名誉毀損8 総会での監事の発言が名誉毀損に該当しないとされた事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、総会での監事の発言が名誉毀損に該当しないとされた事案(東京地判平成30年10月10日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、原告が、被告に対し、被告がマンション管理組合の総会でした発言により、原告の名誉を毀損され、管理組合の理事就任権を侵害されたと主張して、不法行為に基づく損害賠償請求として、慰謝料60万円+遅延損害金の支払を求めるとともに、名誉を回復するための処分として、謝罪文の掲示板への掲載を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 被告は、原告の訴訟提起について、原告の訴訟提起による風評被害により本件マンションの区分所有権の資産価値が下がっているという被告発言1をし、次いで、原告の訴訟提起による風評被害により本件マンションの区分所有権の資産価値が下がっていることを前提とした発言(被告発言2~4、6~11)をしたことが認められるところ、原告は、原告の訴訟提起による風評被害により本件マンションの区分所有権の資産価値が下がっているとの発言は、事実ではないことを並べ立て、原告を誹謗中傷するものであると主張する。
そこで、被告発言1~4及び6~11について検討すると、本件総会の審議の経過は上記のとおりであり、被告の発言は、本件総会において、管理費会計予算科目に訴訟対応費を新設し、予算を計上することについての議案の審議の際に、他の組合員から原告が訴訟を提起したことからこのような費用の計上が必要になるなどの発言があり、原告から訴訟を提起した理由についての発言があった後に、原告の訴訟提起について発言されたものであり、議案の審議における被告の意見として発言されたものである。
そして、本件総会に出席した組合員の中には、管理組合に対して訴訟提起することに賛同できない趣旨の意見を述べる組合員や区分所有者と管理組合との間で訴訟が提起されていることがマンションの資産価値のマイナス要素と考える組合員もおり、現在の日本社会において、区分所有者と管理組合との間に訴訟が提起されていることを知った場合にマンションの区分所有権の購入を控えることは十分考え得ることからすれば、原告と本件管理組合との間で訴訟が提起されているとの風評が流布することにより本件マンションの区分所有権の資産価値が下がるとの被告の意見が直ちに虚偽の事実を摘示したものであるとはいえないし、世間一般の評価とかけ離れ、原告を不当に非難し、中傷する意見であるともいえない
また、議案の審議の際、原告においても、自分が訴訟を提起した理由について、管理組合の理事会や理事長が管理規約を守らないからであり、管理規約を守るのであれば訴訟を提起することはなかったことを説明し、風評被害により資産価値が下がっているとの被告の意見に対して資産価値は下がっていないとの反対の意見を述べていること、原告の管理組合に対する態度に賛同する趣旨の意見を述べる組合員もいることに鑑みれば、原告において、被告の発言により原告の訴訟行為の正当性や相当性を否定されたと感じることは理解できるとしても、被告の発言が原告の社会的評価を下げるものであるとは認めることはできないし、原告の名誉感情を侵害するものであると認めることもできない
以上によれば、本件被告発言について、名誉毀損行為として不法行為が成立するとは認められない。

2 本件管理組合の規約では、管理組合に役員として理事等を置き、理事は総会で選任すると定められているのみであり、原告に本件管理組合の理事に就任する権利や利益があるとはいえないし、上記審議の経過からすると、本件被告発言により原告が理事に就任できなかったとはいえないから、本件被告発言により原告の理事就任権が侵害されたとは認められない。

総会等での発言が名誉毀損にあたるとして訴訟に発展することは少なくありません。

名誉毀損の要件を把握しておくこととともに、徒に感情的な発言は控えることをおすすめします。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。