有期労働契約9(高嶺清掃事件)

おはようございます。

さて、今日は、雇止めに関する裁判例を見てみましょう。

高嶺清掃事件(東京地裁平成21年9月30日・労判994号85頁)

【事案の概要】

Y社は、一般及び産業廃棄物収集運搬処理業等を営む会社である。

Y社の業務は、公社部門(財団法人東京都環境整備公社から委託を受けたゴミの収集業務及び清掃工場の水質検査のための検体収集業務)、産廃部門(民間企業等の委託による産業廃棄物の回収、運搬業務及び中間処理業務)、局収部門(東京23区清掃協議会から委託を受けた一般廃棄物の回収車の運転業務)の3部門に分かれていた。

Xは、Y社にアルバイト社員(雇用期間1年)として雇用され、同社公社部門の水質検査関連業務に従事していた。

Y社は、公社部門廃止に伴い、Xを解雇した。

Xは、本件解雇は無効であると主張し、争った。

【裁判所の判断】

雇止めは無効

【判例のポイント】

1 Y社においては、正社員を上回る人数のアルバイト社員が正社員とほぼ同様の業務を遂行してきていること、アルバイト社員との契約更新手続は厳格にはなされていなかったこと、Y社から、期間満了により終了するというわけではないという程度の説明を受けたに過ぎないことから、Xの労働契約は、1年間の期間の定めのある契約ではあるものの、実質的には期間の定めのない契約と異ならない状態に至っているものと認めるが相当であり、Xの労働契約の期間満了による雇止めについては、客観的に合理的な理由を要するものと解するのが相当である。

2 Y社公社部門は、大幅な経常赤字(4197万円程度)を計上し、公社部門の赤字が他部門の経常黒字を大幅に減殺することが予想された。
Y社が、公社部門の廃止を決め、当該部門に所属していた従業員全員に相当する人数の人員整理を行うと判断したことには、企業の合理的運営上やむを得ない必要性があったということができる。

3 とはいえ、公社部門以外の部門では経常利益を経常利益を計上しており、公社部門の従業員の大半は希望退職に応じ、退職しなかった正社員3名の雇用継続は確保できたこと等の事情からすると、さらなる人員整理をしなければ、倒産の危機が差し迫ったというような状態にあったとは認められない

4 Y社は、公社部門の廃止に伴う人員整理を行うに当たり、公社部門に限っていえば、まず派遣契約を打ち切り、正社員を含めて、希望退職の募集を行い、正社員2名とアルバイト社員のうちXを除く7名がこれに応じて退職し、希望退職に応じなかった正社員3名の雇用を継続し、これに応じなかったXを雇止めしたものである。
しかしながら、Y社は、Xの雇止めを回避するために、公社部門以外の2部門については、派遣契約や労働者供給契約を打ち切っていない。Y社が公社部門に限っていえば、派遣契約を打ち切っていることを踏まえれば、かかる一貫しない措置の合理性は乏しいものと言わざるを得ない。

5 希望退職の募集は、解雇回避のために有効な手段であったと考えられるが、Y社は、公社部門以外の部門については希望退職の募集を行っていない。Y社の業務は3部門に分かれていたものの、事務職を除けば、3部門を通じて、正社員もアルバイト社員も概ね類似の業務に従事していたものであり、従事する業務や従業員のの能力・適性等との関係で、各部門と従業員の間の関連性や非代替性は希薄であったものと認められること等から、Y社が公社以外の部門について、希望退職を募集しなかった措置の合理性も乏しいと言わざるを得ない
また、Xの従前の業務遂行実績に照らせば、希望退職によって不足が生じた他の部門にXを配置換えすることに特段の不都合があったものとも認められない。

6 Y社は、再三にわたり再就職の斡旋を行ったと主張するが、飽くまで退職を前提にした提案であり、再就職先や再就職後の身分等の内容も具体性を欠き、Y社での雇用継続が確保されたのと同視しるような提案を行ったとは認められないから、これをもって、雇止めの回避努力義務を尽くしたと評価することはできない

7 X以外のアルバイト社員については1年間の定めがあって、アルバイト社員の平均的な勤続年数はXのそれと比して短く、Xのように期間の定めのない契約と異ならない状態には至っていない者や、雇用継続の合理的な期待が認められない者も相当数いた可能性が否定できないから、Y社がそうした社員の雇止めを検討することも考えられるところである。
以上の事情を考慮すると、Xが雇止めの対象とされた人選について合理性があるとはいえない

非常に参考になる裁判例です。

雇止めの理由が、実質的には整理解雇と異ならない場合です。

判決理由を読んでいると、この会社は、顧問の弁護士なり社労士にちゃんと相談して、ある程度慎重に手続を進めていたように感じます。

それでも、裁判所は、雇止めを認めませんでした。

一言でいえば、「おしい」という感じです。

会社を擁護するわけではありませんが、手続としてめちゃくちゃなことをやっているとは思いません。

ただ、整理解雇の要件は、それほどまでに厳しいということです。

有期労働契約は、雇止め、期間途中での解雇などで対応を誤ると敗訴リスクが高まります。

事前に顧問弁護士に相談の上、慎重に対応しましょう。

管理監督者16(稲沢市(消防吏員・深夜勤務手当等)事件)

おはようございます。

さて、今日は、管理監督者に関する裁判例を見てみましょう。

稲沢市(消防吏員・深夜勤務手当等)事件(名古屋高裁平成21年11月11日・労判1003号48頁)

【事案の概要】

Xらは、Y市の消防吏員であり、主幹または副主幹として管理職手当を支給されていた。

Y市は、Xらの深夜割増賃金は、管理職手当に含まれるとの前提で別途深夜割増賃金を支払っておらず、また、仮眠時間中の火災出勤等による所定勤務時間外の勤務についても、割増賃金を支払っていなかった。

Xらは、Y市に対し、平成12年度から平成19年度の勤務について、労基法上の深夜割増賃金、時間外割増賃金と、市条例に基づく時間外勤務手当の支払い等を求めた。

Y市は、給与条例上の管理職手当は深夜割増分を含んでいるから同割増分は弁済済みであるし、Xらは、労基法41条2号の管理監督者であるから時間外割増賃金請求には理由がないと主張するとともに、あわせて、2年の消滅時効の援用を主張した。

【裁判所の判断】

管理監督者性を否定し、深夜、時間外割増賃金等の支払いを命じた。

2年の消滅時効を認めた。

【判例のポイント】

1 給与条例10条1項の「管理又は監督の地位にある職員」及び同条3項の「第1項に規定する職員」はいずれも労基法41条2号の「監督若しくは管理の地位にある者」(労基法上の管理監督者)と同義と解するのが相当である

2 労基法の管理監督者の意義については、労基法41条2号が管理監督者に対しては同法の定める労働時間、休憩及び休日に関する規定を適用しないものとしている趣旨が、管理監督者は、その職務上の性質や経営上の必要から、経営者と一体的な立場において、労働時間、休憩及び休日等に関する規制の枠を超えて活動することが要請されるような重要な職務と責任、権限を付与され、実際の勤務態様も労働時間等の規制になじまない立場にあり、その一方で、賃金等の待遇面で他の一般の従業員に比してその地位に相応しい優遇措置が講じられていることや、自己の労働時間を自ら管理できることから、労基法の労働時間等に関する規制を及ぼさなくてもその保護に欠けるところはないと考えられることによるものと解されることから、これに基づいて判断することが必要である

3 具体的に、当該労働者が実質的に経営者と一体的な立場にあるといえるだけの重要な職務と責任、権限を付与されているか、経営や労務管理等に関する重要事項にどの程度関与しているか、出退勤を管理されることなく、勤務時間についてある程度の自由が認められているか、給与や手当等においてその地位と職責に相応しい待遇がなされているか等について検討し、実質的、総合的に判断すべきものということができる。したがって、いわゆる管理職手当が支払われているとしても、そのことだけをもって、その労働者を管理監督者と認めることはできない

4 Xらは、組織上管理職の一端を担い、自ら指揮命令を行い、タイムカード管理を受けなかったこと、管理職手当の額は管理監督者としての職務内容や職責に見合った額であることが認められる。
他方、所定勤務時間が厳格に定められ、場所的にも一定の拘束を受けるなど、その勤務態様は労働時間の規制になじむものであること、人事関係等の決裁権限を有さず、重要な意思決定に関与することもなかったこと、むしろ、部下である一般の消防吏員と一体となって、同様の職務に従事していたこと、管理職手当の額はさほど優遇されているとはいえないことからすると、Xらは、管理監督者には該当しない。

5 給与条例上の管理職手当支給対象者ではない職員に管理職手当を支給すると定めた本件給与規則は、Y市の給与条例に違反するものであり、Xらが得た管理職手当は不当利得となるから深夜割増賃金債務の有効な弁済とは認められないし、本来支給されるべきものでなかったとすれば、管理職手当を名目の異なる他の手当の支給に振り替えて、結果的に適法下しようとすることも給与条例主義に反するとされ、Xらは不当利得の返還義務を負うが、労基法24条の趣旨に照らし相殺は許されない

判例のポイント5は、特徴的ですね。

公務員ならではの理由付けです。

管理監督者性に関する判断は、通常通りですね。

管理監督者性に関する対応については、会社に対するインパクトが大きいため、必ず顧問弁護士に相談しながら進めることをおすすめいたします。

労災13(和歌山銀行事件)

おはようございます。

今日は、午前中1件打合せです。

予定では、午後いっぱい証人尋問だったのですが、裁判官の体調不良により延期となりました

神様・・・ありがとう。

ちょうどこちらも体調不良だったのでよかったです

今日も一日がんばります!!

今日は、労災に関する裁判例を見てみましょう。

和歌山銀行事件
(和歌山地裁平成22年1月12日・労判1004号166頁)

【事案の概要】

Xは、平成10年2月、Y社のA支店からB支店に転勤し、支店長代理に就任した。

XがA支店時代の不祥事が発火したことにより、同年6月に貸付係長に降格となり、翌7月に脳出血(右被殻出血)を発症し、左上下肢不全麻痺の後遺障害を残した。

Xは、現在、障害等級2級に認定を受け、障害者年金を受給している。

Xは、本件疾病により後遺障害を残しているとして、平成15年12月、労災保険法に基づき、橋本労基署長に対し、障害補償給付の請求をしたが、同署長は、これを支給しない旨の処分をした。

【裁判所の判断】

橋本労基署長による障害補償給付不支給処分は違法である。
→業務起因性肯定

【判例のポイント】

1 労災保険法に基づく補償は、労働者の業務上の災害に対して行われるものであり、業務上の疾病に当たるためには、業務と疾病の間に相当因果関係があることが必要であると解される。そして、労災保険制度が労働基準法の危険責任の法理に基づく使用者の災害補償責任を担保する制度であることからすると、相当因果関係が認められるには、当該疾病が、当該業務に内在する危険が現実化したものと評価しうるものであることが必要であると解するのが相当である

2 脳血管疾患の発症は、血管病変、動脈瘤、心筋変性等の基礎的病態が前提となり、これが長い年月をかけて徐々に進行し、増悪するといった自然経過をたどり、発症に至るものとされており、基礎的病態の形成、進行及び増悪には、加齢、食生活、生活環境等の日常生活における諸要因や遺伝等の個人に内在する要因が密接に関連するとされている。このような医学的知見を前提にすると、脳血管疾患の発症について業務との間に相当因果関係が認められるには、業務による明らかな過重負荷が加わることによって、血管病変等の基礎的病態が自然的経過を超えて著しく増悪し、脳血管疾患が発症したと認められる必要があり、脳血管疾患の発症の原因のうち業務が相対的に有力な原因であることが必要であると解するのが相当である

3 本件疾病発症から6か月前までのXの労働時間は、発症前3か月目(この月は連休で休日が多かった事情がある。)以外は、すべて時間外労働時間が80時間を超えており、平均の時間外労働時間を見ても、80時間を超える月が多く、80時間を超えない場合でも70時間を超えている。そうすると、本件発症前2か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働があったといえる。よって、新認定基準によると、Xの業務と本件疾病との関連性が強いと評価することができる。

4 Xは、本件疾病発症の6か月前までの間に、まず平成10年2月付けでA支店からB支店に転勤し、初めて支店長代理に就任したが、まもなくA支店時代の不祥事が発覚し、同年6月8日付けで降格処分を受けて、B支店の貸付係長に就任しており、短期間の内に2度の異動があり、降格処分まで受けている。ところで、支店長代理の業務や貸付部門の業務は、Xにとって初めての経験で責任も重く、不慣れな業務による精神的負担があったと考えられる上記降格処分についても、これが17人しか従業員のいないB支店内でなされたことも考慮すると、降格処分によるXへの精神的負荷は相当大きかったと考えられるうえ、降格処分前にも度重なる本店への呼び出しや、本社の営業推進部の部長等による責任追及により、Xが自らの地位等に大きな不安を抱いたことが十分考えられるから、これらによるXへの精神的負荷も大きかったと考えられる

5 確かにXには、高血圧、肥満、喫煙等本件疾病の原因となりうる私的リスクファクターがあり、本件疾病発症の前日まで韓国旅行をしていたが、これらはいずれも本件発症のリスクを高めたとは考えられないから、本件疾病の主要な要因であったとはいえない。

有期労働契約8(ドコモ・サービス(雇止め)事件)

おはようございます。

さて、今日は、雇止めに関する裁判例を見てみましょう。

ドコモ・サービス(雇止め)事件(東京地裁平成22年3月30日・労判1010号51頁)

【事案の概要】

Y社は、NTTドコモ社の委託を受けて、関東甲信越地方の携帯電話料金の回収業務を行う会社である。

Xは、Y社との間で、契約期間1年の定めのある委嘱契約を締結し、携帯電話料金の回収業務を行ってきた。同契約は、これまで5回更新されている。

Xの賃金は、基本給およびインセンティブ(回収額に応じて支給される野能率給)などにより構成されていた。

Y社は、インセンティブを廃止を決定し、数回にわたり説明会を開き、Xらに対し、その廃止に伴う補償措置などの説明をした。

具体的には、廃止により失われる賃金などについては一定の補償措置をとる、その主なものは一時金の支給、基本給の増額、退職金積立制度や業績評価による昇給の導入などである。

しかし、Xは、Y社の説明に納得せず、インセンティブ廃止等に合意しない旨を回答した。

そこで、Y社は、Xを雇用期間満了により退職をしたものとして雇止めをした。

【裁判所の判断】

雇止めは無効

【判例のポイント】

1 実質的に期間の定めのない契約と変わりがないものとは認められないが、XとY社の間の雇用期間を1年とする契約は、期間満了1か月前までに双方から何らの意思表示がないときは更新されると定められていたこと、外勤パート従業員制度見直しの説明会において、当時の東京料金センター所長が、外勤パート従業員であった者に対し、60歳に達するまで契約更新ができると述べていたこと、Xは、これまで5回更新され、意思に反して更新されなかった者はいないこと、などの事実からすると、Xの雇用は、ある程度継続が期待されたものというべきであり、本件雇止めには、解雇権濫用法理の類推適用がある

2 インセンティブ廃止等の必要性については、廃止の必要性があるとのY社の判断を直ちに不合理ということはできないが、回収コストの削減(Xらの賃金減額)もその廃止等の目的であったといえるから、必要性が認められるとしても、これに対する補償措置には相当高度の合理性が要求される

3 補償措置等の合理性については、Y社が提案した補償措置などを全体的に観察すると、インセンティブの支給額が年々減少するという見通しに基づく将来の年収(試算)をも下回っており、平成17年、18年度の当期純利益が10億円を超えているY社の財務状況において、Xがこれに納得しがたいのはやむを得ないものと考えられるから、(Y社の試算が正しいとしても)補償措置等の相当高度の合理性があるということはできない。

4 手段・経緯の合理性については、Y社は、Xがインセンティブの廃止などに合意しない場合でも、就業規則や給与規程などを変更するなどして、Y社の目的であるXらの賃金減額を実現できたと考えられるところ、そのような方法をとらず、Y社の提案に合意しないXを、雇用期間満了による退職と扱って雇止めするのは、雇用期間満了の機会を捉えてY社から排除したものと認められるのであり、手段・経緯に合理性を欠く。

このケースは、労働条件の変更に応じないことを理由とする、有期雇用の嘱託社員に対する雇止めの事案です。

判例のポイント4は、非常に参考になります。

また、会社としては補償措置を講じたからいいではないか、と思いたいところですが、その補償措置が十分でないと判断される可能性があります。

会社側とすれば、程度が難しいところですね。

有期労働契約は、雇止め、期間途中での解雇などで対応を誤ると敗訴リスクが高まります。

事前に顧問弁護士に相談の上、慎重に対応しましょう。

労働時間15(ハイクリップス事件)

おはようございます。

さて、今日は、継続雇用制度に関する裁判例を見てみましょう。

ハイクリップス事件(大阪地裁平成20年3月7日・労判971号72頁)

【事案の概要】

Y社は、いわゆる治験施設支援機関である。治験とは、医薬品等の承認申請に必要な臨床試験の試験成績に関する資料の収集を目的とする試験の実施をいう。

Xは、准看護師免許を有し、病院勤務、他社での治験コーディネーター(CRC)業務等を経て、Y社に入社した。

Xは、Y社から懲戒解雇された。

Xは、解雇の効力を争うとともに、時間外手当等の請求をした。

Y社は、XのようにCRC業務に従事する従業員については、原則としてその業務が治験実施医療機関である病院で行われるものであることから、業務の実施方法や時間配分等についてY社の具体的な指揮監督が及ばない状況にあり、労働時間を算定することが困難であることから、事業場外労働のみなし労働時間制を適用している。

【裁判所の判断】

事業場外みなし労働時間制の適用を受ける場合にはあたらない。

付加金の支払いは相当でない。

【判例のポイント】

1 みなし労働時間制は、単に労働者が事業場外で業務に従事しただけでなく、労働時間を算定し難い場合に適用されるところ、Y社は、タイムシートを従業員に作成させ、始業時刻や終業時刻を把握していただけでなく、どのような業務にどのくらいの時間従事したかも把握していたことからうかがわれるように電子メール等の連絡手段を通じて業務上の連絡を密にとっていたものと認められること、タイムシートには、みなし労働時間制の適用を前提とした画一的な始業時刻と終業時刻を記載するよう指示するのではなく、原則として実際の始業時刻と終業時刻を記載するよう指示していたことからすると、Xについて、労働時間を算定し難い状況があったとは認められない。よって、みなし労働時間制の適用はない。

2 Y社の時間外手当等の不払いは、微妙な判断を要する面もあるみなし労働時間制の適用に関する誤解もあることからすると、Y社に付加金の支払いを命じるのは相当でない

事業場外みなし労働時間制の適用を否定した点については賛成です。

付加金の支払いを相当でないとした点は、他の裁判例と比較すると、会社に優しいな、と感じました。

この裁判例は、事業場外みなし労働時間制の争点以外にもたくさんの争点が含まれています。

その一つに、時間外労働に関し、タイムシート記載の移動時間や、Xが所長等により時間外に送信される電子メールに対応したり、電子メールの送信に備えて待機した時間も含めて、時間外労働の時間数を計算すべきと判断しています。

Y社は、時間外であってもXが応答することを予想したうえで、時間外に業務上の指示等を行っていたことが認められる等として、これらについては、Y社の黙示的指示により時間外労働に従事したものと判断しました。

会社にいなくても、メールのやりとりから時間外労働を認定されています。

会社としては参考にすべき点ですね。

労働時間に関する考え方は、裁判例をよく知っておかないとあとでえらいことになります。事前に必ず顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。

労災12(NTT東日本北海道支店事件)

おはようございます。

今日は、午前中1件裁判と外部の法律相談。

午後は、外部の法律相談、打合せ3件という流れです。

そのため、ほとんど事務所におりません

今日も一日がんばります!!

さて、今日は労災に関する裁判例を見てみましょう。

NTT東日本北海道支店事件(札幌地裁平成21年11月12日・労判994号5頁)

【事案の概要】

Xは、Y社の札幌での研修期間中、夜に帰省し、翌々日、先祖の墓参りに出かけた際に急性心筋梗塞を発症し、死亡した(死亡当時58歳)。

Xは、平成5年5月の職場定期健診で心電図の異常が見つかっており、同年8月には冠状動脈血管形成術の入院手術を受けているほか、継続して診察・投薬を受けていた。

Xは、基礎疾患があったが、研修に際し、管理医と面談し、体調に特別の問題がなかったことから、研修に参加できると判断した。

【裁判所の判断】

旭川労基署長による遺族補償給付等不支給処分は違法である。
→業務起因性肯定

【判例のポイント】

1 業務上の死亡とは、業務と死亡に至らせた負傷又は疾病との間に相当因果関係が認められるものをいう。
心筋虚血(虚血性心臓疾患)は、通常、基礎となる血管病変等が、日常生活上の種々の要因により、徐々に進行・増悪して発症に至るものであるが、労働者が従事した業務が過重であったため、血管病変等をその自然の経過を超えて増悪させ、急性心筋虚血を発症させた場合には、業務に内在する危険が現実化したものとして、業務と急性心筋虚血との相当因果関係を認めることができる

2 構造改革に伴う雇用形態の選択について、Xは、平成13年4月のNTT東日本の事業構造改革が発表されてから、雇用形態の選択について悩み、健康状態を悪化させたことが認められる

3 研修の内容については、本件研修中は時間外労働はなく、労働時間の点では大きな負荷はなかったし、心臓に疾患を抱えるXにとって、50歳を過ぎて全く新しい分野の知識の習得を強いられる本件研修は、心身に負担のかかるものであったことは否定できないけれども、新しい業務分野の研修が参加者にとって通常業務以上の負担になることは通常のことであり、本件研修はその内容面で過重なストレスであったとは認められない。

4 研修中の宿泊状況について、東京研修中には4人部屋で、札幌研修中の一部の時期には2人部屋での宿泊であったところ、Xは普段の生活リズムが乱され、心身が休まらない状態にあったことがうかがえるが、東京研修中の宿泊環境が死亡につながるほど大きなストレスを与えるものであったとは考えにくく、死亡直前の札幌での研修中は1人部屋に宿泊していたことからすれば、それまでの宿泊によるストレスが残存して死亡につながったとは認められない。

5 しかし、本件研修の日程や場所については、本件研修は、4月末からの連休後は札幌での10泊11日に続いて東京での11泊12日、さらに札幌での4泊5日の研修が続くという日程であったところ、Xは、心臓手術を受けた後、医師の指導に従い、レジャーとしての旅行も避けていたのであって、出張の連続はXの心臓にとって大きな負担となったことがうかがわれる。
本件研修は、その日程や実施場所に照らし、Xの心臓疾患を自然的経過を超えて増悪させ、急性心筋虚血を発生させたものというべきである

6 Xの危険因子につき、Xの心臓は比較的安定していたこと、事業構造改革発表前はコレステロール値を下げてきていたことから、業務とは関係なく家族性高コレステロール血症等の危険因子が心疾患を突然悪化させたとは認められない。

本件については、行政訴訟とは別に不法行為に基づく損害賠償請求訴訟も提起されています。

民事訴訟では、以下の結論となっています。

第一審 逸失利益3086万余円、慰謝料2800万余円

第二審 同上

上告審 Xの死亡は基礎疾患の存在が原因の大半を占めているものとし長期間にわたる出張の連続がXの有していた基礎疾患を自然的経過を超えて増悪させたことは死亡の原因のうち30%を占めるとした

民事訴訟に関しては、最高裁で過失相殺されています。

しかも、70%の過失相殺です。

この最高裁判例以前にも、交通事故事案において、最一判平成4年6月25日が既往症の斟酌を認めていますが、上記NTT東日本・最高裁判決により初めて労災の場面においても既往症が斟酌されることが明らかになりました。

最高裁のこの判断には、賛否があるところです。

その後、差戻審の札幌高裁でも、同様の判断がされています。

なお、本件労災に関する判決は、民事訴訟の差戻審の判決より後に出されたものです。

有期労働契約7(京都新聞COM事件)

おはようございます。

さて、今日は、雇止めに関する裁判例を見てみましょう。

京都新聞COM事件(京都地裁平成22年5月18日・労判1004号160頁)

【事案の概要】

Y社は、京都新聞社の事業部門である京都新聞の販売、広告等の各業務について、京都新聞社の委託によりそれらを行うために京都新聞社の全額出資により設立された子会社である。

Xらは、Y社との間で、雇用契約期間6ヶ月とする雇用契約を締結した。

X1は、勤続年数7年9か月、更新回数10回、X2は、勤続年数4年11か月、更新回数4回に及ぶ。

Y社は、Xらに対し、雇用契約を更新しない旨の通知をした。

Xは、本件雇止めは無効であるとして提訴した。

【裁判所の判断】

雇止めは無効

【判例のポイント】

1 使用者と労働者の間で期限の定めのある雇用契約が締結された場合であっても、(1)更新が繰り返され、更新手続が形式的であるなど、当該雇用契約が期間の定めのない契約に転化したり、実質的に期間の定めのない雇用契約と異ならない状況になった場合には、普通解雇の要件に準じた要件がなければ使用者において雇用契約を終了させることができず、(2)労働者が継続雇用の合理的期待を有するに至ったと認められる場合には、期間の満了により直ちに雇用契約が終了するわけではなく、使用者が更新を拒絶するためには、社会通念上相当とされる客観的合理的理由が必要とされると解される。

2 XらとY社との雇用契約の更新が形式だけのものであったということはできず、XらとY社との雇用契約が、期間の定めのない雇用契約に転化した、又はそれと実質的に異ならない関係が生じたと認めることはできない。

3 Y社は、契約社員については3年を超えて更新されないという「3年ルール」が存在すると主張する。
京都新聞社グループにおいて、正社員と契約社員との採用方法や勤務体系の違い等からすると、「3年ルール」は一定の合理性を有しているということができる。
しかし、Y社においては、「3年ルール」が厳格に守られ、契約社員に周知されていたとは考えられず、Xらに対してもその旨の説明がされていたと認めることはできない。
したがって、「3年ルール」について説明をしていたことを理由としてXらにおいて契約期間満了後も雇用継続を期待することは合理的ではないとするY社の主張は採用できない。

4 契約期間であるが、X1については、勤続年数7年9か月、更新回数10回、X2については、勤続年数4年11か月、更新回数は4回に及んでいること、Xらの業務は、広告記事の作成やイベントの運営など、新聞編集等の業務と比べると軽いものではあるが、ほぼ自分の判断で業務を遂行しており、誰でも行うことができる補助的・機械的な業務とはいえないこと、Xらは、契約の満了時期を迎えても、翌年度に継続する業務を担当しており、当然更新されることが前提であったようにうかがえることなどからすると、Xらとしては、契約の更新を期待することには合理性があるといえる。

この裁判例をみても、そう簡単に雇止めはできないことがよくわかります。

会社のみなさんも、「期間雇用だから、いつでも解雇できる」と思っていると、裁判で負けてしまいます。

有期労働契約は、雇止め、期間途中での解雇などで対応を誤ると敗訴リスクが高まります。

事前に顧問弁護士に相談の上、慎重に対応しましょう。

労働時間14(阪急トラベルサポート(派遣添乗員・第2)事件)

おはようございます。

さて、今日は、事業場外みなし労働時間制に関する裁判例を見てみましょう。

阪急トラベルサポート(派遣添乗員・第2)事件(東京地裁平成22年7月2日・労判1011号5頁)

【事案の概要】

Y社は、募集型企画旅行において、主催旅行会社A社から添乗員の派遣依頼を受けて、登録型派遣添乗員に労働契約の申込みを行い、同契約を締結し、労働者を派遣するなどの業務を行う会社である。

Y社は、フランス等への募集型企画旅行の登録型派遣添乗員として、Xを雇用した。日当は1万6000円であり、就業条件明示書には、労働時間を原則として午前8時から午後8時とする定めがあった。

Y社では、従業員代表との間で事業場外みなし労働時間制に関する協定書が作成されており、そこでは、派遣添乗員が事業場外において労働時間の算定が困難な添乗業務に従事した日については、休憩時間を除き、1日11時間労働したものとみなす旨の記載があった。

Xは、Y社に対し、未払時間外割増賃金、付加金等を求めた。

【裁判所の判断】

事業場外みなし労働時間制の適用を受ける場合にあたる。

付加金として、割増賃金と同額を認容した。

【判例のポイント】

1 事業場外みなし労働時間制は、事業場外業務に従事する労働者の実態に即した合理的な労働時間の算定が可能となるように整備されたものであり、言い換えると、事業場外での労働は労働時間の算定が難しいから、できるだけ実際の労働時間に近い線で便宜的な算定を許容しようという趣旨である。これは、労働の量よりも質に注目した方が適切と考えられる高度の専門的裁量的業務について実際の労働時間数にかかわらず一定労働時間だけ労働したものとみなす裁量労働制(労基法38条3)とは異なった制度である。

2 みなし労働時間制が適用される「労働時間を算定し難いとき」とは、労働時間把握基準(平成13.4.6基発339号)が原則とする、使用者による現認およびタイムカード等の客観的な記録を基礎とした確認、記録により労働時間を確認できない場合を指し、自己申告制によって労働時間を算定できる場合であっても、「労働時間を算定し難いとき」に該当する場合がある

3 Xは単独で業務を行い、Y社が貸与した携帯電話を所持していたものの、随時連絡等はしていないこと、直行直帰していること、Xは現場の状況により予定変更をしており、アイテナリー(行程表)等による具体的指示があったとは評価できないことなどから、本件添乗業務は「労働時間を算定し難いとき」に該当する

4 労基法38条の2第1項ただし書の「業務の遂行に通常必要とされる時間」は、平均的にみて当該業務の遂行に必要とされる時間を意味すると解されるところ、本件では、Xの添乗日報の記載を重視してこれを算定するべきである。
→空港発着および搭乗前後、食事、オプショナルツアー等の時間を検討のうえ、本件における「業務に通常必要とされる時間」は11時間であるとして、8時間を超える部分についての時間外割増賃金支払義務、および法定休日の労働の存在と休日割増賃金の支払義務を認めた。

5 Y社は、時間外割増賃金及び休日割増賃金合計12万3700円を支払っていないところ、これに対し制裁としての付加金を課することを不相当とする特段の事由は認められず、同額の付加金の支払を命ずるのが相当である。

事業場外みなし労働時間制の適用が肯定されました。

阪急トラベルサポート(派遣添乗員・第1)事件では、事業場外みなし労働時間制の適用が否定されています。

もっとも、本件では、割増賃金と付加金の請求を命じています。

労基法38条の2第1項は以下のとおり。

労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働したものとみなす。ただし、当該業務を遂行するためには通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合においては、当該業務に関しては、厚生労働省令で定めるところにより、当該業務の遂行に通常必要とされる時間労働したものとみなす。

裁判所は、この「業務の遂行に通常必要とされる時間」がXの場合、11時間であると判断しました。

つまり、1日あたりの残業時間は3時間となるため、その分の割増賃金の支払いを命じたわけです。

この点、Y社は、Xの日当に3時間分の時間外割増賃金が含まれていると主張しました。

しかし、裁判所は、所定労働時間8時間分の賃金と時間外労働3時間分の割増賃金に当たる部分との明確な区分、および割増賃金がこれを上回る場合の差額支払いについての合意がないとして否定しました

事業場外みなし労働時間制を採用している会社として参考にすべき点ですね(注:明確な区分が必要であるという点は、事業場外みなし労働時間制特有の問題ではなく固定残業代を採用している場合にも問題となります)。

労働時間に関する考え方は、裁判例をよく知っておかないとあとでえらいことになります。事前に必ず顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。

労災11(神戸屋事件)

おはようございます。

今日は早朝ウォ-キングに行く予定でしたが、昨夜から体調が悪くお休みしました

昨夜は薬を飲んで早めに寝たため、回復しました。

今日は、午前中1件打合せ、午後は接見と書面作成です。

現在、7件の刑事事件は担当しているので、接見に行くのも大変です

今日も一日がんばります!!

さて、今日は、労災に関する裁判例について見てみましょう。

神戸屋事件(平成22年3月15日・労判1010号84頁)

【事案の概要】

Y社は、パン、洋菓子等の製造販売を業とする大手食品メーカーである。

Xは、Y社東京事業所業務課物流係係長として勤務していたが、持病である気管支喘息を悪化させ、その発作により心臓停止に至り死亡した(死亡当時41歳)。

Xは、小児喘息の既往があり、一旦は寛解していたが、その後、気管支喘息を発症した。33歳頃までの喘息の病状は、週1回程度、吸入薬を使用する程度であり、発作というほどのこともなく、軽症であった。

【裁判所の判断】

川口労基署長による遺族補償給付等不支給処分は違法である。
→業務起因性肯定

【判例のポイント】

1 労働者の死亡等を業務上のものと認めるためには、業務と死亡等との間に相当因果関係が認められることが必要である。そして、労災保険制度が、労働基準法上の危険責任の法理に基づく使用者の災害補償責任を担保する制度であることからすれば、上記の相当因果関係を認めるためには、当該死亡等の結果が、当該業務に内在する危険が現実かしたものであると評価し得ることが必要である。

2 Xの死因は、本件喘息死であった。上述の理は、労働基準法施行規則35条別表第1の2第9号の「その他業務に起因することの明らかな疾病」の認定においても、当然に妥当するものである。そうすると、本件喘息死が本件会社におけるXの業務に内在する危険が現実化したものと評価できるかを、経験則及び科学的知見に照らして、検討することになる。
この検討に当たっては、Xは喘息を基礎疾患として有していたところ、喘息の増悪が、業務上の過重負荷によりその自然の経過を超えたものであったといえるかという観点から、検討を加えることになる

3 過労・ストレスが喘息の増悪因子となることを肯定する医学的見解は多数存在する一方で、これらが喘息の増悪因子となることを積極的に否定する医学的見解は存在しないのであり、過労・ストレスは、喘息の増悪因子であると認めることができる。

4 Xの本件会社での業務内容を見ると、運行管理・調整、クレーム受付・対応・調整、運送業者との折衝、配送ルートの改善策の考案、部下の教育等多岐にわたるものであり、単調、規則的な業務内容ではないことを、まず指摘しなければならない。その上、トラブル発生の際には、その解消まで居残って処理をしなければならず、その際には、自ら車で工場まで商品を取りに行ったり、直接納入先に配送しなければならないこともある等のさらなる負担が生じることもあり得るのであり、その結果として、まとまった休憩時間も確保されないで、精神的ストレスの生じ得る、かつそれに伴う肉体的な負担が大きな業務であったと評価することができる

5 さらに、認定可能なXの本件喘息死以前の6か月の法定時間外労働時間は、月に79時間32分~95時間52分、月平均87時間58分と非常に長時間である。その前の段階も、この6か月間と同様の業務形態なのであり、遅くとも東京営業所に異動になった平成10年9月以降は、恒常的に上記のような慢性的な長時間勤務を余儀なくされていたと認めるべきであり、Xの業務は、労働時間だけでも、相当程度に過重なものであったといえる

6 その上、Xの業務は、夜勤交代制勤務であり、本件喘息死前6か月をみても、ほぼ全ての勤務が深夜に及び、夜勤の割合は約半分に及んでいたことは、Xの業務の過重性を論じる上では、看過できない事情である。Xの夜勤後退制勤務は、深夜業・交代制勤務の最低の基準であるとする日本産業衛生学会基準の12項目のうち、…7項目において、逸脱する態様であった。夜勤交代制勤務は、医学的知見によれば、深夜に起きて働くことにより生理リズムを乱し、睡眠の質・量ともに不足がちになること、交代勤務による家族生活等でのズレを修正しようとする調整努力を強めてしまうこと等から、疲労を蓄積させ、呼吸器疾患等の症状を進展させる要因となる。そうすると、Xの業務は、夜勤交代勤務という観点からも、相当程度に過重なものであったというべきである
以上によれば、Xの業務は、質、量ともに、通常人にとっても過重なものであり、これが慢性的に継続していたものと評価するだけの十分な根拠があるといわなければならない。

7 …喘息の症状に影響を与えなかったとまではいえない(アレルゲン、喫煙習慣、軽度の肥満)、喘息を増悪させた可能性は否定できない(吸入ステロイドが十分ではなかったこと、短時間作用性β2刺激薬の多用)、本件喘息死の誘因となった可能性も否定することはできない(本件喘息死の4、5日前の気道感染)。しかし、Xが元来持っていた基礎疾患が、業務上の質、量ともに過重な負担により重症化し、本件喘息死に近接する過程で、業務上の負担がさらに増加して、本件喘息死に至ったという経緯に鑑みて、Xの喘息増悪から本件喘息死に至る過程での過重な業務上の負担があったことにより、Xの喘息は、その自然の経過を超えて増悪して、本件喘息死に至ったものと評価することが相当である

日本産業衛生学会基準の12項目は以下のとおりです。

1 交代勤務による週労働時間は、通常週において40時間を限度とし、その平均算出時間は2週間とする。時間外労働は、原則として禁止し、あらかじめ予測できない臨時的理由にもとづくものに限り、年間150時間程度以下とすべきである。
2 深夜業に算入する時間は、現行の22時から5時までの規定を更に拡張し、21時から6時までを

有期労働契約6(日本郵便輸送(雇止め)事件)

おはようございます。

さて、今日は、雇止めに関する裁判例を見てみましょう。

日本郵便輸送(雇止め)事件(大阪地裁平成21年12月25日・労判1004号174頁)

【事案の概要】

Y社は、郵便物および通信事業に関連する物品の運送事業を目的とする会社である。

Xは、平成7年に期間臨時社員としてY社に雇用され、以降、平成20年までの間、約13年間にわたって勤務してきた。

Y社の業務は、その大半を郵便事業会社からの受託に依存し、郵便輸送自体、業務量の確実な予測が難しいという特殊性があること等から、非正規雇用への依存によらざるを得ない状況であった。他方、期間臨時社員について、雇用契約の反復継続が多数回にわたり、必ずしも「期間臨時」とは言い難い雇用状況にあり、また、待遇の安定を求める意見が出るなど問題が生じていた。

そこで、Y社は、期間臨時社員の身分の安定・向上を目的として、期間臨時社員の正社員化に向け、期間臨時社員制度そのものを廃止し、「地域社員制度」の創設に際し、期間臨時社員の全員を原則として正社員に移行することとした。

Y社は、Xに対し、地域社員制度に応募するよう促したが、Xは、地域社員制度の条件等に不満があるから応募しないと返答した。

Xは、応募期間内に応募しなかったことから、契約期間満了により、雇用関係が終了した。

Xは、Y社の対応に不満があるとして、提訴した。

【裁判所の判断】

雇止めは有効

【判例のポイント】

1 有期期間雇用労働者に関する雇止めについては、(1)期間の定めのない契約に転化しているか、(2)雇用契約継続に対する合理的な期待が存在する場合に、期間の定めのない契約に適用される解雇権濫用法理(労働契約法16条)が類推適用されると解されるところ、XとY社におけるこれまでの期間臨時社員有期雇用契約の更新回数及びXの業務内容(大型トラックによる郵便物の輸送業務)等からすると、XとY社の有期期間雇用契約が期間の定めのない契約に転化しているとは認められないものの、Xには同契約更新に対する合理的な期待が存在していたと認めるのが相当である

2 本件地域社員制度の導入には合理性が認められること、期間臨時社員に比して地域社員のほうが退職金、各種手当等の点において優遇されていること、制度移行に際しXには応募するか否かを検討する機会が保障されていたこと、Xにはパート従業員としての雇用継続の選択肢も用意されていたことなどを総合考慮すれば、本件雇止めには客観的な合理性があり社会通念上相当である。

結論は妥当であると考えます。

有期労働契約は、雇止め、期間途中での解雇などで対応を誤ると敗訴リスクが高まります。

事前に顧問弁護士に相談の上、慎重に対応しましょう。