労働災害114 安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求に関する裁判例を見ていきましょう。

第一興商事件(東京高裁令和4年6月29日・労判ジャーナル129号40頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の経営する本件店舗において、調理担当として勤務していたXが、本件店舗が入居する本件ビルに設置された、雨に濡れた屋外階段を使用して、3階店舗から本件店舗に移動しようとした際、転倒して負傷したところ、Xが、使用者であるY社は、本件階段の床面に滑り止めを施工したり、注意を促す表示をしたり、雨でも滑らない履物を用意したりするなど、本件階段が雨で濡れた際も、従業員が同階段を安全に使用することができるように配慮すべき義務があったのに、これを怠り、上記のような措置を何ら取らなかったため、Xをして、本件階段で足を滑らせて転倒させ、その右手、腰部等を負傷するに至らせた旨を主張して、上記安全配慮義務違反を理由とする債務不履行に基づく損害賠償請求として、Y社に対し、傷害慰謝料等合計約1370万円等の支払を求めた事案である。

原判決は、本件事故の直接の原因は、X自身が、本件階段を降りるに当たって、本件階段の状態をよく認識せず、自らの足元を十分に注意して見て足を運ばなかったことにあり、Y社において、Xに対する安全配慮義務違反があったということはできないとして、Xの請求を棄却する旨の判決をしたため、Xが、原審の上記判断を不服として、控訴を提起した。

【裁判所の判断】

原判決変更(一部認容)

【判例のポイント】

1 Y社は、雨で濡れた階段を裏面が摩耗したサンダルで降りる場合には、滑って転倒しやすいことは容易に認識し得ることである上、本件事故が発生する以前に、本件店舗の現場責任者(F店長)も、調理担当従業員であるCが本件階段で転倒した直後に現場を見て、同人が転倒した事実を把握していたということであるから、Y社は、本件事故時において、上記のような危険が現実化することを回避すべく、調理担当従業員に対して本件階段の使用について注意を促したり、本件階段に滑り止めの加工をしたりするなどの措置を講じ、Xを含む調理担当従業員が、本件階段を安全に使用することができるよう配慮すべき義務を負っていたものと解するのが相当であるところ、Y社において、本件事故時、上記の義務を履行するために、何らかの安全対策を採っていたことを認めるに足りる証拠はないから、Y社は、Xに対する安全配慮義務に違反したものといわざるを得ない

2 本件階段は、本件事故当時、照明が点灯し、雨が降った後であることが分かる状況であったと認められるところ、Xは、本件階段が濡れていることに特段の注意をせずに階段を降り始めて、2、3段目のところで足を滑らせて転倒し、同転倒後、Xが来ていた白衣が濡れていたことから、本件階段が雨で濡れていたことに初めて気づいたものであることが認められ、また、本件事故当時、Xが、Y社の業務の必要上、急いで本件階段を降りなければならなかったような事情をうかがわせる証拠はないし、大量の食材等を抱えていたという事情も認められないから、Y社による安全配慮義務違反が認められるとしても、Xにおいて、本件階段が雨に濡れた状態であることに注意を払わず、漫然と本件階段を降りたことが、本件事故の発生に相当程度寄与したものであるとの評価を免れず、その態様を含め、本件に顕れた諸般の事情に照らすと、本件事故の発生に係るXの過失割合は、4割とみるのが相当である。

一審は会社の責任を否定しましたが、控訴審では、会社の安全配慮義務違反を認定しました。

同種事案を見ても、一旦、会社の責任を認めつつ、過失相殺をするという判断が多いような気がします。

日頃の労務管理が勝敗を決します。日頃から顧問弁護士に相談することが大切です。

本の紹介1370 今日すべきことを精一杯!(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、本の紹介です。

故日野原先生の本です。

帯には「いつか死ぬということを忘れず、今日を徹底的に生きることです。」と書かれています。

人生はあっという間に終わります。

怠惰な生活を送っている暇などありません。

ジカンガモッタイナイ

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

歳下の人にも謙虚に学びなさい。いくつになっても『アイ・ドント・ノウ』と言える心を。」(52頁)

知ったかぶりは百害あって一利なし。

少し話が逸れますが、私は質問をする際に気を付けていることがあります。

「●●ですよね?」という付加疑問文にしないということです。

このような質問のしかたをする方をよく見かけますが、私は2つの理由で避けています。

1つ目は、付加疑問文は、質問者が「はい」という答えを求めていることが回答者に伝わるため、本当は「いいえ」なのに、そのように回答しづらい雰囲気から、忖度された挙句、正しい回答が得られないおそれがあるからです。

2つ目は、単純に知ったかぶってもろくなことはないという理由です。

「あ、この人、ろくに知りもしないのに聞きかじった知識で知ったかぶる人なんだ」という印象を与えてしまいます。

質問の仕方、内容は、その人の知性を如実に表しますので、気を付けましょう。

解雇382 勤務態度不良等を理由とする解雇の有効性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、勤務態度不良等を理由とする解雇の有効性に関する裁判例を見ていきましょう。

カワサキテクノリサーチ事件(大阪地裁令和4年7月22日・労判ジャーナル129号30頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に正社員として雇用された中国人男性であるXが、Y社に対し、Y社がした解雇は無効であると主張して、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認並びに本件解雇後の未払賃金等の支払を求めるとともに、Y社はXの賃金をXの自由な意思による合意なしに一方的に引き下げ、かつ、本件解雇の適否を判断するために自宅待機を命じたにもかかわらず、その間の賃金の支払を怠ったと主張して、未払賃金等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

解雇有効
未払賃金請求一部認容

【判例のポイント】

1 Xが多数回にわたって遅刻及び欠勤を繰り返していたことにより、Y社の通常の事業活動が阻害されていたことは明らかであり、これに関してXに酌むべき事情があったとはいえないところ、それにもかかわらず、Xは、遅刻及び欠勤につき、自らの態度を改める意思がないことを明らかにしており、Y社において、Xには遅刻及び欠勤を繰り返す傾向を改善する意思がないものと判断するに至ってもやむを得ないというべきであり、また、Y社在籍中におけるXの勤務態度及び協調性には著しい問題があったものといわざるを得ないこと等から、Xには、就業規則所定の解雇事由があったものと認められ、本件解雇が客観的に合理的な理由を欠くものといえず、そして、Xは、本件懲戒処分を受けて作成した本件始末書においても、「反省することはない」などと記載して、勤務態度を改善することそのものを拒否し、Xの対応からすれば、Y社において、Xに対してこれ以上の注意指導を重ねても、Xの勤務態度等が改善する見込みはなく、解雇を選択する他ないと判断するに至ったとしてもやむを得ないこと等から、本件解雇に係るY社の判断は、社会通念上相当性を欠くものであったとはいえない。

珍しいケースですが、上記のような事情があれば、裁判所としても解雇を有効と判断するでしょう。

いずれにせよ、簡単には解雇できませんのでご注意ください。

解雇をする際は、必ず事前に顧問弁護士に相談をすることをおすすめいたします。

本の紹介1369 38歳までにするべき3つのこと(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

帯には「成功は38歳までにつくられる!」と書かれています。

個人的にはもっと早い段階のような気がしますが。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

以前、日本経済新聞社が55歳すぎのビジネスパーソンに対して、『今、思い残すことは?』という質問をアンケートでしました。その時、ほとんど全員が、『若い頃もう少し勉強していればよかった』『若い頃もっと頑張っておけばよかった』と答えたそうです。」(163頁)

と55歳で言っているようでは完全に遅いのです。

時間は戻りません。

そして、あっという間に過ぎ去っていきます。

晩年、後悔したくなければ、若いうちに一生懸命、勉強しよう。

忙しいのはみんな同じ。

言い訳を探している暇があったら、勉強しよう。

賃金243 退職した元従業員に対する研修費用返還請求(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、退職した元従業員に対する研修費用返還請求に関する裁判例を見ていきましょう。

大成建設事件(東京地裁令和4年4月20日・労判1295号73頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に在籍中、社外研修制度により留学した後、Y社を退職したXが、本訴請求事件において、Xが、Y社に対し、令和2年6月分の賞与、同年6月分の賃金、立替金請求権に基づき、Xが立て替えた経費、退職金及び共済会退職一時給付金等の支払を求め、反訴請求事件において、Y社が、社外研修に要した費用はY社がXに貸与したものであり、Xとの相殺合意に基づき、上記費用の返還請求権及びこれに対する利息請求権と本訴請求債権とを相殺したとして、Xに対し、消費貸借契約に基づき、相殺後における上記費用の残額である約730万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

本訴請求棄却

反訴請求認容

【判例のポイント】

1 XとY社との間で本件消費貸借契約が成立したかについて、Xは、本件誓約書に署名押印してこれをY社に提出したところ、本件誓約書には、規程10条及び細則3条に関する説明をY社から受け、これらの内容を全て了承した旨が記載されており、そして、規程10条には、返済義務が生じる場合が特定されており、また、貸与金の具体的な内容については、規程9条2項による委任を受けた細則において定められているところ、その内容に不明確な点はなく、消費貸借の目的の特定に欠けるところもなく、Xは、自らの規程や細則等をイントラネットから印刷し、総務担当者に対し、複数回にわたって、規程や細則に定められた細目的な事項に関連する質問をしたり、誓約書のひな型が規程の別紙として定められていることを教えたりしていたこと、本件誓約書における貸与金や相殺に関する記載について異議を述べることも説明を求めることもなかったことからすれば、Xは、本件誓約書の提出に当たって、規程及び細則並びに本件誓約書に記載された内容を十分に理解した上で、本件誓約書に署名押印したと認めるのが相当であるから、X・Y社間においては、本件誓約書の提出をもって本件消費貸借契約が成立したと認められる。

2 労基法16条が、使用者に対し、労働契約の不履行について違約金を定め又は損害賠償額を予定する契約の締結を禁じている趣旨は、労働者の自由意思を不当に拘束して労働契約関係の継続を強要することを防止しようとした点にあると解されるから、本件消費貸借契約が労基法16条に反するか否かは、本件消費貸借契約が労働契約関係の継続を強要するものであるか否かによって判断するのが相当であるところ、Y社における社外研修制度の下では、応募・辞退は任意であると定められており、Xも、自らの意思で本件研修への参加を決意したものであって、本件研修に参加するよう、強制されたり、指示されたりしたものではなく、また、本件研修は、応募や辞退、研修テーマ・研修機関・履修科目の選定がXの意思に委ねられていたこと、本件研修は、汎用性が高い内容を多く含むものであり、X個人の利益に資する程度が大きいこと、貸与金の返済免除に関する基準が不合理とはいえず、返済額が不当に高額であるとまではいえないことからすると、本件消費貸借契約が労働契約関係の継続を強要するものであるとは認められないから、本件消費貸借契約は労基法16条に違反するとはいえない

同種事案において結論を分けている事情がまさに判例のポイント2に記載されている点です。

請求が認められている裁判例と本件のように棄却されている裁判例を比較検討するとよくわかると思います。

日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に労務管理をすることが肝要です。

本の紹介1368 「勝負強い人間」になる52ヶ条(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

勝負はいつだって覚悟を持った人のほうが強いです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

どんなに負けが込んでも、絶対にあきらめずに勝負を続け、相手が音を上げるまでねばって最後には勝ってしまう。『あいつは強いから勝つんじゃなくて、勝つまでやめないから強いんだよ』そう言われるぐらいにねばりがある人というのは強い。」(108~109頁)

すぐに諦めるくせがついてしまうと、土俵際でのふんばりがきかなくなってしまいます。

最後に土俵の外に足を出すのは、いつだって自分があきらめたときです。

「負け癖」「諦め癖」をつけないことがとってもとっても大切です。

負けることや諦めることを当たり前にしてはいけません。

そのために、日々、四股を踏み続け、鍛錬をするしかないのです。

労働時間89 事業場外労働のみなし時間制適用の可否(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、事業場外労働のみなし時間制適用の可否に関する裁判例を見ていきましょう。

ヨツバ117事件(大阪地裁令和4年7月8日・労判ジャーナル129号36頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の元従業員Xが、時間外労働を行ったとして、雇用契約に基づく割増賃金等の支払を求め、また、不当な天引きがあったとして、雇用契約に基づく未払賃金等を求め、さらに労働基準法114条所定の付加金等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求認容

【判例のポイント】

1 事業場外労働のみなし時間制の「労働時間を算定し難いとき」(労基法38条の2第1項)に該当するか否かについて、Y社ではタイムカードの打刻が義務付けられており、Xは、タイムカードが残存する月以外の月についてもタイムカードを打刻していたことがうかがわれ、そして、タイムカードは打刻した時刻を客観的に記録するものであること、Xのタイムカードをみると、一部手書きの時刻もあるものの、おおむね出勤時刻及び退勤時刻が打刻されていることからすれば、Y社とすれば、Xのタイムカードの打刻内容を確認することで、Xの労働時間を把握することが容易に可能であったということができること等から、本件におけるXの業務が、「労働時間を算定し難いとき」に当たると認めることはできない。

労働時間の例外規定については、有効要件が厳しいので、安易に導入するのは非常に危険です。

残業代を減らすための王道は、残業時間を減らすことです。

日頃の労務管理が勝敗を決します。日頃から顧問弁護士に相談することが大切です。

本の紹介1367 人生の原理#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、本の紹介です。

今から9年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

1頁目には、わずか1行「人生がうまくいくかどうか、それはあなた次第です。」と書かれています。

当たり前のように思えますが、実は、これがすべてです。

すべては自分自身の選択の結果、今の自分があるのですから。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

気づけるかどうか。目の前のチャンスに、最高のアイデアに、なくてはならない人に、気づくことができるかどうか。大事なことに気づくためには、何でも徹底的にやり続けるしかない。徹底してやり続けているから、小さな変化に目がとまる。中途半端にやっても、小さな変化には気づけない。」(97頁)

幸せもチャンスも探すものではなく、気づくものです。

いつも批判的な目で物事を見るくせがついていると、だんだん目の前にある幸せやチャンスに気づけなくなってしまいます。

何を幸せと捉え、何をチャンスと考えるかは、すべてその人の解釈次第です。

同じ場所で同じ物に触れていても、ある人は幸せと感じ、またある人は不幸と感じます。

このことに人生の早い段階で気がつくと、幸福度が格段に上がります。

労働時間88 控除された乗継ぎが遅れた2分間分の賃金(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、控除された乗継ぎが遅れた2分間分の賃金に関する裁判例を見ていきましょう。

西日本旅客鉄道事件(岡山地裁令和4年4月19日・労判ジャーナル129号52頁)

【事案の概要】

Xは、旅客鉄道事業等を営むY社との間で雇用契約を締結した運転士であるところ、電車入区作業(回送列車をa電車区に移動させて留置する作業)を行う際、乗継ぎのために待機すべきホームの番線を間違えたために、指定された時刻より2分遅れて乗継ぎ作業を開始し、1分遅れて入区作業を開始・完了した。Y社は、乗継ぎが遅れた2分間は勤務を欠いたものであるとして、ノーワーク・ノーペイの原則に基づき、当該2分間分のXの賃金を控除した(ただし、うち1分間分は後に返還された)。
本件は、Xが、Y社に対し、上記賃金控除は違法であり、不法行為にも該当すると主張して、雇用契約に基づく未払賃金56円及び不法行為に基づく慰謝料200万円と弁護士費用20万円の合計220万0056円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

1 Y社は、Xに対し、56円+遅延損害金を支払え。

 Xのその余の請求を棄却する。

【判例のポイント】

1 賃金請求権の発生根拠は、労働者と使用者との間の合意(労働契約)に求められるところ、労働者が債務の本旨に従った労務の提供をしていない場合であっても、使用者が当該労務の受領を拒絶することなく、これを受領している場合には、使用者の指揮命令に服している時間として、賃金請求権が発生するものと解される(前記前提事実のとおり、Xは、午前7時09分から午前7時11分までの間、全く労務を提供しなかったものではなく、本件は、労務の提供が履行不能となった事案ではない。)。
したがって、Y社が、午前7時09分から午前7時11分までの間の原告の労務を受領したといえるか否かについて検討する。

2 本件につき検討すると、午前7時09分から午前7時11分までの間のXの労務について、Y社による明示の受領拒絶はなされておらず、実際に労務が行われたこと自体に争いはない。
Xは、午前6時48分までに乗務点呼を終えた後、勘違いにより2番線ではなく5番線で待機し、午前7時08分頃、自身が乗り継ぎをするはずの回送列車が2番線に向かっているのを見て当直係長に電話をかけたところ、ホームを間違えていたことに気付いたため、直ちに2番線の〔5〕地点に向かい、午前7時11分に乗継ぎ作業を開始したものである。
そうすると、午前7時09分から午前7時11分の間にXが提供した労務内容は、自身の待機場所の誤りの有無を確認し、その誤りに気付いて、小カード所定の正しい待機場所へ向かい、小カードで指示されていた乗継ぎ作業を開始したものであって、直ちに小カード所定の業務内容に修正すべく行動したものであり、遅滞は生じつつも被告が指定した小カード所定の業務の実現に向けて行われた労務であって、Y社にとっても有益性を有するものといえる。
Y社において、Xのこのような労務の受領を予め拒絶して、急きょ他の乗務員等に午前7時09分以降の小カード所定の作業を行わせ、あるいは同作業の実施を取りやめるなどする意思があったものとは解し難く、小カードにより時刻を指定して業務を指示したことをもって、これに反する上記労務の受領を予め黙示に拒絶していたなどと認めることはできない。
Xは、午前6時33分に出勤点呼を受け、午前6時48分に乗務点呼を受けてから、ホームに出場し、自身の待機場所の誤りを修正して指定された正しい待機場所に向かい、入区作業を行うという小カード所定の業務の遂行に向けた一連の労務を行っている間、Y社の指揮命令に服していたものといえ、Y社において、このような労務のうち一部を切り取って、当該部分の労務を受領していないなどということはできない。
したがって、Y社は、午前7時09分から午前7時11分までの間のXの労務を受領したものと認められ、Y社の上記主張は採用できない

2分間の賃金56円の請求が認められました。

本訴訟対応に要する費用を考えると、費用対効果では到底説明がつきませんね。

日頃の労務管理が勝敗を決します。日頃から顧問弁護士に相談することが大切です。
   

本の紹介1366 弁護士の仕事術・論理術(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

今から17年前の本ですが、再度、読み返してみました。

弁護士になる前に読んだ本ですが、今になって、当時、線を引っ張っている箇所を読むととても懐かしいですね。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

①政治家、芸能人、有名人との交際を自慢する。一緒に撮った写真を飾る
②業界団体などのやたら肩書きの多い名刺を配る
③金ピカの時計をしている。ブランド品のオンパレードのような服装
④社長室に剥製、高級酒、ゴルフコンペのトロフィーを飾る
⑤受付に美人ばかりそろえ、自慢する
⑥中年すぎても真っ赤なスポーツカーに乗っている
⑦夢とビジョンを語るが、話に具体性がない
こういう人はしばしば劣等感が強く、自己顕示欲が強烈である。自信がないから装飾物で飾り立てるのだ。」(205頁)

このようなタイプの人は、お話をしていてすぐにわかります。

皮肉なことに、自分を大きく見せようとすればするほど、その人の小ささが露呈してしまうのです。

聞き手は「へー、すごいですねー」と驚いたふりをしてくれますが、実のところ、「またはじまったよ」と思っているにすぎません(笑)

本当に力がある人は、決して威張らないですし、自らの力を誇示しません。