賃金133 累積無事故表彰制度に基づく副賞50万円の支払請求の可否(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も1週間お疲れ様でした。

今日は、累積無事故表彰制度に基づく副賞等支払請求に関する裁判例を見てみましょう。

川崎陸送事件(東京地裁平成28年12月26日・労判ジャーナル61号9頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員であるXが、Y社に対し、Y社の賞罰規程における累積無事故表彰制度に基づき、副賞50万円等の支払を求め、Y社の従業員であるBが、Y社に対し、上記制度に基づき、副賞35万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求認容

【判例のポイント】

1 本件賞罰規程には、累積無事故表彰者の表彰について、表彰状と副賞をもって行うことが規定されるとともに、累積無事故期間の計算方法、累積無事故記録更新中の者が事故を発生させた場合の年数読替えによる救済措置、副賞の金額、表彰の決定手続、表彰の時期(副賞の支払時期)などについて、詳細かつ明確な規定がされており、副賞の支給条件が明確であり、具体的な支給額の確定も可能であるから、表彰の決定手続において業務部長ないし役員会における審議を要するとしても、労働の対償たる賃金又はこれに準ずる労働条件に当たるものと解されること等から、本件表彰制度の廃止は、就業規則の変更による労働条件の不利益変更に当たり、労働契約法9条、10条が適用される。

2 本件表彰制度は、就業規則に定められた労働条件に当たるから、取締役会で事実上廃止することはできず、また、東京都環境局が実施する「貨物輸送評価制度」においてY社が失格となったのだとしても、これが専らY社の従業員の責めに帰すべき事由によるものか否かは判然としない上、これと本件表彰制度を廃止することに特段の関連性は認め難く、これをもって労働条件の変更の必要性を認めることは困難であり、さらに、Y社は本件表彰制度の廃止を一方的に決定していること、労働者の受ける不利益の程度も小さくないことなどの諸事情に照らして、本件表彰制度の廃止に係る本件賞罰規程の変更が合理的なものであると認めることはできないから、従業員らに対しては、本件表彰制度の廃止に係る本件賞罰規程の変更の効力が及ばず、従前の規程が適用されるから、Y社は、従業員らに対し、本件表彰制度に基づく副賞の支払義務を負う。

上記判例のポイント1のように具体的に支給条件が規定されているものについては、「裁量」ということで逃げることができません。

賞与についても規定のしかた如何によっては同様の争いが生じますので注意しましょう。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。