管理組合運営31 区分所有者が管理組合に対し、専有部分を第三者に店舗として賃貸することを妨害したことを理由とする損害賠償請求が棄却された事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、区分所有者が管理組合に対し、専有部分を第三者に店舗として賃貸することを妨害したことを理由とする損害賠償請求が棄却された事案(東京地判平成30年10月2日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、マンションの区分所有者である原告が、当該マンション管理組合である被告に対し、原告が区分所有する当該マンションの一室を第三者に店舗として賃貸して使用収益することを妨害したなどと主張して、不法行為に基づき損害賠償1263万6000円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 原告は、本件区分建物の用途が店舗であることを前提に、被告が本件区分建物の用途を住居に制限するために必要な手続を経ないで、本件区分建物の用途が住居であるとして、原告の本件区分建物の店舗としての使用を妨げたなどと主張する。
しかし、被告の管理規約(昭和63年発効)には、区分所有権の対象となる専有部分は、住戸番号を付した住戸と、店舗及び店舗付属専用設備とすると定められているところ、同規約に添付された図面上、店舗使用が認められている専用部分には「店舗」と明記されているが、本件区分建物は「店舗」と明記されていないことが認められる。
これに加え、本件マンションは、昭和46年に新築された建物であるところ、竣工当時、本件区分建物の出入口として現在使用されている開口部は窓になっており、不特定多数の人が出入りする店舗として用いることのできる出入口はなかったこと、平成元年から平成3年頃に作成された本件マンション1階の図面では、本件区分建物には、寝室、浴室、衣装室、居間、食堂、玄関、厨房などの記載があることが認められる。
これらの事実に照らせば、本件区分建物の用途は、竣工時以来住居であり、管理規約が作成された昭和63年の時点でも住居であることを前提に同規約が作成されたことが認められるが、原告も主張するとおり、本件マンションにおいては、用途変更をするためには管理規約の変更が必要であるところ、その後に用途変更がされた事実についての主張、立証はないから、本件区分建物の現在の用途は住居であると認められる。

2 以上を前提に、不法行為の成否を検討するに、本件区分建物の用途が住居である以上、平成28年11月9日に開催された被告の定期総会における決議は、そのことを確認したものにすぎず、本件区分建物の用途を住居に制限したものということはできない
また、被告の規約上、区分所有者は、その専有部分をそれぞれの用途に従って使用するものとし、他の用途に供してはならず、その専有部分を第三者に貸与する場合には、この規約、使用細則に定める事項及び総会の決議をその第三者に遵守させなければならないと定められていること、管理規約17条の規定に基づく「bマンション使用細則」には、居住者は、管理上必要と認められた場合、又は火災その他緊急時を除き、店舗部分及び住戸部分をそれぞれの用途以外に使用することが禁止され、住戸を住宅以外に使用するときは、あらかじめ理事長に書面により届出をし、書面による承認を得なければならないと定められていることに鑑みると、被告が、原告に対し、同月22日に、本件区分建物を店舗として使用しないよう通知し、さらに、同年12月9日及び同月22日に、本件区分建物は店舗として使用できず、原告が賃貸借契約を締結した者による店舗使用を認めない旨通知したことが、原告の本件区分建物の用途に沿う使用を妨げたとはいえず、原告の法的利益を侵害するものとはいえないから、不法行為を構成するものと認めることができない

管理規約における規定内容を尊重した判断です。

区分所有建物における管理規約の重要性がよくわかります。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。