義務違反者に対する措置23 ペットの管理を適切に行わない、共有部分に私物を放置する、管理費等を滞納する、定期的な検査等に非協力的であることを理由とする59条競売請求が認められた事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、ペットの管理を適切に行わない、共有部分に私物を放置する、管理費等を滞納する、定期的な検査等に非協力的であることを理由とする59条競売請求が認められた事案(東京地判平成30年3月2日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、建物の管理組合の理事長(管理者)である原告が、他の区分所有者からの授権を受け、同建物の区分所有権を有する被告に対し、被告がペットの管理を適切に行わない、共有部分に私物を放置する、管理費等を滞納する、定期的な検査等に非協力的であるなどと主張して、区分所有法59条1項に基づき被告の区分所有権及び敷地利用権の競売の請求をするとともに、被告が区分所有権を有する部分の使用禁止及び共用部分である玄関ドアの補修作業を妨害しないことを求め、加えて、被告の上記行為が他の区分所有者に対する不法行為に当たるとして、共用部分の補修費用や慰謝料等の損害の賠償を求める事案である。

【裁判所の判断】

1 原告は、被告が所有する別紙物件目録記載の区分所有権及び敷地利用権について競売を申し立てることができる。

2 被告は、別紙物件目録記載の建物内における被告専有部分を、判決の日の翌日から前項の競売による引渡し時まで使用してはならない。

 被告は、別紙物件目録記載の建物内の701号室玄関扉について、別紙「御見積書」記載の補修作業を妨げてはならない。

 被告は、原告に対し、227万5900円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 被告は、平成19年8月の本件居室購入以降、本件口頭弁論終結時に至ってもなお、前記管理規約において定めるような形で、ペットである猫の飼育管理を適切に行うことができず、糞尿による臭気等によって、本件物件の他の住民に対し、被害を与えている状況にある。
また、共用部分に私物を置くことも、結局のところ、抜本的には改善されないままであり、その改善策として、被告は、今以上に努力していきたい旨供述するにとどまり、具体的な策を持っているとはいい難い。
さらに、本件居室内で漏水事故が発生しているが、にもかかわらず、被告は、その後も本件物件の定期的な雑排水管点検にも応じないというのであり、このような定期的な点検を受けていれば、上記漏水事故についても問題を事前に把握できた可能性もある中、そのような態度をとり続けること自体問題である。
確かに、管理費等の滞納については、本件訴訟以後、一定の解決を見た部分はあるが、結果として、滞納が解消されたという時期はあるものの、毎月定期的に支払われているというわけではなく、今後も滞納が生じる可能性も否定できない。
これらの状況を併せると、現在においても、本件物件の被告以外の区分所有者の共同生活上の障害が著しいといわざるを得ない。また、このような状況が、およそ10年にわたり続いてきたのであり、その間、本件管理組合としても、改善を求める書面を被告に送付したり、被告に総会への出席を求めたりしながら、何らかの解決の道を探っていたということができ、それでもなお、現状のとおり、解決が見られないというのであるから、他の方法によってはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるというべきである。
そうすると、原告は、区分所有法57条1項に基づき、本件居室について、競売の請求ができるというべきである。

2 本件では、約10年間、原告を含む区分所有者は、本件の問題に悩まされ続けてきたものであり、上記玄関ドアの修理代だけで、その損害を慰謝できるという状況でないことは理解できる。
一方で、本件居室自体は、競売請求が認められ、今後はそのような問題が生じない可能性が高く、それにより、精神的苦痛の一定の部分は解消されるということもできる。
その他、本件に顕れた一切の事情に鑑み、原告を含む区分所有者1戸当たりの慰謝料額を10万円とみて、本件で原告が請求できる慰謝料額は、140万円とするのが相当である。
そして、上記不法行為と相当因果関係のある損害としては、上記損害額の合計(206万9000円)の1割(20万6900円)をもって相当とする。
したがって、損害額の合計は、227万5900円となる。
なお、原告は、被告の不法行為の結果必要となった臭気鑑定費用9万8280円も本件の損害であると主張するが、被告の不法行為との間に条件関係はあるといえるものの、上記認定の弁護士費用を超えて、更に本件訴訟の主張立証活動のために要した費用までを相当因果関係があるということはできず、原告の主張は採用できない。

最終的には59条競売請求が認容されていますが、相当な期間と費用を要しています。

なお、本裁判例では、原告が請求した弁護士費用全額は認められておらず、損害額の1割にとどまっています。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。