不当労働行為38(宮古毎日新聞社事件)

おはようございます。

さて、今日は、正社員不登用と不当労働行為に関する命令を見てみましょう。

宮古毎日新聞社事件(沖縄県労委平成23年11月28日・労判1040号95頁)

【事案の概要】

平成18年5月に結成された組合はを、Y社の契約社員4名および正社員5名で組織している。

Y社は、16年8月から契約社員との間で書面による雇用契約を締結するようになり、その契約期間は数ヶ月~3年で、更新されることもあり、組合結成時から22年6月までの間に、13名の契約社員またはパートタイム従業員を正社員に登用している。

なお、Y社は、22年5月、社内掲示板に正社員募集告知を掲示し、宮古毎日新聞に募集告知を掲載し、6月、契約社員であった非組合員1名を正社員に採用した。

組合は、組合結成前から契約社員として就労していた組合員Xら3名を正社員として登用しなかったことおよび正社員化要求に関する団交に誠実に対応しなかったことが不当労働行為であるとして救済を申し立てた。

【労働委員会の判断】

正社員不登用は不当労働行為にあたらない

不誠実団交は不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 組合が団体交渉でXらの正社員化を求め続けているにもかかわらず、Y社が事前に情報を提供しないまま正社員を募集したことは、配慮を欠く対応であったとも考えられるが、組合とY社の間に正社員募集について契約社員に周知する方法などを定めたルールもなく、募集期間が短期間であったことも、応募者全員に共通する事情であることを併せ考えると、Y社が特に組合員の応募を妨げたものと認めることはできない。
以上のとおり、Y社がXらを正社員にしなかったことは、労組法7条1号に定める不当労働行為と認めることはできない

2 Y社は、組合が正社員へ登用された人数を質問したことに対し、専門家に確認するなどと述べて具体的な回答をせず、契約社員から正社員にした理由を質問したことに対しても、具体的な回答を回避する対応に終始した。
契約社員の正社員化については、義務的団体交渉事項であり、一般的・抽象的な理由で回答を回避することは、団体交渉において、使用者に求められる誠意ある対応ということはできず、不誠実な交渉態度である

3 組合は、勤務シフト表とY社が答えた従業員数が異なっていたため、その差異を質問したことに対し、Y社は従業員の個人情報であるなどとして、具体的に説明しなかった。
従業員数は、賃金台帳等で確認すれば、容易に対応できるものであるにもかかわらず、それを怠り、いたずらに団体交渉を引き延ばし、個人情報であるなどとして、組合への説明を拒否しているY社の対応は、不誠実な交渉態度である

正社員不登用の点については、不当労働行為に該当しないと判断され、不誠実団交については不当労働行為に該当すると判断されています。

後者については、「一般的・抽象的な理由で回答を回避」すると、このように判断されてしまいます。

会社としては、正直、あまり答えたくないようなことや適切な回答ができない場合もあると思いますが、そこは、顧問弁護士等と対応を考えて、誠実に交渉に応じることをおすすめします。

本の紹介69 ジョブズの哲学(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は、本の紹介です。
ジョブズの哲学 ~カリスマが最後に残した40の教え~ (だいわ文庫)
ジョブズの哲学 ~カリスマが最後に残した40の教え~ (だいわ文庫)

ジョブズさんが亡くなってから、書店には、多くの「ジョブズ本」が並ぶようになりました。

読んでいると、正直、ジョブズさんの部下は大変だっただろうなーと思ってしまいます(笑)

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

自分がまもなく死ぬかもしれないと考えることは、人生で大きな選択を行うときにとてもよく役に立ちました。死を目の前にすれば、まわりからの期待やプライド、挫折や失敗への恐れなど消し飛んでしまうからです。そして本当に大切なことだけが残ります。死を思えば、何かを失うのではと考える罠にはまらずに済みます。自分の心に従わない理由などありません。」(159~160頁)

これは、膵臓癌の手術をしたジョブズさんが、2005年、スタンフォード大学で学生に向けて行ったスピーチで話した内容だそうです。

死を目の前にしていない人が、同じように考えるのは、簡単なことではありません。

私自身、ジョブズさんと同じ心境でものごとを判断することは、今のところ、できないだろうな~と思います。

とはいえ、死を目の前にしなくても、まわりからの期待やプライド、挫折や失敗への恐れに振り回されず、人生の選択をすることはできると思います。

特に、現状維持を善としない習慣が身についている者にとっては、何かに挑戦していること=生きること、という考えを持っています。

「挫折や失敗はつきもの」くらいにしか思っていません。

あえて「習慣」という言葉を使いましたが、決して「性格」ではないと信じています。

習慣化されて、いつの間にか性格のように、無意識にそのように考えるようになっているだけだと思います。

私の事務所も、今年中に、もう1度、少し大きな挑戦をしたいと思い、現在、計画中です。

派遣労働9(ワークプライズ(仮処分)事件)

おはようございます。 

さて、今日は、派遣労働と期間途中の解雇に関する裁判例を見てみましょう。

ワークプライズ(仮処分)事件(福井地裁平成21年7月23日・労判984号88頁)

【事案の概要】

Y社とXは、平成20年11月、雇用期間を平成21年11月までとする雇用契約を締結した。

Y社は、Xを期間途中で解雇した。

Y社は、「本件解雇は、世界的不況の影響で派遣先企業のZ社の出荷が極端に減少して従前の生産規模を維持できなくなり、大幅な生産調整が契機となって他の事業部門へ配置転換する余地もなく、同社の事業上やむを得なくY社との労働者派遣契約が中途解約されたことに基づくものである。この解約により、Y社としては、Xと締結していた、Z社を派遣先とする派遣労働契約を維持することができなくなったことから、会社存続の観点からやむにやまれず選択せざるを得なかった方途として実施したものである。」などと主張した。

【裁判所の判断】

解雇は無効

【判例のポイント】

1 派遣先であったZ社の経営状態に起因する労働者派遣契約の中途解約をもって、直ちに、Y社がXを解雇する「やむを得ない事由」があるとは認められない

2 次に、Y社は、会社存続の観点からやむにやまれず実施した解雇であり、一般企業の行う「整理解雇」に準じるものであるなどと主張するが、Y社の経営内容、役員報酬など、経営状態やその経営努力について何ら具体的な状況は疎明してはおらず、したがって、Y社の上記主張は直ちに採用できない
他に、Y社がXを解雇する「やむを得ない事由」があることの疎明はない。
したがって、Y社の主張するXに対する解雇は無効である。

3 Y社に民法536条2項の「責めに帰すべき事由」が認められるのであれば、Xには賃金全額の請求が認められるところ、Y社は、「派遣先であったZ社から派遣契約を打ち切られて将来の収入を閉ざされたY社の経営破綻を回避するべく、やむを得ず解雇に及んだものであって、本件解雇事由は外部起因性、防止不可能性を有する『経営上の障害』によるものであるから、上記帰責事由には当たらないと主張する。
確かに、Y社は、派遣を求める派遣先企業の存在があってはじめてXらに労働の場を提供できるうえ、その需要も様々な要因により変動するものである。さらに、派遣労働者の需要は留保しておくことができない性質のものではある。
しかしながら、Y社としては、労働者派遣業の上記特質を理解したうえ、派遣労働者確保のメリットと派遣労働者に対する需要の変動リスク回避などの観点を総合的に勘案して、派遣期間だけ労働契約を締結する形態ではなく、期間1年という期間を定める形で労働契約を締結したのであるから、その契約期間内については派遣先との労働者派遣契約の期間をそれに合わせるなどして派遣先を確保するのが務めであり、それによって労働契約中に派遣先がなくなるといった事態はこれを回避することができたのである。
したがって、本件において、X社との間の労働者派遣契約が解約され、その当時、Xに対する新たな派遣先が見出せず、就業の機会を提供できなかったことについては、Y社に帰責事由が認められるというべきである。これについてY社の主張する防止不可能性を有する経営上の障害によるものとは認められず、民法536条2項の帰責事由がないとの主張は採用できない

したがって、Xは、賃金全額の支払を受ける権利を有する

この仮処分決定によると、本件のようなケースでは、派遣会社は、派遣労働者に対し、派遣期間の残りの期間について、賃金全額を支払わなければならないわけです。

60%だけではダメということです。

派遣期間の残りの期間が長い場合、派遣会社としては結構な出費になりますね。

派遣元会社も派遣先会社も、対応に困った場合には速やかに顧問弁護士に相談することをおすすめします。

本の紹介68 あたりまえのアダムス(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は本の紹介です。
あたりまえのアダムス
あたりまえのアダムス

10年前の本です。

久しぶりに読んでみました。

懐かしいです。

物語風で、15分もあれば読めてしまいます。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

相手が自分の考えを受け入れてくれないとき、私たちはすぐにしびれを切らしてしまいがちです。・・・私たちは、ときには何日も、何週間も、あるいは何か月も費やしてあるアイデアにたどりつくので、そのアイデアの長所も短所も知りつくしています。だから、相手もそのアイデアをすぐに受け入れてくれると期待します。しかし、そんなことはまずありません。彼らには頭と心でそれを受け入れるまでに、つまり精神的に『消化』するまでに、時間が必要です。」(72~73頁)

少しずれますが、何か新しいことをやろうとするとき、第三者に相談する場合があります。

でも、どうしてもやりたい場合には、相談なんてしないでどんどんやったほうがいいのではないかと思います。

相談した相手が「そんなのうまくいかないよ。危ないからやめときな。」と言ったら、やめるのでしょうか。

第三者に止められてやめるような意気込みなら、やめておいた方がいいんでしょうね。

もしどうしても第三者に相談したいのであれば、相談内容を変えるべきです。

「こういうことをやろうと決めたのですが、何か気を付けた方がいいことはありますか。」のような相談内容がいいのではないでしょうか。

新しいことをやろうとする場合、相談された側も「おもしろいけど、実際は難しいんじゃないの」と思ってしまうことがあります。

楽天やZOZOTOWNなんか、その典型です。

やりたいことがあるなら、どんどんやればいいんですよ。

不当労働行為37(吉富建設事件)

おはようございます。

さて、今日は、団交拒否に関する裁判例を見てみましょう。

吉富建設事件(中労委平成23年12月7日・労判1040号94頁)

【事案の概要】

平成21年3月に開店した串焼き屋は、不動産業等を営むY者の社長が自ら賃借したビルの一室で飲食店を営むため、Xとの交渉をY社のマネージャーAに委ねて、その準備に当たらせたものである。

また、Xは、串焼き屋の店内スタッフについて、Aマネージャーの指示により募集を進め、B及びCを採用した。

平成21年5月に串焼き屋が閉店するまで、Xは、Aマネージャーから売上高等の報告を求められ、Aマネージャーは、収支管理を行い、Xらの給料をXの口座に振り込んだりした。

Xら3名は、平成21年5月、組合に加入し、組合は、同月、Y社に対し、Xらの未払賃金の支払等を議題とする団交を申し入れた。

Y社は、串焼き屋の経営者はZであり、Y社と関係ないこと、組合員と雇用契約がないことなどを理由に団交に応じられないと通知した。

【労働委員会の判断】

Y社が団交に応じなかったことは不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 串焼き屋開店準備段階から閉店に至る段階において、AマネージャーがX組合員に対して売上高等の報告を求めたり、自ら串焼き屋の収支管理を行っていることから、串焼き屋の業務運営はY社の指揮監督下にあったとみるのが相当である。また、Aマネージャーは、X組合員ら3名分の給料をX組合員の口座に振り込んだり、社会保険加入に言及しており、また、X組合員ら3名のタイムカードが存在することからすると、X組合員ら3名は串焼き屋お従業員として就労していたものであり、その賃金等の労働条件はY社が決定していたということができる。
以上からすると、X組合員ら3名は、Y社の指揮監督の下で労働力を提供し、これに対する報酬として賃金を受領していたとみるべきである。そうすると、本件においては、X組合員とY社との間には、契約書等は存在しないが、実質的に雇用関係が成立していたと解するのが相当である

2 Y社は、X組合員ら3名との関係において、労組法7条の使用者に該当するものであるから、Y社は本件団体交渉申入れに応ずるべき立場にある。よって、本件におけるY社の対応には正当な理由はなく、これは労組法7条2号の不当労働行為に該当する。

労組法上の使用者性が問題となっています。

Y社が労組法上の使用者にあたることは、事案の内容からすると、争う余地がないように思いますが。

私は、団交には、できる限り応じた方がいいと考えています。

あまり、使用者性がどうとか、義務的団交事項がどうとかを厳格に解釈せずに、微妙だったら、とりあえず応じるというスタンスがいいと考えています。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介67 ビジネスで一番、大切なこと(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は、本の紹介です。
ビジネスで一番、大切なこと 消費者のこころを学ぶ授業
ビジネスで一番、大切なこと 消費者のこころを学ぶ授業

ハーバード・ビジネススクール教授の本です。

この本も、おすすめの1冊です。

「はじめに」で、著者は、

たいして違いのない大量の選択肢や、戸惑うほど多くの機能にうんざりしている。ところが店に足を踏み入れれば、企業がいまだにこのことを理解していないのは一目瞭然だ。」(4頁)

と、消費者無視の過剰な差別化競争に警鐘を鳴らしています。

全体を通して非常に興味深い内容でした。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

今日のビジネスにかかわりを持つ誰もが、何が『違い』になり得るかを忘れている。差別化についての考え方は、どこかが間違っている。『差別化』というコンセプトを口では賞賛しながらも、実際には違いではなく、類似性ばかりが目立つブランドを生み出し続けているのだから。・・・『わが社のブランドは他社とは違います』と伝えてみても、企業も顧客もそうではないとわかっている。誰もが同じ流れの中を漂っている。」(159頁~160頁)

消費者と同じ目で見ることが重要なのだ。消費者の目にはぼんやりとカテゴリー全体が見えるだけで、個々のブランドは映っていない。この不鮮明さから抜け出すこと。それが『違っている』ということなのだ。」(161頁)

なるほど。

企業の目が競合他社に向いていると、「差別化」がおかしな方向に行ってしまいます。

消費者にとっては、「そんな差別化、どうだっていいよ」と思ってしまうのです。

「差別化」という言葉だけが独り歩きし、消費者、顧客の目線はいずこへ・・・という状況です。

「消費者と同じ目で見ること」が難しいのですけどね。

「差別化」という言葉と同様に、「消費者と同じ目で見る」という言葉がモットーとなってはいるものの、実際に、消費者と同じ目で商品やサービスを考えることは、とても難しいのです。

業界に入り込めば入り込むほど、一般消費者や顧客の心がわからなくなってくるのです。

「消費者と同じ目で見る」ってどういうことなんだろう?

この疑問に対する答えとなるヒントも、いろいろな本に載っています。

少しのヒントとたくさんの試行錯誤が、この壁を突破するカギになるのだと思っています。

派遣労働8(三菱電機ほか(派遣労働者・解雇)事件)

おはようございます。 また一週間がはじまりましたね。がんばっていきましょう!!

さて、今日は、派遣労働者と派遣先との黙示の労働契約の成否に関する裁判例を見てみましょう。

三菱電機ほか(派遣労働者・解雇)事件(名古屋地裁平成23年11月2日・労判1040号5頁)

【事案の概要】

Y1社は、各種電気機械器具等の製造ならびに販売などを目的とする会社である。

Y2社は、製造ライン業務請負業、一般労働者派遣事業等を目的とする会社であり、Y1社にも労働者を派遣している。

Y3社は、一般労働者派遣事業、人材紹介事業等を目的とする会社であり、Y1社にも労働者を派遣している。

Y4社は、一般労働者派遣事業、人材紹介事業等を目的とする会社であり、Y1社にも労働者を派遣している。

Y1社は、リーマンショックによる世界同時不況の影響を受けて生産量が落ち込んでいるため、大幅な生産調整を行うことによる過剰人員については、Y2社らをはじめとする各派遣会社との派遣契約を解約し、派遣労働者の受け入れを解消する方針を急遽決定した。

【裁判所の判断】

黙示の雇用契約の成立は否定

Y1社・Y2社に対し、連帯して慰謝料の支払うように命じた

【判例のポイント】

1 労務の提供をしている労働者と労務の提供を受けている事業主との間に、雇用契約が成立しているといえるか否かは、明示された契約の形式のみによって判断されるものではなく、両者の間に、雇用関係と評価するに足る実質的な関係が存在し、その実質的関係から両者間に客観的に推認される黙示の意思の合致があると認められるか否かによって判断されるべきであり、雇用関係と評価するに足る実質的関係があるといえるか否かは、人事労務管理などを含めた事実上の使用従属関係の存否、賃金支払関係の存否などによって総合的に判断されることになると解されるところ、労働者派遣の場合にあっては、労務の具体的な指揮命令は、派遣先においてなすことが予定されているから、派遣労働者と派遣先事業主との間に黙示の雇用契約が認められるためには、派遣元事業主が名目的な存在にすぎず、派遣先事業主が、派遣労働者の採用や解雇、賃金その他の雇用条件の決定、職場配置を含む具体的な就業態様の決定、懲戒等を事実上行っているなど、派遣労働者の人事労務管理等が、派遣先事業主によって事実上支配されているといえるような特段の事情がある場合であることを必要とするものと解するのが相当である

2 仮に、直接雇用義務が発生していたとしても、契約の意思表示を擬制することはできないから、そのことのみで黙示の雇用契約の成立を推認できるものでないことは明らかであり、また、Y1においてはもとより、Xらにおいても、Y1の就業期間中に、労働者派遣法による派遣期間が既に経過していて直接雇用をされなければ就業できない状況下で就業していたとの認識までは当時なかったものであり、本件全証拠によっても、黙示の雇用契約の成立を推認できる事情があったとは認めるに足りないというべきである。

3 派遣先事業主が派遣労働者を受け入れ、自社において就業させるについては、労働者派遣法上の規制を遵守するとともに、その指揮命令の下に労働させることにより形成される社会的接触関係に基づいて派遣労働者に対し信義誠実の原則に則って対応すべき条理上の義務があるというべきであり、ただでさえ雇用の継続性において不安定な地位に置かれている派遣労働者に対し、その勤労生活を著しく脅かすような著しく信義にもとる行為が認められるときには、不法行為責任を負うと解するのが相当である

4 ・・・上記一連の経過の中でのY1によるXらに関わる労働者派遣契約の中途解約は、いかにY1が法的にXらの雇用主の地位にないとはいえ、著しく信義にもとるものであって、ただでさえ不安定な地位にある派遣労働者の勤労生活を著しく脅かすものであり、Y1が、X3及びX1の関係で解約日を9日間延長するとともに、X2の関係を含め派遣労働者による有給休暇の消化に加え、自己都合による欠勤の場合にも給与相当額を補償することとしたことを考慮しても、派遣先事業主として信義則違反の不法行為が成立するというべきである。

5 Y2社が一定の努力をしたことを考慮しても、X3に対する不法行為が成立すると認めるのが相当であり、Y1の前記信義則違反の対応と相まって、X3に対し、多大な精神的苦痛を与えたものであり、Y1の行為とY3の行為には、少なくとも強い客観的関連共同性が認められるから、共同不法行為を構成し、Y1とともに、X3の受けた精神的損害について賠償責任を負うというべきである

この判例は、とても重要な判例ですね。

派遣先と派遣元の二社が、労働者派遣契約の中途解約について、共同不法行為責任を負うとされています。

派遣元会社も派遣先会社も、対応に困った場合には速やかに顧問弁護士に相談することをおすすめします。

本の紹介66 ブルー・オーシャン戦略 競争のない世界を創造する(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 

さて、今日は、本の紹介です。
ブルー・オーシャン戦略 競争のない世界を創造する (Harvard business school press)
ブルー・オーシャン戦略 競争のない世界を創造する (Harvard business school press)

これまで読もう読もうと思いつつ、読んでこなかった本です。

今から8年前に出版された本ですが、今読んでも、何の違和感もありません。

ポイントだけ簡単に知りたい方は、こちらをおすすめします。
ポケット図解 チャン・キムとモボルニュの「ブルー・オーシャン戦略」がわかる本―競争のない未開拓市場を創る! (Shuwasystem Business Guide Book)
ポケット図解 チャン・キムとモボルニュの「ブルー・オーシャン戦略」がわかる本―競争のない未開拓市場を創る! (Shuwasystem Business Guide Book)

こちらも読んでみましたが、よくまとまっています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

レッド・オーシャンから抜け出すためには、市場の境界を従来どおりにとらえていたのではいけない。市場の内側だけに目を奪われるのではなく、いくつもの市場を体系的に俯瞰して、ブルー・オーシャンを創造しなくてはならない。代替業界に目を向け、さまざまな戦略グループ、買い手グループ、補完製品や補完サービスを視野に入れ、機能志向から感性志向へ、感性志向から機能思考へと発想を切り替え、現在だけでなく将来にも思いを馳せるのである。すると、市場の現実を新たな視点でとらえ、ブルー・オーシャンを開拓するための貴重な知恵が浮かぶだろう。」(74頁)

いろいろなマーケティング本を読んでいるせいか、最近、あまり新鮮さを感じなくなっています(笑)

総論としては、だいたい同じようなことをいろいろな言い回しで書かれています。

そろそろ卒業しようかな、と思います。

発想自体がとてもおもしろく、いい気分転換になるので、ついついマーケティング本を読んでしまいます。

もう趣味の世界ですね。

新規プロジェクトに是非とも活かしたいと思います。

不当労働行為36(神奈川都市交通事件)

おはようございます。

さて、今日は、定年後準社員の雇止めと不当労働行為性に関する裁判例を見てみましょう。

神奈川都市交通事件(東京地裁平成23年4月18日・労判1040号69頁)

【事案の概要】

Y社は、一般常用旅客自動車運送事業等を営む会社で、神奈川県を中心に11か所の営業所を有し、従業員数は1541名であり、川崎営業所の従業員は約230名であった。

Xは、昭和61年2月、Y社に入社し、以後、タクシー乗務員として川崎営業所に勤務していた。

XらとY社との間では、事務所使用料および組合役員手当金等請求、休業補償等請求、未払賃金の支払請求、解雇された組合員の地位確認、団交におけるY社の対応についての不当労働行為救済申立等の紛争が生じ、それぞれ訴訟等に至っている。

Xは、平成14年4月、満60歳の定年に達し、その後3回契約更新されたが、16年4月、期間満了により雇止めとなった。

【裁判所の判断】

本件雇止めは、不当労働行為にあたらない

【判例のポイント】

1 Y社の就業規則の規定上、満60歳の定年以降、満62歳までの雇用延長と、満62歳以降の準社員としての採用を明確に区別して規定し、満62歳以降の者を準社員として採用するに当たり、「特に会社が必要とする者及び本人の希望により会社が認めた者」について採用することがあるという以上、満62歳以降の準社員としての採否に際し、Y社に裁量権があることは明らかである

2 Y社が、満62歳に達した乗務員を準社員として採用するか否かについては、裁量権があるものの、仮にY社の裁量権行使に際して考慮した事情が、全く事実の基礎を欠くとか、考慮してはならない事情を考慮した等、与えられた裁量権の範囲を逸脱、濫用したと認められる場合には、そのような行為を行ったY社の雇止めには、不当労働行為意思を認める余地がある

3 Xを準社員として採用するか否かを決するに当たり、就業時間中の休憩取得指示違反、就業時間中の組合活動、制帽着用義務違反及びタコメーターの開閉等の事情を考慮することは、いずれも相当というべきであり、本件雇止めに至るY社の判断には、裁量権の逸脱、濫用があったとは認められない。

継続雇用に関し、会社側に裁量を認め、裁量権を逸脱していないかを判断しています。

行政事件のような発想ですね。

採用の可否について、会社側が判断要素としたものはすべて不当労働行為に該当しないとし、裁量権の逸脱・濫用はないと結論づけています。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介65 「自分ごと」だと人は動く(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は本の紹介です。
「自分ごと」だと人は動く
「自分ごと」だと人は動く

この本は、とても示唆に富んでいます。

サブタイトルは、「情報がスルーされる時代のマーケティング」です。

情報が溢れている社会で、コミュニケーションを成功させるカギは「自分ごと」なのだそうです。

言わんとしていることは、わかります。

さて、この本を「自分ごと」として捉え、どうやって具体化していこうかと考えてしまいます。

この本には、「自分ごと」に実現方法や成功例が掲っていますので、とても参考になります。

この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

情報溢れる世の中では、『ちゃんとした候補者のちゃんとした情報』はスルーされがち。生活者は普通の、言い換えればどこか既観感のある情報に目をやる暇を持ち合わせていないのです。少々厳しめの言い方をすれば、普通の情報は価値が低いのです。」(137頁)

キッカケこそが非常に大切。少々乱暴ですけど、伝えたいことをきれいにまとめよう、なんて考えてはいけません。完全ではない、突っ込みどころが目立つ情報の方がいいのです。」(137頁)

確かにそうですよね。

町中には広告がいたるところにあります。

当然、目には入っていますが、自分に関係がない広告は、ほんの少し見て、スルーしています。

本や雑誌も同じです。

1頁目から最後のページまで一字一句熟読することはまれです。

自分が興味を持つテーマは熟読しますが、そのほかは、流し読みです。

このことは、企業が、商品やサービスの差別化を図る際、顧客がたいして関心のないところで差別化を図っても、「自分ごと」として捉えないため、結局、スルーされてしまいます。

非常に示唆に富んでいますね。

また、このことは、マーケティングの分野に限らず、他のことでも同じことが言えますね。

例えば、セミナーを行う際、いかに受講者に「自分ごと」として捉えてもらえるか、が非常に重要になってきます。

「なんか重要、重要って言っているけど、うちの会社では関係ないな」と思った時点で、講師がいくら熱弁を振るっても、完全にスルーされてしまいます。

「他人ごと」ではなく、「自分ごと」であることをいかに認識してもらえるか、これからじっくり考えていこうと思います。