管理費・修繕積立金10 管理費等の滞納が解消されたにもかかわらずマンション全戸に誤って事実と異なる通知をしたことが名誉棄損に該当するとされた事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、管理費等の滞納が解消されたにもかかわらずマンション全戸に誤って事実と異なる通知をしたことが名誉棄損に該当するとされた事案(東京地判令和3年3月5日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、(1)原告X1が、被告Y1が被告管理組合の理事長として、管理組合の総会の開催通知に区分所有者である原告X1が管理費を滞納している状況にある旨の虚偽の事実を記載してこれを住民に配布し、原告X1の滞納を前提とする議案を提出して原告X1の名誉を毀損した行為は、被告Y1の不法行為を構成するとして、被告Y2管理組合は、一般社団法人法78条の準用により被告Y1と同様の責任を負うとして、被告らに対し、連帯して、慰謝料100万円+遅延損害金の支払を、(2)原告X2が、被告Y1が被告管理組合の理事長として、原告X2が原告X1の代理として出席した被告管理組合の総会において、原告X1の管理費滞納はすでに解消していたにもかかわらず、これが残存しているかのような言動を示して参加者らにおいて原告X1が管理費を滞納している状況にあると誤信させ、原告X1の滞納を前提とする議案を可決させて原告X2の名誉を毀損した行為は、被告Y1の不法行為を構成するとして、被告Y2管理組合は、一般社団法人法78条の準用により被告Y1と同様の責任を負うとして、被告らに対し、連帯して、慰謝料100万円+遅延損害金の支払をそれぞれ求める事案である。

【裁判所の判断】

被告らは、原告X1に対し、連帯して、50万円+遅延損害金を支払え

【判例のポイント】

1 被告Y1による平成30年9月臨時総会開催通知及び令和元年7月21日総会開催通知の配布は、原告X1に対する不法行為を構成する。

2 平成30年9月臨時総会開催通知及び令和元年7月21日総会開催通知は、いずれも原告X1が本件マンションの区分所有者としての管理費等支払義務を履行せず、その金額が高額になるに至っていることを示すものであり、原告X1の社会的評価を低下させる度合いは大きい
また、被告Y1は、これらの開催通知を本件マンションの全78戸に配布しているから、これらの開催通知に記載されている名誉毀損情報が頒布された範囲も小さいとはいえない
原告X1においては、自らの管理費等の滞納問題は終局的に解決したものと認識していたのに、これを覆す被告Y1の配布行為により大きな精神的衝撃を受けたと認めることができる。
一方で、平成30年9月臨時総会開催通知及び令和元年7月21日総会開催通知が配布されたのは本件マンションの全戸に限られ、社会の広範囲にわたって原告X1の管理費等の滞納に係る情報が流布されたとはいえないこと、原告らは本件マンションに居住しておらず他の区分所有者と顔を合わせる機会は限られていたといえる。
このような本件にあらわれた一切の事情を総合的に考慮すれば、平成30年9月臨時総会開催通知及び令和元年7月21日総会開催通知の配布行為によって原告X1が被った精神的損害を回復するために被告Y1が支払うべき慰謝料は50万円をもって相当と認めることができる。

管理費等の滞納が実際には解消されていたにもかかわらず、事実と異なる情報をマンションの全戸に通知したことが名誉毀損に該当すると判断されています。

故意にこのようなことを行うことは少ないと思いますが、調査不足により誤ってこのような行為をしてしまったとしても過失による不法行為に該当しますので注意が必要です。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。