騒音問題6 他の居室における内装リフォーム工事による騒音及び振動について不法行為に基づく損害賠償請求が棄却された事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、他の居室における内装リフォーム工事による騒音及び振動について不法行為に基づく損害賠償請求が棄却された事案(東京地裁令和2年11月25日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

控訴人は本件マンションの502号室に居住していた者であるところ、被控訴人が同マンションの他の居室について行った内装リフォーム工事により生じた騒音及び振動が原因で睡眠をとることができずに心身に不調をきたしたと主張して、被控訴人に対し、不法行為に基づく損害賠償の一部請求として、慰謝料、自営する飲食店の休業損害等合計148万4950円のうち60万円+遅延損害金の支払を求めた。

原審は、本件工事から発生した騒音及び振動は受忍限度を超えるものではないとして控訴人の請求を全部棄却したため、控訴人がこれを不服として控訴した。

【裁判所の判断】

控訴棄却

【判例のポイント】

1 被侵害利益の性質と内容を踏まえて、侵害行為の態様と侵害の程度、侵害行為の開始とその後の継続の経過及び状況についてみると、本件工事のうち、本件マンションの入居者の生活に影響を及ぼすような騒音や振動が発生する工事の内容及び期間は、いずれも土曜日と日曜日を除く、平成31年2月12日から同月18日までに行われた既存構造物の解体工事(工事実日数5日)、同日から同月28日までに行われた木工造作工事(工事実日数9日)及び同年3月22日に行われたエアコン移設工事(工事実日数1日)であり、その工事実日数は、上記の解体工事と木工造作工事が同じ日に実施された同年2月18日を1日と数えると、合計14日に過ぎず、しかも、工事時間は通常人が活動している時間帯である午前9時から午後5時までであり、土曜日、日曜日、祝祭日には工事をしなかったのであるから、本件工事は長期間にわたり連日昼夜を問わず騒音や振動を発生させたものではない。
また、これらの工事による騒音や振動の程度及び継続時間については、測定結果等の客観的な証拠がなく、具体的に認定することができない

2 本件マンションの所在地の地域環境についてみると、本件マンションの所在地は東京都品川区上大崎1丁目であって都内の都心部に位置し、その西側横には首都高速道路が通っており、高速道路を通過する自動車の走行する音や振動に晒されている地域であって、住環境としては静閑な地域ではない。
そうすると、本件マンションの居住者としては、外部からの一定程度の騒音や振動等を甘受せざるを得ず、一般的に静寂を期待しうる環境にはないことが認められる。
また、一棟の建物に種々の生活スタイルを保持する多数の居住者が生活を送っているという集合住宅の性質上、集合住宅内のある居住者の発生する音や振動が建物の壁や床を通じて他の居室に伝達することを避けることはできない上、マンションの経年劣化、生活スタイルの変化等に伴い各居室の修繕の必要が生じることも不可避であるから、マンションに居住する以上は他の居室のリフォーム工事等により一定の騒音等の影響を受けることもやむを得ない事態であるといえる。

騒音問題については、騒音の「存在」及び「原因」について客観的証拠により立証することが求められます。

この点、本件は、上記判例のポイント1のとおり、測定結果等の客観的な証拠を提出していないため、この時点で勝負ありです。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。