管理費・修繕積立金16 マンションが転々譲渡された場合の中間取得者は、特定承継人としての責任を負うか(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、マンションが転々譲渡された場合の中間取得者は、特定承継人としての責任を負うか(大阪地判平成11年11月24日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

管理組合は、平成7年3月5日臨時総会において、共用部分の修理工事を組合員の個人負担分を6500万円以内と定めて行うことを決議した。工事請負契約が6180万円で締結されたので、各組合員の負担額は50万2819円となり、支払時期は平成7年4月28日と定められた。

本件マンションの506号室は上記決議当時、Aが所有していたが、平成9年11月19日競売によりBがこれを取得した。Bは平成10年8月3日、506号室の区分所有権をCに売却した。その後、管理組合は、区分所有権の中間取得者であるBに対して、負担金の支払いを求め提訴した。

【裁判所の判断】

請求認容

【判例のポイント】

1 Bは、区分所有法8条にいう特定承継人とは区分所有権を現に有する特定承継人に限られると主張するが、法8条につき上記主張のように縮小解釈すべき根拠はいまだ見出し難い
すなわち、管理組合法人が各区分所有者の拠出に係る財産をもって支出した共用部分の修繕費は、1棟の建物全体の資産価値を維持しあるいはその下落を防止する性質を有する支出であって、管理組合法人に対して修繕義務を履行すべき責任を負担しながらその責任を履行しない区分所有者に対しても、その有する区分所有権の価値を維持するために寄与しているものである。
したがって、区分所有権を現に有しない中間取得者といえども、その所有に係る期間、管理組合法人による修繕費の支出による利益を享受しているといえるし、また、換価処分の際には貨幣価値として上記利益が自らに還元されているとみることも可能である。
さらにいうならば、修繕費の支払いをしないうちに当該区分所有権を修繕費投下によって補正された価値をもって処分し得た区分所有者についてみると、その所有期間の長短にかかわらず特定承継人としての責めを何ら負わないという前提をとるとすると、不当な利益を得ることにもなり、その結果、共用部分等の適正な維持管理のために要した債権につき強固な保護を図ろうとした法8条の趣旨は没却されることにもなりかねない

2 なお、法7条によれば、上記債権については債務者の区分所有権および建物に備え付けられた動産の上に先取特権が付されているが、そのことと、上記債権につき責任を負うべき者の人的範囲に関する問題とは性質を異にするものであると考えるのが相当であるから、上記先取特権の制度の存在をもって上記人的範囲を画するのは妥当ではないというべきである。

この論点については、いまだ最高裁の判断が出されていないところですが、近時の下級審における裁判例では、中間取得者についても特定承継人の責任を認める傾向にありますので注意が必要です。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。