Category Archives: 継続雇用制度

継続雇用制度33 再雇用前より好待遇の記載がある就業規則の適用は不合理?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、再雇用職員に対して、再雇用以前より好待遇の記載がある就業規則適用が認められた事案を見てみましょう。

社会福祉法人青梅市社会福祉協議会事件(東京地裁立川支部令和2年8月13日・労経速2445号31頁)

【事案の概要】

本件は、Xらが、Y社に対し、雇用契約及び有給休暇の買取の合意に基づき、Y社就業規則及びY社再雇用職員取扱要綱に基づき算定される給料等の金額と実際の支給額との差額及びこれに対する遅延損害金の支払を求める事案である。
Xらは、給料、地域手当、期末手当、勤勉手当、時間外勤務手当及び有給休暇買取分について上記差額の支払を求め、給料、地域手当、期末手当、勤勉手当及び時間外勤務手当の差額について遅延損害金の支払を求めている。

Y社は、定年退職後の再雇用期間におけるXらには、就業規則における再雇用職員の給料に関する定めは適用されず、仮に適用されるとしてもXらの請求は権利濫用に当たると主張し、また、有給休暇買取分について買取の合意を争っている。

【裁判所の判断】

請求認容

【判例のポイント】

1 Y社は、再雇用職員の給料に関する定めはXらに適用されないと主張する。
まず、Y社は、仮に再雇用職員の給料に関する定めがXらに適用された場合、Xらの再雇用期間における給料は、再雇用前の給料を上回ることとなるが、再雇用職員の給料に関する定めは、雇用慣行に従った通常の採用の場合を前提としているのであり、再雇用職員の給料が再雇用される前の給料を上回ることは想定されていないなどと主張する。
しかし、再雇用職員の給料に関する定めは、職務の級により異なる金額を記載しているものの、再雇用職員の定年退職までの勤続年数や定年退職時の給料の月額等によって再雇用職員の給料を区分していないのであるから、再雇用職員の給料に関する定めは,再雇用職員の定年退職までの勤続年数や定年退職時の給料の月額等にかかわらず、再雇用職員の職務の級に従って一律に適用されるものと解するのが相当であり、このように解する再雇用職員の給料に関する定めの内容が不合理であるとはいえない
また、Y社は、Xらを再雇用するに際し、再雇用後の給料を含む雇用条件は再雇用前と同じであることを説明し、Xらはそれを承認していたと主張する。
しかし、同事実を認めるに足りる証拠はなく、仮にY社の主張するような説明と承認があり、これについてXらと被告が合意していたとしても、その内容はXらに適用される再雇用職員の給料に関する定めに達しない労働条件であるから、同合意は無効である。

あまり見かけないタイプの事案です。

規程内容からすると、このような判断もしかたがありません。

今後ますます継続雇用制度に関する紛争が増えてくることが予想されます。日頃から顧問弁護士に相談の上、慎重に対応することをお勧めいたします。

 

継続雇用制度32 コロナ禍における懲戒処分(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、コロナ禍での譴責処分に基づく再雇用合意解除の有効性に関する裁判例を見てみましょう。

ヤマサン食品工業(仮処分)事件(富山地裁令和2年11月27日・労判1236号5頁)

【事案の概要】

本件は、Y社と雇用契約を締結して定年まで勤務してきたXが、Y社との間で、定年翌日を始期とする嘱託雇用契約を締結していたにもかかわらず、Y社から、Xが譴責の懲戒処分を受けたことを理由に、上記始期付き嘱託雇用契約を解除する旨の通知を受け、定年後の再雇用を拒否されたところ、このような合意の解除は、客観的に合理的な理由及び相当性に欠け、権利の濫用に当たり無効であると主張して、Y社に対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることを仮に定めることを求めるとともに、賃金の仮払を求める事案である。

【裁判所の判断】

地位確認却下

賃金仮払認容

【判例のポイント】

1 Y社における継続雇用制度は、平成24年改正の趣旨を踏まえ、就業規則3-7別表1に定める基準年齢に達するまでは、本件労使協定に定める基準を適用することなく、解雇事由又は退職事由に該当する事由がない限り再雇用し、上記基準年齢に達した後は、本件労使協定に定める基準を満たす者に限って65歳まで再雇用する旨定めるものと解釈すべきである。
Xは、定年に達した令和2年7月20日時点において、60歳であり、就業規則3-7別表1の基準年齢(当時は63歳)には達していなかったから、同月21日以降もXに再雇用されるために、本件労使協定に定める基準がないと認められる必要があったにすぎないと解すべきである。そうすると、本件就業規則抵触条項についても、解雇事由又は退職事由に該当するような就業規則違反があった場合に限定して、本件合意を解除し、再雇用の可否や雇用条件を再検討するという趣旨であると解釈すべきである。

2 Xが、Y社の面談において概ね事実を認めて反省の弁を述べ、始末書を提出しており、その後同様の行為に及んだことも認められないこと、Y社においても譴責処分にとどめていること、除菌水の持ち帰りについては、一定量を上限とするような明確な基準まではなかった上、一応事前にCに話を通していたこと等を踏まえると、当時のY社における新型コロナウィルス対策の重要性やXの立場及び担当業務等のY社が指摘する事情を考慮しても、Xの上記行為が、職場の秩序を乱したとか情状が悪質であるなどの就業規則に定める解雇事由に相当するほどの事情であるとはいえない

高年法が改正され、努力義務とはいえ、定年が引き上げられました。

今後ますます継続雇用制度に関する紛争が増えてくることが予想されます。日頃から顧問弁護士に相談の上、慎重に対応することをお勧めいたします。

継続雇用制度31 人件費削減の必要から嘱託社員の雇止めは認められるか?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、定年後有期雇用契約を2回更新した元社長補佐に対する更新拒絶の適法性に関する裁判例を見てみましょう。

テヅカ事件(福岡地裁令和2年3月19日・労判1230号87頁)

【事案の概要】

本件は、いわゆる定年後の継続雇用としてY社との間で雇用期間を1年とする有期の雇用契約を締結し、複数回の契約更新をしていたXが、雇用契約が更新されると期待することに合理的理由があったにもかかわらず、Y社がこれを拒絶し、そのことについて客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上も相当でないと主張して、Y社に対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることを確認するとともに、民法536条2項に基づき、更新拒絶の後の給与支払日である平成30年4月から本判決確定の日まで毎月25日限り従前と同一の労働条件である賃金41万7000円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

雇止めは無効

【判例のポイント】

1 本件継続雇用制度の運用実態を前提とすると、本件継続雇用制度に基づき継続雇用されていたY社の従業員は、更新することができない何らかの事情がない限り、契約期間の満了時に、満65歳に至るまでは更新されると期待し、そのことについて合理的理由があると認めるのが相当であり、それはXも例外ではないというべきである。

2 Y社において人件費削減の必要性がないとはいえないとしても、平成29年3月頃以降に業績不振に直面した後、人件費削減以外の方策としてどのような対処が考えられるのか、人件費削減による賃金削減により被る不利益の程度をどう抑制するのかなど、経営再建を図るために必要な経営合理化策と解雇や雇止めを可及的に回避するために採るべき措置を具体的に検討した形跡は証拠上認められない

3 現時点(当審の口頭弁論終結日)では、次の更新があるかどうか、又はその更新後の本件雇用契約に基づく賃金額は未確定であるといわざるを得ず、令和2年3月21日以降にも本件雇用契約が当然に存続し、かつそれに基づく賃金額も定められているとは認められない。したがって、Xの賃金請求については、本判決を言い渡す口頭弁論期日が本件雇用契約上の最後の賃金締日である同月20日の前日である同月19日に指定されていることに鑑み、本件雇用契約に基づく最後の賃金支払日である令和2年3月25日を終期として認める限度で理由があり、上記の終期にかかわらず本判決確定の日までの賃金の支払を請求する部分は理由がない

有期雇用契約の場合であっても、正社員同様、整理解雇の場合には、4要素を考慮してその是非を判断する必要があります。

解雇(雇止め)回避努力が不十分な場合には、本件同様の結論となってしまいます。

高年法関連の紛争は、今後ますます増えてくることが予想されます。日頃から顧問弁護士に相談の上、慎重に対応することをお勧めいたします。

継続雇用制度30 懲戒処分歴を理由とした定年後再雇用拒否(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、懲戒処分歴を理由とした定年後再雇用拒否を無効とした原判決が維持された事案を見てみましょう。

学校法人Y学園事件(名古屋高裁令和2年1月23日・労経速2409号26頁)

【事案の概要】

本件は、Y社が設置するY大学の教授であり、平成29年3月31日をもって定年に達したXが、Y社に対し、(1)Y社による再雇用を希望する旨の意思表示を拒否する旨のXの意思表示が正当な理由を欠き無効であって、Y社との間で再雇用契約が成立していると主張して、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、(2)当該雇用契約に基づき、同年4月1日から上記地位確認の判決確定日又は令和2年3月31日のいずれか先に到来する日までの間、毎月末日限り、賃金月額75万5040円の支払を求め、(3)無効な懲戒処分・再雇用の拒否によって精神的苦痛を被ったとして主張して、不法行為に基づき、慰謝料500万円の支払を求める事案である。

原審が、Xの地位確認請求を認めるとともに、賃金支払請求を月額63万0700円の限度で、慰謝料請求を50万円の限度で、それぞれ認めたところ、Y社が控訴し、Xが附帯控訴した。

【裁判所の判断】

控訴・附帯控訴いずれも棄却

【判例のポイント】

1 Y社は、本件処分は純然たる大学内部の問題として一般市民法秩序と直接の関係を有するものではないから、司法審査は及ばず、仮に、本件処分の当否が司法審査の対象になるとしても、懲戒権者であるY社の所定機関の合理的な裁量に委ねられるべき旨主張する。
しかしながら、Xの請求は、本件処分が無効であることを前提に、雇用契約上の地位を有することの確認、同契約に基づく賃金支払及び不法行為に基づく損害賠償を求めるものであるから、民法、労働契約法等で規律される法律関係及び権利に関するものとして一般市民法秩序に直接の関係を有し、Xの単なる内部規律の問題にとどまらないことは明らかである。

2 Y社は、平成29年度の再任用が認められなかったことにより、Y大学名誉教授の称号が授与されることもなくなった旨主張する。しかしながら、本件処分が無効であって、Xについて再任用規程3条3号の欠格事由がなく、定年後も再任用規程に基づき再雇用されたのと同様の雇用関係が存続していることは、上記に判示したとおりであるから、Xに対してY大学名誉教授の称号が授与されるかどうかは、本判決確定後にXにおいて判断されるべきものであり、現時点において、上記称号の可能性の有無を慰謝料額算定の要素として考慮するのは相当でないというべきである。

上記判例のポイント1は大学等の紛争の際に登場する論点ですが、まず認められません。

高年法関連の紛争は、今後ますます増えてくることが予想されます。日頃から顧問弁護士に相談の上、慎重に対応することをお勧めいたします。

継続雇用制度29 再雇用拒否が無効とされた場合のバックペイの判断(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、パワハラ調査中の行為を理由とした専攻主任の譴責処分と再雇用拒否に関する裁判例を見てみましょう。

学校法人南山学園(南山大学)事件(名古屋地裁令和元年7月30日・労判1213号18頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の設置するa大学の教授であり、平成29年3月31日をもって定年に達したXが、Y社に対し、再雇用を希望する旨の意思表示をしていたのにY社がこれを拒否したが、同拒否の意思表示は正当な理由を欠き無効であり、Y社との間で再雇用契約が成立していると主張して、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認及び平成29年4月以降毎月末日限り月額賃金75万5040円の支払を求めるとともに、無効な懲戒処分・再雇用の拒否によって精神的苦痛を被ったとして不法行為に基づき慰謝料500万円の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

Xが、Y社に対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることを確認する。

Y社は、Xに対し、平成29年4月1日から本判決確定の日又は令和2年3月31日までのいずれか早いほうの時期に至るまでの間、毎月末日限り、月額63万0700円を支払え。

Y社は、Xに対し、50万円を支払え。

【判例のポイント】

1 労働者において定年時、定年後も再雇用契約を新たに締結することで雇用が継続されるものと期待することについて合理的な理由があると認められる場合、使用者において再雇用基準を満たしていないものとして再雇用をすることなく定年により労働者の雇用が終了したものとすることは、他にこれをやむを得ないものとみるべき特段の事情がない限り、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められず、この場合、使用者と労働者との間に、定年後も就業規則等に定めのある再雇用規程に基づき再雇用されたのと同様の雇用関係が存続しているものとみるのが相当である(労働契約法19条2号類推適用、最一判平成24年11月29日参照。原告が解雇権濫用法理(労働契約法16条)の類推適用を主張するのも、これと同趣旨と解される。)。
・・・本件処分がされた点を除いては、原告において、定年時、再雇用契約を締結し、満68歳の属する年度末まで雇用が継続すると期待することが合理的であると認められる。
・・・原告の再雇用後の給与面での待遇については、原則として、定年年齢時の俸給63万0700円は少なくとも支給され、雇用期間については、Xが満68歳に達する年の学年度末である令和2年3月31日までになるものと解される。

2 本件再雇用拒否により被る不利益は、主として、本来得られたはずの賃金という財産的利益に関するものであり、未払賃金等の経済的損害のてん補が認められる場合には、これによっても償えない特段の精神的苦痛が生じたといえることが必要と解するのが相当である。
本件処分が懲戒事由該当性すら欠き無効であること、X本人の陳述書及び本人尋問の結果によれば、Xが本件再雇用拒否によって2名の大学院生への指導を道半ばで放棄する形になったことXの研究に少なからず支障が出たことがうかがわれることに照らすと、弁論の全趣旨によれば、Xに対する懲戒処分について、D教授に対する懲戒処分の周知と同様、学生は勿論、一般の教職員にも氏名を公表されることはなかったと認められることを考慮しても、未払賃金の経済的損害のてん補によっても償えない特段の精神的苦痛が生じたと認めるのが相当である。
これまで述べた認定説示その他本件に顕れた一切の事情を総合考慮すれば、Xの精神的苦痛に対する慰謝料額としては50万円が相当である。

定年後の継続雇用の開始時点での争いです。

会社側が敗訴すると、このような結果になってしまう可能性があることを十分理解をして、慎重に判断することが求められます。

高年法関連の紛争は、今後ますます増えてくることが予想されます。日頃から顧問弁護士に相談の上、慎重に対応することをお勧めいたします。

継続雇用制度28 継続雇用は定年前の職務内容と同じ内容でないとダメ?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、定年前の職務内容の権利を有する地位確認等請求に関する裁判例を見てみましょう。

アルパイン事件(東京地裁令和元年5月21日・労判ジャーナル92号50頁)

【事案の概要】

本件は、音響機械器具の製造販売等を目的とするY社を定年退職した元従業員Xが、Y社に対し、XとY社との間では、定年前の雇用契約の終了後においても再雇用されたのと同じ職務を内容とする雇用契約が存続しており、仮にそうでないとしても、Y社がXに対して定年後の再雇用の条件としてXの希望する従前と同じ職務内容と異なる職務内容を提示した行為等は違法であると主張して、雇用契約に基づき、勤務部署をサウンド設計部、職務内容を音響機器の設計及び開発とする労働条件での雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認、主位的に雇用契約に基づき、予備的に不法行為に基づき、平成29年9月16日から同年10月15日までの賃金又は賃金相当損害金22万円等の支払、同年11月25日から本判決確定の日まで毎月25日限り賃金又は賃金相当損害金22万円等の支払、不法行為に基づき、慰謝料300万円等の支払いを求めた事案である。

【裁判所の判断】

地位確認等請求一部棄却、一部却下

損害賠償等請求棄却

【判例のポイント】

1 Y社は、満60歳の誕生日以後初めて迎える3月15日又は9月15日を定年としつつ、定年後の継続雇用希望者をその定年後にA社が引き続き雇用する定年再雇用希望者を導入して、本人の意向を踏まえつつ、再雇用希望者の知識、技能、ノウハウ又は組織のニーズに応じて職務及び労働条件を設定して事前に再雇用希望者に通知し、再雇用後の業務内容、処遇条件等について了承した者を定年後再雇用するものとして、高年齢者雇用安定法9条1項2号所定の継続雇用制度を設けていることが認められるところ、Y社は、Xに、定年のおよそ2か月前、上記定年再雇用制度に基づく定年再雇用の申込みをしたが、Xは、サウンド設計部で就労することに固執して、これを承諾せず拒否したものであり、Xは、Y社が同法の趣旨に沿って設けた定年再雇用制度に基づいて提示した再雇用後の業務内容、処遇条件等に納得せず、サウンド設計部で就労することができないのであれば、Y社がXに対してした定年再雇用の申込みを承諾しないこととし、自らの判断により、これを拒否して、Y社との間で定年後の雇用契約を締結せず、そのまま、平成29年9月15日をもって定年を迎えて退職となったものであるから、同月16日以降、XとY社との間に雇用契約の存在を認める余地はない

2 XとY社との間でXの定年後に雇用契約が成立しなかったのは、Y社がXに対して定年再雇用を拒んだからではなく、XがY社の申込みを承諾せずこれを拒否した結果であること、Y社がXに対して申し込んだ定年再雇用に係る勤務場所及び職務内容が客観的に見て不合理であったとは認められないことに照らせば、XとY社との間で定年再雇用契約が成立しなかったことにつき、Y社に違法な行為があったと認める余地はない。

本件事案は、一般的に起こり得る紛争類型ですので、是非、参考にしてください。

高年法関連の紛争は、今後ますます増えてくることが予想されます。日頃から顧問弁護士に相談の上、慎重に対応することをお勧めいたします。

継続雇用制度27 再雇用基準の不充足を理由とした更新拒絶(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

73日目の栗坊トマト。実が増えてきましたー。まだ緑色ですけど。

今日は、再雇用基準不充足を理由とした更新拒絶の適法性等に関する裁判例を見てみましょう。

エボニック・ジャパン事件(東京地裁平成30年6月12日・労判1205号65頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の元正社員であるXが、平成27年3月31日付けで60歳の定年により退職し、雇用期間を1年間とする有期雇用契約(以下「本件再雇用契約」という。)により再雇用された後、「定年退職後の再雇用制度対象者の基準に関する労使協定」(以下「本件労使協定」という。)所定の再雇用制度の対象となる者の基準(以下「本件再雇用基準」という。)を充足しないことを理由として、平成28年4月1日以降は同契約が更新されず、再雇用されなかったこと(以下「本件雇止め」という。)について、実際には同基準を充足していたことなどから、労働契約法19条2号により、同一の労働条件で同契約が更新されたとみなされること、平成27年分及び平成28年分の業績賞与の査定等に誤りがあることなどを主張して、Y社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、本件雇止め以降の未払基本給(バックペイ)並びに前期業績賞与の未払分の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

雇止めは無効

【判例のポイント】

1 達成度評価における評価値(点数)が3点であるということは、平成25年までは「期待どおりであった」ことを、平成26年以降は「目標は完全に達成された」ことを意味するのであり、単年度だけでみても、達成度評価の評価値(点数)が全従業員の平均点以上であるか、少なくとも3点以上であるということは、特に良いとも悪いともいえないような大半の従業員が達成し得る平凡な成績を広く含む趣旨で使用され得る「普通の水準」という用語の一般的な意味から外れるものである。まして、3年連続で全従業員の平均点以上の成績を収めることのできる従業員は、全従業員の半数を大きく下回る人数にとどまるのであり、「普通の水準」という用語の一般的な意味からは大きく逸脱する
そもそも、達成度評価の評価値(点数)が全従業員の平均点以上であることを要求する基準を設定する場合には、平均(アベレージ)という用語を使用するのが通常であると考えられるところ、本件人事考課基準において、かかる用語は使用されていない。
また、本件労使協定の交渉段階において検討された「グッドパフォーマンス」という基準ですら、達成度評価の評価値(点数)が4点以上であるなどの高い水準を意味していたとは考えがたいところ、これよりも低い「普通の水準(オーディナリーパフォーマンス)」が基準とされたものであるし、本件労使協定が締結された当時、Y社の社内において、達成度評価の評価値(点数)が全従業員の平均点以上ないし3点以上でなければ、本件人事考課基準を充足したことにはならない旨の説明がなされたことを窺わせる形跡もない。

2 以上検討したところに加え、本件労使協定に基づく再雇用制度は、高年法上の高年齢者雇用確保措置の1つである継続雇用制度として設けられたものであることを踏まえると、本件人事考課基準が、過去3年間のいずれの年においても、達成度評価の評価値(点数)が全従業員の平均点以上とか、3点以上といった趣旨であるとは解しがたい。むしろ、「普通の水準」は、大半の従業員が達成し得る平凡な成績を広く含む趣旨と解すべきであるし、「過去3年間の人事考課結果が普通の水準以上であること」というのは、過去3年間について、3年連続で「普通の水準」以上であることを要求するものではなく、過去3年間を通じて評価した場合に「普通の水準」以上であれば足りるという趣旨と理解するのが合理的である。

3 Y社は、①本件雇止めが行政取締法規である高年法に違反するとしても、その違反の効果として私法的効力が生じる余地はないこと、②定年退職者全員が有期雇用となる被告における定年後の再雇用において労働契約法19条を適用することは、法の趣旨に反すること、③特別支給年金受給開始年齢到達後の継続雇用制度と同年齢到達前の継続雇用制度とは別個のものであること、④就業規則16条2項は、平成24年改正法前後の継続雇用制度が別制度であるとの理解を反映したものであることを指摘して、平成28年4月1日以降のXの再雇用について、労働契約法19条の適用は問題とならないと主張する。
しかしながら、上記①については、高年法それ自体が私法的効力を有していないとしても、高年法の趣旨に沿って設けられた就業規則16条2項及び本件労使協定が私法的効力を有することは明らかであり、これらの解釈に当たり高年法の趣旨が参照されることに支障があるとはいえない
また、労働契約法19条は適用対象となる有期雇用契約の類型等を特に限定しておらず、他の同種の従業員全員が有期雇用であるとか、定年後の再雇用であるといった理由により、その適用自体が否定されるものではないから、同②の指摘は失当である。
そして、同③及び④の指摘については、本件再雇用契約が「更新されるものと期待することについて合理的な理由がある」か否かを検討するに当たり考慮すべき事項であるとしても、労働契約法19条の適用自体を否定する根拠とはなり得ないから、労働契約法19条の適用は問題とならないとの上記Y社の主張を採用することはできない。

久しぶりの継続雇用関係の裁判例です。

継続雇用については、同一労働同一賃金関係の訴訟とともに、本件のような入り口でのトラブルもありますので注意しましょう。

高年法関連の紛争は、今後ますます増えてくることが予想されます。日頃から顧問弁護士に相談の上、慎重に対応することをお勧めいたします。

継続雇用制度26 定年後再雇用者の労働条件と同一労働同一賃金問題(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、定年後再雇用者につき、定年前後の基本給等の差異は不合理でないとされた裁判例を見てみましょう。

日本ビューホテル事件(東京地裁平成30年11月21日・労経速2365号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社を定年退職後にY社との間で期間の定めのある労働契約を締結していたXが、当該有期労働契約と定年退職前の期間の定めのない労働契約における賃金額の相違は、期間の定めがあることによる不合理な労働条件の相違であり労働契約法20条に違反するとして、Y社に対し、不法行為による損害賠償請求として定年退職前後の賃金の差額相当額688万0344円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xの定年退職時と嘱託社員及び臨時社員時の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(職務の内容)は大きく異なる上、職務の内容及び配置の変更の範囲にも差異があるから、嘱託社員及び臨時社員の基本給ないし時間給と正社員の年俸の趣旨に照らし、Xの嘱託社員及び臨時社員時の基本給及び時間給が定年退職時の年俸よりも低額であること自体不合理ということはできない
そして、その他の事情についてみるに、定年退職時の年俸額はその職務内容に照らすと激変緩和措置として高額に設定されている上、正社員の賃金制度は長期雇用を前提として年功的性格を含みながら様々な役職に就くことに対応するように設計されたものである一方で、嘱託社員及び臨時社員のそれは長期雇用を前提とせず年功的性格を含まず、原則として役職に就くことも予定されておらず、その賃金制度の前提が全く異なるのであり、このような観点からみても、正社員時の賃金額と嘱託社員及び臨時社員時の賃金額に差異があること自体をもって不合理といえないことは明らかである。
加えて、Xの定年退職時の年俸の月額とこれに対応する嘱託社員及び臨時社員時の賃金とを比較するとその違いは小さいものとはいえないが、それらの賃金額は職務内容が近似する一般職の正社員のそれとは比較においては不合理に低いとまではいえないことも併せ考慮すれば、Y社における嘱託社員及び臨時社員の賃金額の決定過程に労使協議が行われていないとのXの指摘を踏まえてもなお、Xの定年退職時の年俸の月額と嘱託社員及び臨時社員時の基本給及び時間給の月額との相違が不合理であると認めることはできず、これをもって労働契約法20条に違反するということはできない。

まだ当分の間、労働契約法20条に関する裁判が続くと思われます。

最高裁判決が出てもなお、個別の事情を踏まえての判断になるため、紛争自体はなくなりません。

高年法関連の紛争は、今後ますます増えてくることが予想されます。日頃から顧問弁護士に相談の上、慎重に対応することをお勧めいたします。

継続雇用制度25 賞与の算定基礎が決まっている場合の未払賞与請求(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、再雇用制度基準に満たないことを理由とする雇止めの有効性に関する裁判例を見てみましょう。

エボニック・ジャパン事件(東京地裁平成30年6月12日・労判ジャーナル81号50頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の元正社員Xが、平成27年3月31日付けで60歳の定年により退職し、雇用期間を1年間とする有期雇用契約により再雇用された後、定年退職後の再雇用制度対象者の基準に関する労使協定所定の再雇用制度の対象となる者の基準を充足しないことを理由として、平成28年4月1日以降は同契約が更新されず、再雇用されなかったことについて、実際には同基準を充足していたことなどから、労働契約法19条2号により、同一の労働条件で同契約が更新されたとみなされること、平成27年分及び平成28年分の業績賞与の査定等に誤りがあることなどを主張して、Y社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、本件雇止め以降の未払基本給(バックペイ)並びに前期業績賞与の未払分の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

雇止めは無効

未払賃金・賞与等支払請求は一部認容

【判例のポイント】

1 Y社の正社員として勤務した後に平成27年3月31日に定年退職し、本件再雇用契約を締結したXについては、同契約が65歳まで継続すると期待することについて、就業規則16条2項及び本件労使協定の趣旨に基づく合理的な理由があるものと認められ、Y社のリージョナル人事部ゼネラルマネージャーも、本件労使協定1条について、本件再雇用基準に該当する限りにおいては必ず再雇用するという趣旨の規定であると述べており、そして、本件再雇用契約の終期である平成28年3月31日の時点において、Xは、本件人事考課基準を含む本件再雇用基準に含まれる全ての要素を充足していたから、本件雇止めは、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当とは認められないものといえ、労働契約法19条2号により、同一の労働条件で本件再雇用契約が更新されたものと認められるから、Xの地位確認請求は理由がある。

2 平成27年分の業績賞与のうち個人業績分の支給がなされていないところ、その算定方法として、年間給与(基本給合計)の28%を業績賞与の算定基礎とし、その70%を個人業績分の算定基礎として、人事考課結果(評価値)を乗じて算定すべきことに争いがなく、そして、平成27年の年間給与は699万9000円であり、Xの人事考課結果は88.15%であるから、Xの業績賞与額(個人業績分)は、120万9246円と算定されるが、他方、平成28年1月1日から同年12月31日までの366日間のうち、本件再雇用契約に基づくXの在籍期間は、同年1月1日から同年3月31日までの91日間にとどまり、同年4月1日から同年12月31日までの期間については、Xは現実に稼働しておらず、人事考課の結果も存在しない以上、同年4月1日以降については、Xが、Y社に対し、具体的な賞与請求権を有するとはいえないから、平成28年分の業績賞与未払額を算定すると、29万2292円となる。

賞与について認められることはまれですが、本件のように算定方法が予め決まっている場合には、解雇や雇止め事案においても請求が認められることになります。

高年法関連の紛争は、今後ますます増えてくることが予想されます。日頃から顧問弁護士に相談の上、慎重に対応することをお勧めいたします。

継続雇用制度24 嘱託契約更新における労働者の更新申込みの有無(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、嘱託契約更新の申込みが否定され、更新拒絶の無効による地位確認請求が棄却された裁判例を見てみましょう。

共同交通事件(札幌地裁平成30年10月23日・労経速2363号42頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に嘱託社員として雇用されていたXが、期間満了に伴うXの本件嘱託契約更新の申込みに対するY社の更新拒絶は無効であると主張して、Y社に対し、嘱託社員契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、不法行為に基づき、平成28年1月から5月までの未払賃金相当額58万9704円+遅延損害金等の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 本件嘱託契約が終了する時点では、新賃金体系に反対する乗務員を含む全乗務員に対し、新賃金体系が適用されていたことからすると、Y社としては、Xが新賃金体系に反対していたからといって本件嘱託契約の更新を拒絶する必要はなかったこと、現に、Xと同様に初回更新を迎えた嘱託社員のうち、契約更新を希望した嘱託社員20名全員につき嘱託契約が更新されているうえ、E及びBは、平成27年11月頃の時点で、Xから本件嘱託契約更新の申込みがあれば、これに応じることを決断していたこと、上記20名全員が嘱託契約の更新に際し、Y社に履歴書を提出しているところ、Xは履歴書を提出していないこと、Xは、本件嘱託契約の終了後、Y社に対し、自身の就労を要求したり、本件嘱託契約が更新されなかったことにつき抗議したりすることはなく、かえって、健康保険証を返還したり、従業員代表の辞任届を提出したり、離職票の発行を要求したりしていること、本件組合も、Y社に対し、Xの就労を要求したり、本件嘱託契約が更新されなかったことにつき抗議したりする内容の書面を提出するなどの措置を執っていないことからすれば、XのY社に対する本件嘱託契約更新の申込みの事実は認められないというべきである。

判決理由を読む限り、XがY社に対して契約更新の申込みを認定することは困難です。

高年法関連の紛争は、今後ますます増えてくることが予想されます。日頃から顧問弁護士に相談の上、慎重に対応することをお勧めいたします。