Daily Archives: 2010年11月13日

労働者性1(新国立劇場運営財団事件)

おはようございます。

今日は、労働者性に関する裁判例を見てみましょう。

新国立劇場運営財団事件(東京高裁平成19年5月16日・労判944号52頁)

【事案の概要】

Xは、合唱団などにおいて歌唱演奏をしていた者である。

Xは、Y財団との間で、平成11年以降、毎年、期間を1年とする出演基本契約を締結するとともに、個別公演毎に出演契約を締結して、新国立劇場合唱団のメンバーとしてY財団の主宰するオペラ公演等に出演していたが、平成15年2月、Y財団から、同年7月末実をもって契約関係を終了し、次シーズンの出演基本契約は締結しない旨の通知を受けた。

Xは、出演基本契約は労働契約であり、その更新拒絶は、労基法18条の2の類推適用、労組法7条1号により無効であるなどと主張し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認等を求めた。

【裁判所の判断】

本件出演基本契約は労働契約ではない。
→Xは、労基法上の労働者には当たらない。

【判例のポイント】

1 出演基本契約の契約の定め方や運用の実態等に照らすと、同契約は、契約メンバーに対して、今後Y財団から出演公演一覧のオペラ出演に優先的に出演申込みをすることを予告するとともに、契約メンバーとの間で個別公演出演契約が締結される場合に備えて、各個別出演契約に共通する、報酬の内容、額、支払方法等をあらかじめ定めておくことを目的とするものであると解される

2 出演基本契約の締結に当たって、Y財団は、契約メンバーが出演公演一覧のオペラに出演することを当然期待し、契約メンバーも、それらに出演する心づもりで契約メンバーになるのが通常であると推認されるが、それはあくまでも事実上のものにとどまり、Y財団からの個別の出演申込みに対して、契約メンバーは最終的に諾否の自由を有していた

3 個別公演出演契約をY財団と締結して初めて、特定の公演に参加したり、それに必要な稽古に参加する義務が生じ、逆に、報酬を請求する権利が発生するものというべきで、本件出演基本契約を締結しただけでは、XはいまだY財団に対して出演公演一覧のオペラに出演する義務を負うものではなく、また、オペラ出演の報酬を請求する具体的な権利も生じないものであるから、XとY財団との間に労基法、労組法が適用される前提となる労働契約関係が成立しているといえないことは明らかである

第一審同様、X(オペラ歌手)の労働者性を認めませんでした。

裁判所の判断としては、契約メンバーに「諾否の自由」があったことが重視されています。

Y財団からの個別の出演申込みに対して、契約メンバーが諾否の自由があったとすれば、前提となる出演基本契約では、労務提供が義務づけられていないことになります。

労基法上の労働者性が否定されたため、解雇権濫用法理は適用されないことになります。

労働者性に関する判断は本当に難しいです。業務委託等の契約形態を採用する際は事前に顧問弁護士に相談することを強くおすすめいたします。