解雇235 長年にわたる住宅補助費の不正受給を理由とする懲戒解雇の有効性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、長年にわたる住宅補助費の不正受給を理由とする懲戒解雇に関する裁判例を見てみましょう。

ドコモCS事件(東京地裁平成28年7月8日・労経速2307号3頁)

【事案の概要】

本訴事件は、Y社が、その社員であったXらに対し、Y社から住宅補助費を不正に受給したとして、Y社の就業規則における賃金精算の定め、詐欺による取消し若しくは錯誤無効に基づく不当利得又は不法行為に基づき(選択的併合)、住宅補助費相当額の金銭支払(X1につき平成24年10月分から平成25年3月分までの合計37万6800円、X2につき平成23年2月分から平成24年9月分まで及び平成25年5月分から同年10月分までの合計163万2800円)を求める事案である。

反訴事件は、Xらが、住宅補助費の不正受給を理由とする懲戒解雇は無効であるとして、労働契約及び不法行為に基づき、労働契約に関する地位の確認、未払の毎月の賃金及び特別手当の支払並びに損害賠償を求める事案である。

【裁判所の判断】

X1は、Y社に対し、金37万6800円を支払え。

X2は、Y社に対し、金138万1600円を支払え。

Y社のX2に対するその余の本訴請求及びXらの反訴請求をいずれも棄却する。

【判例のポイント】

1 懲戒解雇は、就業規則に懲戒解雇に関する根拠規定が存しても、当該懲戒解雇に係る労働者の行為の性質及びその他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合には、その権利を濫用したものとして無効となる(労働契約法15条、16条)。
懲戒解雇は最も重い懲戒処分であり、雇用契約上の権利を有する地位の喪失のみならず、労働者の名誉に悪影響を与え、退職金の支給制限等の経済的不利益を伴うことが多いから、懲戒権の行使の中でも特に慎重さが求められる

2 Xらの住宅補助費申請は少なくとも萩中建物に係るものは住宅補助費の支給要件を満たさない上、Xらは少なくとも未必の故意をもって、共謀の上、その居住実態を偽って住宅補助費を不正に受給している。
その不正受給は、平成18年から平成25年まで7年以上、五百数十万円に及び、過誤取扱通達で返納の対象となり、かつ、まだ返納されていないものだけでも金175万8400円となる
Xらの萩中建物に係る住宅補助費の申請は申請書、賃貸借契約書等を精査しても予想困難な居住関係及び権利関係を秘したものであるから、Y社が長年これに気付かず、住宅補助費を支給していたことをXらの有利に斟酌すべきではない
Xらが利得する一方、Y社が受けた財産的被害は多額であり、両者間の信頼関係を著しく破壊するものといわなければならない。

3 労働者は自身の労働契約上の義務に違反する行為に関し、使用者が調査を行おうとするときは、その非違行為の軽重、内容、調査の必要性、その方法、態様等に照らして、その調査が社会通念上相当な範囲にとどまり、供述の強要その他の労働者の人格・自由に対する過度の支配・拘束にわたるものではない限り、労働契約上の義務として、その調査に応じ、協力する義務があると解される
その調査の過程において、芳しくない態度、ことに虚偽の供述など、積極的に調査を妨げる行為があった場合は、信頼関係をますます破壊し、反省、改善更生といった情状面の評価において、不利益に重視されることもやむを得ないというべきである
X1は、Y社の事情聴取において、事実関係に関する虚偽の供述を複数回にわたって繰り返しており、X2もこれに同調する態度を示し、自分たちの独自の見解に固執して、不法行為に基づく損害賠償及び不当利得の返還請求権からは大幅に減額されている過誤取扱通達の範囲内の返還にも応じていない。Y社は、Xらに対し、慎重に調査を進め、事情聴取も少なからず実施し、被告らに弁明の機会も十分に与えて、慎重な検討を経て本件解雇を決定したと認められる。

4 ・・・懲戒解雇は懲戒権の行使の中でも特に慎重さが求められることを考慮しても、Y社がXらに対し本件解雇をもって臨んだことが客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合に当たるとはいうことはできない。

上記判例のポイント3は頭に入れておきましょう。

調査過程における協力の有無、程度についても解雇の有効性を基礎付ける事情となるということです。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介684 33歳で資産3億つくった僕が43歳であえて貯金ゼロにした理由(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
33歳で資産3億つくった僕が43歳であえて貯金ゼロにした理由 使うほど集まってくるお金の法則

著者の本で「33歳で資産3億円をつくった私の方法」というものがありますが、今回の本は「お金をどんどん使いましょう。」という内容です。

投資対象は人それぞれだと思いますが、私は、自分に投資するのが最もリターンが大きいと思っています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

『見栄はコストなり』と言われるとおり、他人によく思われようとすると、際限なくお金が出ていくことになります。見栄にお金を払う人は、経験よりも『モノ』にお金を使う傾向があります。経験は他人には見えませんが、モノは他人から見えるからです。・・・住んでいる家、持っているモノ、子どもの服や学校に至るまで、本当に自分が価値を認めたものなのか、あるいは他人の目を意識したものかをはっきり区別し、自分の価値判断基準を尊重する心の強さを持つことは、精神的自由への第一歩だと僕は考えています。」(164~165頁)

時計やらバックやら車やら・・・見栄を張ろうと思ったお金がいくらあっても足りません。

こんなもんで見栄を張ったって仕方ありません。

他人がどう思うかばかりを気にして生きていくなんて窮屈でしかたない。

やりたいようにやればいいし、生きたいように生きればいいのですよ。

セクハラ・パワハラ29 男子学生による男性講師に対するセクハラ行為と慰謝料額(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、男子学生による男性講師へのセクハラ行為の存否と職場環境配慮義務等に関する裁判例を見てみましょう。

学校法人M学園ほか(大学講師)事件(千葉地裁松戸支部平成28年11月29日・労判1174号79頁)

【事案の概要】

Xは、Y社に雇用され、Y社が経営するZ大学で英語の非常勤講師として稼働していたものであるが、本件のうち、Aに対する請求は、Xが、自身のクラスの生徒であるAから、授業中に臀部を触られるなどしたため多大な精神的苦痛を被ったとして、不法行為に基づき慰謝料100万円及び弁護士費用10万円+遅延損害金の支払を求める事案である。

他方、Y社に対する請求は、Y社はXとAとの言い分が対立している状況の下で、X代理人立会いの下でX本人からの事情聴取をせず、不十分な調査をするにとどめた上、XとAとの関係の改善に向けた方策を何も講じなかったことから、Xが多大な精神的苦痛を被ったとして、労働契約における債務不履行に基づき慰謝料150万円及び弁護士費用15万円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

Aは、Xに対し、11万円+遅延損害金を支払え。
Y社は、Xに対し、88万円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 XがAの行為によって受けた精神的衝撃は、決して小さなものではないと考えられるが、Aはあくまで「ノリ」で行為に及んだもので、A自身の性欲を刺激興奮させ、又は満足させるという性的意図の下に及んだものとは認め難く(最判昭和45年1月29日参照。したがって、Aの行為は、刑法176条の強制わいせつ罪に該当するものではない。)、この意味において、Aの行為の違法性は、さほど強いものではないというべきである。
加えて、「ノリ」で行為に及んだAからすれば、Xが提訴するほどまでに精神的苦痛を被るとは予想していなかったことがうかがえる上、Aの年齢等を考慮するとAがそのような認識を持ったとしてもそれはやむを得ない側面があることも否定できず(なお、これは、Aの行為が法的に許されるということを意味するものではない。)、そういった事情からすれば、AがXに支払うべき慰謝料の額については、相当因果関係の点からそれほど高い金額を認定することは困難であって、結論としては、10万円が相当である。

2 Y社が、A(2回)及びX(1回)に対する事情聴取並びに出席していた学生4名からの電話による事情聴取により、AがXの臀部に触った可能性は否定できないとの印象を有していたところ、その後Xから再度の事情聴取をせずに、ハラスメント調査委員会が前記のようなEらの印象を覆してAによるハラスメント行為はなかったという結論を下したことについては、不十分な調査によって被用者であるXに不利な結論を下したという外はなく、Y社の措置は労働契約上の義務に違反するものと認められる。
また、Y社の措置は、結局のところXの思いを封じ込める形で事態の解決を図ったものといわざるを得ず、XとAとの関係を「改善させるため」の具体的方策を講じたとは認め難いのであり、加えて、Y社がAに対して次回のXの授業への出席を見合わせるよう指導し、次いでAの英語科目のクラスを変更する措置をとったことが事実であるとしても、これらの措置はXとの関係を改善させるものではなく、単に両者間のトラブル再発を防止するために意味があるにとどまるのであって、この点においても、Y社には労働契約上の義務違反が存するといわざるを得ない。

3 Xは、Y社がX代理人不在のままX本人から事情聴取を行ったことを問題視するところ、弁護士から受任通知を受けた場合には、委任者本人と直接接触することは避けるべきであり、そのことを知らない場合であれば、顧問弁護士等に相談するなどして弁護士が受任した場合にとるべき対応について指導を仰ぐべきであったといえる。
この意味において、Y社の対応は問題があったといわざるを得ないが、弁護士からの受任通知を受けた場合に委任者である本人と接触すべきでないということは、法曹関係者間では格別、世間一般においてはかような認識が広く行き渡っているとはいい難いところがあることに加えて、X本人はあくまで被害者として事情聴取を受けたものであって、弁護士立会いの必要性は加害者に対する事情聴取の場合よりも小さいと考えざるを得ない。
そうすると、この点をもって慰謝料増額事由と評価するのは、相当とはいえない。
その点を措くとしても、Y社はAの履修継続及び事態の早期決着を目指すことを優先して、X側の言い分を尊重しない行動に出たものという外はなく、Y社のかような対応は、非常勤講師である原告を精神的に相当傷つけたものと認められる。
その上で、Y社がXに支払うべき損害賠償の額については、Xが既に再就職を果たしていることを含め、諸々の事情を総合すると、80万円が相当である。

いつもながら、本件のような類型の裁判で裁判所が認める慰謝料の金額はせいぜいこの程度です。

場合によっては費用倒れとなってしまいます・・・。

とにかく慰謝料の金額が低いのですよ・・・。

ハラスメントについては、注意喚起のために定期的に研修会を行うことが有効です。顧問弁護士に社内研修会を実施してもらいましょう。

本の紹介683 世界一速く結果を出す人は、なぜ、メールを使わないのか(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も一週間お疲れ様でした。

今日は本の紹介です。
世界一速く結果を出す人は、なぜ、メールを使わないのか グーグルの個人・チームで成果を上げる方法

帯に書かれていますが、近い将来必ず訪れるAI時代を乗り切るためには何をすべきかが書かれています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

こんな時代には、『自分の仕事がなくなる』ことを恐れるのではなく、むしろ『どうしたら自分の仕事をITに置き換えられるか』『どうすればもっと自動化・省力化できるか』を考えてほしいのです。自動車の『自動運転』が典型的ですが、人がやっていた仕事を機械で置き換えた人が勝つ状況になっています。・・・同じことはみなさん一人ひとりの仕事でも実現できます。積極的に自分の仕事をITに置き換えていけば、そこであなたは仕事を奪われる側ではなく、その業界の次の形を創造する側に立てるかもしれません。」(9~10頁)

 

今後、AIによって今人間がやっている仕事はなくなっていきます。

自分が今やっている仕事が機械に代替可能かを考えると、たいていのものは可能なのでしょうね。

そう遠くない将来、自分がやってきた仕事がなくなることが予想される今、みなさんはどんな準備をしますか?

安心してください。9割の人は何の準備もしませんから。

多くの人は、なるようにしかならないと思っていますから。

今のうちから準備をした者勝ちです。

賃金134 固定残業制度に関する最高裁の考え方(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、賃金規定の有効性と未払賃金等請求に関する最高裁判決を見てみましょう。

国際自動車事件(最高裁平成29年2月28日・労判1152号5頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に雇用され、タクシー乗務員として勤務していたXらが、歩合給の計算に当たり残業手当等に相当する金額を控除する旨を定めるY社の賃金規則上の定めが無効であり、Y社は、控除された残業手当等に相当する金額の賃金の支払義務を負うと主張して,Y社に対し,未払賃金等の支払を求める事案である。

なお、原審は、本件規定のうち、歩合給の計算に当たり対象額Aから割増金に相当する額を控除する部分は無効であり、対象額Aから割増金に相当する額を控除することなく歩合給を計算すべきであるとした上で、Xらの未払賃金の請求を一部認容すべきものとした。

【裁判所の判断】

原判決中Y社敗訴部分を破棄する。

前項の部分につき、本件を東京高等裁判所に差し戻す。

【判例のポイント】

1 労働基準法37条は、時間外、休日及び深夜の割増賃金の支払義務を定めているところ、割増賃金の算定方法は、同条並びに政令及び厚生労働省令に具体的に定められている。もっとも、同条は、労働基準法37条等に定められた方法により算定された額を下回らない額の割増賃金を支払うことを義務付けるにとどまり、使用者に対し、労働契約における割増賃金の定めを労働基準法37条等に定められた算定方法と同一のものとし、これに基づいて割増賃金を支払うことを義務付けるものとは解されない。
そして、使用者が、労働者に対し、時間外労働等の対価として労働基準法37条の定める割増賃金を支払ったとすることができるか否かを判断するには、労働契約における賃金の定めにつき、それが通常の労働時間の賃金に当たる部分と同条の定める割増賃金に当たる部分とに判別することができるか否かを検討した上で、そのような判別をすることができる場合に、割増賃金として支払われた金額が、通常の労働時間の賃金に相当する部分の金額を基礎として、労働基準法37条等に定められた方法により算定した割増賃金の額を下回らないか否かを検討すべきであり(最高裁平成6年6月13日第二小法廷判決最高裁24年3月8日第一小法廷判決参照)、上記割増賃金として支払われた金額が労働基準法37条等に定められた方法により算定した割増賃金の額を下回るときは、使用者がその差額を労働者に支払う義務を負うというべきである。

2 他方において、労働基準法37条は、労働契約における通常の労働時間の賃金をどのように定めるかについて特に規定をしていないことに鑑みると、労働契約において売上高等の一定割合に相当する金額から同条に定める割増賃金に相当する額を控除したものを通常の労働時間の賃金とする旨が定められていた場合に、当該定めに基づく割増賃金の支払が同条の定める割増賃金の支払といえるか否かは問題となり得るものの、当該定めが当然に同条の趣旨に反するものとして公序良俗に反し、無効であると解することはできないというべきである。

応用可能性が高い判断です。

もっとも、この最高裁判決に基づいて従来の賃金体系を変更する場合には、多くの場合、労働条件の不利益変更にあたりますのでそう簡単にはできません。 

残業代請求訴訟は今後も増加しておくことは明白です。素人判断でいろんな制度を運用しますと、後でえらいことになります。必ず顧問弁護士に相談をしながら対応しましょう。

本の紹介682 好調を続ける企業の経営者はいま、何を考えているのか?(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
好調を続ける企業の経営者は いま、何を考えているのか?

タイトル通りの内容です。

好調を続ける8社の経営者にインタビューをしています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

2025年にはすべての企業がソフトウェアの会社になると思っています。・・・私は、第4次産業革命以降は、あらゆる企業がそのような形態になると思っています。・・・我々は、ソフトウェアの会社が農業や医療サービスを提供していく、そんな会社になりたいんです。あらゆる分野でソフトウェアの会社・・・正確にいうと、ソフトウェア的な考え方をする会社が、第4次産業革命以降の企業の姿だと思います。」(215~216頁)

2025年まであと8年ですね。

8年後にこのブログの記事を読み返したときに、どう感じるのでしょうかね。

私たち弁護士業界のあり方も大きく形を変えているのでしょうね。

8年後、AI弁護士がどこまで勢力を拡大しているのか楽しみです。

解雇234 解雇から2年以上経過後に申し立てた仮処分(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、元マネージャーの能力不足を理由とする解雇に関する裁判例を見てみましょう。

コンチネンタル・オートモーティブ(解雇・仮処分)事件(東京高裁平成28年7月7日・労判1151号60頁)

【事案の概要】

本件は、Xが、Y社に対し、Y社がXに対して行った解雇が無効であるとして、労働契約に基づき、労働契約上の権利を有する地位にあることを仮に定めるとともに、1か月当たり73万2452円の月例給与の支払を求める事案である。

原審はXの申立てを却下し、Xが即時抗告した。

【裁判所の判断】

抗告棄却

【判例のポイント】

1 Xは、不動産事業収入について、所得金額は36万6335円であって、家計に入ってくる収入は1か月3万0530円であると主張するが、不動産事業に係る経費には減価償却費などがあり、一概に所得金額が手取りの収入金額であるとはいえないところ、Xはその内訳について明らかにしていないことに照らし、Xの主張は採用しない
また、平成28年3月時点で、X世帯の預貯金額は269万円程度となっていると主張するが、本件解雇からは既に2年以上が経過しているのであって、Xとしては、これまでの間、本案訴訟を提起することは十分可能な状態であったことに照らすと、Xの主張する事情を考慮しても、仮の地位を定める仮処分命令における保全の必要性の有無についての前記判断を左右するものではない

解雇されてから2年以上経過しても地位確認の本訴を提起していないことを保全の必要性を否定する理由として挙げています。

解雇されてすぐに本訴を提起していたいたら、かなり前に判決なり和解で終結していたでしょ、という感じです。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介681 財布はいますぐ捨てなさい(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。
財布はいますぐ捨てなさい

「えー、なんで財布をいますぐ捨てないといけないのー?」系のタイトルですね。

限りある時間をいかに有効かつ効率よく使うか、ということにフォーカスする本です。

「人生に無駄なことはない」の真逆で、「人生は無駄なことだらけ」だと思っている私としては、著者の考え方に賛成です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

結局、家事代行をはじめ、この本に書いてあるようなことを実践していけるのは、自分がどうなりたいかが明確な人だけです。・・・『いずれこうなったらいいな』という程度では、人は変わりません。また、目標のためにお金を惜しまずに使わないと、変わらないんです。本当に時間が大切なんです。同じ長さの時間なら、稼ぐことや好きなことに没頭したほうが、確実に収入は上がる。」(196~197頁)

「時間をお金で買う」という感覚ですよね。

お金はなくなればまた稼げばいいですが、時間はなくなるともう戻ってきません。

無駄なことにできるだけ時間をかけたくない、成功するために必要なことにだけ極力時間を使いたいと考える人に共通する考え方ではないでしょうか。

家事代行はその一例ですね。

何をやるかではなく、何をやらないかの方がよほど大切だということです。

賃金133 累積無事故表彰制度に基づく副賞50万円の支払請求の可否(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も1週間お疲れ様でした。

今日は、累積無事故表彰制度に基づく副賞等支払請求に関する裁判例を見てみましょう。

川崎陸送事件(東京地裁平成28年12月26日・労判ジャーナル61号9頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員であるXが、Y社に対し、Y社の賞罰規程における累積無事故表彰制度に基づき、副賞50万円等の支払を求め、Y社の従業員であるBが、Y社に対し、上記制度に基づき、副賞35万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求認容

【判例のポイント】

1 本件賞罰規程には、累積無事故表彰者の表彰について、表彰状と副賞をもって行うことが規定されるとともに、累積無事故期間の計算方法、累積無事故記録更新中の者が事故を発生させた場合の年数読替えによる救済措置、副賞の金額、表彰の決定手続、表彰の時期(副賞の支払時期)などについて、詳細かつ明確な規定がされており、副賞の支給条件が明確であり、具体的な支給額の確定も可能であるから、表彰の決定手続において業務部長ないし役員会における審議を要するとしても、労働の対償たる賃金又はこれに準ずる労働条件に当たるものと解されること等から、本件表彰制度の廃止は、就業規則の変更による労働条件の不利益変更に当たり、労働契約法9条、10条が適用される。

2 本件表彰制度は、就業規則に定められた労働条件に当たるから、取締役会で事実上廃止することはできず、また、東京都環境局が実施する「貨物輸送評価制度」においてY社が失格となったのだとしても、これが専らY社の従業員の責めに帰すべき事由によるものか否かは判然としない上、これと本件表彰制度を廃止することに特段の関連性は認め難く、これをもって労働条件の変更の必要性を認めることは困難であり、さらに、Y社は本件表彰制度の廃止を一方的に決定していること、労働者の受ける不利益の程度も小さくないことなどの諸事情に照らして、本件表彰制度の廃止に係る本件賞罰規程の変更が合理的なものであると認めることはできないから、従業員らに対しては、本件表彰制度の廃止に係る本件賞罰規程の変更の効力が及ばず、従前の規程が適用されるから、Y社は、従業員らに対し、本件表彰制度に基づく副賞の支払義務を負う。

上記判例のポイント1のように具体的に支給条件が規定されているものについては、「裁量」ということで逃げることができません。

賞与についても規定のしかた如何によっては同様の争いが生じますので注意しましょう。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介680 伝えることから始めよう(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
伝えることから始めよう

ジャパネットたかたの髙田前社長の本です。

日本に著者のことを知らない人はいるのでしょうか・・・くらい有名ですよね。

この本では、これまでのお仕事において、「伝える」ためにどのような工夫をしてきたのかがたくさんの例に基づいて説明されています。

業界を問わずすべての職業に役立つ本です。

おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

・・・同じことばかりやっていては飽きられてしまうとわかっていても、一度上手くいくと、どうしてもそこから抜け出せないのが人の習性です。成功体験に魔物が潜んでいることがあるんですよ。それには特に気をつけなければいけません。私は意識的に、そうならないように気を付けてきました。・・・同じことを繰り返していてはいけない、ということを自覚することは大切ですよ。日々、反省して、次に何をすべきかを考えることが、いかに大切なことか、それに気づくことができた人が、長く活躍できると思うのです。」(192~193頁)

ユニクロの柳井社長も「成功は一日で捨て去れ」と言っています。

うまくいくとその方法ばかりを続けてしまう。

でも、それだけいつか必ず飽きられてしまうのです。

だからいつも「同じことを繰り返してはいけない」と自覚することが求められるわけですね。

うまくいっているうちは、周りの人は何も言ってくれませんので。

自分で自覚しておくことが大切なのはそういう理由からです。