本の紹介371 ハマるしかけ(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は本の紹介です。
Hooked ハマるしかけ 使われつづけるサービスを生み出す[心理学]×[デザイン]の新ルール

原典のタイトルは、「Hooked: How to Build Habit-Forming Products」です。

新しい習慣を作り上げるような商品はいかに世に出すか。

習慣化させるところまで浸透させなければ意味がないわけです。

この本は、これまでに習慣化に成功した例を挙げて、大切な要素は何かということを説明しています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

ハーバード・ビジネス・スクールの経営学教授であるジョン・ゴービルの有名な論文には、こう記されている。『多くの新商品が成功しない理由はこうだ。企業は非合理的に新しい商品に価値を置くが、消費者は非合理的に古い商品に価値を置くからである』。
ゴービルによれば、新規参入者がチャンスを狙いたいなら、ただ優れているだけではダメで、既存の9倍は優れていなければならない。なぜそれほどハードルが高いのか?それは、古い習慣はなかなか変えられないため、新しいプロダクトやサービスが、ユーザーを古い習慣から引き離すだけの劇的な改善策を持ったものでなければならないからだ。」(37頁)

新規参入者は、ただ優れているだけではダメで、既存の9倍は優れていなければならないそうです。

9倍ですよ!

ほんのちょっと優れているくらいでは、顧客は、古い商品やサービスから新しいものに変えてくれないそうです。

使い慣れているから・・・。

お付き合いもあるし・・・。

いろんな理由から、顧客は古い商品やサービスを使い続けるのです。

そう。 だからこそ、我々のような若手弁護士は、これまでのリーガルサービスに比べてよほどよいものを提供できなければ、顧客は選び変えてくれないのです。

ほんの少しよいだけではダメなのです。

管理監督者35(新富士商事事件)

おはようございます。

今日は、退職した元営業所長の管理監督者性と割増賃金等請求についての裁判例を見てみましょう。

新富士商事事件(大阪地裁平成25年12月20日・労判1094号77頁)

【事案の概要】

本件は、自動車オークション会場における車両の移動等の業務を請け負っている株式会社であるY社との間で労働契約を締結し、営業所長として勤務していたXが、時間外および深夜割増賃金の支払いを受けていないとともに、一方的に賃金を減額して支給されたと主張して、Y社に対し、上記労働契約に基づき、時間外および深夜割増賃金ならびに遅延損害金の支払いを求めるとともに、不当利得に基づき、減額された賃金相当額の不当利得金及び遅延損害金の支払いを求めた事案である。

Y社は、Xが管理監督者に該当すると主張して、時間外割増賃金の支払義務を争っている。

【裁判所の判断】

管理監督者性を否定
→433万8618円の支払いを命じた

賃金減額分の13万4000円の支払いも命じた

【判例のポイント】

1 Xの職務内容及び権限についてみるに、Y社が行っている事業としては本件業務しか存在せず、本件業務の遂行に当たり、アルバイト従業員に対する業務の割当て、業務内容の指示及び出退勤時間の指定等に加え、A社との間の業務遂行上の調整等も、専らXの権限とされていたことが認められるから、Xは、本件業務の現場における責任者の地位にあり、アルバイト従業員の労務管理上の決定等についても一定程度の権限を有していたものと認められる。

2 しかしながら、Xの業務内容自体は、アルバイト従業員又は役職のない正社員であったときとほぼ変わりがなかったものであるだけでなく、Xは、正社員のみならず、アルバイト従業員についても、採用や賃金等の決定をする権限はないなど、本件業務に伴う経理や人事に関する権限を一切有しておらず、Y社及び関連会社の責任者が集まる幹部会議にも出席することはなかったものであるから、Xが有していた権限の範囲は、現場責任者としての限定的なものにとどまっていたものというべきである。
また、Xの労働時間に関する裁量権の有無についてみるに、Xは、タイムカードにより労働時間が管理されており、出退勤の自由に関する裁量権も有していなかったものといえる。
さらに、Xは、Y社のB営業所長として3万円の役付手当を支給されており、毎月の支給額は上司であるC部長と比較して、約3万5000円しか変わらないこと、年収は合計510万円程度にすぎないし、Xが毎月約30時間から時には100時間以上もの時間外及び深夜労働を行っていたことを考慮すると、その地位と権限にふさわしい処遇がされていたともいい難い

3 以上によれば、Xは、管理監督者にふさわしい職務内容及び権限を有していたとは直ちにいえないだけでなく、労働時間に関する裁量権も有しておらず、賃金上も管理監督者にふさわしい処遇がされていたとはいえないから、Xが管理監督者に該当するということはできない。

久しぶりに管理監督者性が問題となった裁判例を取り上げます。

結果は、やはり認められませんでした。

結果、会社は高額な支払いを命じられています。

裁判所が管理監督者性を認めてくれるのは、本当にごくわずかです。 そのあたりを踏まえた労務管理をする必要があります。

管理監督者性に関する対応については、会社に対するインパクトが大きいため、必ず顧問弁護士に相談しながら進めることをおすすめいたします。

本の紹介370 ビジネスNo.1理論(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
ビジネスNo.1理論

言わずと知れた西田さんの本です。

脳の構造から、成功するために必要な考え方を教えてくれています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

『プラス思考になるには、プラスのことを考えればいいんだろう』と思っている人が、日常で『とはいえ現実は厳しいよな』などといったマイナス言葉を吐いているとしたらどうなると思いますか?これは非常に重要なポイントです。『入力』と『出力』、どちらのほうが強いのかということが関係してきます。実は、『入力』よりも『出力』のほうが、脳の『快・不快』に大きな影響力を持っているのです。・・・『脳は、思ったことよりも、言葉や動作を信用する』 知っておくべき大前提は、この一文に尽きます。」(109~110頁)

「脳は、思ったことよりも、言葉や動作を信用する」そうです。

だとすれば、マイナス思考になっているときでも、無理矢理でもプラスの言葉を発し、元気よく振る舞うことで脳が後者を信用するわけです。

落ち込んだとき、疲れているときに、アニマル浜口さんのように、「気合いだ!気合いだ!気合いだーー!おい!おい!おい!」って言うのは、意味があるんですね。

僕がアニマルさんの真似をしているときは、落ち込んでいるか、疲れているときだと思って下さいね(笑)

解雇154(アウトソーシング(解雇)事件)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう!

今日は、契約に必要な誓約書等を提出しなかったことを理由とする解雇に関する裁判例を見てみましょう。

アウトソーシング事件(東京地裁平成25年12月3日・労判1094号85頁)

【事案の概要】

本件は、派遣元会社であるY社と雇用契約を締結したXが雇用契約締結に必要な書類を提出しなかったとしてY社に解雇されたことから、Xが本件解雇は無効であるとして、Xが他社に就職する前日(平成25年1月31日)までの間の賃金(既払分を除く)の支払いを求めた事案である。

【裁判所の判断】

解雇は無効

本件契約は平成24年8月31日をもって終了
→賃金54万2554円の支払いを命じた

【判例のポイント】

1 本件協定書は、使用者と労働者間の協定文書であり、本件誓約書は、労働者が遵守事項を誓約する文書であり、労働者に対して任意の提出を求めるほかないものであって、いずれも業務命令によって提出を強制できるものではない。したがって、Xが本件誓約書等の提出を拒んだこと自体を業務命令違反とすることはできない
ただ、本件誓約書を提出しなかった場合、それが本件誓約書に列挙された事由を遵守しない旨を表明したと評価できるようなときやY社の円滑な業務遂行を故意に妨害したと評価できるようなときには、社員としての適格性の問題が生じうるが、Xは、作業服代の控除の条項を問題にしていたのであって、本件誓約書に列挙された事由を遵守しない旨を表明したものとは評価できない。また、Xは、Y社の業務遂行を妨害する目的で本件誓約書等の提出を拒んでいたとも評価できない。そうすると、Xが本件誓約書等の提出を拒んだことは、「成績不良で、社員として不適当と認められた場合」に当たらない。

2 Y社は、A食品に対して、派遣労働者から守秘義務の履行に関する誓約書を提出させ、A食品の機密保持の確保を図る義務を負っており、本件誓約書の提出がないことにより業務上の不都合が生じていたといえる。しかしながら、Y社は、本件誓約書の提出がないまま3日間Xを勤務させているが、A食品との間で具体的な問題が生じていた様子はうかがわれない。また、Y社は、A食品の勤務では作業服代の控除が生じない旨の確認書を差し入れるなどして、Xの指摘する疑問点を解消した上で本件誓約書の提出を求めることもできたのであって、業務上の不都合が解雇もやむを得ない程度まで高まっていたとは認められない

3 本件業務に関する求人情報には「長期(3か月以上)」との記載があるが、雇用契約書には「実際に更新するか否かは、従事している業務の状況による」と記載されていること、就業条件明示書には1年単位の変形労働時間制を採用する旨が記載されているが、Xについて1年単位でシフト表が組まれていたわけではないことに照らすと、「長期(3か月以上)」との記載が更新を保証するものとはいうことはできない。
・・・そうすると、更新が1度もされたことがないXについて、更新の合理性期待があったと認めるに足りる事情はないというべきであり、本件契約は期限の8月31日をもって終了したと認められる

従業員に書面の提出を求めたにもかかわらず、提出されない場合、ただちに業務命令違反になるかは慎重に検討する必要があります。

まして、解雇をするとなるとなおさらです。

従業員が提出を拒む理由に合理性があるかどうかを検討する必要がありますね。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介369 出会いとつながりの法則(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は本の紹介です。
出会いとつながりの法則  ~誰も書かなかった新・出会い論~

この本は、全体を通してメンタリングに通じるものがあり、とても共感できる内容です。

本のそでには、「誰と出会うかで人生は大きく変わる」と書かれています。

まさにその通りだと思います。

この本、おすすめです!

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

出会いをつながりに変えるために絶対に必要なこと、それは、常に自分自身を磨く、つまり自分のステージを上げる努力を怠らないということです。出会いを求める人が陥りがちな落とし穴なのですが、それは『人と出会えばその人が助けてくれて自分は楽に成功できる』と思い込んでしまうことなのです。もちろん最初は助けてくれるかもしれません。しかし、片方がもう片方に依存する関係というのは決して長続きしません。・・・大切なことは常に自分自身を磨くこと。そして目の前にあることに全力で取り組むこと。そうすればあなたの考え方が変わり、波長が広がり、あなたの周りに集まる人が変わってきます。一生懸命努力している人には必ずその空気感が出てきて、人はその空気感を読み取ります。良き出会いは正当なる努力をしている人のみに渡される神様からのプレゼントなのです。」(85~86頁)

「大切なのは常に自分自身を磨くこと」

とてもいい言葉ですね。

なかなか人脈が広がらない・・・

いい縁に恵まれない・・・

そんなときは、他人に原因を求めるのではなく、自分磨きが足りないのだと思うようにしよう、ということです。

自分を磨き続け、徐々に力がついてくると、自然と人の輪が広がってきます。

それは、周りの人の力になれるステージに上がってきた証でもあります。

人に助けてもらうために人脈を広げようとしても、広がりませんよね。

このことは、多くの人が知っていることです。

人脈は、自然と広がっていくものです。

名刺を配る時間と労力があるのなら、少しでも自分に力をつけることが大切なのだと思います。

解雇153(ソーシャルサービス協会事件)

おはようございます。

今日は、事業本部閉鎖に伴う解雇に関する裁判例を見てみましょう。

ソーシャルサービス協会事件(東京地裁平成25年12月18日・労判1094号80頁)

【事案の概要】

本件は、Xが、Y社による解雇は無効であると主張して、Y社に対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認、解雇後の賃金および賞与ならびに不法行為(不当解雇)に基づく損害賠償金の支払いを求めた事案である。

Y社は、Xと雇用契約を締結したのはY社ではなく、権利能力なき財団であるY社東京第一事業本部であると主張して、X・Y社間の雇用契約の存在を争うとともに、仮に雇用契約が存在するとしても上記解雇は有効であると主張している。

【裁判所の判断】

解雇は無効

不法行為に基づく慰謝料の請求は棄却

【判例のポイント】

1 ・・・Y社東京第一事業本部の役員の任免にはY社理事長が関与し、Y社東京第一事業本部の役員はY社理事会の決定及びY社理事長の指揮命令に従って業務遂行することとされているのであるから、Y社東京第一事業本部の財産がY社から独立して管理する体制が取られているとみることは困難である
そうすると、Y社は、登記、寄附行為、厚生労働省への報告等においては、Y社東京第一事業本部を本人格を有するY社の一部である従たる事業所として扱っているところ、上記のとおり、Y社東京第一事業本部について権利能力なき財団の要件を充足しているとみることは困難であるから、Y社東京第一事業本部がY社とは別個の権利能力なき財団であると認めることはできない

2 Y社において、本件解雇を行った平成23年10月当時、Y社東京第一事業本部の閉鎖に伴って、Y社東京第一事業本部の事業に従事していた人員が余剰人員となっていたことは認められるものの、Y社は同年3月時点において2億円を超える現預金を保有しており、上記余剰人員を削減しなければ債務超過に陥るような状況になかったことは明らかであり、人員削減の必要性が高かったものと認めることはできない。
にもかかわらず、Y社は、期間の定めのない雇用契約を締結しているXに対し、6か月間の有期雇用契約への変更を提案したものの、他の事業所への配置転換や希望退職の募集など、本件解雇を回避するためのみるべき措置を講じておらず、十分な解雇回避努力義務を果たしたものということはできない。上記のとおり、Y社においては、従たる事業所は完全な独立採算で独立した運営を行っており、本部が従たる事業所に人員配置を命じることはしない運用を行っていることが認められるものの、本件雇用契約における使用者がY社である以上、そのような内部的制限を行っていることをもって、Y社東京第一事業本部以外の従たる事業所への配置転換等の解雇回避努力を行わなくてよいことになるものではないというべきである
・・・そうすると、本件解雇は、客観的に合理的な理由があり社会通念上相当であるものとは認められないから、その権利を濫用したものとして無効である。

3 普通解雇された労働者は、当該解雇が無効である場合には、当該労働者に就労する意思及び能力がある限り、使用者に対する雇用契約上の地位の確認とともに、民法536条2項に基づいて(労務に従事することなく)解雇後の賃金の支払を請求することができるところ、当該解雇により当該労働者が被った精神的苦痛は、雇用契約上の地位が確認され、解雇後の賃金が支払われることによって慰謝されるのが通常であり、使用者に積極的な加害目的があったり、著しく不当な態様の解雇であるなどの事情により、地位確認と解雇後の賃金支払によってもなお慰謝されないような特段の精神的苦痛があったものと認められる場合に初めて慰謝料を請求することができると解するのが相当である。
これを本件についてみると、一件記録を精査検討しても、前記特段の精神的苦痛を認めるに足りる事実はない。
よって、Xの不法行為に基づく慰謝料の請求は理由がない。

非常に珍しい事案です。

このような戦い方もあるのです。

上記判例のポイント2のとおり、人事異動に関する内部的な制限は、整理解雇における解雇回避努力を否定するものにはならない可能性がありますので、注意が必要です。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介368 エリートの仕事は「小手先の技術」でできている。(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
エリートの仕事は「小手先の技術」でできている。

またまた弁護士の山口先生の本です。

これで3冊目です。 勢いがあります。

今回のタイトルも、キャッチーでいいですね。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

・・・妹は、私にこう言いました。「お姉ちゃん、『美人弁護士』って言われてるみたい。それは『美人な弁護士』という意味じゃないよ。『弁護士のわりに美人』という意味なんだからね。そこを、絶対に間違えないように」 うーん。そういえば・・・。私がそのときに思ったのは、『美人すぎる市議』とか『美人すぎるボクサー』とかはいても、『美人すぎるモデル』とか『美人すぎるキャビンアテンダント』はいない、ということです。」(205~206頁)

ここで、山口先生が言いたいのは、「自分を売り出す『市場』を正しく選択する」ということです。 確かに「美人すぎる市議」はいても「美人すぎるモデル」はいませんよね(笑)

自分の長所をどの市場でどのような切り口で売り出すか、というのはとても大切なことです。

同じような長所をもった人たちが集まる市場で、自分の長所を際立たせるのは、とても大変なことです。

山口先生が出している例は、とてもわかりやすいですよね。

美人がモデルの道を行くと、そこは熾烈な競争が待っています。

モデルという職業は、「美」を強く求められる仕事なので、美しいことが「当然」と扱われてしまうのです。

これに対し、美人が例えば弁護士の道を行くと、それは一つの特徴になります。

このように自分の利点をどの市場で売り出すかによって、その効果は全く異なってくるわけですね。

配転・出向・転籍20(東京測器研究所(仮処分)事件)

おはようございます。

今日は、旧組合書記長に対する転居を伴う配転命令に関する裁判例を見てみましょう。

東京測器研究所(仮処分)事件(東京地裁平成26年2月28日・労判1094号62頁)

【事案の概要】

本件は、昭和58年4月に債務者に入社し、入社とともに債務者の従業員を組織していた労働組合に加入した債権者が、平成25年11月1日付けで債務者の明石営業所勤務を命じる配転命令を受けたことについて、不当労働行為、協定違反等を理由に本件配転命令は無効であるとして、明石営業所において勤務する労働契約上の義務を負わないことの確認を求める権利を被保全債権として、同義務を負わないことを仮に定める仮処分を求める事案である。

【裁判所の判断】

XがY社に対し、Y社の明石営業所において勤務する労働契約上の義務を負わないことを仮に定める。

【判例のポイント】

1 明石営業所への転勤後は、XがこれまでJMIUY社支部において中心的な役割を果たしてきたのと同程度に、上記脱退決議の効力を争いJMIUY社支部を存続させるための実効的な活動を行うことは相当困難になるものと推認される。そして、JMIU脱退決議の無効及びJMIUY社支部の存続を公然と主張するのはY社のみであるから、XがJMIUY社支部存続のための実効的な活動を行うことが困難である以上、JMIUY社支部存続の可能性は極めて乏しくなるものと考えられる。
XがJMIU脱退決議の無効を主張することが不当な言いがかりに類する行為であるとは直ちに断じ得ないのであり、XがJMIUY社支部の活動を中心的に担ってきた立場でJMIU脱退決議の無効を主張しJMIUY社支部の存続のための活動を始めようとしていたところを、本件配転命令によって、明石営業所への転勤を余儀なくされ上記の活動を実効的に行うことが困難となる結果、JMIUY社支部存続の可能性が極めて乏しくなるものと考えられるのであるから、本件配転命令は、JMIUY社支部の存続の可能性を失わせる結果をもたらす点で、外形的にみて、JMIUY社支部の運営に対する支配介入に当たるものと評価し得る

2 明石営業所に技術職の従業員を配置する必要性自体は否定できないものの、Aの大口計測工事以外には、技術職の従業員の明石営業所への配置を緊急に要する業務が具体化している状況ではなく、Aの大口計測工事に関しては、2か月半程度で終了する業務であったことからすると、技術職の従業員を上記期間Aに常駐する形で出張させることでも賄うことは可能であったものと考えられるところであり、Xがただ一人公然とJMIU脱退決議の効力を争い、JMIUY社支部の存続のための活動を行おうとしていたまさにそのときに、時間的な猶予を与えない形で、あえてXを東京本社から引き離して明石営業所へ転勤させなければならないほど緊急の必要性があったとまでは認め難いというべきである

3 本件配転命令は、Y社が、少なくともJMIUY社支部の存続の可能性を失わせる結果になることを認識しつつこれを容認する意思の下で行ったJMIUY社支部に対する支配介入にあたると認められるから、労働組合法7条3号が禁じる支配介入に該当するというべきである。

4 以上のとおりであるから、その余の点について検討するまでもなく、本件配転命令は、不当労働行為に該当するため、違法であり、無効であると認められる。

基本的には、配転については、会社に広い裁量が認められています。

しかし、本件のように、従業員が組合員であり、かつ、重要なポストに就いている場合には、不当労働行為該当性にも配慮する必要が出てきます。

客観的にみて、組合の弱体化と判断されうる場合には、顧問弁護士に相談の上慎重な対応が求められます。

 

本の紹介367 成功する人たちの起業術 はじめの一歩を踏み出そう(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばっていきましょう。

今日は本の紹介です。
はじめの一歩を踏み出そう―成功する人たちの起業術

タイトルのとおり、起業をする際のポイントをまとめてくれている本です。

多くの起業家が、どういう点で失敗してしまうのかがよくわかります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

仕事は、人間の心を映し出す鏡なんだよ。仕事が粗雑な人間は内面も粗雑だし、退屈そうに仕事をしている人間は、仕事に退屈しているのではなく、自分自身に退屈しているんだ。つまらない仕事でも、芸術家が手がければ芸術品に仕上げることができる。仕事というのは自分の心の状態を映し出すものなんだよ。・・・嫌な仕事なんて、そもそも存在しないんだ。仕事が嫌な人間がいるだけのことさ。・・・嫌な仕事をやらされることになれば、言い訳を探したがるからね。そういう人間は仕事のことを、自分を試すチャンスとは見ずに、自分に与えられた罰だと考えてしまうんだよ。」(212頁)」

「仕事は、人間の心を映し出す鏡」

確かにそうかもしれませんね。

自分に与えられた仕事を見て、自分の力を向上させるチャンスと捉える人と、やっかいな仕事だと捉える人がいます。

それは、考え方の習慣や精神状態が大きく影響しているように思います。

労災事件の裁判例からすれば、長時間労働等、労働の量がメンタルヘルスに強く関係していることがわかりますが、私は、それだけではないと思っています。

私は、メンタルヘルスには、「仕事に対する考え方」が大きく影響していると考えています。

何に対しても批判的、否定的な人は、ものごとを「チャンス」とは捉えず、「罰」だと考えるのでしょう。

できるだけ前向きに、肯定的にものごとを捉えることがいい流れを引き寄せるのだと信じています。

すべては、捉え方や解釈の習慣の問題だと思います。

労働災害78(海上自衛隊(たちかぜ)事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、先輩自衛官による暴行及び恐喝による自殺と予見可能性に関する裁判例を見てみましょう。

海上自衛隊(たちかぜ)事件(東京高裁平成26年4月23日・労経速2213号9頁)

【事案の概要】

本件は、海上自衛官として護衛艦たちかぜの乗員を務めていたXが平成16年10月27日に自殺したことにつき、①Xの自殺の原因は、Xの先輩自衛官であったDによる暴行及び恐喝であり、上司職員らにも安全配慮義務違反があったと主張して、Dに対しては民法709条に基づき、国に対しては国家賠償法1条1項又は2条1項に基づき、X及びその父母に生じた損害の賠償を求めるとともに、高裁において、②国がXの自殺に関係する調査資料を組織的に隠蔽した上、同資料に記載されていた事実関係を積極的に争う不当な応訴態度を取ったため、精神的苦痛を被ったとして、国家賠償法1条1項に基づき、国に対して慰謝料の支払請求を追加した事案である。

原審は、Dの暴行・恐喝行為及び上司職員らのDに対する指導監督義務違反とXの自殺との間に事実的因果関係を認めることができるが、D及び上司職員等においてXの自殺につき予見可能生があったとは認められないから、Xの死亡によって発生した損害については相当因果関係があるとは認められないとした。

【裁判所の判断】

損害として、以下の項目を認めた。

①逸失利益 約4380万円

②慰謝料 2000万円

③その他 550万円

④国の訴訟活動について 20万円

【判例のポイント】(高裁において追加された請求に限る)

1 ・・・そうすると、横須賀地方総監部監察官が本件アンケートを保管していながら、本件開示対象文書の特定の手続において、これを特定せず隠匿した行為は、違法であるというべきである。その結果、Aは、本件訴訟において、本件アンケートに記載された回答に基づく主張立証をする機会を奪われることになったものと認められる

2 国の指定代理人らは、本件訴訟の被告の立場にある国の代理人として訴訟を追行するものであって、国において保有しあるいは収集した資料のうちいかなるものを証拠として提出するかは、民事訴訟法上これを提出すべき義務を負う場合を除き、これを自由な裁量により判断することができるというべきであり、その保有する資料を証拠として提出しなかったとしても、それが訴訟上の信義則に反するとみるべき特段の事情がない限り、違法な証拠の隠匿があるということはできないと解するのが相当である
・・・したがって、国の指定代理人らにおいて、証拠の違法な隠匿があったとは認められない。

3 一般事故調査結果は、艦長ないしその上位機関である護衛艦隊司令官の掌握するたちかぜ乗員の服務事故につき、その調査の客観性を高めるために横須賀地方総監部に設置された事故調査委員会が調査した結果をまとめたものであって、国の指定代理人が本件訴訟における被告の立場において行う主張立証が、必ずそれに一致しなければならないものではない。そして、自殺の原因を「風俗通いによる多額の借財」と推論する国の主張については、たちかぜの乗員の供述やXの携帯電話の着信履歴などを根拠としており、その信用性の有無や推論の是非はともかく、主張の根拠を欠くものであったとまではいうことができない。その他本件訴訟における国の主張等をみても、指定代理人らにおいて、その主張が事実的、法律的根拠を欠くことを知りながら、又は容易にそのことを知り得たのに、あえてそれを行ったなど、違法な主張立証その他の訴訟活動があったと認めることはできない
したがって、国の訴訟活動について、国家賠償法ないし不法行為法上の違法があったとは認められない。

国の訴訟活動については違法性がないと判断されています。

もっとも、「乙43号証メモ」等を行政文書の情報開示請求の特定の手続において特定せず、隠匿したことが国会賠償法1条の違法であるとして、20万円の慰謝料が認容されています。