Daily Archives: 2011年1月12日

労災32(富士通四国システムズ事件)

おはようございます。

今日は、午前中に自己破産の打合せが1件だけ入っています。

午後は、掛川市役所で法律相談をし、静岡に戻って、打合せが2件です

今日も一日がんばります!!

さて、今日は、労災に関する裁判例を見てみましょう。

富士通四国システムズ事件(大阪地裁平成20年5月26日・判タ1295号227頁)

【事案の概要】

Y社は、富士通の関連会社であり、ソフトウェアの開発、作成等を主たる業務とする会社である。

Xは、Y社の従業員として、大阪事業所内にあるソリューション統括部において、SEとして、プログラミング等の業務に従事していた。

Xは、うつ病であるとの診断を受け、Y社を欠勤するに至ったが、これは安全配慮義務違反に基づくものであるとして、Y社に対し、損害賠償等を求めた。

なお、大阪中央労基署長は、Xの疾病が業務上のものであると認め、療養補償給付及び休業補償給付等を各支給する旨の決定をしている。

【裁判所の判断】

Xの損害につき、総額約1260万円の支払いを命じた。

【判例のポイント】

1 旧労働省は、通達「心理的負担による精神障害等に係る業務上外の判断指針」において、精神障害等に関する業務上の疾病の判断について基準を示し、精神障害は、業務による心理的負荷、業務以外の心理的負荷及び個体側要因が複雑に関連して発病するとされていることから、精神障害の発病が明らかになった場合には、(1)業務による心理的負荷の強度、(2)業務以外の心理的負荷及び(3)個体側要因について各々検討し、その上でこれらと当該精神障害の発病との関係について総合判断するものとしている

2 Xには、恒常的に本件業務による強度の心理的負荷がかかっていたのに対し、業務以外の側面において、強度に心理的負荷がかかっていたとされるような事情はなく、Xの個体側要因を過大に評価し、これが客観的に精神疾患を生じさせるおそれがあるとみることは相当ではない。

3 Y社は、Xとの間の雇用契約上の信義則に基づき、使用者として、労働者の生命、身体及び健康を危険から保護するように配慮すべき義務
(安全配慮義務)を負い、その具体的内容として、労働時間、休憩時間、休日、休憩場所等について適正な労働条件を確保し、さらに、健康診断を実施した上、労働者の年齢、健康状態等に応じて従事する作業時間及び内容の軽減、就労場所の変更等適切な措置を採るべき義務を負うというべきである

4 なるほど、Y社は、1週間に1回、本件開発プロジェクトの進捗会議を開催し、個別の面談を行うなどとして、Xの作業の進捗状況を把握し、作業に遅れが出た場合にはXの補助をし、業務を一部引き継いだり、補充要員を確保するなどして、Xの業務軽減につながる措置を一定程度講じたことが認められる。しかしながら、X時間外労働時間は、上記業務軽減を行っても、なお1か月当たり100時間を超えており、このような長時間労働は、それ自体労働者の心身の健康を害する危険が内在しているというべきである。そして、Y社は、このようなXの時間外労働を認識していたのであるから、これを是正すべき義務を負っていたというべきである。それにもかかわらず、Y社は、上記義務を怠り、Xの長時間労働を是正するための有効な措置を講じなかったものであり、その結果Xは、本件業務を原因として、本件発症に至ったものである。
したがって、Y社は、Xに対する安全配慮義務に違反したものであるから、民法415条により、本件発症によってXに生じた損害を賠償すべき責任を負う。

5 ・・・もとより、Xのような技術者は、一定期間に高度の集中を必要とする場合もあると考えられるため、勤務形態について、ある程度の裁量が認められるべきものであるとはいえるが、Xは、入社間もない時期に、生活が不規則にならないようにとの正当かつ常識的な指導・助言を上司・先輩から受けたにもかかわらず、これを聞き入れることなく自らが選んだ勤務形態を取り続けた結果、ついに本件発症に至ったものである。このような勤務態度が、原告の生活のリズムを乱し、本件業務による疲労の度合を一層増加させる一因となったことは明らかである
・・・そこで、Y社の安全配慮義務違反の内容・程度、Xの勤務状況、その他本件に現れた諸般の事情を考慮すれば、民法418条の過失相殺の規定を類推適用して、本件発症によって生じた損害の3分の1を減額するのが相当である

裁判所も認めていますが、会社としては、それなりに業務軽減措置を取っていましたが、やはり、時間外労働が月100時間を超えていると、なかなか難しいですね。

Y社が主張したXの勤務状況に関し、裁判所は「損害の3分の1を減額する」という判断をしました。

会社側としては、従業員の労働時間が長時間にならないように徹底して管理しなければいけません。

従業員側としては、本件のように、過失相殺されないように、自己管理をしっかりとしなければいけません。