本の紹介80 小さく賭けろ!(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は本の紹介です。
小さく賭けろ!―世界を変えた人と組織の成功の秘密
小さく賭けろ!―世界を変えた人と組織の成功の秘密

帯には、

みんな小さく賭けて、素早い失敗、素早い学習を繰り返していた!

と書かれています。

「計画を延々と練っているよりも、失敗を恐れず試行錯誤を繰り返そう」

という内容の本です。

最初から優れたアイデアがあるわけではないのです。

試行錯誤をしているうちに、優れたアイデアが生まれてくるのです。

この本を読んだとき、すぐに「プランB 破壊的イノベーションの戦略」という本と、マクドナルド社長原田さんの「決定したら実行するではなく、決定しなくてもいいからすぐ実行だ!」という言葉を思い出しました。

新しいことをやろうとするときの心構えとして大変参考になります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

「最後まで諦めずにあっちこっちつまずいて、失敗し続けるのが大切なんだ。ありとあらゆる失敗をして最後に残ったのが、正しいやり方。そこで初めて成功できる。・・・最初からあまりに正しいやり方を追い求め過ぎると、われわれは多くの可能性に対し、心理的に目を閉ざしてしまう。どんなエラーも、どんなリスクも冒さないようにしようと思いつめると、創造的な洞察の芽が摘まれてしまう。もっと心にゆとりを持ち、間違った方向にスタートしていたと気づいても、それを創造的プロセスの一環だと見ることが大切だ。」(60頁)

エジソンも同じようなことを言っていますね。

失敗について、このように成功へのプロセスの一環と捉えることができる人は、失敗を引きずることはありません。

「これでまた、一つ、進化できる」くらいにしか思っていません。

成功の前には、必ず失敗があると思っていれば、失敗をプラスのことと捉えることができます。

むしろ小さな失敗をすることが、軌道修正の機会を与えてくれます。

そもそも失敗を恐れるのはなぜなんでしょう・・・?

恥ずかしいからでしょうか。 他人の評価が下がるからでしょうか。

「もうそんなもん、どうだっていいじゃん。別に最初から評価なんて高くないんだし。」

と思える人は、強いですよね。

「この失敗のせいで」と考えるのではなく、「この失敗のおかげで」と考えられると、失敗は失敗ではなくなるのだと思います。

不当労働行為39(大阪兵庫生コン経営者会事件)

おはようございます。

さて、今日は、複数組合間の不平等取扱いと不当労働行為に関する命令を見てみましょう。

大阪兵庫生コン経営者会事件(中労委平成24年1月18日・労判1042号92頁)

【事案の概要】

Xは、大阪府および兵庫県内の生コンクリート製造会社約70社を会員とする団体である。

Xは、会員各社の平成21年賃金改定等に関して、Y組合およびZ組合と共同交渉を行うとともに、その他3つの組合との間でそれぞれ共同交渉を行った。

Xは、交渉過程で賃上げの有額回答を行うためには、大阪広域生コンクリート協同組合(広域協)が承認可決
した(1)限定販売方式の廃止および(2)ブロック対応金の廃止の施策への労働組合の協力理解が不可欠と考え、これら施策に協力する姿勢を示した組合には、4月14日に有額回答を行う一方、2労組が施策に協力する姿勢を示さなかったとして同月17日まで有額回答をしなかった。

【労働委員会の判断】

組合間で賃上げの回答時期に差を設けたことは不当労働行為に該当する

【判例のポイント】

1 Xは、別労組らに有額回答した同月14日に2労組とも4時間半にわたり交渉しながら、有額回答の条件を明らかにすることはなく、これらについての2労組の考え方を確認することもなく、「先が見えたら同じ回答をする」などと曖昧な回答に終始していた。そして、2労組が、ゼネコンや自治体を回り、広域協を守るために活動していると述べたのに対しても、Xは、具体的な理由も述べず有額回答できない旨繰り返すなど、その交渉態度は、2労組の理解を得るに足る説明や説得を行ったとはいえず、誠実な対応を通じて2労組との間の合意達成を模索する姿勢に欠けるものといわざるを得ない上、およそ2労組に対し別労組らと同時期に有額回答することを目指していたともいえない
このようなXの共同交渉における対応は、有額回答の時期につき別労組らと2労組とを合理的理由もなく差別扱いしたものであり、使用者の中立保持義務に反し、誠実交渉義務を尽くしたものとはいえない

2 ・・・以上に判断したとおり、21年度賃上げに関する2労組との共同交渉において、Xが、別労組らに行った有額回答を行わず、回答時期に差を設けたことは、労組法7条2号及び3号の不当労働行為に当たるとした初審判断は相当である。

複数組合間の中立保持義務に関する判断です。

合理的な理由なく組合により扱いに差をつけると、このような判断につながります。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介79 全盲の僕が弁護士になった理由(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は本の紹介です。

全盲の僕が弁護士になった理由
全盲の僕が弁護士になった理由

弁護士大胡田(おおごだ)先生の本です。

私より1歳年上で、静岡県出身だそうです。

お会いしたことはありませんが、親近感を持ちます。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

見えないことは確かにハンディだけれど、だからこそできる仕事もある。例えば、目の見えない弁護士が、汗をかきながらドタバタと生きていること自体が、依頼者の心を変えることがある。・・・視力を失って、かつては絶望の中にいた。その僕が、今は人をそこから助け出す仕事をしている。こんなに幸せなことはない。だから、障がいを持ちながら弁護士の仕事や司法試験の勉強をしてきて、泣きたいくらいに『しんどい』と思うことが山ほどあったけれど、『やめたい』と思ったことは一度もなかった。」(11~12頁)

ただでさえ、しんどい司法試験の受験勉強です。

大胡田先生の努力は、並大抵のものではなかったはずです。

自らの障がいをマイナスと捉えるのではなく、「そんな自分ががんばっていることで、依頼者の心を変えることだってある」と考えるところが、素晴らしいです。

もう1つ。

弁護士の仕事や司法試験の勉強をしてきて、「しんどい」と思うことはあったけれど、「やめたい」と思ったことは一度もないという点は、とても共感できます。

自分の仕事が好きかどうかって、大切ですよね。

「自分の子どもに、同じ仕事をさせたいと思いますか?」

という質問に、イエスと答えられるかどうか、だと勝手に思っています。

同じ仕事をするのであれば、今やっている仕事が好きだといえる人たちと一緒に仕事をしたいです。

みなさんは、自分の仕事、好きですか?

解雇67(オンライン不動産事件)

おはようございます。

さて、今日は、システムエンジニア等の整理解雇について見てみましょう。

オンライン不動産事件(横浜地裁平成23年7月28日・労判1042号82頁)

【事案の概要】

Y社は、不動産の仲介および売買業を主な目的とする会社である。

Xは、平成18年3月より、派遣社員としてY社に派遣されて勤務した後、平成19年3月から
Y社の社員として雇用され、就労を開始した。

Xの担当業務は、システムエンジニアである。

Y社は、平成21年10月、Xに対し、労働条件通知書および解雇予告通知書を手渡した。

【裁判所の判断】

整理解雇は無効

【判例のポイント】

1 Y社は、本件解雇がいわゆる変更解約告知に該当し、有効であると主張するけれども、本件解雇がいわゆる変更解約告知に該当するかどうかはさておき、本件解雇が解雇に該当する以上、労働契約法16条の定める解雇権濫用法理の規制に服することは当然である。そして、Y社がいわゆる変更解約告知の該当性として主張する事実は、解雇権濫用法理の適用の有無を判断するに際して、考慮すれば足りるものというべきである

2 本件解雇は、いわゆる整理解雇に該当するものと解されるところ、整理解雇は労働者の責めに帰すべき事由による解雇ではなく、使用者の経営上の理由による解雇であって、解雇権濫用法理の適用において、より厳しく判断すべきであり、(1)人員削減の必要性、(2)解雇回避努力、(3)被解雇者選定の妥当性、(4)解雇手続の妥当性の4つの要素を考慮して、その有効性を判断するのが相当である。

3 Y社がXに対して交付した解雇予告通知における解雇事由の記載は、「業務遂行上、支障があるため」、「平成19年3月11日から平成20年3月10日までの年俸契約が終了しているため」であり、・・・本訴において主張する解雇事由と異なることから、本件解雇時点において、Y社において真摯に人員整理の必要性があったか否かについては疑問を抱かざるを得ない。その上、Y社は、平成22年12月、各部門で社員募集を行い、30名を社員として募集する広告を掲載したのであるから、いっそう本件解雇時点においてY社に人員削減の必要性があったことには疑問がある

4 加えて、Y社は、従業員の賃金減額など経費削減に努めたものの、本件全証拠によるも、希望退職者の募集等、従業員の解雇を回避するような努力を尽くした事実は認められない

変更解約告知の論点については、きれいにスルーされています。

「結局のところ、整理解雇なんでしょ」くらいに思われているようです。

解雇予告通知に記載された解雇事由と裁判になってから主張している解雇事由が異なるというケースですね。

裁判所からすると、「おいおい、本当に、人員整理の必要があったのか?」と思ってしまいます。

また、整理解雇をすすめる一方で、新規採用を行うことは、当然、避けなければなりません。

大胆に人員整理を行った結果、結局、人手が足りなくなってしまったというパターンに気を付けましょう。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介78 かばんはハンカチの上に置きなさい(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は本の紹介です。
かばんはハンカチの上に置きなさい―トップ営業がやっている小さなルール
かばんはハンカチの上に置きなさい―トップ営業がやっている小さなルール

いつもお世話になっているプルデンシャル生命のトップセールスマンの本です。

営業職だけでなく、すべての方に参考になる内容です。

一言で言えば、「いかにお客様の立場に立ち、気配りができるか」が大切ということです。

勉強になります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

お客様は『商品と一緒に周りの空気も買っている』のです。『空気』とは、会社の企業理念や、お客様に対するその営業の気遣いや思いやり、または営業の仕事に対する理念、ひいては、その人間の人生観や価値観などです。」(100頁)

その通りですね。

特に生命保険などは、保険という商品のほかに(もっと言えば、商品よりも)、担当者の人間性等を見て、この人とお付き合いしたいという気持ちで保険に入ります。

単に、安いから、商品が良いから、という理由で保険に入ることは、少なくとも私はありません。

まさに、ここで言うところの「空気」を買っているわけですね。

「空気」は、「オーラ」と言い換えてもいいと思います。

「マイナスのオーラ」を漂わせている方よりも、「プラスのオーラ」をまとっている方と一緒にいたいですよね。

これって、保険の営業マンだけに限ったことではありません。

「この人と付き合っていると、前向きになれる、なんだか元気になる」と感じる方から、買いたいと思います。

「空気」、「オーラ」って、とても大切です。

解雇66(東亜外業事件)

おはようございます。 

今日は、工場操業休止に伴う希望退職募集、整理解雇の有効性に関する裁判例を見てみましょう。

東亜外業事件(神戸地裁平成23年11月14日・労判1042号29頁)

【事案の概要】

Y社は、大口径溶接鋼管の製造及び据付並びに各種管工事等を業とする会社である。

Xらは、Y社東播工場に勤務する従業員である。

Xらは、平成23年6月、整理解雇された。

【裁判所の判断】

整理解雇は無効

【判例のポイント】

1 整理解雇は使用者側の事情による解雇であり、労働者側に責めに帰すべき事由がなく、他方で、終身雇用を前提とする我が国の企業においては、解雇回避のために企業としてもそれ相応の努力をすべきであるのに、何の努力もしないで解雇することは労働契約における信義則に反するといえる。
したがって、整理解雇が合理的なものとして有効とされるためには、人員削減の必要性があったかどうか、使用者が解雇回避努力を尽くしたかどうか、解雇の対象者の人選が合理的なものであるのかどうか、解雇の手続が相当であるかどうかなどの観点から、慎重に検討する必要があるといえる。

2 業績不振や業務縮小を理由とする整理解雇は、専ら使用者側の事情に基づく自由によるものであり、労働者に責任のない事由により失職させるものであるから、使用者は整理解雇をできるだけ避けるべく、希望退職者の募集、労働時間の短縮、一時帰休、配転等なしうる解雇回避努力を検討することが必要である。
東播工場においては、人員削減として、社外工の削減を行ったほか、休業の実施、新規採用の取り止め、希望退職者の募集を行っていた事実(もっとも、全社的規模では行っていないようであるが、全社的規模でこれを行うことの費用面や業務効率面、時間面、人心の混乱などのマイナス面を勘案すると、必ずしもこれを全社的に行うべきとすることもできない。)が認められる。
また、Y社においては、希望退職者に対しては、再就職のあっせんを行ったほか、社内他部門に対して、受入打診を行ったが要員充足のため今以上は受け入れることができないとの反応があったことが一応認められる。
もっとも、使用者が労働者に対して、解雇回避義務を負っていることに鑑みれば、これら要員充足という返事が、東播工場からの配転可能性を全く否定するものかどうかは疑問の余地があるのであって、個別的に、配転の希望の聴取や具体的な配転交渉が行われた形跡がない本件においては、解雇回避義務が尽くされたとはいい難いものというべきである。
・・・Y社においては、(一部は非常勤だというが)いぜん9名の社外工を残しているところ、Xらの中にもこれらの仕事に従事することが可能な者があること、東播工場以外においては、新入社員7名の採用を行っていること、給与や賞与面で、経費削減が徹底されているかどうかは疑問の余地もあることからすれば、予め整理解雇基準を定めた上で対象者に対してこれを説明し、個々の従業員らに対して、配転先の打診などをきめ細かに行うことが必要であったといえ、本件で、組合側がこれを拒否しており不可能であったという事情も明確には認められないことからすると、Y社が解雇回避努力を尽くしたものとは認められない

3 整理解雇は、余剰人員を企業の再建という観点から削減するために行われる解雇であるから、誰を整理解雇の対象とするかは、企業の再建にとって必要な人材かどうかという相対的判断によって行うことになる。
・・・しかしながら、ここに記載された以外の、解雇の対象となった従業員らについてどのような評価がされたのかは必ずしも明らかではないこと、たとえば「事業の遂行にとって必要な有資格者を残す」などの整理解雇の基準が従業員らに対して明示されていたとはいい難いことからすれば、人選の合理性が十分に裏付けられたとはいい難い

4 整理解雇は労働者に何らの帰責事由がないにもかかわらず解雇されるものであるから、使用者は、雇用契約上、労働者の了解が得られるよう努力する雇用契約上の義務を負っているというべきであり、使用者は、整理解雇にあたり、労働者や労働組合に対し、整理解雇の必要性、規模、時期、方法等について説明し、十分に協議する義務があり、これに反する解雇は無効となるものというべきである。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介77 とことんやれば、必ずできる(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は本の紹介です。
とことんやれば必ずできる
とことんやれば必ずできる

マクドナルドの社長、原田さんの本です。

以前にも原田さんの「日本マクドナルド社長が送り続けた101の言葉」という本を紹介しました。

原田さんの経営に対する考え方は、とても厳しいです。

甘さが全くありません。

共感できる部分が非常に多いです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

目先の変化に囚われると、しばしば自らの強みを忘れて、あらぬ方向に走ってしまいがち。時代の変化に合わせて根底から崩すのではなく、時代の空気を嗅ぎ取りながら、作り上げてきた路線の上で変革を試みることが重要でしょう。・・・変化に対応しようとすると疲れますが、変化を起こそうとすると元気がみなぎってきます。仕事もいっそう、おもしろく感じられるはずです。」(218頁)

「変化に対応しようとすると疲れますが、変化を起こそうとすると元気がみなぎってきます」

いい言葉ですね。

変化を起こすなんて、言うのは簡単だけど、実際にはそんなことできないよ・・・と思う方もいると思います。

私は、そうは思いません。

私の周りの若い経営者の多くは、「周りが変わらないなら、自分で変えちゃおう」と思っています。

よくブログでも書いていることですが、はじめから「そんなの無理」「アイデアはいいけど、実際にはそんな甘くないよ」などと考えている後ろ向きな方ではなく、「絶対できる!」と成功を信じている前向きな方とだけお付き合いをしたいです。

新しい試みに対して、常に「それ、いいね!」と応援できる人間でありたいと思います。

当然、新しい試みですから、弱い点があるのは当たり前の話です。

20代、30代のチャレンジャーに、批評家は必要ありません。

批評家は、先輩方にお任せいたします。

大きな目標に向かって行動できる度胸と行動力、同じ思いを持った仲間がいれば、たいていのことは成し遂げられると信じています。

労働時間25(エーディーディー事件)

おはようございます。

今日は、専門業務型裁量労働制に関する裁判例を見てみましょう。

エーディーディー事件(京都地裁平成23年10月31日・労判1041号49頁)

【事案の概要】

Y社は、コンピュータシステムおよびプログラムの企画、設計、開発、販売、受託等を主な業務とする会社である。

Xは、Y社の立ち上げのときに誘われ、平成13年5月の成立当初から従業員であった。

Y社では、システムエンジニアについて専門業務型裁量労働制を採用することとし、平成15年5月、労働者の代表者としてXとの間で、書面による協定を締結し、そのときは労基署に届出をしたが、それ以降は届出をしていない。

協定によれば、対象労働者はシステムエンジニアとしてシステム開発の業務に従事する者とし、みなし労働時間を1日8時間とするものである。

Y社においては、平成20年9月に組織変更があり、その頃から、カスタマイズ業務について不具合が生じることが多くなり、その下人はXやXのチームのメンバーのミスであることが多かった。Xは、上司から叱責されることが続き、自責の念に駆られるなどして医院で受診したところ、「うつ病」と診断されたため、平成21年3月に退職した。

なお、Xは、うつ病について労災を申請し、労災認定され休業補償給付がされた。

Y社は、Xに対して、業務の不適切実施、業務未達などを理由に2034万余円の損害賠償請求訴訟を提起した。

これに対し、Xは、Y社に対し、未払時間外手当および付加金の支払等を求めて反訴した。

【裁判所の判断】

Y社のXに対する損害賠償請求は棄却

Y社に対し約570万円の未払残業代の支払を命じた。

Y社に対し同額の付加金の支払を命じた。

【判例のポイント】

1 専門業務型裁量労働制とは、業務の性質上その遂行方法を労働者の裁量に委ねる必要があるものについて、実際に働いた時間ではなく、労使協定等で定められた時間によって労働時間を算定する制度である。その対象業務として、労働基準法38条の3、同法施行規則24条の2の2第2項2号において、「情報処理システム(電子計算機を使用して行う情報処理を目的として複数の要素が組み合わされた体系であってプログラムの設計の基本となるものをいう。)の分析又は設計の業務」が挙げられている。そして、「情報処理システムの分析又は設計の業務」とは、(1)ニーズの把握、ユーザーの業務分析等に基づいた最適な業務処理方法の決定及びその方法に適合する機種の選定、(2)入出力設計、処理手順の設計等のアプリケーション・システムの設計、機械構成の細部の決定、ソフトウェアの決定等、(3)システム稼動後のシステムの評価、問題点の発見、その解決のための改善等の業務をいうと解されており、プログラミングについては、その性質上、裁量性の高い業務ではないので、専門業務型裁量労働制の対象業務に含まれないと解される。営業が専門業務型裁量労働制に含まれないことはもちろんである。

2 Y社は、Xについて、情報処理システムの分析又は設計の業務に携わっており、専門業務型裁量労働制の業務に該当する旨主張する。
確かに、Xにおいては、A社からの発注を受けて、カスタマイズ業務を中心に職務をしていたということはできる。
しかしながら、本来プログラムの分析又は設計業務について裁量労働制が許容されるのは、システム設計というものが、システム全体を設計する技術者にとって、どこから手をつけ、どのように進行させるのかにつき裁量性が認められるからであると解される。しかるに、A社は、下請であるXに対し、システム設計の一部しか発注していないのであり、しかもその業務につきかなりタイトな納期を設定していたことからすると、下請にて業務に従事する者にとっては、裁量労働制が適用されるべき業務遂行の裁量性はかなりなくなっていたということができる。また、Y社において、Xに対し専門業務型裁量労働制に含まれないプログラミング業務につき未達が生じるほどのノルマを課していたことは、Xがそれを損害として請求していることからも明らかである。さらに、Xは、部長からA社の業務の掘り起こしをするように指示を受けて、A社を訪問し、もっと発注してほしいという依頼をしており、営業活動にも従事していたということができる
以上からすると、Xが行っていた業務は、労働基準法38条の3、同法施行規則24条の2の2第2項2号にいう「情報処理システムの分析又は設計の業務」であったということはできず、専門業務型裁量労働制の要件を満たしていると認めることはできない。

3 時間外手当の額について検討するに、平成20年5月以降は、タイムカードを廃止し、それ以前のものは廃棄しているので、Xの労働時間を証する客観的な証拠は存在しない。
Xは、平成20年10月以降の作業日報とそれに基づく労働時間表を提出する。この期間の作業日報は具体的なものであって、Xはそれに記載された労働時間につき労働したものと認めることができる
Xは、平成20年10月1日以前については、上記期間の平均労働時間の80%に相当する時間外労働をしていたと推定しているところ、上記認定のXの業務内容や労働災害認定においても毎月80時間を超える時間外労働があったと認定されていることなどからすると、この推定は一定の合理性を有しているということができ、X主張のとおりの時間外労働時間を認めることができる

上記判例のポイント1には注意が必要です。

入口部分で負けると割増賃金がどえらいことになります。

労働時間に関する考え方は、裁判例をよく知っておかないとあとでえらいことになります。事前に必ず顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。

本の紹介76 商売人の姿勢(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は、本ではなく、雑誌、日経ビジネスの昨年10月24日号の記事を紹介します。

伊藤忠商事 岡藤正広の経営教室 最終回 商売人の姿勢」という記事です。

伊藤忠商事の岡藤社長が、若者の質問に答えるかたちで、プロの商売人の心得を説いています。

さて、岡藤社長の言葉の中で「いいね!」と思ったのはこちら。

心構えとして、もう1つ皆さんに持っていただきたいのは、『まずは目の前の仕事に励む』ということです。・・・あまりにも目標がでかいと、普通の人は、途中でうまくいかなくなった時に、簡単に挫折してしまうんです。僕の尊敬する、京セラ創業者の稲盛(和夫・現日本航空会長)さんがこんなことを言っているんですね。彼が最初に京都で会社を創業した時、まずはその町でナンバーワンの会社を目指したそうです。実際にそれを達成すると、次は区内のナンバーワンやと。そうやって京都一、日本一とコツコツと目標を上げていきながら、今の世界企業、京セラを作り上げていったんですね。
だから、まずは手の届く目標を掲げて、達成していくのが、成長への確実な方法と違うかな。
」(71~72頁)

目標の設定方法について、非常に参考になりますね。

成功体験を繰り返すという観点でも、目標は、大きく持つのではなく、できるだけ小さく持つことが大切です。

小さい目標を1つ1つ、確実に達成していく。

その小さな成功体験が、より大きな目標を達成しようとする際の自信に変わるのだと信じています。

ものごとをやり遂げる「くせ」・「習慣」がついている人は、自分が設定した目標を達成してきたという自負があるため、「今度の目標も達成できるに決まっている」という自信が持てるのです。

目標をなかなか達成できずに、いつも途中であきらめている人は、目標をもっと小さく設定すればよいのです。

これは、仕事に限らず、子どもの勉強等についても同じことが言えますね。

自信をつけるためには、失敗から学ぶよりも、やはり成功体験をどれだけ積めるかが大切なんだと思います。

有期労働契約28(日本航空(雇止め)事件)

おはようございます。

さて、今日は、期間雇用の客室乗務員に対する雇止めに関する裁判例を見てみましょう。

日本航空(雇止め)事件(東京地裁平成23年10月31日・労判1041号20頁)

【事案の概要】

Y社は、定期航空運送事業等を営む会社である。

Xは、平成20年5月、Y社との間で、雇用期間を平成21年4月末までとする雇用契約を締結し、客室乗務員として勤務した。

2年目の契約においては、雇用期間につき、勤務実績の総合評定が一定基準に達しない場合、Y社とX双方合意に基づき雇用期間を延伸することがあり、合意に至らない場合は雇止めとする旨の定めがあった。

Y社は、Xにつき、入社後4か月を得た時点で技術・知識の定着に危惧を抱いており、平成21年3月には、Xの業務への取組姿勢、業務知識、注意力、判断力、確実性等を問題視し、契約更新は実施するものの3か月を限度に経過観察期間と位置付けて「部長注意書」が交付されている。

その後、同年8月までの経過観察期間は延長された後、Y社は、Xの課題および職務遂行レベルのこれ以上の改善は困難と判断し、平成22年3月末、Xに対し、「会社の決定であなたの契約を終了する。今なら自己都合退職にしてあげることもできるので、4月5日までのなるべく早い段階までに気持ちをまとめて伝えて欲しい。」などと通告し、Xが就労の継続を希望すると、2年目の契約の雇止めの通知をした。

【裁判所の判断】

雇止めは有効

本件退職勧奨は違法であり、慰謝料として20万円の請求を命じた

【判例のポイント】

1 本件雇用契約は、契約期間の存在が明記され、また、業務適性、勤務実績、健康状態等を勘案し、Y社が業務上必要とする場合に契約を更新することがあるという条件が明示され、契約の自動更新について何らの定めがない雇用契約であるから、契約社員の2年目契約が自動的に更新されることあるいは雇用期間が通算3年に達した後に正社員として雇用されることがXとY社間の雇用契約の内容となっているということはできない。したがって、契約社員の雇止めについて、当然に解雇権濫用法理の適用がある旨のXの主張は採用することができない。

2 確かに、雇用継続に対する合理的期待については、個別の雇用契約について検討されるべきものであるから、Y社が主張する事情が上記の点の検討に当たり無関係な事情とはいえない。しかし、それ自体が完成された一つのシステムであるといえる契約社員制度が問題となっている本件においては、上記合理的期待の有無の検討に当たっては、契約社員としての業務の性格・内容、契約更新手続の実態、Y社の継続雇用を期待される一般的な言動の有無などの事情を重視すべきものであって、当該契約社員の業務適性やこの点に関してY社とX間に生じた事情等を重視するのは相当ではない(本件は、Y社のXに対する勤務評価それ自体の相当性が争われている事案といえる。)。
以上検討してきたところからすれば、本件雇用契約において、その雇用期間経過によって、雇用契約が当然に終了するというのは相当ではなく、本件雇止めに当たっては、解雇権濫用法理が類推適用されると解すべきである。

3 客室乗務員は、緊急時の保安要員として乗客の安全に重大な責任を負う立場にあること、乗客に対して、高い水準のサービスを提供すべき立場にあることなどの同乗務員の職務内容を考慮すると、その基となったそれまでの評価・判断の妥当性を考慮した上で、Y社における最終的な評価・判断が不合理なものといえないとすれば、本件雇止めは相当なものであって、これが無効なものとなることはないというべきである

4 退職勧奨を行うことは、不当労働行為に該当する場合や、不当な差別に該当する場合などを除き、労働者の任意の意思を尊重し、社会通念上相当と認められる範囲内で行われる限りにおいて違法性を有するものではないが、その説得のための手段、方法が上記範囲を逸脱するような場合には違法性を有すると解される。
・・・同年9月14日及び15日の退職勧奨を趣旨とする言動は、Xが同月5日付け書面で明確に自主退職しない意思を示しているにもかかわらず、「いつまでしがみつくつもりなのかなっていうところ。」「辞めていただくのが筋です。」などと強くかつ直接的な表現を用い、また、「懲戒免職とかになったほうがいいですか。」と懲戒免職の可能性を示唆するなどして、Xに対して退職を求めているものであり、当時のXとAの職務上の関係、同月15日の面談は長時間に及んでいると考えられることなどの諸事情を併せ考慮すると、上記言動は、社会通念上相当と認められる範囲を逸脱している違法な退職勧奨と認めるのが相当である

雇止めについては、有効と判断しています。

これに対して、退職勧奨については、一部、違法性を認めています。

従業員が自主退職しない意思を示しているにもかかわらず、「いつまでしがみつくつもりなのか」「辞めてもらうのが筋」などと発言したり、「懲戒免職になったほうがいいですか」などと自主退職を暗に強要する発言は、許容された退職勧奨の範囲を逸脱するというわけです。

気を付けましょう。

有期労働契約は、雇止め、期間途中での解雇などで対応を誤ると敗訴リスクが高まります。

事前に顧問弁護士に相談の上、慎重に対応しましょう。