本の紹介592 達人のサイエンス(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
達人のサイエンス―真の自己成長のために

ホメオスタシス(恒常性)から習慣化のヒントを与えてくれる良書です。

この1点だけで十分、この本を読む価値があると思います。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

『警告!警告!呼吸、心拍、代謝に顕著な変化あり!ただちにこの行為を停止せよ!』
ホメオスタシスは、あなたにとってその変化がいいのか悪いのかを区別できない。これは忘れないでおこう。ホメオスタシスはどんな変化にも抵抗するのだ。」(119頁)

以前にもブログでこの「ホメオスタシス」について紹介しました。

習慣をつくること、継続することを成功させるために知っておくと便利な言葉です。

意思が弱いのではなく、やり方が間違っているのだということを意識しましょう。

その上で、少しずつ変えていく。

最初にはりきりすぎないということでしょうか。

習慣の話が出ると、いつも同じようなことを書いていますが、私はこの方法で習慣化しています。

継続雇用制度23(甲学園事件)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、定年後の専任教員の再雇用拒否が権利の濫用になるとされた裁判例を見てみましょう。

甲学園事件(東京地裁平成28年5月10日・労経速2282号15頁)

【事案の概要】

本件は、平成19年4月1日にY社の設置する甲学園大学の専任教員として雇用されていたところ、平成26年度中に満65歳となり、本件大学の就業規則所定の定年を迎えたXが、定年を満70歳とする合意が存在する、定年を満70歳とする労使慣行が存在する、あるいがY社がXとの間で再雇用契約を締結しないことは権限濫用に当たると主張して、Y社に対し、特別専任教員としての再雇用契約に基づく法的地位の確認を求めるとともに、再雇用契約に基づく賃金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

1 XがY社との間において、XがY社の設置する甲学園大学に定年に達する専任教員として引き続き勤務する地位を有することを確認する。

2 Y社は、Xに対し、平成27年4月1日から本判決の確定まで、月額45万8100円+遅延損害金を支払え

【判例のポイント】

1 本件大学総合政策学部においては、労使慣行として法的効力が認められるまでには至らないとはいえ70歳まで雇用が継続されるという一定の方向性をもった慣例が存在し、70歳まで雇用が継続されるかという点では死亡退職と自己都合退職という例外があるものの、65歳の定年で雇用が終了とならずに、希望した者の雇用は継続されるという点では例外はなかったところ、これらの雇用継続に際して実質的な協議や審査が行われていたとは認められず、この点では、本件大学総合政策学部の教員らが再雇用による雇用継続に期待することには合理性が認められる

2 従前の定年後再雇用の在り方等に照らし、Xが再雇用による雇用継続に期待することには合理性が認められる一方で、平成26年度に満65歳の定年を迎えるXについて定年後再雇用の可否を検討するに当たって、理事会で審議された内容は、従前の定年後再雇用の在り方とは全く異なっており、しかも、客観性ある基準に基づくものでも、具体的な事情を十分に斟酌したものでもなく、合理性、社会的相当性が認められないから、理事会がXについて再雇用を否定し、Y車においてXとの間で再雇用契約を締結しないことは権限濫用に当たり、違法無効というべきであって、解雇であれば解雇権濫用に該当し解雇無効とされる事実関係の下で再雇用契約を締結しなかったときに相当するものとして、XとY社との間の法律関係は、平成27年4月1日付けで再雇用契約が締結されたのと同様になるものと解するのが妥当である。

労使慣行の存在自体は認められなかったものの、「慣例」が存在したことを前提に、雇用継続の期待には合理性があると判断されました。

労使慣行は要件が厳しく、あまり認められることはありませんが、労使慣行とまではいえなくても、期待の合理性を基礎付ける「慣例」を主張立証することは意味のあるわけです。

高年法関連の紛争は、今後ますます増えてくることが予想されます。日頃から顧問弁護士に相談の上、慎重に対応することをお勧めいたします。

本の紹介591 セクシープロジェクトで差をつけろ!(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は本の紹介です。
トム・ピーターズのサラリーマン大逆襲作戦〈2〉セクシープロジェクトで差をつけろ! (トム・ピーターズのサラリーマン大逆襲作戦 (2))

「エクセレント・カンパニー」の著者トム・ピーターズさんの本です。

著者の本は、仕事や人生全般に影響を与えてくれるものです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

マッキンゼーのとき同僚だったビル・マタソーニは、誰もやりたがらない書庫の整理という雑用を突破口にして、その会社の知識蓄積・共有システムを全面的に作り替えた。つまり、つまらない仕事から、顧客企業の新たな『コア・コンピタンス』を想像したのである。マタソーニは、つまらない仕事を与えられても決してくさらず、新しいことを学びながら、どんな仕事でも、自分のキャリアの輝かしい一頁にしたいという強い意欲があった。『権限のない人』は、判で押したように、自分にそんな『自由』は与えられていないと嘆く。これは、自分は『能なし』だと言っているに等しい。キツい言い方だが、本当だからしようがない。『自由』はいつもそこにある。ほとんどの人がそれを使おうとしないだけだ。成功する人は『自由』があることを知っている。」(68~69頁)

自由や権限が与えられていないと嘆く暇があったら、工夫をしようという話です。

多くの場合、「できない」のではなく、「やりたくない」のです。

与えられた作業をこなすことが仕事だと考える人がいる反面、目の前の仕事を通して、自分の価値を高めようと工夫をする人がいるのです。

この差は、とてつもなく大きいです。

同じ仕事でも、解釈によって、その結果は天と地ほどの差が生まれます。

それが5年、10年続くと思うと・・・。 もはや逆転不可能な程の差ができているでしょう。

仕事を通じて、自分のブランド力を高めようと考えている人は、例外なく仕事が大好きです。

同じ仕事でも、つまらないと感じる人と楽しいと感じる人がいます。

解釈が違うのです。

仕事それ自体に楽しいもつまらないもありません。

あるのは、その仕事に意味を与える「人の解釈」です。

さて、あなたはどちらのタイプですか?

有期労働契約68(阪急バス(正社員登用試験)事件)

おはようございます。

今日は、正社員登用試験の受験機会を与えなかったことが債務不履行等にあたらないとされた裁判例を見てみましょう。

阪急バス(正社員登用試験)事件(大阪地裁平成28年2月25日・労経速2282号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社がXら(Y社の契約社員であった者)に対して、平成25年1月中旬に実施された正社員登用試験を受験する機会を与えなかったことが、Y社の債務不履行又は不法行為に該当するとして、XらがY社に対し、慰謝料並びに弁護士費用+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Y社における正社員登用試験制度導入の経緯、実施回数等に鑑みれば、同試験制度は、主として正社員の欠員補充を目的とするものであると認められる。このような同制度の趣旨目的に照らすと、Y社は、同試験の受験資格等について、正社員の欠員状況や必要人数、更にはY社の経営状況や事業計画等を総合的に勘案した上で決定し、実施していると認められる。

2 本件条文には、契約社員としての雇用期間が満4年に達した者に対して「直近の」正社員登用試験の受験資格を与える旨の文言がないこと、上記認定した正社員登用試験制度の趣旨及び受験資格者の推移、茨木分会会長が作成した「正社員登用試験について」と題する書面にも本件条文と同一の内容しか記載されていないこと、そもそも上記認定説示のとおり、正社員登用試験の導入された趣旨目的が正社員の補充という点にあったことから、同試験を受験するために必要となる勤続年数は、正社員の定員の充足状況に応じて決定されるため、勤続年数4年になれば必ず正社員登用試験を受験できるとは限らなかったこと、これまでのY社における正社員登用試験の受験資格や1年間の受験回数の推移等の事情を総合的に勘案すると、Xらが主張するような点がXらとY社との間の契約社員に係る雇用契約の内容となっていたといえないと認めるのが相当である。

3 Xらは、契約社員としての雇入れの際、Y社はXらに対し、「正社員登用制度はあるが、勤務成績がよくても、会社の都合次第で、5年経っても、10年経っても正社員になれない場合もある」というように説明すべきであったなどと主張するが、上記認定した正社員登用試験導入の経緯、同試験の実施状況等に鑑みれば、Y社において、Xらが主張するような法的義務(説明義務)があるとは解し難く、同主張はそれ自体失当というほかない。

制度目的やこれまでの運用からすると、正社員登用試験の受験資格については、会社に裁量が与えられており、契約社員全員に当然に認められているものではないという認定です。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介590 立ち読みしなさい!(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
立ち読みしなさい!~美しいほどシンプルな成功術(ありがとう出版発行)

普段、苫米地さんの本はあまり読まないのですが、今回は、アマゾンで目に入り、読んでみました。

アマゾンなので、立ち読みできないので、買って読みました。

ホメオスタシス」と「エフィカシー」という重要な2つのキーワードを理解することが大切です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

ホメオスタシスに気付かれないように、まずは小さなことから変えてください。小さな目標であれば、現状維持の範囲内なので、ホメオスタシスに気付かれることはありません。コンフォートゾーンはあなたの部屋のような存在だと話しました。そして、その部屋の管理人がホメオスタシスです。あなたが管理人の許可なく部屋の模様替えを行うと、管理人であるホメオスタシスに気付かれ元の場所に戻らされてしまいます。ですから、毎日少しずつ模様を変えていくことが大切です。」(181頁)

医学的にこの説明が正しいのかどうかわかりませんが、そんなことはこの際どうでもいい話です。

大切なのは、この説明に納得できて、今いるコンフォートゾーンを抜けだそうと決意することです。

今の自分を少しでも変えたいと願うのであれば、このホメオスタシスに気づかれないように、少しずつ変えていくことです。

1日なら誰でもできることを1か月続ける。

1か月続けられるのであれば、1年続けられますから。

だいたい3日坊主で終わってしまうという人は意志が弱いのではありません。

やり方が間違っているだけなのです(と思うことが大切です)。

能力や性格の問題ではなく、やり方の問題だと強く思うことがとても大切です。

コンフォートゾーンから抜け出し、自分の価値を高めていくことを習慣にできたらいいですね。

不当労働行為152(社会福祉法人大磯恒道会事件)

おはようございます。

今日は、組合員に対し、センター長および施設長の役職を解任し、自宅待機命令をしたこと等が不当労働行為にあたるとした命令を見てみましょう。

社会福祉法人大磯恒道会事件(中労委平成28年4月6日・労判1136号169頁)

【事案の概要】

本件は、組合員に対し、センター長および施設長の役職を解任し、自宅待機命令をしたこと及び組合いに対し法人の分室勤務を命じたことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 Y社は、自らの定款で定めた所要の手続を経ることなく本件解任等を実施しており、また、本件解任等を行うに際し、Aらの管理職としての適性を合理的に判断したとも認められない。

2 Y社は、ユニオンに加入したAらが、懲戒処分を議題とする団体交渉の開催を繰り返し要求し、組合活動を通じてY社に対抗していく姿勢をあらわにしたことから、同人らが職場で組合活動を展開すれば、同人らに同調する職員がユニオンに加入するなどにより理事会等法人上層部に対抗する勢力の拡大を招くおそれがあるとみて、Aらの組合活動への危機感を募らせ、同人らの職員への影響力を削ぐとともに職場から排除することを企図して、同人らの役職を解いて自宅待機を命じたものとみるのが相当である。
・・・したがって、本件解任等は労組法7条1号の不当労働行為に当たる。

3 本件分室勤務は、Aらに対し、常時、法人の介護現場や職員から隔離された個室内で勤務することを強いるものであるから、Aらに疎外感を与えるものであり、さらに、分室には出入口に向けてカメラが設置され、かつ、同人らにその設置目的や取扱方法も知らされていなかったことを考慮すれば、そのような環境下で勤務を強いることは、Y社により常に行動を監視されているとの念を抱かせ、心理的な圧迫を与えるに足るものというべきである。よって、本件分室勤務は、Aらに対し、精神上の不利益を与える取扱いである。
以上のとおり、本件分室勤務は、・・・労組法7条1号の不当労働行為に当たる。

所定の手続を経ずに解任等の不利益取扱いをすると、やはり組合敵視のように見えてしまいますね。

また、仮に手続を経たとしても、合理的な理由なく解任等を行えば、同様の結論になってしまいます。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介589 手に入れたのはカッコいい体と●●だった(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。
手に入れたのはカッコいい体と●●だった

著者は「読む筋トレ」、「へやトレ」の方です。

タイトルの●●に入る言葉は、人それぞれですが、マイナスの言葉が入らないことだけは確かです。

体を鍛えてマイナスなことなど、思いつきません。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

毎朝5分の筋トレタイムを見つけた時『勝った』と思った。」(64頁)

成功は約束されていない。しかし、成長は約束されている。」(135頁)

私は、週末にジムに通うほか、毎朝、事務所(ジム所?)で15分程度、筋トレをしています。

有酸素運動と異なり、1時間も2時間も筋トレをする必要がないので、特に時間がない人にはおすすめのスポーツです。

「成功は約束されていない。しかし、成長は約束されている。」

いい言葉ですね。

確かにその通りです。

成功よりも成長を目指す。

成長のその先に成功が待っていると思い続けることが大切ですね。

結局、日々の習慣がものをいいます。

不当労働行為151(両磐酒造(団交拒否)事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、和解協定の履行に関する団体交渉に応じなかったことが不当労働行為にあたるとされた命令を見てみましょう。

両磐酒造(団交拒否)事件(平成28年2月23日・労判1136号170頁)

【事案の概要】

本件は、和解協定の履行に関する団体交渉に応じなかったことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

Y社は、夏の中元シーズン期間は忙しいので棚上げし、団交は中元シーズンおよびお盆の終わった頃にしてほしいと回答し、団交に応じなかったものである。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 再雇用は労働条件と密接に関連しているものであるから、少数組合といえども、規程に関し団体交渉の申入れがあれば、会社は団体交渉に応じなければならない。

2 また、会社は、和解協定において、再雇用に関する規程を早急に整備し、次回のAの契約更新時以降は、整備した規程に基づき再雇用の手続を行うという内容を組合と合意した。しかし、Aの契約更新満了日であった7月31日の翌日である8月1日時点では、就業規則以外に具体的手続などを定めた関連規程を整備していないことが認められる。そのような状況の中で、就業規則に再雇用に関する規定が作成されていることを理由に団体交渉に応じないのは、正当な理由があるとはいえない

業務多忙を理由に団交を延期することだけで当然に不当労働行為に該当するわけではありません。

本件の場合には、上記のように団交を延期しておきながら、雇止めをしたために不当労働行為と判断されています。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介588 出世する人、しない人の1ミリの差(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。
出世する人、しない人の1ミリの差

帯には「頭角を現し、大差をつける人に共通する微差とは?」と書かれています。

ほんの些細な差の積み重ねが、結果の違いとして現れるわけです。

とても勉強になる本です。

おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

パナソニック創業者の松下幸之助さんの有名な言葉に、『うまくやっている人は、なぜうまくやれているか?それは、うまくやれるようにやっているからだ。ダメになる人は、なぜダメになっているのか?それは、ダメになるようにやっているからだ』というものがあります。・・・つまり。成功する人やうまくやれる人は、成功し、うまくいくような原理原則に則って行動しているということで、原理原則というのは、『時間に厳しい』、『約束は必ず守る』、『感謝の言葉を忘れない』、など、一般的によく言われていることです。」(50~51頁)

「微差」を意識し、それを続けることこそが大差をつける唯一の方法であると確信しています。

王道と呼ばれる原理原則を守り、当たり前のことを大切にする。

トリッキーは方法は、ぱっと見はとても見栄えはいいかもしれませんが、やはり原理原則ではないのです。

多くの成功者が大切にしている核・基本というのは、一見すると「なーんだ、そんなことか」と思うものですが、それが真理です。

今も昔も「基本」というのはそんなに変わるものではありません。

年齢や地位が上がるにつれ、当たり前とされる「基本」を疎かにしてしまいがちですが、どこまでいっても大切なのは原理原則です。

このことを忘れずに日々努力をしていこうと思います。

配転・出向・転籍32(社会福祉法人奉優会事件)

おはようございます。

今日は、出向命令が有効とされた裁判例を見てみましょう。

社会福祉法人奉優会事件(東京地裁平成28年3月9日労経速2281号25頁)

【事案の概要】

本件は、主位的に、Y社のXに対する違法な出向命令により、Xの出向後の給与及び賞与が出向前よりも減額したとして、その差額について、不法行為に基づく損害賠償を求め、予備的に、出向命令が有効であるとして、上記差額について、出向規程に基づく補償を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xは、本件限定合意がある以上、Xの同意のない本件出向命令は違法・無効であると主張する。確かに、労働条件通知書には、「就業の場所」として、「特別老人ホーム白金の森」と記載されているが、当該記載は、採用時の労働条件の明示事項(労働基準法15条1項)である勤務の場所を記載したものであり、採用直後の勤務場所を記載したものにすぎないと認められる。また、Xは、募集要領に「法人内異動:有」と記載されているところ、Xの就業場所としてY社が経営する施設以外への出向等がないかについて、就職時、特に確認していたと主張する。しかし、Y社は本件限定合意の成立を否認しており、Y社職員のうちXだけ出向規程の適用を排除すべき特段の事情があったと認められないこと、他に上記合意の成立を認めるに足りる的確な証拠がないことからすれば、本件限定合意が成立していたと認めることはできない

2 Y社は、ケアマネージャーとして勤務したいというXの希望を踏まえた上で、本件出向命令に至っているのであって、出向を命ずる業務上の必要性はあったと認められ、他に本件出向命令について、不当性をうかがわせるような事情はない。また、本件出向命令によってXの労務提供先は変わるものの、その従事する業務内容(SPM)について、事前に説明会が実施されており、Xは自分が担当するSPMの業務内容について十分理解していたこと、出向規程において、出向中の職員の地位、賃金、退職金その他処遇等に関する規定等、特に本件補償規程を設けて、経済的不利益が大きくならないように配慮していることを勘案すれば、Xが労働条件等において著しい不利益を受けるものとはいえない。そして、本件出向命令に至る経緯及び本件出向命令後、Xは何ら異議を述べることなく出向先での勤務を開始していることからすれば、Y社において、Xが出向に同意したものと認識し、出向同意書の返送を催促せず、その結果、出向同意書が未提出のままになっていたことも理解できるものであり、当該事実が、本件出向命令の不当性をうかがわせるような事情であるとはいえない
これらの事情にかんがみれば、本件出向命令が権利の濫用に当たるということはできない。

X側とすれば、限定合意の存在を強く主張しましたが、この点について裁判所が否定したためにかなり厳しい戦いとなりました。

出向命令自体、特に不当な目的のためになされたものでもなく、かつ、経済的不利益を減らすための措置を講じていることからこのような判断となりました。

実際の対応については顧問弁護士に相談しながら慎重に行いましょう。