義務違反者に対する措置14 管理費等の滞納を理由とする59条競売請求が認容された事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、管理費等の滞納を理由とする59条競売請求が認容された事案(東京地判令和2年10月22日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、本件建物の管理者である原告が、本件建物の505号室の区分所有権及び敷地権を有する被告に対し、被告には管理費及び修繕積立金等の滞納があるとして、区分所有法59条1項に基づき、本件区分所有権等の競売を請求する事案である。

【裁判所の判断】

請求認容

【判例のポイント】

1 被告が支払義務を負う管理費等及び確定遅延損害金の合計額は296万1326円となっているところ(令和元年12月2日時点)、従前の被告の管理費等の支払状況に照らせば、今後、管理費等の未払状態が解消する見込みはないといわざるを得ず、そうである以上、被告による管理費等の滞納は、本件建物の管理運営上支障を来たすものであり、その結果、区分所有者の共同生活上の障害が著しい状態となっているものと認められる。
また、本件建物は平成28年当時に86万円と評価されているところ、本件建物には、Bの被告に対する200万円の貸金債権を被担保債権とする抵当権設定仮登記がされており、原告において本件建物の強制競売の申立てをしても、無剰余取消しとなることが見込まれ、これによって前記管理費等の回収を図ることは極めて困難であるといわざるを得ない。
そうすると、本件建物の区分所有者らは、法59条に基づく競売を除く方法によっては、前記障害を除去して共有部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であると認められる。
したがって、法59条所定の実体的要件を満たすものと認められる。

2 本件建物の区分所有者らは、令和元年8月25日の通常総会において、区分所有者及び議決権の4分の3以上の多数をもって、本件区分所有権等について訴えをもって競売を請求することを決議したこと、上記通常総会に先立ち、被告に弁明の機会を与えるため、上記通常総会への出席を要請する書面を送付したが、被告は上記通常総会に出席せず、何らの連絡もしなかったことが認められ、これらの事実によれば、法59条所定の手続的要件を満たすものと認められる。
以上によれば、原告は、法59条1項に基づき、本件区分所有権等を有する被告に対し、本件区分所有権等の競売を請求することができる。

管理費等の滞納事案において、すぐに59条競売をしたいと思われる方もいらっしゃるかと思いますが、上記のとおり、事前に実体的要件及び形式的要件を具備する必要がありますので、ご注意ください。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。