Author Archives: 栗田 勇

労働時間117 航空機客室乗務員の休憩時間(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、航空機客室乗務員の休憩時間に関する裁判例を見ていきましょう。

ジェットスター・ジャパン事件(東京地裁令和7年4月22日・労判ジャーナル159号8頁)

【事案の概要】

本件は、航空運送事業を営むY社との間で労働契約を締結し、客室乗務員として勤務していたXらが、Y社から労基法34条1項の定める休憩時間が付与されない勤務を命じられ、これに従事したことにより精神的苦痛を受けたと主張して、Y社に対し、選択的に債務不履行(安全配慮義務違反)又は不法行為に基づく損害賠償金(慰謝料及び弁護士費用)として、X各自につき55万円+遅延損害金の支払を求めるとともに、現在客室乗務員としてY社に勤務しているXらが、将来にわたって継続的に、Y社から労基法34条1項の定める休憩時間が付与されない勤務を命じられるおそれがあると主張して、人格権に基づき、上記勤務を命ずることの差止めを求める事案である。

【裁判所の判断】

1 Y社は、Xら各自に対し、各11万円+遅延損害金を支払え。
2 Y社は、Xらに対し、労働時間が6時間を超える場合においては少なくとも45分、8時間を超える場合においては少なくとも1時間の休憩時間を付与しない勤務(ただし、労働基準法施行規則32条2項所定の時間の合計が上記休憩時間に相当する場合を除く。)を命じてはならない。

【判例のポイント】

1 客室乗務員は、機長の指揮監督下で客室の安全の確保に関する業務を行うことがその責務の一つとされており、急病人の発生等の事態が生じた場合、必要に応じて、クルーレストを中断して業務を行う必要があったほか、客室乗務員は、クルーレスト中であったとしても、インターホンが鳴れば、これに応答していたというのである。そして、客室乗務員にクルーレストが付与された事実は機長に伝達されないため、機長は各客室乗務員のクルーレストの有無、時期、時間等を把握しておらず、機長からの指揮監督の密度等について、客室乗務員がクルーレスト中か否かによって、有意的な変化があるとはいい難い。
以上によれば、クルーレストは、停車時間、折返しによる待合せ時間のように実際に乗務しない時間と同程度に精神的肉体的に緊張度が低いと認められる時間に該当するとはいえないため、労基規則32条2項所定の「その他の時間」には該当し得ない

2 労基法34条は、ある程度労働時間が継続した場合に蓄積される労働者の心身の疲労を回復させ、その健康を維持するため、労働時間の途中に休憩時間を与えるべきことを規定したものと解されるところ、Y社がXらに対して同条に違反する勤務を命じたことは、労働者の健康等を危険から保護するよう配慮すべき義務(安全配慮義務)に違反するというべきであるから、Y社は、これによりXらに生じた損害について賠償する責任を負う。

2 Xらに命じられていた勤務は、発着陸回数や勤務時間等の点において、Xごとに特に偏りがあったわけではなく、別紙4「勤務状況一覧表」に記載の勤務以外にも、本件各勤務パターンと1日の発着陸回数が同じで、勤務時間がより長く、便間時間が同じか、より短い勤務を命じられたことがあったのは前記認定のとおりである上、その後、勤務パターンが、労基法34条1項の休憩時間又は労基規則32条2項所定の時間が確保されていると認められるものに変更されたといった事情も見当たらず、かえって、令和6年11月以降も、各便間時間から便間業務時間である35分を差し引くと、業務外便間時間の合計時間が労基法34条1項所定の休憩時間数に達しておらず、休憩時間及び労基規則32条2項所定の時間が確保されていない勤務が行われていることが認められることに照らすと、将来にわたって、Y社が、現職Xらに対し、同様の勤務を命ずることで、現職Xらの人格権を侵害する行為が継続する蓋然性も認められる。そうすると、当該行為を差し止める必要性が認められる。

これまで当たり前のように提供を受けていたサービスは、今後、受けられなくなりますね。

なお、労基則32Ⅱは、以下のとおりです。

「第三十二条 使用者は、法別表第一第四号に掲げる事業又は郵便若しくは信書便の事業に使用される労働者のうち列車、気動車、電車、自動車、船舶又は航空機に乗務する機関手、運転手、操縦士、車掌、列車掛、荷扱手、列車手、給仕、暖冷房乗務員及び電源乗務員(以下単に「乗務員」という。)で長距離にわたり継続して乗務するもの並びに同表第十一号に掲げる事業に使用される労働者で屋内勤務者三十人未満の日本郵便株式会社の営業所(簡易郵便局法(昭和二十四年法律第二百十三号)第二条に規定する郵便窓口業務を行うものに限る。)において郵便の業務に従事するものについては、法第三十四条の規定にかかわらず、休憩時間を与えないことができる
② 使用者は、乗務員で前項の規定に該当しないものについては、その者の従事する業務の性質上、休憩時間を与えることができないと認められる場合において、その勤務中における停車時間、折返しによる待合せ時間その他の時間の合計が法第三十四条第一項に規定する休憩時間に相当するときは、同条の規定にかかわらず、休憩時間を与えないことができる。

日頃の労務管理が勝敗を決します。日頃から顧問弁護士に相談することが大切です。

本の紹介2207 借金2000万円を抱えた僕にドSの宇宙さんが教えてくれた超うまくいく口ぐせ#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も1週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。

今から9年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

日頃の「口ぐせ」がいかに大切であるかがよくわかります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

口ぐせで、そいつが何を心から信じているのか、一発でわかる。」(34頁)

典型例は、「どうせ無理」か「どうせできる」の違いです。

負け癖がついていて、すぐにあきらめてしまうのが前者。

勝ち癖がついていて、すぐにはあきらめないのが後者。

類は友を呼びますから、両者が交わることは、通常、ありません。

解雇428 経歴詐称等を理由とする解雇が認められた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、経歴詐称等を理由とする解雇が認められた事案を見ていきましょう。

Aston Martin Japan事件(東京地裁令和6年11月27日・労判ジャーナル159号48頁)

【事案の概要】

本件は、イギリスに本社を置く自動車メーカーの日本法人であるY社との間で期間の定めのない雇用契約を締結した元従業員Xが、Y社に対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認及び未払賃金等の支払、Y社がした解雇は無効であり、不法行為に当たるとして、これによる精神的苦痛に相当する200万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

解雇無効

損害賠償請求棄却

【判例のポイント】

1 Y社は、本件解雇の理由として、Xが、〔1)英国籍であるにもかかわらず日本国籍であると偽ったこと、〔2〕前職における年間給与総額が約600万円にすぎないのに約700万円であると述べたこと、〔3〕経歴書に前職における地位(役職)が「デジタルプロジェクトマネージャー」であると記載したこと、〔4〕前職において秘密情報の持出しを行ったにもかかわらず、その事実を否認する本件誓約書を提出したことを主張するが、いずれも就業規則所定の解雇事由に該当すると評価することはできないか、仮に該当すると評価するとしても、これらをもって直ちに解雇につながる事由であるとはいえないから、本件解雇は客観的に合理的な理由があるということはできず、また、Y社がXを即日解雇とした時点においては、Xの経歴詐称や前職における情報の持出しを疑っていたにすぎない段階であり、Xに対してY社のかかる疑念を明示的に説明した上でその言い分を聴取するなどの手続も経ていないことや、Y社による書類の追加提出の求めに対し、その対応に不誠実な点があったとは認められないこと等を踏まえると、本件解雇が社会通念上相当であると認めることはできない。

2 Xは、本件解雇及び本件予備的解雇は不法行為であり、これにより精神的苦痛を受けたと主張するが、本件解雇及び本件予備的解雇は無効であるものの、解雇手続が別途Xに対する不法行為となるほどの違法性があるとは認められず、またXには賃金請求が認められることからすると、Xにおいてさらに填補すべき損害があるとは認めることができないから、Xの損害賠償請求は理由がない。

解雇に至る手続の履践が不十分であったことが敗因の1つとされています。

解雇をする際は、事前に顧問弁護士に相談をするようにしましょう。

本の紹介2206 NASAより宇宙に近い町工場#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

今から11年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

読んでいて、とても懐かしかったです。

0から1を生み出すことの大変さがよくわかります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

自信のない人間は、他の人間の自信を奪います。自信を少し持つだけで、他人の自信を奪わなくなります。優しくなってしまうんです。」(184頁)

自分に自信がない人の特徴は、自分を大きく見せようとすることです。

あの人と知り合いだと言ってみたり、車や時計を見せびらかしたり(笑)

周囲の「うわ~、すごいですね!」を真に受けて悦に浸っている場合ではありません。

そんなこと誰も思っていませんので。

本当にすごい人は、何もしなくても、何も言わなくても、すごさがにじみ出てしまうものです。

同様に、偉ぶれば偉ぶるほど、その人の自信のなさがにじみ出てしまうのです。

解雇427 パソコンの私的利用等を理由とした解雇の有効性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、パソコンの私的利用等を理由とした解雇の有効性に関する裁判例を見ていきましょう。

明和住販流通センター事件(東京地裁令和6年3月21日・労判1330号39頁)

【事案の概要】

本件は、Y社と労働契約を締結し従業員として勤務していたXが、Y社から令和4年8月30日付けで懲戒処分として降給降格されたこと、同年9月27日付けで普通解雇されたことについて、いずれも無効である旨主張して、Y社に対し、〈1〉労働契約上の権利を有する地位にあることの確認、〈2〉本件降給降格処分前のクラス及び賃金を受ける地位にあることの確認、〈3〉平成29年法律第44号による改正前の民法536条2項に基づき本件解雇以降の賃金として令和4年11月以降月額33万4640円(本件降給降格処分前の時短調整後の金額。ただし、解雇予告手当37万8110円及び令和4年10月支払分の7万0160円を賃金として同月分及び同年11月分に充当してその残額を請求)及び同年12月及び同年7月の賞与各33万4640円+遅延損害金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

1 Xが、Y社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する。
2 Y社は、Xに対し、令和4年12月25日限り20万6530円及び令和5年1月から本判決確定の日まで、毎月25日限り、月額29万2320円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 Y社は、Xが令和4年6月から8月までの間に、毎月300時間から600時間程度業務に関係なく私的にパソコンを使用していた旨主張し、証拠によって裏付けられる旨主張する。
しかしながら、上記主張は、Xが所定労働時間の数倍に及ぶ時間についてパソコンを私的に閲覧していたというものであり、現実的にあり得ない荒唐無稽な主張である。また、上記証拠については、その時間数からしても、パソコンで画面を表示した時間数が表示され、同時に表示している場合は重複した時間数が計上されているものと推認できる上、Y社が主張するものが真に業務に関係ない画面であるか否かも判然としない。したがって、上記証拠をY社が主張する上記事実を認定するための証拠として採用することはできず、他にY社主張の上記事実を認めるに足りる証拠はない。
また、仮に、Xが業務に関係ないことをしていたのであれば、Y社としては、注意指導をしてこれを改善させるべきであるところ、こうした事実を認めるに足りる証拠はないし、Xの担当業務が著しく滞っていたといった事実を認めるに足りる証拠もない。

2 Y社は、Xが他の従業員とトラブルを起こすことや病気療養中のRクラスであることから、Xに対し入力作業等の単純作業を行うことを指示せざるを得ない状況であった旨、居眠りが多かった旨主張する。
しかしながら、そもそも、証拠によれば、Xは、Y社から、常に中位であるB以上の評価を受けていたことが認められるから、解雇事由に該当するような職務能力の欠如があったと認めることはできない。また、Xと他の従業員との関係については、解雇事由に該当するようなものとはいえないし、病気療養中であることについては、Rクラスに位置づけられ賃金等の面でもそれ相応のものになっていたわけであるから、Rクラスであることを職務能力の欠如を表す事情として主張することは暴論である。さらに、居眠りについては、投薬の影響であることや徐々になくなってきていたことが認められるし、Xの居眠りによって業務に重大な支障が生じていたことを認めるに足りる証拠もない。

上記判例のポイント1のような主張立証では、争う前から結論は見えています。

日頃から顧問弁護士に相談をすることを習慣化しましょう。

本の紹介2205 会社の目的は利益じゃない#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、本の紹介です。

今から11年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

サブタイトルは、「誰もやらない『いちばん大切なことを大切にする経営』とは」です。

大切なことが何であるかを日々、強く意識することが大切ですね。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

『人のせいにしない』ということは、たいへんむずかしいことなのかもしれません。多くの人が、なんでもかんでも人のせいにして、問題を自分のこととして受け止めようとしません。・・・すべて人のせいにしていると、自分が変わっていくことができません。ということは、成長も進歩も、なくなってしまうのです。」(154頁)

思考はその人の癖・習慣によるため、簡単には直りません。

他責の人の多くは、生涯、自身の不幸を誰かのせいにして生きていくのでしょう。

今の自分が不甲斐ないのは、国、政治、社会、会社、親、上司、制度、時代のせいなのでしょう。

本当は、日々の自分の選択の結果なのに。

労働時間116 割増賃金請求と管理されていない労働時間算定(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、割増賃金請求と管理されていない労働時間算定に関する裁判例を見ていきましょう。

T4U事件(東京地裁令和6年3月28日・労判1331号87頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員であったXが、Y社に対し、以下の請求をする事案である。
(1)Y社代表取締役は時間外勤務手当を支払う意思がなかったにもかかわらず、Xに対し、時間外労働を命じ長時間労働をさせたが時間外勤務手当を支払わず、時間外勤務手当相当額の損害を加えたとして、会社法350条に基づく損害賠償請求及びこれに対する遅延損害金の請求として、割増賃金請求権としては時効消滅した平成27年12月11日から平成29年1月10日の間の割増賃金相当損害金+遅延損害金
(2)Xが時間外労働をしたにもかかわらず割増賃金が支払われなかったとして、労働契約に基づく割増賃金及びこれに対する遅延損害金の請求として
ア 平成29年1月11日から平成30年11月23日までの間の割増賃金+確定遅延損害金の合計953万0389円+遅延損害金
イ 平成30年11月24日から同年12月10日までの間の割増賃金+確定遅延損害金の合計45万8340円+遅延損害金
(3)労基法114条に基づく付加金請求及びこれに対する遅延損害金請求として

【裁判所の判断】

1 Y社は、Xに対し、別紙1認容目録の「認容額」欄及び各「組入れ額」欄記載の各金員+遅延損害金を支払え。
2 Y社は、Xに対し、156万5223円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 XとY社との間の雇用契約書には、「残業代を含む」と記載されているのみである。Y社の就業規則39条4号には、「月間40時間が契約上の勤務時間に含まれるとみなしている」とあるものの、記載からしてその趣旨が明確であるとはいえない。また、年俸制なので残業代は不支給(年俸制規定12条)とされていることなども併せ考えると、基本年俸の中に月当たり40時間分の固定残業代が支払われていると認めることはできない。そうすると、就業規則や上記雇用契約書においてXの賃金における割増賃金に当たる部分は明らかにされていなかったというべきであり、本件全証拠によっても、Xに支払われた年俸について通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とを判別することができるとは認められない。
これに対しY社は、社内ルールでは退社時間は遅くとも午後9時までとされており、これが上記雇用契約書における「残業代を含む」の内容を示しているとして、本件労働契約に基づき月額支給する金額の中には午後6時30分から午後9時(休憩時間30分含む。)までの1日2時間、月40時間分が固定残業代として含まれていた旨主張する。
しかしながら、そもそも社内ルールは就業規則ではない。この点を措くとしても、「退社時間は遅くともPM9時まで」とする旨の記載も、その趣旨が不明確である上、社内ルールに「PM9:00を超える作業実施は人事評価(給与査定)での評価が下がる要因となります」とされていることからすれば、午後9時までの退社は人事評価の観点からの趣旨であるとも解し得、また、休憩時間30分についてはなんらの言及もないことからすれば、午後6時30分から午後9時までの間、休憩時間30分を除いて1日2時間、月40時間分が固定残業代として含まれていたと解することはできない。よって、Y社の主張は採用できない。

2 Xは、〈1〉請求の趣旨第1項及び第2項について、令和4年4月23日までの間に発生した遅延損害金を複数回に分けて順次元本に組み入れる旨、〈2〉請求の趣旨第4項について、令和4年4月23日までの間に発生した遅延損害金について元本に組み入れる旨の意思表示をしたとして、上記各意思表示で組み入れるとした期間に対応する遅延損害金を元本に組み入れた後、組入れ額も含めた元本についてさらに年14.6%の遅延損害金が発生しているとした上で算出した割増賃金元本及び遅延損害金を請求している。
民法405条はいわゆる法定重利を認めた規定であるが、同条は遅延損害金についても準用されると解される(大審院昭和17年2月4日判決・民集21巻3号107頁参照。)。
そして、Xは訴状において平成29年1月11日から平成30年12月10日までの間の割増賃金(ただし、実際に算出しているのは平成30年11月23日まで。)及びこれに対する各支払日の翌日から平成30年12月31日までの改正前商法所定の商事法定利率年6%と平成31年1月1日から支払済みまで賃確法所定の年14.6%の割合による遅延損害金の支払を求めているところ、これはかかる金員の支払の催告に当たり、本件訴訟の係属中は同催告が継続していたものと解するのが相当である。
なお、Xは、組み入れられた金員に対しても年14.6%の割合による遅延損害金を請求し、これにより発生した遅延損害金をさらに組み入れ、それに対しても年14.6%の遅延損害金を請求する旨主張する。しかしながら、組入れにより組み入れられた金員は、もともと賃金ではなく、組入れによって賃金としての性質を有することになるものでもなく、単に重利の対象となったにすぎないから、これについて賃確法6条1項、同法律施行令1条を適用することはできず、これに対する遅延損害金の利率は民法の法定利率年3%によるのが相当である。

この事案でも、固定残業制度が無効と判断されています。

有効要件を満たすことはそれほど難しくありませんので、しっかりと準備をしておけば防げる紛争類型です。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介2204 バカ、アホ、ドジ、マヌケの成功者#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、本の紹介です。

今から10年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

気持ちいいほどに本音トークが書かれています。

炎上してもどこ吹く風感が素敵です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

周囲からの嫉妬は成功の証。
・・・やりたくない仕事を我慢してやり続け、安月給を受け取る人たちは、やりたいことを楽しくやってるだけで大金を稼ぐ人を否定せずにはいられないのだ。」(134~135頁)

炎上上等感すご(笑)

いずれにせよ、憲法上、職業選択の自由が与えられるこの国において、今の仕事を選らんだのは、紛れもなく自分です。

年を重ねるにつれて、相対的に転職がしづらくなる現状においても、それまでの間、どのような準備をしてきたか、何もしてこなかったかも、すべて自らの選択の賜物です。

まさにアリとキリギリス。

すべては日々の習慣の積み重ねなのです。

賃金297 固定残業代の有効性、休憩時間に係る未払賃金請求をともに否定した事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、固定残業代の有効性、休憩時間に係る未払賃金請求をともに否定した事案を見ていきましょう。

マツモト事件(東京地裁令和6年12月19日・労経速2585号18頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間でそれぞれ雇用契約を締結し、塵芥車によって廃棄物収集・運搬等の業務に従事していたXらが、Y社に対し、1〈1〉Y社との間の雇用契約においては有効な固定残業代の合意は存在せず、かつ、多忙であって2時間の所定休憩時間を取ることができなかったなどとして、令和2年2月度から令和6年3月度までの未払割増賃金がX1には合計898万7384円、X2には合計1073万8633円、X3には合計951万7024円発生している旨主張するとともに、〈2〉Y社との間の雇用契約において、令和2年2月25日支払分から令和3年5月分までの基本給が東京都の最低賃金を下回る金額であったことから、差額分に相当する賃金が未払であるとして、令和2年2月度から令和3年5月度までの未払賃金がX1には合計96万0452円、X2には合計70万1000円、X3には合計100万8305円ある旨主張し、上記〈1〉及び〈2〉の未払賃金請求として、X1については合計994万7836円及び各月度の未払賃金と未払賃金の合計+遅延損害金を、X2については1073万8633円及び各月度の未払賃金と未払賃金の合計+遅延損害金を、X3については合計1052万5329円及び各月度の未払賃金と未払賃金の合計+遅延損害金を求めるとともに、
2Y社には付加金の支払が命じられるべきである旨主張し、付加金請求として、X1については776万6805円、X2については947万5527円、X3については820万2778円の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

1 Y社は、X1に対し、521万2219円+遅延損害金を支払え。
2 Y社は、X2に対し、614万7521円+遅延損害金を支払え。
3 Y社は、X3に対し、496万8888円+遅延損害金を支払え。
4 Y社は、X1に対し、388万2102円を支払え。
5 Y社は、X2に対し、427万7385円を支払え。
6 Y社は、X3に対し、342万7300円を支払え。

【判例のポイント】

1 Y社は、本件割増手当について、これが固定残業代であることは入社時にXらそれぞれに説明しており、給与明細書上も、時間外手当と分かる名称で他の賃金と明確に区分してXらに支給していたなどとして、本件割増手当が固定残業代として有効である旨主張し、Y社代表者もこれに沿う供述をする。
この点について、Y社は、Xら就労期間1及び2を通じて、給与明細書上、令和2年4月分から令和3年6月分までは「時間外深夜割増手当」との名目で、令和3年7月分以降は「残業深夜等割増手当」との名目で、本件割増手当を支払っていたことからすると、給与明細書上の費目の名称としては、本件割増手当が割増賃金として支払う趣旨であることがうかがわれる名称にはなっていることは確かである。
しかしながら、Y社は、Xらそれぞれとの間で、Xらの入社時点で、雇用契約書を作成しておらず、かつ、Y社の就業規則及び給与規程を通覧しても、「時間外深夜割増手当」又は「残業深夜等割増手当」との名称の手当に関する規定はなく、そもそも固定残業代に関する定めも置かれていない。また、Y社代表者は、本件の尋問において、Xらの入社の際に、Xらそれぞれに対し、給与明細書のひな型を用いて、Y社がXらに支払う賃金について説明をした旨の供述をするものの、その説明の具体的な内容はY社代表者自身の供述においても明らかではなく、他方で、Xらはいずれも固定残業代に関する説明を受けたことはない旨を供述していることからすると、XらとY社との間で、Xらの入社に当たり、給与明細書上の「時間外深夜割増手当」として計上された金額が固定残業代であることについての合意が形成されていたとは認め難い。そして、Y社がXらに交付していた給与明細書は、XらとY社との間の雇用契約を規律する契約書等ではなく、Y社が一方的に作成してXらに交付していた文書にすぎず、かかる給与明細書の交付が続いていた事実をもって、有効な固定残業代についての合意が形成されたと認めるには足りないし、そもそも対価性要件で判断されるのは賃金の実質であって費目の名称ではないところ、以下のとおり、本件割増手当は時間外労働等に対する対価であったとは認め難い。
すなわち、Xらに対して支給された本件割増手当の額は前記のとおりであるところ、Y社の主張を前提としても、本件割増手当の額は、1か月当たりの最大時間外労働時間数である45時間分と、1か月当たりの最大深夜労働時間数である189時間分に対応する割増賃金を前提として算出された金額であって、深夜の時間帯に回収業務を行うXらの勤務状況とはかけ離れた想定し難い時間数を前提として計算されたものであることに加え、いかなる労働に対する対価であるかの位置付けが不明確な調整金(バッファー)をも含むものである。また、多くの時間外労働等の時間を想定した上記のY社主張と異なり、遅くとも令和4年7月25日頃から掲載されていたY社の求人情報には、「月給34万円以上!しかも残業がほぼない。」などと記載されている。これらに加え、Y社代表者の供述を前提とすると、本件割増手当の金額の定めは従業員に支給する賃金総額を見ての「丼勘定」であったとのことであり、かつ、深夜の時間帯の勤務であったXらのみならず日中の時間帯の勤務であった他の従業員らにも本件割増手当をほぼ同額で支給していたとのことであるから、Y社は、本件割増手当について、従業員らに対して支給する賃金総額との兼ね合いでその金額を定めていたものであることが認められる。これらからすると、本件割増手当は、その名称にもかかわらず、実質においては、通常の労働時間の賃金が含まれていたものといわざるを得ない。
 以上によれば、本件割増手当が全体として時間外労働等に対する対価という趣旨であったとは認めることはできない。そして、このような本件割増手当が対価性要件を欠く以上、判別要件も満たさない。
 したがって、本件割増手当につき、有効な固定残業代としての合意があったとは認めることはできない。

固定残業制度は、要件を満たすことが十分可能な制度です。

しかしながら、いまだに多くの会社で不十分な対応をしています。

結果、基礎賃金が増額され、とんでもない金額の未払残業代が認定されています。

日頃からしっかりと労務管理をしていれば、間違いなく防ぐことができる紛争類型です。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介2203 世界が変わる時、変えるのは僕らの世代でありたい#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も1週間がんばりましょう。

今日は、本の紹介です。

今から10年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

著者のめげなさを見ると、もはや無敵とも思えます。

今の時代に最も必要とされる能力です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

他人に対して怒ったり、恨んだり、妬んだりしてしまう時は、そんな苛立った自分を、より客観的に、俯瞰的に見てみよう。
もっと他に心配すべきことがあることに気が付くはずだ。」(99頁)

自分がやるべきことに集中、没頭していれば、他人のことは一切気にならなくなります。

気にならないというよりも、気にしている暇がないというほうが正確かもしれません。

他人にどう思われるかばかり気にして、うじうじして・・・

暇かと。