労災11(神戸屋事件)

おはようございます。

今日は早朝ウォ-キングに行く予定でしたが、昨夜から体調が悪くお休みしました

昨夜は薬を飲んで早めに寝たため、回復しました。

今日は、午前中1件打合せ、午後は接見と書面作成です。

現在、7件の刑事事件は担当しているので、接見に行くのも大変です

今日も一日がんばります!!

さて、今日は、労災に関する裁判例について見てみましょう。

神戸屋事件(平成22年3月15日・労判1010号84頁)

【事案の概要】

Y社は、パン、洋菓子等の製造販売を業とする大手食品メーカーである。

Xは、Y社東京事業所業務課物流係係長として勤務していたが、持病である気管支喘息を悪化させ、その発作により心臓停止に至り死亡した(死亡当時41歳)。

Xは、小児喘息の既往があり、一旦は寛解していたが、その後、気管支喘息を発症した。33歳頃までの喘息の病状は、週1回程度、吸入薬を使用する程度であり、発作というほどのこともなく、軽症であった。

【裁判所の判断】

川口労基署長による遺族補償給付等不支給処分は違法である。
→業務起因性肯定

【判例のポイント】

1 労働者の死亡等を業務上のものと認めるためには、業務と死亡等との間に相当因果関係が認められることが必要である。そして、労災保険制度が、労働基準法上の危険責任の法理に基づく使用者の災害補償責任を担保する制度であることからすれば、上記の相当因果関係を認めるためには、当該死亡等の結果が、当該業務に内在する危険が現実かしたものであると評価し得ることが必要である。

2 Xの死因は、本件喘息死であった。上述の理は、労働基準法施行規則35条別表第1の2第9号の「その他業務に起因することの明らかな疾病」の認定においても、当然に妥当するものである。そうすると、本件喘息死が本件会社におけるXの業務に内在する危険が現実化したものと評価できるかを、経験則及び科学的知見に照らして、検討することになる。
この検討に当たっては、Xは喘息を基礎疾患として有していたところ、喘息の増悪が、業務上の過重負荷によりその自然の経過を超えたものであったといえるかという観点から、検討を加えることになる

3 過労・ストレスが喘息の増悪因子となることを肯定する医学的見解は多数存在する一方で、これらが喘息の増悪因子となることを積極的に否定する医学的見解は存在しないのであり、過労・ストレスは、喘息の増悪因子であると認めることができる。

4 Xの本件会社での業務内容を見ると、運行管理・調整、クレーム受付・対応・調整、運送業者との折衝、配送ルートの改善策の考案、部下の教育等多岐にわたるものであり、単調、規則的な業務内容ではないことを、まず指摘しなければならない。その上、トラブル発生の際には、その解消まで居残って処理をしなければならず、その際には、自ら車で工場まで商品を取りに行ったり、直接納入先に配送しなければならないこともある等のさらなる負担が生じることもあり得るのであり、その結果として、まとまった休憩時間も確保されないで、精神的ストレスの生じ得る、かつそれに伴う肉体的な負担が大きな業務であったと評価することができる

5 さらに、認定可能なXの本件喘息死以前の6か月の法定時間外労働時間は、月に79時間32分~95時間52分、月平均87時間58分と非常に長時間である。その前の段階も、この6か月間と同様の業務形態なのであり、遅くとも東京営業所に異動になった平成10年9月以降は、恒常的に上記のような慢性的な長時間勤務を余儀なくされていたと認めるべきであり、Xの業務は、労働時間だけでも、相当程度に過重なものであったといえる

6 その上、Xの業務は、夜勤交代制勤務であり、本件喘息死前6か月をみても、ほぼ全ての勤務が深夜に及び、夜勤の割合は約半分に及んでいたことは、Xの業務の過重性を論じる上では、看過できない事情である。Xの夜勤後退制勤務は、深夜業・交代制勤務の最低の基準であるとする日本産業衛生学会基準の12項目のうち、…7項目において、逸脱する態様であった。夜勤交代制勤務は、医学的知見によれば、深夜に起きて働くことにより生理リズムを乱し、睡眠の質・量ともに不足がちになること、交代勤務による家族生活等でのズレを修正しようとする調整努力を強めてしまうこと等から、疲労を蓄積させ、呼吸器疾患等の症状を進展させる要因となる。そうすると、Xの業務は、夜勤交代勤務という観点からも、相当程度に過重なものであったというべきである
以上によれば、Xの業務は、質、量ともに、通常人にとっても過重なものであり、これが慢性的に継続していたものと評価するだけの十分な根拠があるといわなければならない。

7 …喘息の症状に影響を与えなかったとまではいえない(アレルゲン、喫煙習慣、軽度の肥満)、喘息を増悪させた可能性は否定できない(吸入ステロイドが十分ではなかったこと、短時間作用性β2刺激薬の多用)、本件喘息死の誘因となった可能性も否定することはできない(本件喘息死の4、5日前の気道感染)。しかし、Xが元来持っていた基礎疾患が、業務上の質、量ともに過重な負担により重症化し、本件喘息死に近接する過程で、業務上の負担がさらに増加して、本件喘息死に至ったという経緯に鑑みて、Xの喘息増悪から本件喘息死に至る過程での過重な業務上の負担があったことにより、Xの喘息は、その自然の経過を超えて増悪して、本件喘息死に至ったものと評価することが相当である

日本産業衛生学会基準の12項目は以下のとおりです。

1 交代勤務による週労働時間は、通常週において40時間を限度とし、その平均算出時間は2週間とする。時間外労働は、原則として禁止し、あらかじめ予測できない臨時的理由にもとづくものに限り、年間150時間程度以下とすべきである。
2 深夜業に算入する時間は、現行の22時から5時までの規定を更に拡張し、21時から6時までを