本の紹介253 スラムダンク論語(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

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←先日、紺屋町に新しくオープンした「寿し幸 実宇栄」に行ってきました。

写真は、「ウニクレ」です。

ウニとクレソンを炒めてあります。それをパンと一緒に食べるのです。 お寿司屋さんとは思えません。

お寿司屋さんとは思えないメニューの充実さに脱帽です。

おいしゅうございました。 

今日は、午前中は、富士の裁判所で労働事件の裁判が1件入っています。

午後は、静岡に戻り、破産事件の債権者集会、不動産関係の裁判、裁判員裁判対象事件の事前打合せ、顧問先会社との打合せが入っています。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は本の紹介です。

 スラムダンク論語

このような系統の本は、無理がある場合が多いですが、あまりそこは深くつっこまずに読めば、発想とチャレンジ精神を参考にすることができます。

帯に「『スラムダンク』の名言と『論語』の名言は、これほどまで見事に共鳴している。」

と書かれていますが、言うほど共鳴していません(笑)

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

義を見て為さざるは勇なきなり」(193頁)

意味は、「人としてなさねばならない正しいことがわかっているのに、やろうとしないのは、真の勇気がない臆病者である」という意味です。

 有名な言葉です。

私の尊敬する経営者の方が、「人間として一番大切にしなければいけないのは『義』だ」と仰っていました。

人として正しいことをしなければいけないということです。

「自分が得をする、儲かる、だけど人としてどうなの?」ということはしてはいけないのです。

損得だけを判断基準にすると、「義」を忘れてしまいますよね。

いつまでも「義」を忘れないで仕事をしていきたいです。

不当労働行為73(日本郵便事件)

おはようございます。 今週も一週間、がんばっていきましょう!!

さて、今日は人事異動と不当労働行為に関する命令を見てみましょう。

日本郵便事件(神奈川県労委平成25年6月21日・労判1073号93頁)

【事案の概要】

平成23年3月頃、Xは、「動労千葉を支援する会・全逓横浜」を結成し、代表に就任した。

同年7月、Y社は、Xに対し、横浜泉支店第二集配営業課への人事異動がある旨を伝えたが、Xは、拒否すると述べた。

同月、Xは、戸塚支店前等において、強制配転反対との見出しのビラを配布した。

その翌日、Y社は、Xに横浜泉支店第二集配営業課への異動を発令した。

なお、この異動により、Xの担当業務に変更はなく、同人の通勤時間は、片道約45分から約65分となった。

【労働委員会の判断】

本件人事異動は不当労働行為に当たらない。

【命令のポイント】

1 一般的に、労組法7条1号に定めのある「労働組合の正当な行為」とは、労働組合自身が行う行為、若しくは組合員が労働組合からの授権によって行う行為に限られるものではなく、客観的にみて組合員に影響する労働条件の維持・改善などを図る行為や、労働組合の自主的・民主的運営を志向する組合員による自発的活動をも含むと解すべきである

2 支援する会は、組合のあり方を変えていく体質改善を目的としてはいるものの、実際には組合の組合員以外の者も所属することができる会であり、その主な活動は、動労千葉の国鉄分割民営化に反対して解雇された動労千葉の組合員に対しての支援活動として物資販売を行うことを通じて解雇撤回の運動を職場の中に広めること、被災地への救援物資販売、反原発の運動などであり、客観的にみて労働条件の維持・改善など組合の目的に沿った活動であるとはいい難い。現に動労千葉を支援する会の要綱には組合に関する項目はなく、支援する会が労働条件に係る問題を取り上げ会社に対し要求した事実もない。このほか、支援する会の活動が組合内の意見表明行為であるとする特段の事情も認められず、組合の自主的・民主的運営を志向する活動はいえない。
したがって、支援する会の活動が労働組合の行為とは認められない以上、それが正当な行為か否かを問題とするまでもなく、本件人事異動は労組法7条1号の不利益取扱いには該当せず、ひいては支援する会に対する同3号の支配介入にも該当しない

労組法7条1号の「労働組合の正当な行為」の意義について示されています。

こういう形での判断は、珍しいと思います。 参考にしてください。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介252 決断できる人は2択で考える(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も一週間、お疲れ様でした。

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←先日、「焼肉・ホルモン六番町」に行ってきました。

写真は、「上ロース」です。すばらしい。

上カルビは、20代までの食べ物だと最近思うようになりました。

おいしゅうございました。

今日は、終日、会社訪問をしてきます。

夕方から、検察庁へ行き、刑事裁判(否認事件)の準備です。

夜は、顧問先の社長のお誕生日会です。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は本の紹介です。

 決断できる人は2択で考える (星海社新書)

 

決断できる人の特徴について書かれている本です。

どうしたら決断力を高めることができるのか、というテーマは、私の大きな関心事です。

ということで、買ってみました。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

僕がほとんどしないこと。それは『人に相談をして決める』。人の意見に耳を貸さない、というのではありません。自分がすべき決断を、人に委ねない、と言えばいいでしょうか。
よく、重要な決断の前に誰かに相談をしたがる人がいます。僕もたまにそうした質問を受けることがあって、『それは、これこれこうしたほうがいいんじゃない』とアドバイスをすることはあります。すると、返ってくるのは『え~、でもこうじゃない?』という反対意見だったりします。『それなら聞かないで自分で決めたらいいのに』と思います。アドバイスを求める人にありがちなのは、自分の中でもう結論が出ているのに他人に相談する。これは、背中を押してもらって、自分の意見を正当化したいだけ。」(60頁)

同意見です。

私が、何かを相談する場合、心がけていることがあります。

1つ目。 相談する相手は、特定の1人だけ。 10人も20人も相談しても何の意味もないからです。

多数決で決めるの?みたいな気持ちです。

2つ目。 相談した方の意見に従う。 単に背中を押してもらいたいだけ、という相談のしかたはしない。

結局、自分の中で結論が決まっているのに、相談するのは時間の無駄だからです。

また、相談を受けていただく方の時間を奪うことになるからです。 むしろこちらの方が大きいです。

相談をする場合、自分が心から信用している人1人だけに相談をし、その人の意見に従うというのが私のルールです。

とにかく相手の時間を無駄に奪わないことです。 

賃金65(朝日交通事件)

おはようございます。

さて、今日は、タクシー運転手らによる未払賃金等請求に関する裁判例を見てみましょう。

朝日交通事件(札幌地裁平成24年9月28日・労判1073号86頁)

【事案の概要】

本件は、Xらが、Y社に対し、時間外等割増賃金の未払があるとして、その支払と、同額の労働基準法114条に基づく付加金の支払等を求める事案である。

【裁判所の判断】

Y社に対し、合計約700万円の未払残業代の支払いを命じるとともに、同額の付加金の支払いを命じた。

【判例のポイント】

1 Y社賃金体系は、時間外等の労働時間に関係なく、出来高によって決定される完全歩合制であり、労基法等に従った時間外等の各割増賃金の支払を行わないものであって、出来高が少なければ最低賃金を下回る場合もあるし、有給補償は平均営収の28.8%とされているのであって、労基法等に違反することは明らかである

2 Y社は、休憩時間協定を適用すれば、労基法算定をしても、Y社のXらに対する未払賃金は、いずれもXら算定より少なくなるなどと主張する。しかし、客待ちのための停車が15分以上となることも十分あり得るものと考えられ、15分以上の停車を休憩時間とみなすことは相当でなく、休憩時間協定があるからといって、15分以上の停車を勤務時間から除外することはできないというべきであり、休憩時間として1時間を控除するXらの算定は相当である。

3 Y社賃金算定では、従業員が実際に従事した勤務の実態を反映させることなく、総営収を100%として、基本給34%、深夜時間手当4%、超勤時間手当11.8%、臨時労働手当4.2%と形式的に割り振っているのであるが、このような勤務実態と乖離した割振りをあえて行っていること自体、完全歩合制による賃金体系が労基法等に違反することを認識しながら、一見労基法等に従っているかのように書類上の形を整えるために行っていることが推認できるものであり、これを覆すに足りる証拠はないし、他のタクシー会社もこのような賃金体系を採用しているからといって、違法な行為が許されるものでないことも自明のことであって、付加金の支払を命ずることの相当性が失われるものではない

4 以上の認定事実等を総合すると、Y社に対し、Xらに対する付加金の支払を命ずるのが相当である。なお、仮に、Y社が主張するように、日本全国の大部分のタクシー会社が、Y社と同様に労基法等に違反する完全歩合制を採用しているのであるとすれば、タクシーの乗務員に過重な労働を強いたり、出来高を上げるための無理な運転等を助長させることにもつながり、従業員及び乗客のみならず第三者を含む道路交通の安全性にも関わるのであって、むしろ、違法な行為を防止するという観点からしても、付加金の支払を命じることが相当というべきである

すごい金額ですね。付加金を合わせると、1400万円!!

会社側は、控訴して、未払残業代を全額支払い、付加金の支払を免れる方法をとるのではないでしょうか。

「多くのタクシー会社は、完全歩合でやっているじゃないか!」という主張は、上記判例のポイント4で一蹴されています。

他の多くのタクシー会社さん、どうするのでしょうか。

残業代請求訴訟は今後も増加しておくことは明白です。素人判断でいろんな制度を運用しますと、後でえらいことになります。必ず顧問弁護士に相談をしながら対応しましょう。

本の紹介251 東大医学部生が書いた頭がよくなる勉強法(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は、本の紹介です。

 東大医学部生が書いた頭がよくなる勉強法

東大理Ⅲの方が書かれた勉強法に関する本です。

内容は、特に奇をてらったことは書かれておらず、すべて王道の勉強法です。

当たり前のことを飽きずに反復継続してできればよいのです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

天才と呼ばれることの多い、野球選手のイチロー選手は、試合が終わると必ずビデオで自分のフォームをチェックします。その真面目さにはアメリカの大リーガーたちも舌を巻きます。イチロー選手が圧倒的な強さを誇っている背景には、持ち前の才能だけではなく、物理的に多くの時間を野球に対して割いていることもあるのです。多かれ少なかれ、各界のトップで活躍する人たちというのは、才能に加えて、多大なる時間をその世界での活躍のために振り向けています。」(159頁)

このことは、いろんな本に書かれていることですね。

楽をして、トップに立った人はいないということです。

トップを目指す人に限っては、「ワークライフバランス」は無縁のものかもしれませんね。

私たちのように個人事業で仕事をしている人や経営者は、好きなだけ仕事をしても、会社からも労基署からも何も言われないので、かえって気が楽です。

体力の続く限り、仕事に没頭したいと思います。

派遣労働16(パナソニック・プラズマディスプレイ(パスコ)事件)

おはようございます。

さて、今日は、派遣法違反の雇用契約で働く労働者と派遣元・派遣先との法律関係に関する最高裁判決を見てみましょう。

パナソニック・プラズマディスプレイ(パスコ)事件(最高裁平成21年12月18日・労判993号5頁)

【事案の概要】

本件は、プラズマディスプレイパネル(PDP)の製造を業とするY社の工場で平成16年1月からPDP製造の封着工程に従事し、遅くとも同17年8月以降は、Y社に直接雇用されて同月から同18年1月末まで不良PDPのリペア作業に従事していたXが、Y社によるXの解雇及びリペア作業への配置転換命令は無効であると主張して、Y社に対し、雇用契約上の権利を有することの確認、賃金の支払、リペア作業に就労する義務のないことの確認、不法行為に基づく損害賠償を請求している事案である。

【裁判所の判断】

本件派遣は派遣法違反であるが、派遣先会社との黙示の労働契約の成立は否定

【判例のポイント】

1 請負契約においては、請負人は注文者に対して仕事完成義務を負うが、請負人に雇用されている労働者に対する具体的な作業の指揮命令は専ら請負人にゆだねられている。よって、請負人による労働者に対する指揮命令がなく、注文者がその場屋内において労働者に直接具体的な指揮命令をして作業を行わせているような場合には、たとい請負人と注文者との間において請負契約という法形式が採られていたとしても、これを請負契約と評価することはできない。

2 Y社は、上記派遣が労働者派遣として適法であることを何ら具体的に主張立証しないというのであるから、これは労働者派遣法の規定に違反していたといわざるを得ない。しかしながら、労働者派遣法の趣旨及びその取締法規としての性質、さらには派遣労働者を保護する必要性等にかんがみれば、仮に労働者派遣法に違反する労働者派遣が行われた場合においても、特段の事情のない限り、そのことだけによっては派遣労働者と派遣元との間の雇用契約が無効になることはないと解すべきである

3 XとY社との法律関係についてみると、Y社はC社によるXの採用に関与していたとは認められないというであり、XがC社から支給を受けていた給与等の額をY社が事実上決定していたといえるような事情もうかがわれず、かえって、C社は、Xに本件工場のデバイス部門から他の部門に移るよう打診するなど、配置を含むXの具体的な就業態様を一定の程度で決定し得る地位にあったものと認められるのであって、Y社とXとの間において雇用契約関係が黙示に成立していたものと評価することはできない

派遣先との黙示の労働契約の成否については、この最高裁判例をベースに考えることになります。

マツダ防府工場事件の地裁判例が出されましたが、あくまでまだ地裁レベルです。

現時点では、最高裁判決が示した規範に従うのが無難です。

派遣元会社も派遣先会社も、対応に困った場合には速やかに顧問弁護士に相談することをおすすめします。

本の紹介250 修業論(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 

さて、今日は本の紹介です。
 修業論 (光文社新書)

タイトルがいいですね。 そそられます。

「修業」という言葉が死語化している中、「トレーニング」とは異なる「修業」の意味について書かれています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

修業とは、長期にわたる『意味のわからないルーティン』の反復のことである。まれに天才という人がいるけれど、それは修業が不要な人のことではない。天才とは、自分がしているルーティンの意味を修業の早い段階で悟り、それゆえ、傍から見ると『同じことの繰り返し』のように見える稽古のうちに、日々発見と驚きと感動を経験できる人のことである。
武道修業のかんどころは、このいつ終わるとも知れず、その目的も明示されない修業のルーティンを、どうやって高いモチベーションを維持して継続するか、にある。」(191頁)

一見すると、無意味に思えてしまうあらゆる行為に自分なりのプラスの意味付けができる人というのは、日常生活すべてが「修業」になります。

向上心が強い人は、無意識にこういう思考をしているものです。

スーパーに買い物に行った帰り道、重たい袋を上下に上げ下げしている男子、見ませんか?

これ、修業ですよね(笑) 上腕二頭筋の。

「人生に無駄なことはない」と言いますが、これは、客観的事実ではなく、主観的事実なのです。

解雇119(医療法人社団こうかん会(日本鋼管病院)事件)

おはようございます。 

さて、今日は、患者の暴力で休職した看護師への期間満了による解雇の効力に関する裁判例を見てみましょう。

医療法人社団こうかん会(日本鋼管病院)事件(東京地裁平成25年2月19日・労判1073号26頁)

【事案の概要】

Xは、Y社が経営する日本鋼管病院の看護師であったが、平成18年1月28日に業務中に入院間患者からの暴力のより傷害を受けて休職し、復職後の平成19年8月8日にも入院患者の食事介助中に入院患者から暴力を振るわれたとして、医師により適応障害の診断を受け、就労が困難な状況に至って休職したところ、Y社から平成21年10月11日付けで休職期間満了による解雇通告を受けた。

本件は、Xが、上記平成18年1月28日の事故及び平成19年8月8日の事故に遭ったことにつき、いずれもY社に雇用契約上の安全配慮義務違反があると主張して、Y社に対し、債務不履行に基づく損害賠償を請求するとともに、Xの上記適応障害が業務上の傷病であることから、Y社による上記解雇は労基法19条に違反するもので無効であるとして、解雇後の賃金を請求した事案である。

【裁判所の判断】

Y社に対し、1931万2120円及びこれに対する平成19年12月24日から支払済みまで年5%の遅延損害金を支払いを命じた(Y社は医療法人社団であって商人ではないから、遅延損害金の割合については年5%)。

解雇は有効

【判例のポイント】

1 R看護師及びS看護師の供述内容に照らすと、Y社の第○北病棟においては、看護師がせん妄状態、認知症等により不穏な状態にある入院患者から暴行を受けることはごく日常的な事態であったということができる。したがって、このような状況下において、Y社としては、看護師が患者からこのような暴行を受け、傷害を負うことについて予見可能性があったというべきである

2 そして、入院患者中にかような不穏な状態になる者がいることもやむを得ない面があり、完全にこのような入院患者による暴力行為を回避、根絶することは不可能であるといえるが、事柄が看護師の身体、最悪の場合生命の危険に関わる可能性もあるものである以上、Y社としては、看護師の身体に危害が及ぶことを回避すべく最善を尽くすべき義務があったというべきである。したがって、Y社としては、このような不穏な患者による暴力行為があり得ることを前提に、看護師全員に対し、ナースコールが鳴った際、(患者が看護師を呼んでいることのみを想定するのではなく、)看護師が患者から暴力を受けている可能性があるということをも念頭に置き、事故が担当する部屋からのナースコールでなかったとしても、直ちに応援に駆けつけることを周知徹底すべき注意義務を負っていたというべきである
しかるに、第1事故の当時、Y社は、このような義務を怠った結果、Fから暴行を受けたXがナースコールを押しているにもかかわらず、他の看護師2名は直ちに駆けつけることなく、その対応が遅れた結果、Xにかかる傷害ないし後遺障害を負わせる結果を招いたものであって、この点で、Y社には、Xに対する安全配慮義務違反があったといわざるを得ない。

3 第1事故にみられるように、病院内で不穏な患者による暴力が日常的に起こっているという状況下において、看護師が患者から暴力を振るわれることにより傷害を負うということ自体は一般的に予見可能であるということができるが、同じ状況下であっても、患者から暴力を振るわれたことによる心理的負荷を原因として精神障害を発症するということが当然に予見可能であるということはできないから、本件の事実関係の下で、Xの本件適応障害発症について、Y社に予見可能性があったということはできない
このように、Xを病棟勤務としたこと自体が、Y社の安全配慮義務違反であるということはできない。そして、病棟勤務となれば、いずれは何らかの形で入院患者と接することが不可避というべきであるところ、Y社病院側としては、復職後、Xの勤務状況を観察しつつ、徐々にXに依頼する業務を増やしていき、その中で入院間がに対する食事介助を依頼したという経緯があるのであるから、Xの心情にかんがみ、それなりに慎重に対応していたということができる。したがって、Y社病院側が、同僚看護師らに対し、Xについて就労可能な業務が限定されている旨伝えていなかったことをもって、Y社の安全配慮義務違反があるということはできない。

4 第2事故については、第1事故の後遺障害が残る状況下で発生したものではあるものの、客観的にみて、これが精神障害発症の引き金になるほどの重度の心理的負荷をもたらすものであったとは認め難いし、復帰後の配属先を第△北病棟としたことについても、それによりXが多大な精神的負荷を受けていたと認めることはできない
したがって、平均的労働者にとって精神障害を発症させる危険性のある心理的負荷をもたらすものであったと認めることはできないから、Xの従事していた業務と本件適応障害発症との間に、相当因果関係を認めることはできないというべきであり、他にこれを認めるに足りる的確な証拠はない。
以上のとおり、Xの本件適応障害が、労基法19条1項の「業務上」の傷病であると認めることはできないから、本件休職期間満了を理由としてなされた本件解雇は有効と認められる

非常に重要な論点が複数含まれています。

勉強会の題材にしようと思います。

最近、流行り(?)の労基法19条1項の争点ですが、労働者側からすると、思いの外、ハードルが高いことがわかると思います。

条文から受ける印象と実際の審理とでは、大きな隔たりがありますので、安易に考えるのは危険です。

なお、Xは、別訴において、行政処分取消訴訟を提起しているようですが、1審では、棄却され、現在、二審の審理が係属中だそうです。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介249 負けない議論術(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

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←先日、七間町にある「こはく」に行ってきました。

写真は、「里芋とれんこんの煮もの」です。

落ち着きます。癒されますね。

おいしゅうございました。

今日は、午前中は、顧問先会社でセミナーを行います。

テーマは、「第9回 契約書作成に必要なリーガルマインド習得講座」です。

午後は、家裁で遺産分割調停が1件、弁護団会議が1件入っています。

夜は、社労士の先生方を対象としたセミナーです。

テーマは、「マツダ防府工場事件判決から読み解く『黙示の労働契約』の成否のポイント」です。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は本の紹介です。

 

世界の凄腕ビジネスマンと渡り合う日本人弁護士の 負けない議論術

著者は、ニューヨーク州弁護士の方です。

この本とは別に「負けない交渉術」という本も出されています。

こちらも読んでみましたが、どちらの本もとても参考になります。

交渉のしかた、議論のしかたを勉強するにはいい本ですね。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

議論においては、相手と「ウィン・ウィン」の関係を築くことを目指すべき。一方的に相手をねじ伏せるのは得策ではない。ねじ伏せられた相手は恨みに思うし、周りに与える印象もよくない。どんな議論にせよ、相手との関係は何らかの形で続くことが多い。相手を満足させて議論を終えることができれば、相手の満足は自分にもプラスとなって跳ね返ってくる。・・・相手をリスペクトし、相手が気持ちよく議論できるように配慮している。どんな場面でも、常に「ウィン・ウィン」の議論となるように心がけよう。それは相手のためではなく、自分自身のためなのだ。」(142頁)

全く同感です。

このことは、議論に限らず、交渉事においても同じことが言えると思います。

どんな状況でも、なんでもかんでも相手をこてんぱんにすることがいいことだとは思いません。

場合によっては、あえて、相手に逃げ道を残してあげたり、こちらが(本来、譲歩する理由はないけれども)譲歩してあげることが必要なときもあると考えています。

また、これが、日本の文化に合致しているのだと思います。

大局的に見て、どのような議論・交渉のしかたがよいのかを判断すべきだと思います。

 

セクハラ・パワハラ4(アークレイファクトリー事件)

おはようございます。

さて、今日は、派遣先上司らによるパワハラ行為に対する損害賠償請求等に関する裁判例を見てみましょう。

アークレイファクトリー事件(大津地裁平成24年10月30日・労判1073号82頁)

【事案の概要】

本件は、派遣労働者として就労していたXが、その派遣先であったY社の従業員らから、度々、いわゆるパワハラに該当する行為を受け、同派遣先での労務に従事することを辞めざるを得なかったとの理由により、Y社に対し、①同従業員らの不法行為に関する使用者責任として、退職後の逸失利益、慰謝料および弁護士費用合計272万4085円、②固有の不法行為責任として、退職後の逸失利益、慰謝料及び弁護士費用合計272万4085円の総計442万4085円(なお、前記①および②の各退職後の逸失利益102万4085円の範囲につき、前記使用者責任とY社固有の不法行為責任は競合関係)および遅延損害金の支払いを求めた事案である。

【裁判所の判断】

Xの請求のうち、慰謝料88万円を認めた。

【判例のポイント】

1 Y社の正社員であるFおよびEが、Xに対し、ゴミ捨てなどの雑用を命じていたことにつき、他の仕事ができないと決めつけ、あえて行わせたとまでは推認することはできないが、他方、Y社の正社員であり、Xを含む派遣労働者を指示・監督する立場にあるFらは、指揮命令下にある部下に対する言動において、その人格を軽蔑、軽視するものと受け取られかねないよう留意し、特に、派遣労働者という、直接的な雇用関係がなく、派遣先の上司からの発言に対して、容易に反論することが困難であり、弱い立場にある部下に対しては、その立場、関係から生じかねない誤解を受けないよう、安易で、うかつな言動は慎むべきところ、FらのXに対する各言動は、いずれも、その配慮を極めて欠いた言動で、その内容からすると、Fらの主観はともかく、客観的には、反論が困難で、弱い立場にあるX(の人格)をいたぶる(軽蔑、軽視する)意図を有する言動と推認でき、その程度も、部下に対する指導、教育、注意といった視点から、社会通念上、許容される相当な限度を超える違法なものと認められるから、Y社従業員であるFらのXに対する不法行為があったと認めるのが相当である。

2 Y社は、Fらを従業員として使用する者で、Fらによる前記で認定した不法行為は、FらおよびXが、Y社業務である本件労務に従事する中で、Y社の支配領域内においてなされたY社の事業と密接な関連を有する行為で、Y社の事業の執行について行われたものであるから、Y社は使用者責任を負うと認められ、また、Fらは、Xを含む派遣労働者に対する言葉遣いについて、Y社の上司から指導・注意および教育を受けたことはなかったことを自認しており、Y社が、その従業員であるFらの選任・監督について、相当の注意を怠ったと認めるのが相当である。

3 派遣先であるY社は、派遣労働者であるXを、本件労務に従事させるにあたり、これを指揮監督する立場で、Y社の正社員であるFらに対し、弱い立場、関係から生じかねない誤解を受けないよう、安易で、うかつな言動を慎み、その言動に注意するよう指導、教育をすべきところ、本件では、Fらに対して、本件苦情申出に至まで、何らの指導、教育をしていなかったことからすると、少なくとも、職場環境維持義務を怠った程度が、社会通念に照らし、相当性を逸脱する程度のもので、その結果、Xは、Fら、Y社の従業員らから、人格権侵害といえる言動等を被ったものと評価できるから、同義務違反に基づく、Y社固有の不法行為責任を認めるのが相当である

4 Xは、前記不法行為により、本件労務に従事することを辞めざるを得なかった旨主張するが、本件労務に従事するにあたり、派遣会社との間で、雇用契約を結んでいたものにすぎず、前記不法行為の結果、本件派遣期間満了後も、同派遣期間を更新し、Fらのもとで、就労することは困難であったことのみならず、前記不法行為の結果、派遣会社との間における雇用契約関係も終了せざるを得なかったことを認めるに足る証拠は何ら存在せず、かつ、本件派遣期間満了後、少なくとも、派遣会社から、他の派遣先に、派遣してもらって、就労することができなかったことを認めるに足る証拠もないことから、本件派遣期間満了後、Xが、再就職するまでの逸失利益につき、前記不法行為と相当因果関係があるとは認められない

Xは、派遣先会社の上司の発言を録音しており、これを証拠としたために、裁判所はパワハラを認定しやすかったわけです。

派遣先会社の方は、上記判例のポイント1を参考にしてください。

また、使用者責任のほかに会社の固有の不法行為責任を問われることがありますので、ご注意ください。

金額はそれほど大きなものではありませんが、会社のイメージを壊すものですので、安易には考えないことをおすすめします。

ハラスメントについては、注意喚起のために定期的に研修会を行うことが有効です。顧問弁護士に社内研修会を実施してもらいましょう。