日照権・眺望権2 高層建物の建設が予定されていた地区(容積率600%)に存在する20階建てマンションの買主らが売主らに対し眺望権等の侵害、説明義務違反を理由とする損害賠償請求が認められなかった事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、高層建物の建設が予定されていた地区(容積率600%)に存在する20階建てマンションの買主らが売主らに対し眺望権等の侵害、説明義務違反を理由とする損害賠償請求が認められなかった事案(大阪地判平成24年3月27日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

原告らは、被告Y1産業から大阪市所在のマンションの区分所有権を購入して当該マンションに居住している者らであり、被告らは、本件原告マンション敷地に隣接する本件土地に本件マンションを建設した者らである。

本件は、主位的には、原告らが、被告らによる本件マンションの建築によって、眺望権又は圧迫感を受けずに生活する権利を侵害されているとして、予備的には、原告所有者らが、被告Y1産業には、原告所有者らとの間の売買契約の付随義務違反があり、また、本件原告マンションの眺望に関して説明義務違反があったとして、それぞれ以下の請求をする事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 一般に、一定の場所から見ることのできる周囲の景観、遠方の自然風物、人工物等に対する見晴らしが、人に視覚上の美的満足や心理的な開放感などをもたらす作用を有する場合において、その場所を所有又は占有するなどして、その場所からの良好な眺望を享受している者は、当該眺望を享受する利益を有しているといえる。
しかし、このような利益は、たまたまその場所の占有者が事実上これを独占的に享受し得る結果として、その者に独占的に帰属するといえるにすぎず、その内容は、周辺における客観的状況の変化によっておのずから変容ないし制約を被らざるをえないものである。
したがって、このような利益は、物権的な排他的、独占的支配を伴うものということはできず、当該利益の享受によって、常に人為的な変化を排除しうる権能を持つものではない
しかしながら、このことは、眺望に係る利益がいかなる場合にも法的保護の対象にならないことをいうのではなく、眺望に係る利益も、その享受者にとって、一個の生活利益として社会通念上も独立の利益として承認されるべき程度の重要性を持つ場合には、法的見地からも保護されるべきであるということになる。
そして、ある眺望を享受する利益が、単なる主観的利益を超えて法的な保護を得られる程度に重要な利益といえるか否かは、基本的には、当該眺望が、①客観的に重要な価値を有するといえるか、②主観的にも、単なる主観的利益を超える程に重要な価値を有するといえるかという点から判断されるべきである。

2 一般的に、マンションの周辺土地をいかなる方法で利用するかは、当該周辺土地の所有者の自由であるから、マンションの売買契約において、当該マンションの周辺環境が変化することは、両当事者間で、当然の前提とされているというべきである。
したがって、マンションの売買契約において、売主が、買主に対し、当該マンションの周辺環境(眺望、景観、静謐等)が良好であることを指摘して当該売買契約の勧誘をしたとしても、そのような周辺環境が時間の経過とともに徐々に変化していくことは、買主においても了解済みであるといえるから、売主が、当該マンションの引渡後にまで、その周辺環境に配慮すべき義務を負うことはないというべきである(売主が良好な周辺環境が維持されることを前提とする勧誘をしていた場合などに、説明義務違反との関係で問題になるにすぎない。)。
しかしながら、マンションの売買契約締結に当たって、売主が、その時点で、周辺環境の変化を制御し得る地位にあったか、又は、近い将来、そのような地位を取得することが確実であったときに、それを前提に、売主が当該マンションの周辺環境が良好であることを指摘して同売買契約を締結した場合には、売主は、買主に対し、売買契約に基づく目的物引渡義務の付随義務として、マンションの引渡後も、同マンションの周辺環境に対して配慮すべき義務を負うというべきである。
なぜなら、当該マンションの周辺環境の変化を制御し得る立場にある売主が、周辺環境が良好であることを指摘してマンションの販売を行っている以上、売主において、当該マンションの引渡後であっても、少なくとも自ら当該マンションの周辺環境を変化させることはないとの意思が表示されているというべきであるし、買主においてもそのことを前提として売買契約を締結したものというべきであり、売主が、目的マンションについて、その引渡後も、周辺環境に配慮すべきことをも、契約の一内容として合意したものといえるからである。

眺望権侵害及び説明義務違反に関する裁判所の一般的な考え方がよくわかります。

本件においてはいずれの請求も棄却されていますが、マンションの売主が買主に対して不適切な説明を行った場合には、責任が認められる余地も十分にありますのでご注意ください。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。