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不当労働行為153(学校法人九州電機工業学園事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、定年退職予定の組合員2名に対して雇用期間1年、週10時間の勤務形態、基本賃金月額8万4600円等の短時間嘱託とする継続雇用条件を提示したことが不当労働行為にあたらないとした事案を見てみましょう。

学校法人九州電機工業学園事件(福岡県労委平成28年4月15日・労判1137号90頁)

【事案の概要】

本件は、定年退職予定の組合員2名に対して雇用期間1年、週10時間の勤務形態、基本賃金月額8万4600円等の短時間嘱託とする継続雇用条件を提示したことが不当労働行為に当たるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にはあたらない

【命令のポイント】

1 本件のように、業務量、本人の能力や法人の経営状況等を考慮して継続雇用の労働条件を個別的に決定する制度の下においては、労働者の多様な希望への対応が可能であるところ、労働者が従前どおりの勤務を希望する場合において、労働者に提示された労働条件が、従前と比較して月額賃金の21パーセント程度、収入ベースでみると17パーセント程度となる月額84600円という著しく低いものであるときは、合理的な理由が認められない限り、同法(高年法)の趣旨に抵触するというべきである。

2 Y社は、定年退職者の継続雇用の条件については、就業規則等に定める継続雇用制度の範囲内でその都度、業務量、本人の能力及び法人の経営状況等に応じて定めていたということができ、特に、教員については、授業及び校務の実施体制上の必要性に応じて、「常勤嘱託」とするか「非常勤又は短時間嘱託」とするかを決定するとともに、授業のみを担当させる後者については、定年退職する教員が担当できる授業科目の年度ごとの実施体制等を考慮して、担当する授業時間数を決定していたとみることができる
・・・したがって、Y社が、A2らに対して本件継続雇用条件を提示したことについては、カリキュラム編成等の学校運営における合理的な理由に基づくものであったと認められる

3 Y社が、A2らに対して本件継続雇用条件を提示したことは、前記のとおり、ほかの継続雇用された教職員の雇用条件と比べて、経済的に不利益な取扱いであることは否定できない。
しかしながら、Y社が本件継続雇用条件を提示したことには、学校の運営上合理的な理由が認められ、また、非組合員にも本件継続雇用条件と同一の条件で雇用された事例があり、・・・Y社が本件継続雇用条件を提示したことが組合嫌悪の意思によることを示すとは認められない

継続雇用の際、合理的な理由なく労働条件を大幅に下げると本件のようなトラブルになります。

合理的な理由を説明できるかどうかが鍵となります。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。