漏水事故10 給湯器に接続された給湯管・給水管からの漏水事故につき、管理組合の修繕義務が否定された事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、給湯器に接続された給湯管・給水管からの漏水事故につき、管理組合の修繕義務が否定された事案(東京地判平成30年9月19日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、本件マンションに属する本件建物の区分所有者である原告が本件建物の本件バルコニー内に設置されている給湯器に接続された給湯管・給水管からの漏水事故に関し、その漏水箇所が当該給湯管・給水管のうち共用部分に埋設されている部分にあり、その部分は共用部分に属するから、本件規約により、本件マンションの管理組合である被告がこれを修繕すべき義務があったのにこれを行わなかったと主張して、被告に対し、不当利得返還請求権(民法704条)、債務不履行又は工作物責任に基づき、(原告が支出した修理代金相当額)19万3320円+遅延損害金の支払を、また、(原告において修繕工事を完了するまで、本件建物の給湯器を使用できなかった結果)自宅の風呂を使えなかったため原告及び同居するその長男において80日間にわたり公衆浴場を利用せざるを得なかったと主張して、被告に対し、債務不履行又は工作物責任に基づき、(原告が支出した入浴料相当額)6万8800円+遅延損害金の支払を求めるほか、本件規約に基づき、本件バルコニーに設けられている給湯器据え付け用の基礎コンクリート部分のクラックの修繕を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 本件立上り部分が共用部分であることについては当事者間に争いがない。
本件架台部分は、本件バルコニーの躯体部分の建築後に、給湯器を据え付けるために本件バルコニー内に設けられたコンクリート製の架台であると認められる。そして、その構造や設置目的に照らせば、本件架台部分は、(本件建物の区分所有者の)専有部分に当たるか、少なくとも、(本件規約11条により,当該区分所有者の専用使用部分に当たるとされている)本件バルコニーに付随する専用使用部分に当たると認めるのが相当である。

2 本管から分枝した給水管の枝管及び給湯管は、本件建物の床上配管(床下スラブの上)を通っているところ、本件建物から点検・修理が可能であり、かつ、本件建物の用にのみ供される設備であるから、専有部分に当たるというべきである。
そして、本件架台部分は、専有部分か、少なくとも専用使用部分に当たるから、そこに埋設された本件架台部枝管も、当然に、専有部分に当たるというべきである。
これに対して、本件立上り部枝管は、共用部分である本件立上り部分に埋設されているので、その性格が共用部分に変化するか否かが問題となる。
しかし、本件立上り部枝管の距離(すなわち、本件立上り部分に埋設された部分の距離)は短く、隣接する専有部分からこれを点検・修理することが不可能であるとはいえないから、本件立上り部枝管も、専有部分という性格を失うものではないと解するのが相当である。

3 以上のとおり、本件架台部分並びに本件立上り部枝管及び本件架台部枝管は、いずれも専有部分(又は専有使用部分)に当たるから、本件規約16条又は17条により、本件建物の区分所有者が自己の責任と負担において管理すべきものである。
したがって、本件架台部分のクラック並びに本件立上り部枝管又は本件架台部枝管からの漏水については本件建物の区分所有者である原告が修繕義務を負うというべきである。

専有部分にあたるか共用部分にあたるかという争いは、少なくありません。

非常にテクニカルな争点なので、弁護士に相談することをおすすめします。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。