管理監督者9(セントラル・パーク事件)

おはようございます。

さて、今日は、管理監督者に関する裁判例を見てみましょう。

セントラル・パーク事件(岡山地裁平成19年3月27日・労判例941号23頁)

【事案の概要】

Y社は、ホテルや駐車場等を経営し、軽食喫茶店も、一時経営していた会社である。

Y社は、社長、専務らを中心とするいわゆる同族会社である。

Xは、Y社との間で、料理長として勤務する旨の期間の定めのない雇用契約を締結した。Xの業務内容は、Y社が経営するホテルのレストラン等の料理の企画、実行及び他の料理人の指揮・監督であった。

Xは、Y社退職後、時間外労働手当、付加金等の支払いを求めた。

これに対し、Y社は、Xが労基法41条2号の管理監督者であるから、時間外労働手当を請求できる地位にない等と主張し争った。

【裁判所の判断】

管理監督者性を否定し、時間外割増賃金の支払いを命じた。

付加金の支払いも命じた。

【判例のポイント】

1 Xは出退勤について厳格な規制を受けずに、自己の勤務時間について自由裁量を有しているとは認めがたい。

2 現場での料理人の配置を決める以上に、各料理人の昇給の決定やY社の労務管理方針の決定への参画など、特段の労務管理についての権限があったわけではない。

3 Xの給与面での待遇は、Y社内においては高いものであったとしても、その待遇の故をもって管理監督者に該当するとはいえず、その待遇も管理監督者に該当しないとしても、不自然に高いものということはできない。

勤務時間について、Y社では、料理人であるXの作成したシフト表に基づき他の料理人は勤務し、Xは、その勤務時間割もシフト表によって自ら決定していたし、自己の出退勤時間や休日について、社長や専務に対し、逐一報告や了承をとっていなかったようです。

しかし、裁判所は、以下のように判断し、Xの出退勤に厳格な規制がないと評価することはできないとしました。

「しかし、Xは、他の料理人と同様の勤務時間帯に沿ってシフト表に自らを組み込み、他の料理人と同様に、ホテルレストラン等において料理の準備、調理、盛り付けといった仕事を行っていたのであって、Xを含む5人の料理人がそれぞれ月5日以上の休日を取っているため、4人の料理人でホテルレストラン等の調理を担当する日も多く、Xがシフト表を作成するからといって、自己についてのみ、自由に出退勤時間を決めたり、その都合を優先して休日をとったりすることが実際には困難であったことは容易に推認できる。」

形式よりも実質を重視したわけです。

また、Y社が料理人を採用する際、Xの関与の程度について、裁判所は以下のように判断しています。
「Xは、Y社が料理人を採用する際には、Y社社長に候補者を推薦したり、募集や採用の手続を自ら行ってはいたが、Xの判断のみで採用や解雇が決定されたということはないし、Xが採用を推薦することが直ちにY社の採用につながるものではなかった。」

う~ん・・・Xは社長ではありませんので、Xの判断のみで決定できるわけがありません。

その他、裁判所は、以下のとおり判断し、付加金の支払いを命じました。

Y社は、かつてはタイムカードによって従業員の出退勤時刻の把握をしていたにもかかわらず、労働基準監督署から法定労働時間外労働に対する割増賃金の不払等について是正勧告を受けた後間もなく、タイムカードを廃止し、その後は、出勤した従業員に出勤簿に押印させるのみとして、従業員の出勤時刻はもちろん退勤時刻を客観的に記録、把握する仕組みを何ら設けていないことが認められ、Y社は、労働時間の適正な把握という使用者の基本的な責務を果たしていないと評価するほかない。そして、Y社において労働時間を適正に把握していれば、本件紛争もより早期に的確に解決し得たものと考えられるし、Xが本件請求期間においてシフト表記載の時刻よりも早く出勤し、又は遅く退勤したことがあったことについては、証明には至らないものの、相当程度の可能性が存在するのである。
そうすると、……本件ではY社に付加金の支払を命ずることが相当である

そして、本件では、裁判所の裁量によって付加金を減額するのが相当というまでの事情は認められない。

未払残業代等の請求をする際、会社がちゃんとタイムカード等で労働時間を管理していないことがあります。

今回のケースは、労基署による是正勧告後に、あえて労働時間の管理を放棄したもので、悪質と言わざるを得ません。

そのため、裁判所も、付加金の支払いを満額認めたようです。

付加金は、裁判所の裁量により減額されたり、支払わなくてもよいと判断されることがあります。

付加金について満額支払われるべきであると主張する際の理由づけとして参考になりますね。

管理監督者性に関する対応については、会社に対するインパクトが大きいため、必ず顧問弁護士に相談しながら進めることをおすすめいたします。

競業避止義務6(アサヒプリテック事件)

おはようございます。

さて、今日は、競業避止義務に関する裁判例を見ていきます。

アサヒプリテック事件(福岡地裁平成19年10月5日・労判956号91頁)

【事案の概要】

Y社は、歯科用合金スクラップ、電子材料、宝飾製造業からの排出屑を買い取り、貴金属の回収をするリサイクル業及び産業廃棄物の無害化処理等の環境保全事業を主たる目的とする会社である。

Xは、Y社の従業員である。

Y社の就業規則には、退職後2年以内の競業避止義務に関する規定がある。

Xは、Y社入社時、退職後3年以内の競業避止義務に関する誓約書を提出した。

Xは、Y社退職後、個人で、歯科医院等から排出される歯科用合金スクラップの買取業を始めた。

Y社は、Xに対し、誓約書に基づく合意及び就業規則の競業避止条項に基づき、上記買取りの禁止及び債務不履行に基づく損害賠償を求めた。

【裁判所の判断】

請求棄却。

【判例のポイント】

1 退職後一定期間は使用者である会社と競業行為をしない旨の入社時における特約や就業規則の効力は、一般に経済的弱者の立場にある従業員の生計の方法を閉ざし、その生存を脅かすおそれがあるとともに、職業選択や営業の自由を侵害することになるから、上記特約や就業規則において競業避止条項を設ける合理的事情がない限りは、職業選択や営業の自由に対する侵害として、公序良俗に反し、無効となるいうべきである。
したがって、従業員が、雇用期間中、種々の経験により、多くの知識・技能を取得することがあるが、取得した知識や技能が、従業員が自ら又は他の使用者のもとで取得できるような一般的なものにとどまる場合には、退職後、それを活用して営業等することは許される。

2 しかしながら、当該従業員が会社内で取得した知識が秘密性が高く、従業員の技能の取得のために会社が開発した特別なノウハウ等を用いた教育等がなされた場合などは、当該知識等は一般的なものとはいえないのであって、このような秘密性を有する知識等を会社が保持する利益は保護されるべきものであり、これを実質的に担保するために、従業員に対し、退職後一定期間、競業避止を認めることは、合理性を有している。

3 会社との間で取引関係のあった顧客を従業員に奪われることを防止するという目的のみでは、競業避止条項に合理性を付与する理由に乏しいが、この目的を主たる理由とする場合でも、会社が保有していた顧客に関する情報の秘密性の程度、会社側において顧客との取引の開始又は維持のために出捐(金銭的負担等)した内容等の要素を慎重に検討して、会社に競業避止条項を設ける利益があるのか確定する必要がある。そして、他の従業員への影響力、競業制限の程度、代替措置等の要素の存否を検討し、会社と従業員の利益を比較考量して、競業避止条項を設ける合理的事情がある場合には、公序良俗に反しない場合もある。

4 Y社が競業避止条項を設けた目的は、XによってY社の顧客を奪われることを防止することにあるところ、顧客情報等の秘密性に乏しく、Y社がXに対し競業避止を求める利益は小さいと言わざるを得ない。
他方、競業避止の対象となる取引の範囲(種類、地域)は広範で、期間も長期に及び、競業避止条項により、Xの生存権、職業選択の自由、営業の自由に対する侵害の程度が大きいことが認められる。
そして、Xは、Y社において役職等を有しておらず、退職後、Y社従業員に対し影響力を有する地位等にあったとはいえない。また、Y社がXに対し競業避止に関する代替措置を講じた事実は認められない。

この裁判例では一般論がしっかりと書かれており、非常に参考になります。

訴訟の是非を含め、対応方法については事前に顧問弁護士に相談しましょう。

競業避止義務5(エーディーアンドパートナーズ(アルケ通信社)事件)

おはようございます。

さて、今日は、競業避止義務に関する裁判例を見てみましょう。

エーディーアンドパートナーズ(アルケ通信社)事件(東京地裁平成20年7月24日・労判977号86頁)

【事案の概要】

Y社は、主として不動産に関する広告・印刷業等を目的とする会社である。

Xは、Y社の従業員として、営業企画部に配属され、営業活動に従事し、退職した。退職時の役職は営業企画部課長である。

Y社就業規則には、会社の機密事項等に関する守秘義務が規定されていた。

また、Xは、Y社退職時に、同内容の誓約書をY社に提出した。

Xは、Y社を退職し、約1カ月後、広告関連事業を目的とするA社を設立し、A社の代表取締役となった。

Y社は、Xが、Y社在職中に営業企画部課長として関与した取引先会社B社から受注予定の広告事業について、Y社から受注を奪うべく在職中又は退職後にB社に対して働きかけを行い、退職後に自ら設立したY社と競業するA社において、当該受注を受けるとともに、B社を奪いY社に損害を与えたとして、X及びA社に対し、不法行為又は債務不履行による損害賠償請求をした

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xの退職の理由は、二女が誕生し、妻が自宅療養中であるなどの家庭事情がある中で、Y社の勤務環境および当該家庭事情を理由とする研修不参加に対する幹部らの対応に失望したことにある。

2 Xは退職の時点では、会社を設立するか同業他社に転職するかについて決めかねていた。

3 引継ぎの際、Xは、最終段階できちんとした企画書を提出さえすれば受注はほぼ間違いないであろうと考えたことから、Y社従業員に対し、企画書さえ出せば受注は取れる、最初から企画書はかちっとしたものでなくてもよい、などと発言した。

4 B社は当初からコンペにより発注先を決定する方針であった

5 XがY社在職中はもとより退職後も、B社から企画書提出の要請を受けるまでの間に、B社に接触を図ったり、B社に提出するA社企画書の作成に当たり、Y社在職中に知り得た情報等を使用したことなどは認められず、引継ぎについても、ことさらにY社従業員を油断させるようなものとはいえない

 Xは、Y社退職後、A社設立準備中にB社担当者からコンペ参加の打診を受け、Y社在籍中に知り得た業務上または技術上の秘密等を利用することなく、退職後に自ら行った現地調査や周辺環境の調査等をもとに、それまで培った経験・知識等を生かして企画書を作成・提出し、、受注に至ったのであり、これを自由競争の範囲を逸脱した違法なものということはできない

このように、裁判所は、Xが代表取締役を務めるA社が、B社から新規プロジェクトを受注できたのは、B社のコンペにおいて最も高い評価を得たためであり、これを自由競争の範囲を逸脱した違法なものということはできないと判断しました。

妥当な判断だと思います。

訴訟の是非を含め、対応方法については事前に顧問弁護士に相談しましょう。

労災⑦(審査請求の手続その2)

おはようございます。

今日は、終日、下田で裁判です

午前1件、午後2件、うち1件は証人尋問です

静岡に帰ってくるのは、20時を過ぎると思われます・・・

では、行ってきます。

さて、今日も引き続き、審査請求の手続について見ていきます。

1 審査官は、審査請求を受理したときは、審査請求人、原処分庁、利害関係者及び参与に対し、審査請求受理通知書を送付しなければなりません。

審査官は、原処分庁に対し、事件についての意見書を提出するように通知します。

利害関係者に対しては、審査官の定める期間内に事件に対する意見書を提出するように通知します。

2 審査請求は、原処分の執行を停止しません。

審査官は、原処分の執行によって償うことが困難な損害の発生を防止するため、緊急の必要があると認めるときは、職権でその執行を停止することができます。

3 審査請求人は、すでに審査請求書において意見を述べているため、さらに補足意見、証拠調べの申立てができます(代理人も同様)。

4 審理は、審査請求人及び原処分庁双方の説明を聞いて行います。

5 決定は、決定書の謄本が審査請求人に送付到着したときに効力が生じます。

決定書には、結論にあたる結論にあたる「主文」と「理由」(請求の経過、争点、証拠)と「判断」が具体的に記載されています。

決定は、当事者のみならず、利害関係者を拘束します。

6 審査請求人は、決定書の送付を受けるまではいつでも審査請求を取り下げることができます。

労災⑥(審査請求の手続その1)

おはようございます。

横になったら、2秒で寝る自信があります

寝てる場合ではありません。

最近読んだ本の中で、「片目ずつ眠りましょう」みたいなことが書いてありました

・・・ど、どういうこと?

今日も力の限り、がんばります!

さて、今日は、労災に関する審査請求の手続について見ていきましょう。

1 審査請求は、原処分を行った監督署を管轄する各都道府県労働局の管轄審査官に対して行わなければなりません。

この審査請求は原処分庁である労基署長に対して提出してもいいですし、審査請求人の住所地を管轄する労基署長に提出してもいいです。

2 審査請求の申立ては、文章でも口頭でも可能です。

口頭の場合、聴取書が作成されます。

3 審査請求は、審査請求人が原処分のあったことを知った日の翌日から起算して60日以内(除斥期間)に行わなければなりません。

「原処分のあったことを知った日」とは、審査請求人が現実に原処分庁からの処分通知によって原処分が行われたことを知った日のことであり、通知が審査請求人の住所に宛てて行われても、審査請求人が長期の旅行などにより現実に知らなかった場合には該当しません。

この期間を徒過した場合であっても、審査請求人の正当な理由により、この期間内に審査請求できなかった場合には、期間経過後の請求も認められます。

この場合の「正当な理由」とは、一般的に客観的な事情により通常審査請求することが困難であったことを意味し、単に審査請求人の個人的、主観的事情のみでは足りません。

審査請求の除斥期間には、郵便送達中の期間は算入されないので、発信日が60日以内であれば審査請求は有効です

4 文書で請求する場合には、記載事項が決定されているので、請求用紙をもらうのが便利です。

なお、用紙は行の間隔が狭いので、「別紙のとおり」と記載して、別の用紙で、詳しく記載することになります。

5 「審査請求の趣旨」には、「○○労基署長が平成○○年○月○日に請求人に対してなした○○補償給付の処分の取消しを求める」と端的に記載すれば足ります。

「審査請求の理由」には、具体的な理由を詳しく記載します。

その場合、(1)手元にある資料や同僚などから資料の提供を求め、これに基づいて記載すること、(2)解釈通達が出されている事故では、その通達の認定基準に合致する事実を中心に記載すること、がポイントです

書き足りない部分がある場合には、「後日、追加理由を述べる」等と記載し、後日、追加記載することもできます。

請求の趣旨や理由は、決定前であれば、いつでも変更できます。

また、証拠も決定があるまでは、いつでも提出できます。

労災⑤(保険給付に関する救済制度)

おはようございます。さ、寒い・・・。

事務所です

今日も、日中は、相談、裁判で埋め尽くされています

9時までが勝負です!!

あと3時間、集中します

今日は、労災保険給付に関する救済制度の概要について見てみましょう。

労基署長が、労災保険給付をしないとの決定(不支給決定)等の行政処分をした場合、その処分に不服があるときは、被災労働者や遺族などは労働保険審査制度による審査を経て行政訴訟を提起することができます

労働保険審査制度は、行政機関による救済制度で、二審制をとっています。

一審は、労働災害補償保険審査官に対する審査請求(決定)です。

二審は、労働保険審査会に対する再審査請求(裁決)です。

行政訴訟は、原則として、この2段階の審査手続を経ることを要します(不服申立前置主義)。

その決定や裁決に不服があるときに原処分庁(労基署長)を被告として処分の取消しを求める訴えを提起することになります。

保険給付に関する行政処分については、裁決があったことを知った日から6カ月以内に提訴することになりますが、再審査請求をした後3カ月を経過しても裁決がなされない場合等にも訴訟を提起できることになっています。

不服申立と行政訴訟の大まかな流れは以下のようになります。

1 労災発生
    ↓
2 労基署長に保険給付請求を行う
    ↓(不支給決定の手紙が届く)
3 不服がある場合には、決定を知った日の翌日から60日以内に審査官に審査請求
    ↓
4 (1)審査官の決定に不服がある場合、決定書の謄本が送付された日の翌日から60日以内に、または、
(2)3カ月経過しても審査官の決定がない場合に、
労働保険審査会に再審査請求
    ↓
5 (1)審査会の裁決に不服があり、裁決書の謄本が送付された日の翌日から6カ月以内のとき、
(2)3カ月しても裁決がないとき、または
(3)著しい損害を避けるため緊急の必要があるときその他正当な理由があるとき
行政訴訟を提起

期間が短いので、注意しなければいけません

60日→60日→6カ月です。

次回以降、もう少しくわしく見ていくことにします。

管理監督者8(日本ファースト証券事件)

おはようございます。

さて、今日も、管理監督者に関する裁判例を見ていきましょう。

日本ファースト証券事件(大阪地裁平成20年2月8日・労判959号168頁)

【事案の概要】

Y社は、有価証券の売買、有価証券指数等先物取引等を業として行う会社である。

Xは、Y社の大阪支店長として入社し、約1年後に退職した。

Xは、Y社に対し、休日出勤に対する時間外割増賃金等を請求した。

Y社は、Xが管理監督者に該当するなどと主張し、争った。

【裁判所の判断】

管理監督者性を肯定し、請求を棄却した。

【判例のポイント】

1 Xは、大阪支店の長として、30名以上の部下を統括する地位にあり、Y社全体から見ても、事業経営上重要な上位の職責にあった。

2 大阪支店の経営方針を定め、部下を指導監督する権限を有しており、中途採用者については実質的に採否を決する権限が与えられていた

3 人事考課を行い、係長以下の人事についてはXの裁量で決することができ、社員の降格や昇格にういても相当な影響力を有していた

4 部下の労務管理を行う一方、Xの出欠勤の有無や労働時間は報告や管理の対象外であった

5 月25万円の職責手当を受け、職階に応じた給与と併せると賃金は月82万円になり、その額は店長以下のそれより格段に高い

6 このようなXの職務内容、権限と責任、勤務態様、待遇等の実態に照らしてみれば、Xは、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある管理監督者にあたるというべきである。

これらの判断とは対照的に、Xはさまざまな反論をしていますが、すべて認められていません。

例えば、

X 「外務員日誌の作成を求められるなど労働時間の管理を受けている。」
裁判所 「外務員日誌の作成が交通費の実費精算と営業経過の備忘のためであったことは、Xも認めているところであって、これをもって労働時間が管理されていたということはできない。」

X 「自らも降格処分を受けていることをもって、自身に人事権がなかった証拠である。」
裁判所「証拠によれば、Xの降格は、部下の営業成績が悪かったことに対する管理者責任を問われた結果であることが認められ、かえってXに支店の経営責任と労務管理責任があったことを裏付ける。」

X 「待遇としても、以前勤めていた会社では、Y社での給与より、残業手当込みで月額15万円以上高かったと述べ、Y社における待遇は高いものではなかった。」
裁判所 「賃金体系も契約内容も異なる会社での給与額だけを単純に比較して、その多寡を決することはできないし、Y社における月額80万円以上の給与が、Xの職務と権限に見合った待遇と解されないほど低額とも言いがたい。」

管理監督者性に関する対応については、会社に対するインパクトが大きいため、必ず顧問弁護士に相談しながら進めることをおすすめいたします。

管理監督者7(姪浜タクシー事件)

おはようございます。

さて、今日は、管理監督者に関する裁判例を見てみましょう。

姪浜タクシー事件(福岡地裁平成19年4月26日・労判948号41頁)

【事案の概要】

Y社は、タクシーによる旅客運送業等を業とする会社である。

Xは、タクシー乗務員としてY社に雇用され、営業部次長となり、定年退職した。

Xは、Y社に対し、在職中の時間外労働及び深夜労働の割増賃金と付加金等請求した。

Y社は、Xは管理監督者に該当する等と主張し争った。

【裁判所の判断】

管理監督者性を肯定し、時間外労働の割増賃金の請求を棄却した

深夜労働割増賃金の請求は認めたが、付加金の請求は棄却した。

【判例のポイント】

1 Xは、営業部次長として、終業点呼や出庫点呼等を通じて、多数の乗務員を直接に指導・監督する立場にあった。

2 乗務員募集についても、面接に携わってその採否に重要な役割を果たしていた。

3 出退勤時間についても、多忙なために自由になる時間は少なかったと認められるものの、唯一の上司というべきA専務から何らの指示を受けておらず、会社への連絡だけで出先から帰宅することができる状況にあったなど、特段の制限を受けていたとは認められない
なお、Xは、勤務シフトに拘束されて出退勤時間の自由はなかったと主張するが、勤務シフトが作成されていたのは、営業部次長の重要な業務である終業点呼や出庫点呼に支障を来さないためであると認められるのであり、それ自体で出退勤時間の自由がないということはできない。

4 他の従業員に比べ、基本給及び役務給を含めて700万円余の高額の報酬を得ていたのであり、Y社の従業員の中で最高額であった

5 XがY社の取締役や主要な従業員の出席する経営協議会のメンバーであったことや、A専務に代わり、Y社の代表として会議等へ出席していた

6 これらを総合考慮すれば、Xは、いわゆる管理監督者に該当すると認めるのが相当である。

上記4から、待遇については、金額そのものではなく、他の従業員との比較で判断されることがわかります。

そのため、例えば、1000万円の報酬をもらっていても、他の従業員もそれくらいもらっている場合には、不十分ということになります。

なお、深夜割増賃金についての付加金については、特に具体的な理由を述べることなく、「本件の内容等にかんがみ、これを認めないこととする」と判断しています。

管理監督者性に関する対応については、会社に対するインパクトが大きいため、必ず顧問弁護士に相談しながら進めることをおすすめいたします。

管理監督者6(ボス事件)

おはようございます。

さて、今日も引き続き、管理監督者に関する裁判例を見ていきます。

ボス事件(東京地裁平成21年10月21日・労判1000号65頁)

【事案の概要】

Y社は、コンビニや飲食店の経営等を目的とする会社である。

Xは、Y社経営のコンビニ(A店)の店長ないし副店長であった。

Xは、Y社に対し、未払給与、時間外手当、付加金等の支払いを求めた。

Y社は、Xは管理監督者に該当する等と主張し争った。

【裁判所の判断】

管理監督者性を否定し、時間外割増賃金(743万円)の支払いを命じた。

付加金請求については棄却した。

【判例のポイント】

1 Xは、A店の店長として、店舗経営に一定の裁量があり、Y社全体の経営にも全く関与がなかったわけではない。

2 A店のアルバイトについてすら、募集、採用、解雇につき、実質的な権限があったとはいえず、また、人事考課への実質的な関与も認められない

3 店舗における労働時間の管理についても、労務管理の実質的権限はない

4 Xは、自らの出退勤もタイムカードによってY社に管理され、遅刻によって不利益な処分を受けたこともある

5 賃金面での待遇が、役職者以外の者と比べ、時間外勤務手当を支払わなくとも十分といえるほど厚遇されているとはいいがたい

6 以上からすると、Xは、Y社の店舗の店長として、A店の経営に一定の裁量権を有し、Y社全体の経営にも全く関与していないわけではないけれども、その権限、勤務態様、賃金等の待遇を考慮すると、管理監督者に該当するとまではいえないというのが相当である。

コンビニの店長で、この事案のように、ほとんど実質的権限がない場合には、管理監督者性は否定されます。

フランチャイズ契約上の制約がかなりありますね。

Y社は、6店舗のコンビニを経営しているようです。

今回認められた未払割増賃金は743万円

各店舗に店長がいるわけですから、単純計算、743万円×6人=約4500万円・・・

なお、この事案では、裁判所は、以下のとおり判断し、付加金の支払いを命じませんでした。

「Y社は各コンビニ店の責任者である店長を労基法41条2号の管理監督者と認識して時間外勤務手当を支払ってこなかったこと、店長としての業務の性質上当然に早朝又は深夜の勤務が予定されることから基本給とは別に店長手当を支払うことで早朝又は深夜勤務についての手当を支払う対応をしてきたこと所轄の労働基準監督署においてもY社の前記対応を認識した上、特段の異議を述べず、勧告、指導をしなかったことが認められる。
これらの事実からすると、Y社について、付加金という制裁を課すことが必ずしも相当とはいえないから、当裁判所は、Y社に対し、労基法114条に基づく付加金の支払を命ずることはしない。」

労基署の指導がなかったことが大きいのでしょう。

阪急トラベルサポート(派遣添乗員・第1)事件と比較するとよくわかります。

管理監督者性に関する対応については、会社に対するインパクトが大きいため、必ず顧問弁護士に相談しながら進めることをおすすめいたします。

管理監督者5(センチュリーオート事件)

おはようございます。

さて、今日は、管理監督者に関する裁判例を見てみましょう。

センチュリーオート事件(東京地裁平成19年3月22日・労判938号85頁)

【事案の概要】

Y社は、自動車の修理及び整備点検、損害保険代理業等を目的とする有限会社である。

Xは、Y社入社時から退職時までの間、営業部長の職にあった。

Xは、Y社に対し、未払賃金、時間外割増賃金、付加金の支払い等を求めた。

Y社は、Xが管理監督者に該当するから、労働時間に関する労基法の規定は適用されないと主張し争った。

【裁判所の判断】

管理監督者性を肯定し、時間外割増賃金及び付加金の請求を否定した。

【判例のポイント】

1 入社当時から退職するまでの間、Xは営業課長の職にあり、遅刻・早退等を理由としてXの基本給が減額されることはなかった

2 Xは営業課長として、営業部に所属する従業員の出欠勤の調整、出勤表の作成、出退勤の管理といった管理業務を担当していた

3 Xは、経営会議やリーダー会議のメンバーとしてこれらの会議に酒席していた。これらは、Y社代表者及び各部門責任者のみをその構成員とする会議であった

4 Xに支給された給与の額は、Y社代表者、工場長に次ぐ、高い金額であった

5 これらの事実によれば、Y社において、Xは営業部長という重要な職務と責任を有し、営業部門の労務管理等につき経営者と一体的な立場にあったと評するのが相当である

「営業部門の労務管理につき」という言い回しです。

マクドナルド事件のように「企業全体の事業経営」に関与することまでは要件とされていません。

なお、裁判所は、Xの主張について以下のように判断しています。

「労働時間の管理面については、確かにXは出退勤の際、タイムカードを打刻していたことが認められる。しかしながら、遅刻・早退等を理由としてXの基本給が減額されることはなかったのであるから、Xが出退勤の際にタイムカードを打刻していたとの事実のみから、直ちに、Xの労働時間が管理されていたと評することはできない。」

「Xは、新規採用者の決定権限や人事評価の決定権限は付与されていなかったと主張するが、XがY社代表者に営業部の人員の補充を求めたところ、Y社代表者が新規従業員を募集・採用した例があったこと、また、この際、Y社代表者がした採用面接の場にXが立ち会い、同面接後にはY社代表者から意見を求められたことからすれば、最終的な人事権がXに委ねられていたとはいえないものの、営業部に関しては、Y社代表者の人事権行使にあたり、部門長であったXの意向が反映され、また、その手続・判断の過程にXの関与が求められていたとみるのが相当である。したがって、X指摘の点は、前記の判断を左右するには足りない。」

このあたりは、参考になると思います。

タイムカードを打刻していたら管理監督者ではない、といった形式的な話ではないわけです。

この事案で、遅刻・早退した場合に、基本給の減額がされていたら、どのような結論になったのでしょうか。

やはり管理監督者性は否定されるのでしょうか・・・?

管理監督者性に関する対応については、会社に対するインパクトが大きいため、必ず顧問弁護士に相談しながら進めることをおすすめいたします。