認めるのが相当であって、上記したXの生活状況等を総合して勘案すると、その過失割合としては、2割とするのが相当である

本件では、先に労災の認定がされていたため、労働者側としては、比較的やりやすかったと思います。

今回も、裁判所は、会社側の「支援体制」の不存在について指摘しています。

その一方で、被災労働者の過失も認め、過失相殺を2割認めています。

本の紹介3 究極の鍛錬(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日も読んだ本の中から、「いいね!」と思った言葉を紹介します。

今日の本は、アメリカ「フォーチュン」誌の編集主幹の方が書かれた本です。

 究極の鍛錬
  究極の鍛錬 天才はこうしてつくられる

こういう題名、大好きです。

少し前に読んだ本ですが、昨夜、もう一度、読み返してみました。

とにかく書いてある内容がわかりやすいのがいいです。

いろいろな分野の「天才」と呼ばれている人を数多く例にあげて分析しています。

社内教育等にも役に立つと思います。

この本の中で、私が「いいね!」と思った一言は、これです。

自動化の回避が究極の鍛錬を継続することの一つの効果なのだ。自分がうまくできない点を絶えず意識しながら練習するという鍛錬の本質から、自動化に基づく行動をとることが不可能となる。」(121頁)

ここでいう「自動化」について、著者は、以下の例で説明しています。

たとえば、自動車の運転など、何か新しいことができるようになるには、人間は三つの段階を経るものだ。第一段階では、いろいろなことに注意を払うことが求められる。車の制御方法、交通規制などいろいろなことを学ばなければならない。第二段落になると、知識を連携するようになる。車、状況、交通規制の知識といろいろな自分の体の動きを関連づけ、スムーズに組み合わせることができるようになる。第三段落になると、考えることなくひとりでに車を運転するようになる。これを自動化(automatic)という。そして、この自動化によって普通の人の車の運転技術の向上速度は劇的にスローダウンし、ついには技術の向上が完全に止まってしまう。」(120頁)

自分の仕事に置き換えやすい例示です。

「慣れ」というものに気をつけなければいけません。

もっとも、「自分がうまくできない点を絶えず意識しながら練習する」・・・簡単にはできません。

これができる人とできない人では、数年後、まったく違うレベルになっているんでしょうね。

「まだまだ自分は発展途上だ」といつまでも思いながら仕事をしていきたいです。