Daily Archives: 2011年1月11日

解雇22(N事件)

おはようございます。

さて、今日は、整理解雇に関する裁判例を見てみましょう。

N事件(東京地裁平成22年3月15日・労判1009号78頁)

【事案の概要】

Y社は、カーテンその他の室内装飾品の輸入販売等を業とする会社であり、大阪、名古屋、福岡および札幌に支店または営業所を有している。

Xは、Y社の正社員として、百貨店内において、Y社が輸入する室内装飾品の販売業務に従事していた。

Y社は、Xが勤務している百貨店の販売業務を代理店に委託することに伴い、Xを解雇した。

Xは、本件解雇は、解雇権を濫用するものであり、また、男女雇用機会均等法6条4号の規定に違反するから無効であると主張するとともに、本件解雇を通知する際のY社従業員の言動が不法行為にあたると主張し、不法行為に基づく損害賠償請求をした。

【裁判所の判断】

解雇は無効。

不法行為にはあたらない。

【判例のポイント】

1 いわゆる整理解雇は、雇用調整及び人員削減の方法の中でいわば最終的な手段ともいうべきものであり、また、労働者に帰責事由がないにもかかわらず、使用者の都合による一方的な意思表示により雇用関係を終了させるものであって、賃金を生活の基盤とする当該労働者に著しい影響を及ぼし得るものである。したがって、整理解雇は、当該企業を経営する立場からする合理的な判断のみから直ちにし得るものではなく、手続的な観点をひとまず措くとしても、人員削減の必要性に加え、(1)人員削減の手段として解雇を選択することの必要性及び合理性があるか否か、(2)被解雇者の選定が客観的に合理的な基準に従って公正にされているか否かという観点から、やむを得ないものと認められることが必要であり、このように認めることができない場合には、当該解雇は客観的に合理的な理由を欠き、また、社会通念上も相当であると認められないものというべきである。

2 本件雇用契約においては、Xの就業場所が特定されておらず、Y社において、本件撤退に当たり他の販売担当者に対する退職勧奨や雇止めを含め、Xの配転先を探すべく真摯に努力することは解雇回避努力として必須のものと評価しうるところ、Y社はそのような努力をしていないから、人員削減の手段として解雇を選択することの必要性と合理性があるとはいえない

3 また、Xが解雇の対象となったのは撤退することになった店舗の販売担当者であったということに尽きるのであって、被解雇者の選定が客観的に合理的な基準に従って公正にされているともいえない

4 Xは、Y社部長らが、差別的で理不尽な本件解雇を通知した際、Xに対し、その勤務態度が不良であるというXの名誉を著しく損なうような虚偽の事実をもって本件解雇を正当化する本件書面を突きつけ、それに沿った説明をしたと主張する。
しかしながら、・・・このような事情に照らすと、本件書面に記載された自らの勤務態度に係る事実関係を強く否定するXの供述があることのみをもって、就業先から原告の勤務態度に関する報告があった等とする本件書面に記載された内容が全くの虚偽であり、これをY社があえて記載したとまで認めることはできない。

5 Xは、本件解雇が男女雇用機会均等法6条4号の規定に違反すると主張するが、平成20年3月から平成21年8月までの間に現に解雇されたY社の従業員はXのみであり、また、Y社において退職勧奨の対象者を女性に限っていたと認めることもできない。したがって、本件解雇が同号の規定に違反するということはできず、整理解雇である本件解雇が無効であるからといって、直ちに本件解雇をしたこと自体が不法行為に当たるとまでいうこともできない。

オーソドックスな整理解雇の事案です。

解雇回避努力が甘いと、簡単に無効と評価されてしまいます。

会社が整理解雇を選択する場合、よほどしっかり準備をしなければ、有効にならないことは、多くの裁判例から明らかです。

この裁判例でも言われているとおり、整理解雇は、リストラの「最終的な手段」です。

リストラ=整理解雇では、まず有効とは判断されませんのでご注意ください。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。