継続雇用制度23(甲学園事件)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、定年後の専任教員の再雇用拒否が権利の濫用になるとされた裁判例を見てみましょう。

甲学園事件(東京地裁平成28年5月10日・労経速2282号15頁)

【事案の概要】

本件は、平成19年4月1日にY社の設置する甲学園大学の専任教員として雇用されていたところ、平成26年度中に満65歳となり、本件大学の就業規則所定の定年を迎えたXが、定年を満70歳とする合意が存在する、定年を満70歳とする労使慣行が存在する、あるいがY社がXとの間で再雇用契約を締結しないことは権限濫用に当たると主張して、Y社に対し、特別専任教員としての再雇用契約に基づく法的地位の確認を求めるとともに、再雇用契約に基づく賃金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

1 XがY社との間において、XがY社の設置する甲学園大学に定年に達する専任教員として引き続き勤務する地位を有することを確認する。

2 Y社は、Xに対し、平成27年4月1日から本判決の確定まで、月額45万8100円+遅延損害金を支払え

【判例のポイント】

1 本件大学総合政策学部においては、労使慣行として法的効力が認められるまでには至らないとはいえ70歳まで雇用が継続されるという一定の方向性をもった慣例が存在し、70歳まで雇用が継続されるかという点では死亡退職と自己都合退職という例外があるものの、65歳の定年で雇用が終了とならずに、希望した者の雇用は継続されるという点では例外はなかったところ、これらの雇用継続に際して実質的な協議や審査が行われていたとは認められず、この点では、本件大学総合政策学部の教員らが再雇用による雇用継続に期待することには合理性が認められる

2 従前の定年後再雇用の在り方等に照らし、Xが再雇用による雇用継続に期待することには合理性が認められる一方で、平成26年度に満65歳の定年を迎えるXについて定年後再雇用の可否を検討するに当たって、理事会で審議された内容は、従前の定年後再雇用の在り方とは全く異なっており、しかも、客観性ある基準に基づくものでも、具体的な事情を十分に斟酌したものでもなく、合理性、社会的相当性が認められないから、理事会がXについて再雇用を否定し、Y車においてXとの間で再雇用契約を締結しないことは権限濫用に当たり、違法無効というべきであって、解雇であれば解雇権濫用に該当し解雇無効とされる事実関係の下で再雇用契約を締結しなかったときに相当するものとして、XとY社との間の法律関係は、平成27年4月1日付けで再雇用契約が締結されたのと同様になるものと解するのが妥当である。

労使慣行の存在自体は認められなかったものの、「慣例」が存在したことを前提に、雇用継続の期待には合理性があると判断されました。

労使慣行は要件が厳しく、あまり認められることはありませんが、労使慣行とまではいえなくても、期待の合理性を基礎付ける「慣例」を主張立証することは意味のあるわけです。

高年法関連の紛争は、今後ますます増えてくることが予想されます。日頃から顧問弁護士に相談の上、慎重に対応することをお勧めいたします。