おはようございます。
今日は、ペット飼育禁止の管理規約規定の新設(横浜地判平成3年12月12日)を見ていきましょう。
【事案の概要】
本件は、マンションの一室の区分所有者(被告)が昭和60年3月に入居して以来現在まで犬を居室内で飼育し続けていたところ、管理組合は昭和61年2月に開催された臨時総会において、犬、猫、小鳥等のペット・動物類の飼育を禁止する管理規約を新設し、管理者である管理組合の理事長が原告となり、同規約に基づき被告による犬の飼育の禁止を請求した事案である。
【裁判所の判断】
請求認容
【判例のポイント】
1 マンションその他の共同住宅においては居住者による動物の飼育によってしばしば住民間に深刻なトラブルが発生すること、多くのマンションではこのようなトラブルを回避するために動物の飼育を規約で禁止しており、動物の飼育を積極的に認め、あるいは一定の条件を設定して動物の飼育を認めているマンションは、社会的な話題となってマスコミ等が取材に訪れるほど稀少な存在であること、動物の飼育を認める規約を有するマンションではトラブルを防止するため、飼育方法や飼育を許される動物の定義等について詳細な規定を設けていること、そもそも共同住宅で他の居住者に全く迷惑がかからないよう動物を飼育するには、防音設備を設けたり集中エアコンなどの防臭設備を整えるなど住宅の構造自体を相当程度整備したうえで、動物を飼おうとする者の適性を事前にチェックしたり、飼い方などに関する詳細なルールを設ける必要があることが認められ、以上の事実を総合すると、現在のわが国の社会情勢や国民の意識等に照せば全面的に動物の飼育を禁止した本件規約は相当の必要性および合理性を有するものというべきである。
2 旧規約には動物の飼育を直接制限する条項は存在しなかったことが認められる。しかしながら、本件入居案内に「動物の飼育はトラブルの最大の原因なので一応禁止する」旨の記載があること、被告は理事長から規約で禁止されているので犬の飼育はだめだと言われたこと、本件マンションにおいてはかつて小鳥を飼っている者が数名いたがそれらの小鳥は現在では処分されてすでにいなくなっており、犬や猫など小動物の範疇に属する動物を飼育しているのは分譲当初から現在に至るまで被告のみであること、マンションのうち動物の飼育禁止を管理規約で定めている所は約7〜8割にのぼるとの文献もあることが認められる。
そして以上の事実によれば、本件マンションの入居者の間には動物の飼育は原則として禁止されているとの共通の認識があったことが推認される。
このような管理規約の新設は、区分所有法31条1項との関係で問題となります。
今回の裁判例については批判もありますが、控訴審である東京高裁平成6年8月4日判決も同様の結論となっています。
【区分所有法31条1項】規約の設定、変更又は廃止は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議によつてする。この場合において、規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。
「特別の影響を及ぼすべきとき」の意義については最判平成10年10月30日が重要です。
マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。