労災28(日研化学事件)

おはようございます。

今日もまだ予定は入っていません

ちょっと海までドライブしようかと思っています。

海を見て、いかに自分が小さいかを再確認してきます

・・・病んでる?

それ以外は、書面作成に徹します!!

今日も一日がんばります!!

さて、今日は、労災に関する裁判例を見てみましょう。

日研化学事件(東京地裁平成19年10月19日・労判950号5頁)

【事案の概要】

Y社は、医薬品の製造、販売等を業とする会社である。

Xは、大学卒業後、Y社に入社し、医療情報担当者(MR)として勤務していた。

MRの業務とは、製薬会社の営業担当者として医療機関を訪問し、自社医薬品に関する有効性、安全性等の情報を、医師をはじめとする医療従事者に的確に伝え、医療従事者からの情報を製薬会社にフィードバックすることにより、自社製品の適切な処方の拡大を推進する業務である。直接医師に面会して医薬品の説明を行う他、説明会を実施する等する。

Xは、家族や上司を名宛人とする8通の遺書を残し、自殺した。

【裁判所の判断】

静岡労基署長による遺族補償給付等不支給処分は違法である。
→業務起因性肯定

【判例のポイント】

1 精神障害の発症については、環境由来のストレスと、個体側の反応性、脆弱性との関係で、精神的破綻が生じるかどうかが決まるという「ストレス-脆弱性」理論が、現在広く受け入れられていると認められることからすれば、業務と精神障害の発症との間の相当因果関係が認められるためには、ストレス(業務による心理的負荷と業務以外の心理的負荷)と個体側の反応性、脆弱性を総合考慮し、業務による心理的負荷が、社会通念上、客観的にみて、精神障害を発症させる程度に過重であるといえる場合に、業務に内在又は随伴する危険が現実化したものとして、当該精神障害の業務起因性を肯定することが相当である。

2 ICD-10のF0~F4に分類される精神障害の患者が自殺を図ったときには、当該精神障害により正常な認識、行為選択能力及び抑制力が著しく阻害されていたと推認する取扱いが、医学的見地から妥当であると判断されていることが認められるから、業務により発症したICD-10のF0~F4に分類される精神障害に罹患していると認められる者が自殺を図った場合には、原則として、当該自殺による死亡につき業務起因性を認めるのが相当である。その一方で、自殺時点において正常な認識、行為選択能力及び抑制力が著しく阻害されていなかったと認められる場合や、業務以外のストレス要因の内容等から、自殺が業務に起因する精神障害の症状の蓋然的な結果とは認め難い場合等の特段の事情が認められる場合には、業務起因性を否定するのが相当である。

3 Xの上司であるZ係長は、Xに対し、「存在が目障りだ、居るだけでみんなが迷惑している。おまえのカミさんも気がしれん、お願いだから消えてくれ」、「お前は会社を食いものにしている。給料泥棒」、「お前は対人恐怖症やろ」、「肩にフケがベターと付いている。お前病気と違うか」等と発言している。Z係長は、Xについて、部下として指導しなければならないという任務を自覚していたと同時に、Xに対し、強い不信感と嫌悪の感情を有していたものと認められる。

4 また、Xの所属していた係の勤務形態につき、直行直帰を原則とし、月曜午前の定例打合せのほかは、不定期に週1、2回集まるというもので、他の同僚やZ係長より上位の社員との接点がない等、Z係長から厳しい発言を受けることのはけ口がなく、本件会社が人事管理面から従業員間の関係を適正に把握しがたいことから、むしろ心理的負荷を高めるという側面がある

5 (1)Z係長の発言は、言葉自体が過度に厳しく、10年以上のMRとしての経験を有するXのキャリアを否定し、なかにはXの人格、存在自体を否定するものもあったこと、(2)Z係長のXに対する態度に、Xに対する嫌悪の感情の側面があること、(3)Z係長は、Xに対し、極めて直截なものの言い方をしていたと認められること、(4)静岡2係の勤務形態が、本件のような上司とのトラブルを円滑に解決することが困難な環境にあること、から、Z係長のXに対する態度によるXの心理的負荷は、人生においてまれに経験することもある程度に強度のものということができ、一般人を基準として、社会通念上、客観的にみて、精神障害を発症させる程度に過重なものと評価するのが相当である。

本件は、Xの上司からのパワハラを原因とした自殺を労災と認めたケースです。

注目すべきは、上記判例のポイント4です。

上司のパワハラのみならず、上司とのトラブルを円滑に解決することが困難な環境にあることも業務起因性を肯定する一要因としている点です。

パワハラを原因とする以上、労災のほかに、民事事件として、会社は、損害賠償請求をされる可能性があります。

会社全体として、本件のような事態を回避する具体策を講じなければいけません。

会社の業種、規模、従業員の勤務形態等により対策の内容は異なると思います。

詳しくは、顧問弁護士又は顧問社労士に相談してみてください。