駐車場問題3 マンション駐車場の専用使用権の分譲の対価が分譲業者に帰属すべきものとされた事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、マンション駐車場の専用使用権の分譲の対価が分譲業者に帰属すべきものとされた事案(最判平成10年10月30日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、マンション駐車場の専用使用権の分譲の代金が分譲業者と管理組合のいずれに帰属するかが争点となった事案である。

【裁判所の判断】

分譲業者に帰属する

【判例のポイント】

1 本件マンションの建物一階部分と本件敷地の一部に設けられた駐車場の専用使用権は、本件マンションの分譲に伴い、上告人Aから特定の区分所有者に分譲されたものであるところ、売買契約書、図面集の記載に照らすと、右専用使用権を取得した特定の区分所有者は右駐車場を専用使用し得るものとされ、また、右専用使用権を取得しなかった区分所有者は右専用使用を認諾・承認すべきものとされていることが明らかである。
そのほか、本件において、分譲業者である上告人Aが、購入者の無思慮に乗じて専用使用権分譲代金の名の下に暴利を得たなど、専用使用権の分譲契約の私法上の効力を否定すべき事情も存しない

2 分譲業者である上告人Aは、営利の目的に基づき、自己の利益のために専用使用権を分譲し、その対価を受領したものであり、さらに、専用使用権の分譲を受けた区分所有者もこれと同様の認識を有していたと解されるから、右対価は、右分譲契約における合意の内容に従って同上告人に帰属するものというべきである。
この点に関し、上告人Aが、区分所有者全員の委任に基づき、その受任者として専用使用権の分譲を行ったと解することは、右分譲契約における当事者の意思に反するものであるといわなければならない。
また、ある者が自己のためにする意思の下にした行為が、他の者からの受任によってする行為と外形的に同一であったとしても、そのことだけで、関係者の具体的意思に反して、両者の間に委任契約が成立していたということはできないし、具体的な当事者の意思や契約書の文言に関係なく、およそマンションの分譲契約においては分譲業者が専用使用権の分譲を含めて包括的に管理組合ないし区分所有者全員の受任者的地位に立つと解することも、その根拠を欠くものである。

第一審(福岡地小倉支判平成6年2月1日)及び控訴審(福岡高判平成8年4月25日)は、ともにいわゆる受任者説を採用し、原告の分譲業者に対する分譲代金の引渡請求を認めましたが、最高裁は、上記の判例のポイント2のとおり、真逆の判断をしています。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。