労災28(日研化学事件)

おはようございます。

今日もまだ予定は入っていません

ちょっと海までドライブしようかと思っています。

海を見て、いかに自分が小さいかを再確認してきます

・・・病んでる?

それ以外は、書面作成に徹します!!

今日も一日がんばります!!

さて、今日は、労災に関する裁判例を見てみましょう。

日研化学事件(東京地裁平成19年10月19日・労判950号5頁)

【事案の概要】

Y社は、医薬品の製造、販売等を業とする会社である。

Xは、大学卒業後、Y社に入社し、医療情報担当者(MR)として勤務していた。

MRの業務とは、製薬会社の営業担当者として医療機関を訪問し、自社医薬品に関する有効性、安全性等の情報を、医師をはじめとする医療従事者に的確に伝え、医療従事者からの情報を製薬会社にフィードバックすることにより、自社製品の適切な処方の拡大を推進する業務である。直接医師に面会して医薬品の説明を行う他、説明会を実施する等する。

Xは、家族や上司を名宛人とする8通の遺書を残し、自殺した。

【裁判所の判断】

静岡労基署長による遺族補償給付等不支給処分は違法である。
→業務起因性肯定

【判例のポイント】

1 精神障害の発症については、環境由来のストレスと、個体側の反応性、脆弱性との関係で、精神的破綻が生じるかどうかが決まるという「ストレス-脆弱性」理論が、現在広く受け入れられていると認められることからすれば、業務と精神障害の発症との間の相当因果関係が認められるためには、ストレス(業務による心理的負荷と業務以外の心理的負荷)と個体側の反応性、脆弱性を総合考慮し、業務による心理的負荷が、社会通念上、客観的にみて、精神障害を発症させる程度に過重であるといえる場合に、業務に内在又は随伴する危険が現実化したものとして、当該精神障害の業務起因性を肯定することが相当である。

2 ICD-10のF0~F4に分類される精神障害の患者が自殺を図ったときには、当該精神障害により正常な認識、行為選択能力及び抑制力が著しく阻害されていたと推認する取扱いが、医学的見地から妥当であると判断されていることが認められるから、業務により発症したICD-10のF0~F4に分類される精神障害に罹患していると認められる者が自殺を図った場合には、原則として、当該自殺による死亡につき業務起因性を認めるのが相当である。その一方で、自殺時点において正常な認識、行為選択能力及び抑制力が著しく阻害されていなかったと認められる場合や、業務以外のストレス要因の内容等から、自殺が業務に起因する精神障害の症状の蓋然的な結果とは認め難い場合等の特段の事情が認められる場合には、業務起因性を否定するのが相当である。

3 Xの上司であるZ係長は、Xに対し、「存在が目障りだ、居るだけでみんなが迷惑している。おまえのカミさんも気がしれん、お願いだから消えてくれ」、「お前は会社を食いものにしている。給料泥棒」、「お前は対人恐怖症やろ」、「肩にフケがベターと付いている。お前病気と違うか」等と発言している。Z係長は、Xについて、部下として指導しなければならないという任務を自覚していたと同時に、Xに対し、強い不信感と嫌悪の感情を有していたものと認められる。

4 また、Xの所属していた係の勤務形態につき、直行直帰を原則とし、月曜午前の定例打合せのほかは、不定期に週1、2回集まるというもので、他の同僚やZ係長より上位の社員との接点がない等、Z係長から厳しい発言を受けることのはけ口がなく、本件会社が人事管理面から従業員間の関係を適正に把握しがたいことから、むしろ心理的負荷を高めるという側面がある

5 (1)Z係長の発言は、言葉自体が過度に厳しく、10年以上のMRとしての経験を有するXのキャリアを否定し、なかにはXの人格、存在自体を否定するものもあったこと、(2)Z係長のXに対する態度に、Xに対する嫌悪の感情の側面があること、(3)Z係長は、Xに対し、極めて直截なものの言い方をしていたと認められること、(4)静岡2係の勤務形態が、本件のような上司とのトラブルを円滑に解決することが困難な環境にあること、から、Z係長のXに対する態度によるXの心理的負荷は、人生においてまれに経験することもある程度に強度のものということができ、一般人を基準として、社会通念上、客観的にみて、精神障害を発症させる程度に過重なものと評価するのが相当である。

本件は、Xの上司からのパワハラを原因とした自殺を労災と認めたケースです。

注目すべきは、上記判例のポイント4です。

上司のパワハラのみならず、上司とのトラブルを円滑に解決することが困難な環境にあることも業務起因性を肯定する一要因としている点です。

パワハラを原因とする以上、労災のほかに、民事事件として、会社は、損害賠償請求をされる可能性があります。

会社全体として、本件のような事態を回避する具体策を講じなければいけません。

会社の業種、規模、従業員の勤務形態等により対策の内容は異なると思います。

詳しくは、顧問弁護士又は顧問社労士に相談してみてください。

競業避止義務12(フューチャーアーキテクト事件)

おはようございます。

さて、今日は、競業避止義務に関する裁判例を見てみましょう。

フューチャーアーキテクト事件(東京地裁平成21年1月19日・判時2049号135頁)

【事案の概要】

Y社は、企業経営・情報システムのコンサルティング業務、情報システムの設計・開発等を業とする会社である。

Xは、Y社に従業員として雇用されたが、約5年後、Y社から懲戒解雇された。

Y社とXとの間には、機密保持契約が締結されており、Xは、同契約に基づき、Y社の事業と競合し又はY社の利益と相反するいかなる事業活動にも従事、投資又は支援しない義務を負っていた。

Xは、Y社との雇用契約上の競業避止義務に違反して、Y社在職中に、Y社と競合するA社に出資し、その後、A社が株式会社に組織変更された際に株主となり、その後、A社の代表取締役に就任した。

A社は、Y社の顧客Z社から継続的に業務を請け負った。

Y社は、これにより、Y社がZ社から業務を受注する機会を喪失させたと主張し、Xに対し、損害賠償を請求した。

【裁判所の判断】

本件競業避止義務に関する合意は、有効である。

【判例のポイント】

1 Xは、Y社在職中、A社に出資し、その後、A社が株主会社に組織変更された際にはA社の株主となり、その後、A社の代表取締役に就任し、現在も、発行済み株式200株のうち10株を保有していること、加えて、Y社は、企業経営・情報システムのコンサルティング業務、情報システムの設計・開発等を業とする会社であること、A社は、Y社からABプロジェクトの業務の一部を受託するなどY社との取引関係を有していたこと、A社は、本件各取引により、ソフトウェアプログラムの開発業務やシステムのメンテナンス業務を請け負っていたこと、Y社は、ABプロジェクト以外において開発したシステムのメンテナンス業務を請け負うこともあったことからすれば、A社は、Y社の事業と競合し、Y社の利益と相反する事業活動を行っていたものであって、Xは、A社の事業活動に従事し、A社に等し、支援していたと認められる。
そうすると、Xは、Y社の事業と競合し、Y社の利益と相反する事業活動に従事し、投資、支援したものと認められ、本件競業避止義務に違反したものというべきである

2 Xの本件競業避止義務違反の結果、Y社が本件各取引をZ社から受注する機械を喪失したと認めることはできないから、Y社のXに対する競業避止義務違反に基づく損害賠償請求は、理由がない

本件は、在職中の従業員の競業避止義務違反が問題となっています。

競業避止義務違反であることについては、あまり異論がないところだと思います。

本件のポイントは、競業避止義務違反を認めつつも、損害の立証がないとして、その部分についてのY社の請求を棄却した点です。
(なお、本件は、別の理由で、Xに対し、約880万円の支払いを命じています。)

競業避止義務違反による損害賠償請求は、その損害の立証が困難です。

会社側としては、この裁判例を参考にし、事前に適切な対策をとるべきです。

対策方法については、顧問弁護士に質問してみてください。

競業避止義務違反が認められたけれど、損害賠償請求は棄却された、では意味がありません。

労災27(東芝事件)

おはようございます。

今日から、通常通り、事務所で仕事を始めます!

今年は、やりたいことがいっぱいあります

1年間、突っ走ります

今日も一日がんばります!!

さて、今日は労災に関する裁判例を見てみましょう。

東芝事件(東京地裁平成21年5月18日・判時2046号150頁)

【事案の概要】

Y社は、電気機械器具製造等を業とする会社である。

Xは、Y社に勤務し、液晶生産ライン開発プロジェクトの業務に従事していた。

Xは、過度の業務上の負荷を受けた結果、適応障害を発症し、その後、症状を増悪させ、うつ病を発症し、療養生活を余議なくされた。

【裁判所の判断】

熊谷労基署長による療養補償給付たる療養の費用及び休業補償給付を支給しない旨の処分は違法である。
→業務起因性肯定

【判例のポイント】

1 精神障害の発症については、環境からくるストレスと個体側の反応性、脆弱性との関係で精神的破綻が生じるかどうかが決まるという「ストレス-脆弱性」理論が広く受け入れられていると認められるから、業務と精神障害の発症との間の相当因果関係が認められるためには、ストレス(業務による心理的負荷と業務以外の心理的負荷)と個体側の反応性、脆弱性を総合考慮し、業務による心理的負荷が、社会通念上、客観的にみて、精神障害を発症させる程度に過重であるといえる場合に、業務に内在する危険が現実化したものとして、当該精神障害の業務起因性を肯定するのが相当である。

2 Xの労働時間に関する証拠として勤務表があり、これを基にしてXの労働時間を認定することとする。もっとも、同勤務表は、Xが当時作成したものではなく、Xの労働実態を反映しているとは言い難い上、勤務時間が長かったためXが社バスに乗れないことがあったこと、Xが疲労のため禁止されていた自家用車通勤したことがあったこと、他の同僚も遅くまで仕事をしていたことがあった旨供述していること等からすれば、労働時間が上記勤務表より長くても不自然ではない。他方、Xは、毎日午後11時以降まで勤務していた旨供述するが、客観的裏付けはなく、同僚の供述によれば、午後11時より前に帰社日もあったことが窺われ、Xが毎日午後11時以降まで勤務していたとまでは認められない。したがって、Xが上記勤務表から認められる労働時間よりも長時間の労働をしていたと認められ、客観的な裏付けがある範囲でこれを加算することとし、具体的には、上記勤務表記載の労働時間外にXが自ら業務のために更新したデータが認められる範囲で労働時間を修正することとし、Xの供述に照らし、データの更新の時刻から15分遅い時刻をもって終業時刻とする。

3 本件のXの一連の業務態様を総合的に観察して看取できることは、当該業務の内容、スケジュール、業務遂行に当たってのトラブルの発生とそれに対する本件会社の対応等、労働時間という要因が、Xの心理的負荷に重層的に影響を与え、時間を追って亢進させていったということである。
・・・以上のように、Xの業務を巡る状況を見ると、Xは、新規性のある、心理的負荷の大きい業務に従事し、厳しいスケジュールが課され、精神的に追い詰められた状況の中で、多くのトラブルが発生し、さらに作業量が増え、上司から厳しい叱責に晒され、その間にY社の支援が得られないという過程の中で、その間、長時間労働を余儀なくされていた。以上のXに対する心理的負荷を生じさせる事情は、それぞれが関連して重層的に発生し、Xの心理的負荷を一貫して亢進させていったものと認められるのであり、上記のようなXの業務による心理的負荷は、社会通念上、客観的にみて、精神障害を発症させる程度に過重であったといえる。

4 業務起因性を否定する埼玉労働局地方労災医員協議会及び沖野医師の意見は、上記の心理的負荷の強度について、個々の要因を分析して、必ずしも強度の心理的負荷とはいえないと評価するものである。上記の個々の分析的な評価自体を肯じる余地はないわけではないが、上記のとおり、本件におけるXの心理的負荷は、M2ライン立ち上げプロジェクトに関与し始めた時点から、Xは、上記のとおりの複数の要因に重層的に晒されたことに大きな特色があるのであり、上記の意見のように、分析的、個々的にして必ずしも強度でないという評価をすることが相当であるとは考えられない

上記判例のポイント4は、労働者側にとっては、非常に参考になります。

医師の意見書が、個々の要因を分析的に評価し、業務起因性を否定している場合には、この裁判例を参考にして、主張しましょう。

管理監督者17(プレゼンス事件)

あけましておめでとうございます。

本年もよろしくお願いいたします。

さて、今日は、管理監督者に関する裁判例を見てみましょう。

プレゼンス事件(東京地裁平成21年2月9日・判時2036号138頁)

【事案の概要】

Y社は、イタリア料理店を経営する会社である。

Xは、Y社に採用され、X料理長としてイタリア料理店で稼働してきた。

Y社では、タイムカードによる勤務時間管理がされていた。

Xは、時間外手当の請求に備えて、自己のタイムカードを持ち出した。

Y社は、建造物侵入、窃盗等で、Xにより、Xらのタイムカードが盗まれた旨の被害申告を警察に対して行い、これによりXは逮捕され、身柄拘束期限に釈放された。

Xは、Y社に対し、時間外手当の請求を行った。

また、Xは、自己のタイムカードをY社から持ち出した行為により警察に逮捕されたことにつき、Y社及びY社代表者に不法行為が成立とし、慰謝料を請求した。

Y社は、Xは管理監督者に該当する等と主張し、争った。

【裁判所の判断】

管理監督者性を否定し、時間外手当及ぶ同額の付加金の支払いを命じた。

不法行為は成立しない。

【判例のポイント】

1 Y社は、Xに対し、何時に出勤せよなどといった具体的な指示はしていないこと、特段ノルマ等は課していないこと、本件店舗で出す料理は、Y社代表者の了承を得たものではあったが、何を出すかあるいは何食出すかといった点については、Xの裁量に基本的に任されていたことが認められる。
したがって、このような状況で、Xが料理人としての個人的な趣味や信条に従って選択した料理の準備に長い時間を費やすことがすべて使用者の経済的負担となる時間外労働となるとは解されない。加えて、この早朝の時間帯のXの勤務状況については、使用者において確認していないのであるから、これらを考慮すると、時間外手当を発生させる労働としては、9時からと認めるのを相当とする。

2 Xが時間外手当の請求をしている平成17年10月から平成19年2月のうち、タイムカードの存在しない期間については、この時の勤務状況に他の期間と特段の差が存したことをうかがわせる証拠は存しないから、Xの請求のとおり、上記期間の平均値をもって時間外労働が行われたものと推認すべきである

3 管理監督者とは、労働条件の決定その他労務管理につき、経営者と一体的な立場にあるものをいい、名称にとらわれず、実態に即して判断すべきであると解される。具体的には、(1)職務内容が、少なくともある部門全体の統括的な立場にあること、(2)部下に対する労務管理上の決定権等につき、一定の裁量権を有しており、部下に対する人事考課、機密事項に接していること、(3)管理職手当等の特別手当が支給され、待遇において、時間外手当が支給されないことを十分に補っていること、(4)事故の出退勤について、自ら決定し得る権限があること、以上の要件を満たすことを擁すると解すべきである

4 Xは料理長という肩書きが与えられ、厨房スタッフ3名程度の最上位者にいたことは当事者間に争いがない。しかし、Xが部下の採用権限を有していたり、人事考課をしていたなどの事実は認められない。また、Xに裁量のあった料理内容についても、出す料理はすべてY社代表者の了承を得ていたものであり、広範な裁量とはいえない。本件店舗の営業時間が決まっていることから、出退勤を自由に決められるわけではなく、現に毎日に出勤し、朝早くから夜遅くまで勤務していた。待遇についても、Xの月額給与は、36万円であるが、賞与も歩合給も役職手当もないのであるから、この程度では経営者と一体的な立場にあるとは到底いえない。

5 Y社は、Xに対し時間外手当を支払わず、本件訴訟提起後も、変わることなく、時間外手当を支払う姿勢が見られないから、時間外手当と同額の付加金の支払を命ずるのが相当である。

6 Y社代表者は、Xが自己のタイムカードを盗んだことについて窃盗にならないのか、と警察署に相談し、被害届けを勧められてそのようにした。また、Xが自己のタイムカードを持ち出した行為につき、窃盗として逮捕することが相当か疑問がなくはないが、逮捕自体は警察の判断であり、Y社らの行為ではないから、虚偽の被害届けを提出して警察を陥れたという事情が認められない以上、Y社らの不法行為は成立しないというべきである

いろいろと参考になる裁判例です。

本件で、Y社は、合計1000万円を超える金額を支払わなければいけなくなりました。

せめて付加金については、回避したかったところです。

要件を見れば明らかですが、よほどのことがないと管理監督者に該当しません。

また、このケースで、会社側に参考になるのは、上記判例のポイント1です。

従業員から時間外手当を請求された場合の争い方のひとつです。

労働者側として参考になるのは、判例のポイント2です。

管理監督者性に関する対応については、会社に対するインパクトが大きいため、必ず顧問弁護士に相談しながら進めることをおすすめいたします。

労災26(山田製作所事件)

写真(2)おはようございます

早朝ウォーキングから戻りました。

今日で今年も終わりですね

あっという間に一年が過ぎていきました。

慌ただしい毎日の中で、これからの目標を設定し、かつ、社会貢献の方法を模索してきました

明日からまた新しい一年が始まります。

今は、力を蓄える時期です。

近い将来、爆発させます

今日は、仕事の合間に、神社に行ってこようと思います

今日も一日がんばります!!

さて、今日は、労災に関する裁判例を見てみましょう。

山田製作所事件(福岡高裁平成19年10月25日・労判955号59頁)

【事案の概要】

Y社は、オートバイの部品を含め自動車部品、農業用機械部品等の製造・販売を目的とする会社である。

Xは、Y社に入社し、Y社熊本事業部で一般従業員として稼働してきた。

Xは、自宅において、自殺した(死亡当時24歳)。

Xは、職業生活における適応に困難を認められたことはなく、入社以来、本件自殺当日まで、「うつ病」ないし「うつ傾向」との診断を受けたこともなかった。

Xの相続人は、Xが自殺したのは、それ以前に連日、肉体的・心理的に過重な負荷のかかる長時間労働を余儀なくされたことによってうつ病に罹患したことが原因であり、Y社にはXに対する安全配慮義務に違反した過失があると主張して、Y社に対し、債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償を請求した。

Xの労働時間は、本件自殺から1か月前は110時間06分、同1か月前から2か月前は118時間06分、同2か月前から3か月前は84時間48分であった。また、上記期間内におけるXの連続勤務は最高13日間であり、深夜10時を越えて勤務したのは12日間である。

【裁判所の判断】

Xの損害につき、総額約7430万円の支払いを命じた。

【判例のポイント】

1 Xの上記時間外労働・休日労働の時間数は、Y社の三六協定に定める1か月当たりの時間外労働時間の月45時間を著しく超過し、本件自殺から1か月前の期間及び同1か月から2か月間の期間は約2.6倍に至っている。同協定においては、上記の目安を超えて労使が協議の上延長することができる時間は1か月当たり61時間とされているが、Xの上記期間における時間外労働・休日労働時間はかかる61時間も大きく超えるものである。
平均残業時間が60時間以上となるとライフイベントの合計点数は極めて高く(ストレス度が強くなる。)なるとされ、さらに長時間労働は、心身の余力や予備力を低下させ、ストレス対処能力を大幅に低下させ、その結果、ちょっとしたストレスフルな出来事に対してもパニックに陥りやすい状態が作られるとの専門的知見を勘案すれば、このような顕著な時間外・休日労働は、それ自体で過酷な肉体的・心理的負荷を与えるものであったといえる

2 Xは、本件自殺3か月前から過重な長時間労働に従事したことによる肉体的・心理的負荷に、1か月余り前には、発注先からの新たな品質管理基準への対応が会社として迫られる中、リーダーへ昇格するなどの心理的負荷等が更に加わるという正に過重労働の最中に、他に特段の動機がうかがわれない状況で、本件自殺に及んでいるものであり、その経過からして、本件自殺と業務との間に因果関係がある。

3 Y社は、Xを過重な長時間労働の環境に置き、これに加え、Xがリーダーへ昇格したことなど心理的負担の増加要因が発生していたにもかかわらず、Xの実際の業務の負担量や職場環境などに何らの配慮をすることなく、その状態を漫然と放置していたのであって、かかるY社の行為は、不法行為における過失(注意義務違反)をも構成する

4 Xの変調が表面化してから自殺へ至るまでの経過は急進的であり、X本人や家族にとっても専門医の診療を受けるなどの行動を取ることは容易でなかったといえる。他方、Xの就労状況からすれば、同人からの訴えを待つまでもなく、使用者であるY社が当然に労働時間の抑制その他適切な措置を取るべきであったといえるから、この点で、Xの側に過失を認めることはできない。
また、本件自殺の原因について家族関係などの個人的な要因を認めることはできず、Xの性格などに上記損害額を減額すべき要因を認めることはできない。したがって、本件において、過失相殺を認めることは相当でない

このケースでも、高額の損害賠償が認められています。

本件では、直属上司の叱責等が心理的負荷の一要因とされています。

指導の必要性との関係から、線引きが難しいところですが、合理性のない単なる厳しい指導の範疇を超えたものについては、いわゆるパワハラと評価され、心理的負荷の一要因と判断されてしまいます。

この点については、部下を持つ会社幹部、上司のみなさんが意識しなければいけないところです。

また、上記判例のポイント4は、労働者側としては参考になりますね。

いつも申し上げていることですが、会社としては、従業員の労働時間が長くなっている場合、様子がおかしいと感じた場合には、早急に対応をとらなければ、大変なことになります。

重要なのは、いざというときに、適切な対応をとることができる組織作りです。

どのような組織作りを目指すべきかについては、顧問弁護士や顧問社労士に聞いてみて下さい。

必ず方法はあります!!

有期労働契約14(日本ヒルトンホテル事件)

おはようございます。

さて、今日は、雇止めに関する裁判例を見てみましょう。

日本ヒルトンホテル事件(東京高裁平成14年11月26日・労判843号20頁)

【事案の概要】

Y社は、ホテル経営等を目的として設立された会社であり、ホテル「ヒルトン東京」等の経営を行っている。

Xらは、有料職業紹介事業を営む配膳会に登録され、その紹介を受けて、Y社に雇用され、ヒルトンホテルにおける厨房での食器の洗浄及び管理業務に従事していた。

Y社は、バブル崩壊後のビジネス需要や消費減退により経営が悪化したため、平成11年春に正社員の労働組合と交渉し、ボーナス減額、特別休暇の削減の同意を得るなどしたが、配膳人に対しても、労働組合との団体交渉を経たうえで、通知書を交付して、労働条件の引下げを通知した。

これに対し、通知書を交付された配膳人179名のうち95%に当たる170名は、労働条件の変更に同意した。Xを含む配膳人は、労働条件変更を争う権利(別途訴訟で争う権利)を留保しつつY社の示した労働条件のもとに就労することを承諾するとY社に通知した(異議留保付き承諾の意思表示)が、Y社は、Xらを雇止めした。

Xらは、Y社に対し、従業員としての仮の地位を定める仮処分を申し立てるとともに、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認と、慰謝料の支払いを求める訴訟を提起した。

【裁判所の判断】

雇止めは有効。

【判例のポイント】

1 (1)Xらは、本件雇止めまでいずれも約14年間という長期間にわたりY社との間の日々雇用の関係を継続してきたこと、(2)Y社も、資格規定を定めるなど配膳人の中に常用的日々雇用労働者が存在することを認めるとともに、Xらを常勤者等に指定したこと、(3)Xらは、週5日勤務を継続していたこと、(4)Y社と組合は、Xら組合員の勤務条件に関して、交渉を定期的に行い、常用的日々雇用労働者について他の配膳人より高い基準での合意をしてきたこと、(5)本件雇止め当時、XらにおいてY社と同程度ないしそれ以上の条件で、他のホテルにスチュワードとして勤務することは困難であったこと等の事情が認められ、これらの事情を総合すると、常用的日々雇用労働者に該当するXらとY社の間の雇用関係においては、雇用関係に雇用労働者に該当するXらとY社の関係の雇用関係においては、雇用関係にある程度の継続が期待されていたものであり、Xらにおけるこの期待は、法的保護に値し、このようなXらの雇止めについては、解雇に関する法理が類推され、社会通念上相当と認められる合理的な理由がなければ雇止めは許されない

2 XらとY社の間の雇用関係が簡易な採用手続で開始された日々雇用の関係であること、ある日時における勤務は、Xらが希望しY社が採用して初めて決定するものであること、Xらは配膳人からスチュワード正社員になる道を選択せず、配膳人であることを望んだこと等のXらとY社の間の雇用関係の実態に照らすと、本件雇止めの効力を判断する基準は、期間の定めのない雇用契約を締結している労働者について解雇の効力を判断する基準と同一ではなく、そこには自ずから合理的な差異がある

3 Y社が、配膳人に対する労働条件を本件通知書の内容に従って変更することには経営上の必要性が認められ、その不利益変更の程度組合との間で必要な交渉を行っていること、配膳人のうち95%に相当する者の同意が得られていること等の事情を総合すれば、本件通知書に基づく労働条件の変更には合理性が認められるというべきであり、Y社が日々雇用する配膳人に対し、将来的に変更後の労働条件を適用して就労させることは許されるものというべきである。

4 XらとY社は、日々個別の雇用契約を締結している関係にあったのであるから、本件労働条件変更に合理的理由の認められる限り、変更後の条件によるY社の雇用契約更新の申込みは有効である。

5 Yらの本件異議留保付き承諾は、Y社の変更後の条件による雇用契約更新の申込みに基づくY社とXらの間の合意は成立しないとして後日争うことを明確に示すものであり、Y社の申込みを拒絶したものといわざるを得ない

6 本件労働条件変更は、変更の必要性、変更の程度からやむを得ないものと認められ、合理的理由があること等の事情によれば、本件雇止めには社会通念上相当と認められる合理的理由が認められ、本件雇止めは有効である

一審では、雇止めは無効とされています。

一審は、上記判例のポイント1のような事情は、Xら配膳人の労働条件の切下げを正当化する理由とはなりえても、直ちにXらに対する本件雇止めを正当化するに足る合理的な理由であるとは認めがたいと判断しました。

また、一審は、異議留保付承諾をしたことを理由に雇止めをすることは許されないとしています。

このような理由で雇止めが許されるならば、Y社に、配膳人に対し、必要と判断した場合はいつでも配膳人にとって不利益となる労働条件の変更を一方的に行うことができ、これに同意しない者については、同意しなかったとの理由だけで雇用契約関係を打ち切ることが許されるからです。

いわゆる変更解約告知の問題です。

このような一審の判断とは異なり、上記のとおり、高裁は雇止めを有効と判断しました。

会社側が手続を踏んで雇止めにしたことを評価したものだと思います。

会社側、労働者側ともに、参考にすべき裁判例ですね。

有期労働契約は、雇止め、期間途中での解雇などで対応を誤ると敗訴リスクが高まります。

事前に顧問弁護士に相談の上、慎重に対応しましょう。

労災25(日本マクドナルド事件)

写真こんにちは。

早朝ウォーキングから戻りました

今日は、いつもとは違うルートで、5時間ほど山登りをしてきました

今日は、午後に2件打合せがあるだけです。

あとは、事務所で、書面を作成します

夜は、顧問先の社長と税理士のK先生と今年最後の忘年会です

今日も一日がんばります!!

日本マクドナルド事件(東京地裁平成22年1月18日・判時2093号152頁)

【事案の概要】

Y社は、日本全国に約3600店舗を設置し、労働者約10万人を使用して、ハンバーガー・レストラン・チェーンの経営を行っている会社である。

Xは、大学卒業後、X社に入社し、店舗の店長代理として、店舗運営の実務等の業務に従事していた。

Xは、勤務時に、急性心機能不全を発症し、死亡した。

Xの本件疾病発症前6か月における時間外労働時間は、本件疾病発症前2か月~6か月の平均時間外労働時間は、64時間40分~73時間45分であり、全て45時間を超えている。

【裁判所の判断】

川崎南労基署長による遺族補償給付等不支給処分は違法である。
→業務起因性肯定

【判例のポイント】

1 労災保険制度が、労働基準法上の危険責任の法理に基づく使用者の災害補償責任を担保する制度であることからすれば、相当因果関係を認めるためには、当該死亡等の結果が、当該業務に内在する危険が現実化したものであると評価し得ることが必要である。

2 Xは、本件疾病により心臓突然死したものであり、Xの死因は、突発性心室細動による急性心機能不全であると認められること、基礎疾患は特定できないが、全くの健常人に心室細動が起こることは考え難く、突発性心室細動には、心筋イオンチャネル異常等何らかの潜在的な異常の関与が存在すると考えられていることから、Xには、何らかの基礎疾患があった可能性が高いというべきである。上記認定事実の上畑意見は、長時間で、ストレスの大きい労働は、自律神経の過度な緊張を来し、疲労蓄積や過労状態の発症に強く関連し、心室細動等心臓刺激伝達系の異常を引き起こす可能性が大きいと捉えている。また、上記認定事実の石川意見によっても、死因の特定ができずその発症には外的リスクファクターより、内的異常の関与が大きいとはいうものの、長時間でストレスの大きい労働と本件疾病発症との関連性を否定するわけではない
以上によれば、本件疾病の発症が、Y社におけるXの業務に内在する危険が現実化したものと評価できるのであれば、本件疾病と業務の条件関係を肯定することができると解すべきである

3 Y社における業務のシフトは、不規則な勤務であって、その性質上、深夜勤務を含む業務形態であり、しかも、Xをはじめとする正社員は、所定労働時間を超えて勤務することがほとんどで、勤務実績どおりに時間外労働を申告しておらず、いわばサービス残業を行うことが常態化していた勤務態勢であったことを指摘しなければならない。この業務態様は、単に交替制の深夜勤務というだけでなく、業務の不規則性や実際の労働時間の長さに、心理的にも長い拘束時間を従業員に意識させるものであり、心血管疾患に対するリスクを増大させる要因となるものである

4 自宅にも持ち帰っていたパソコン上の作業のうち、本件システムの更新に関する業務は、本件システムはXが開発したものであること、上司の指示によるものの、直接の上司である店長との関係では、本件店舗で作業することが憚られる環境にあり、しかも、後には休日の出勤を禁止されたことからすれば、そのメンテナンス作業は、X自身の責任を感じさせられる作業であって、精神的な緊張を強いられるものであるといわなければならない。

5 Xには、従前の健康診断で、脳・心臓疾患の原因となる異常は認められず、解剖所見でも特記すべき異常が認められないものであり、Y社の業務により、負荷の強い業務に強い時間にわたって晒され、さらに直前の業務の負荷が増大することにより、自律神経の過度な緊張を来し、疲労蓄積や過労状態の発症に強く関連し、心室細動等心臓刺激伝導系の異常を引き起こした可能性が極めて高いということができる。
そうすると、Xには、何らかの基礎疾患が存在していた可能性はあるものの、上記のメカニズムにより、業務上の過重負荷によりその自然の経過を超えて増悪して本件疾病が発症したということができる。すると、本件疾病の発症は、Y社におけるXの業務に内在する危険が現実化したものと評価でき、業務と本件疾病との間には相当因果関係があることを認めることができるのである。

日本マクドナルド事件といえば、名ばかり管理職の問題が有名ですが、本件は、過労死事件です。

本件では、自宅でのパソコン作業等にも業務遂行性が認められました。

また、被災者の死因が医学的に特定できなかったにもかかわらず、不規則な仕事、深夜勤務、サービス残業の常態化等が認められるとして、結果として業務起因性が肯定されています。

従業員にこのような働かせ方をさせている会社は、従業員の健康状態にご注意ください。

「様子がおかしいな」、「最近、残業が続いているな」と思ったら、適切に対応してください。

解雇20(ビー・エム・シー・ソフトウェア事件)

おはようございます。

さて、今日は整理解雇に関する裁判例を見てみましょう。

ビー・エム・シー・ソフトウェア事件
(大阪地裁平成22年6月25日・労判1011号84頁)

【事案の概要】

Y社は、コンピュータソフトウェアの開発、販売および保守業務等を業とする会社である。

アメリカ合衆国のA社は、Y社の100%の株主である。

Xは、Y社の従業員であり、Y社の関西営業所において、営業事務職員として勤務していた。

Y社は、Xに対し、「先般来の日本における業務縮小により、事業の運営上やむを得ない事情により従業員の減員が必要となったためという理由等を記載した解雇予告通知書を送付し、Xについて、解雇する旨の意思表示をした。

【裁判所の判断】

解雇は無効

【判例のポイント】

1 いわゆる整理解雇の有効性については、人員削減の必要性が認められることを前提として、解雇回避のためにいかなる措置が講じられたか、対象者の人選に合理性があるか否か、当該労働者との協議あるいは当該労働者に対する説明の程度といった諸事情を総合的に勘案して判断するのが相当であると解される

2 まず、Y社に人員削減の必要性があったか否かという点についてみる。たとえ外資系グループ企業において就労しているとはいえ、わが国で就労している労働者は、原則として、わが国の労働市場において労働の機会を確保し、生活を維持していく必要があることにかんがみれば、わが国における外資系グループ企業が、親会社の意向を受けて整理解雇を行う場合であったとしても、わが国における企業の収益の状況等を問わず。本社からの人員削減の指示・意向のみをもって、人員削減の必要性があったと認めるのは相当とはいえない。したがって、たとえ外資系グループ企業であったとしても、人員削減の必要性があるか否かという点については、親会社の意向もさることながら、我が国と親会社との関係、親会社の収益状況、我が国企業の業務内容及び収益状況、今後の見通し等初犯の事情を勘案して判断するのが相当である

3 本件解雇時点において、(1)Y社には2億7800万円の利益が発生していること、(2)米国本社に関しても、特段利益が減少するなどの状況にあるとはいえないこと、(3)Xが就労していた関西営業所については、本件解雇が決定した後に事務所規模を縮小していること、(4)東京本社の営業部において新規募集をしていること、以上の点が認められ、このうち、特に、本件解雇時点におけるY社の利益額の点及び米国本社の経営状況にかんがみると、人員削減の必要性の有無が経営上の判断を伴うものであることを考慮してもなお、果たしてY社において人員削減の必要性があったといえるのか疑問があるといわざるを得ない。

4 次にY社の解雇回避努力の点についてみる。Xに対しては、雇用継続に向けたその他の措置についての提案はなされていないこと、Y社は本件解雇に先立って、希望退職者を募集していないこと、Xが勤務していた関西営業所の事業縮小(事務所移転)は、本件解雇後に行われたこと、賃金の減額等の人員削減以外の解雇回避措置がなされたことを認めるに足りる的確な証拠はないことの諸事情を勘案すると、本件解雇にあたって、Y社は解雇回避努力に努めたとは認め難い

外資系だろうと、特別扱いはしませんよ、という裁判例です。

判断内容は、オーソドックスそのものです。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

労災24(マツヤデンキ事件)

おはようございます。

土曜日、日曜日と仙人のもとで修行をしてきたため、パワーアップしました

今日は、午前中に1件刑事裁判の判決があるだけです。

午後は、接見、書面と年賀状の作成、掃除を少々という予定です

今日も一日がんばります!!

さて、今日は、身体障害者の労災に関する裁判例を見てみましょう。

マツヤデンキ事件(名古屋高裁平成22年4月16日・労判1006号5頁)

【事案の概要】

Y社は、家庭電化製品の小売等を業とする会社である。

Xは、慢性心不全(身体障害者等級3級)の基礎疾患を有しており、Y社に身体障害者枠で採用され、店舗で接客販売業務に従事することになった。Xの仕事は、立ち仕事であったが、体に負担がないように、重い物を持たせない、出荷・配送、出張修理などの業務には就かせないこととされていた。

Xは、採用から1か月半後に、慢性心不全を基礎疾患とする致死性不整脈・心停止を発症して死亡した(死亡当時37歳)。

 
【裁判所の判断】

豊橋労基署長による遺族補償給付等不支給処分は違法である。
→業務起因性肯定

【判例のポイント】

1 相当因果関係の有無を判断する基準について判断するに、確かに、労働基準法及び労災保険法が、業務上災害が発生した場合に、使用者に保険費用を負担させた上、無過失の補償責任を認めていることからすると、基本的には、業務上の災害といえるためには、災害が業務に内在または随伴する危険が現実化したものであることを要すると解すべきであり、その判断の基準としては平均的な労働者を基準とするのが自然であると解される。

2 しかしながら、労働に従事する労働者は必ずしも平均的な労働能力を有しているわけではなく、身体に障害を抱えている労働者もいるわけであるから、Y社の主張が、身体障害者である労働者が遭遇する災害についての業務起因性の判断の基準においても、常に平均的労働者が基準となるというものであれば、その主張は相当とはいえない
このことは、憲法27条1項が「すべて国民は勤労の権利を有し、義務を負ふ。」と定め得、国が障害者雇用促進法等により身体障害者の就労を積極的に援助し、企業もその協力を求められている時代にあっては一層明らかというべきである

3 したがって、少なくとも、身体障害者であることを前提として業務に従事させた場合に、その障害とされている基礎疾患が悪化して災害が発生した場合には、その業務起因性の判断基準は、当該労働者が基準となるというべきである
なぜなら、もしそうでないとすれば、そのような障害者は最初から労災保険の適用から除外されたと同じことになるからである

4 そして、本件においては、Xは、障害者の就職のための集団面接を経てY社に身体障害者枠で採用された者であるから、当該業務を基準とすべきであり、本件Xの死亡が、その過重な負荷によって自然的経過を超えて災害が発生したものであるか否かを判断すべきである。

5 立位による販売業務という労働強度は、Xの心不全の重傷度からみて運動耐容能の基準を超えており、また、死亡前11日間(うち2日は休日)の時間外労働がそれ以前より増え、慢性心不全患者のXにとってはかなりの過重労働であったと推認できることなどからXの業務の過重性を認めたうえで、時間外労働が増えるまでは特に慢性心不全の悪化はみられなかったことから、Xの致死性不整脈による死亡は、過重業務による疲労ないしストレスの蓄積からその自然的悪化を超えて発生したものであるとして、業務起因性が肯定される。

本件で重要なのは、上記判例のポイント3です。 

業務の過重性を「平均的労働者」を基準に判断するか、「被災者本人」を基準に判断するかについて、よく議論されます(個人的には、あまり結論に影響ないと思うのですが・・・)。

この点について、本件では、原則として、平均的労働者を基準としたうえで、「少なくとも身体障害者であることを前提として雇用・業務に従事させた場合に、その障害とされている基礎疾患が悪化して災害が発生した場合には、その業務起因性の判断基準は、当該労働者が基準となるというべき」としました。

障害者雇用促進法との関係で、今後、非常に参考になる(会社側としては参考にすべき)裁判例です!

なお、このケースは、上告されています。

解雇19(ウップスほか事件)

おはようございます。

さて、今日は、子会社解散と同族企業グループ内での雇用責任に関する裁判例を見てみましょう。

ウップスほか事件(札幌地裁平成22年6月3日・労判1012号43頁)

【事案の概要】

Y社は、生コンクリートの製造販売事業、コンクリート製品の製造販売事業等を主な目的とする会社であり、同族会社である。

Y社は、いわゆるアイザワグループの中核的な企業である。

Z社は、貨物自動車運送事業等を主な目的とする会社であり、アイザワグループのグループ企業となった後は、同グループの運送部門として運営されてきた。

A社は、生コンクリート及びコンクリート製品の製造、販売とその輸送業務等を主な目的とする会社であり、アイザワグループのグループ会社である。

Xは、Z社に雇用され、コンクリートミキサー車のミキシングオペレーター(MO)としての業務に従事してきた。

Z社に雇用されている従業員のうち、Xを含む33名のMOは、全員がA社に出向する形で労務を提供していた。

Z社は、Xを、ミーティングでの不規則発言や人事担当者に対する威圧的言動等を理由に懲戒解雇した(第1次解雇)。

Z社は、Xを相手方として、労働審判を申し立て、その中で、Xを普通解雇にする旨の意思表示をした(第2次解雇)。

その後、Z社は、Xに対し、Z社の解散を理由として解雇した(第3次解雇)。

A社においてMO業務を行っていた従業員については、Xを除いた大部分の従業員が、A社のセンター長が設立したB会社に雇用され、A社におけるMO業務に従事するようになった。

Xは、第1次解雇ないし第3次解雇はいずれも無効であるとして、地位確認等を求めた。

【裁判所の判断】

いずれの解雇も無効。

【判例のポイント】

1 Xは、労働契約締結にあたり、Z社の人間とは一切接触がなかったこと、労働条件もA社により決定され、A社の指揮命令・監督の下で労務が提供されていたこと、人件費は実質的にA社が負担していたこと、解雇が実質的にはZ社ないしY社の判断で行われていたことからすると、解雇通知と解雇理由証明書がZ社名義で発行されたほかは、Z社の実質的な関与をうかがわせるような事情が見当たらず、A社を雇用主とし、Xをその労働者とする事実上の使用従属関係が存在していたことは明らかというべきである

2 Z社からの出向は形式的なもので、Z社はXらMOとの関係では、給与の支払いと明細書の発行等を行う代行機関にすぎなかったのであり、出向関係が実質的に存在しているとはいえないから、客観的な事実関係から推認し得るXとA社の実質的な合理的意思解釈としては、XとA社との間の黙示の労働契約の成立が認められるというべきであり、Xは、A社のMOとして採用され、A社との間で労働契約を締結したものと認めるのが相当である。

3 仮処分事件や別訴において、XがZ社を雇用主とする前提で解雇無効を主張していたとしても、形式的な雇用主に対応したものであって、Z社との労働契約関係とA社とのそれが両立しえないものではない。

4 Xの言動はただちに懲戒事由に当たるとは言いがたく、これをもって懲戒解雇とすることもできないから、第1次解雇、第2次解雇は無効である。

5 第3次解雇は、A社との実質的な労働契約関係の下での形式的な雇用主にすぎないZ社の解散が、XとA社との間の実質的な労働契約関係を解消する理由とはならないというべきであり、A社において、Xを解雇しなければならない具体的な経営上の必要性については、これを認めるに足りる具体的な主張立証はない。
したがって、第3次解雇は、XとA社との間の労働契約関係に影響を及ぼすものとはいえないというべきである。

ざっくり言うと、「形式」よりも「実質」を重視したということです。

経営主体の移転後に、新たな経営主体との労働契約関係の存続ないし承継が争われるケースにおいて、移転前と移転後の経営主体の実質的同一性を認めた裁判例はあまりありません。

本件では、当初から「実質的な労働契約関係」がA社にあるとして、労働契約の承継の問題とせず、A社の雇用責任を認めています。

これは、Z社、A社を含む関係企業すべてがY社を中心としたグループ企業であり、各社の経営管理、人事管理をY社に管理されているなど、Z社が事実上企業の一部門にすぎない状態であったという事情が重視されたものであると考えられます。

非常にめずらしいケースですが、いつかどこかで参考になるでしょう。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。