管理会社等との紛争28 マンション居住者がエレベーターのドアの前でエレベーターを待つ行為がエレベーターを利用する権利を侵害するとして、当該権利侵害の確認を求めた事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、マンション居住者がエレベーターのドアの前でエレベーターを待つ行為がマンションエレベーターを利用する権利を侵害するとして、当該権利侵害の確認を求めた事案(東京地判令和3年12月17日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、原告が、①被告において、原告の自宅の鍵を交換する際には被告の許可を得るよう指導したことが、違法な指導に当たると主張して、被告に対し、債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償として、慰謝料10万円及び通信費30円の一部である通信費30円の支払を求めるとともに、②原告の居住する集合住宅の共用部である廊下に傘を掛けていたところ、被告において、これを原告の自宅内に収納するよう強要したと主張して、被告に対し、債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償として、慰謝料1万円の支払を求め、併せて、③原告の居住する集合住宅において、エレベーターのドアの前でエレベーターを待つ行為が原告の同集合住宅におけるマンションエレベーターを利用する権利を侵害すると主張して、当該権利侵害の確認を求める事案である。

なお、原告は、本件マンションの304号室に居住している。
本件マンション304号室の区分所有者は、Bである。
被告は、本件マンション管理組合から委託を受けた管理会社である。

【裁判所の判断】

1 ③は訴え却下

 ①、②は請求棄却

【判例のポイント】

1 原告は、被告との間で本件マンションの管理委託契約が成立している前提で、その債務不履行を主張する。
しかし、本件マンションの区分所有者は、Bである上、被告は、本件マンション管理組合との間で管理委託契約を締結しているものであり、管理委託費の実際の出捐者が原告であったとしても、これをもって原告と被告との間に管理委託契約が成立していると認めることはできない。
したがって、原告の前記主張は、その余について判断するまでもなく、採用することができない。

2 本件マンションにおいて、エレベーターのドアの前に立ってエレベーターを待つ者がいたとしても、その行為態様は様々であると考えられ、被告との間で、当該行為を一律に原告の生命・身体に対する侵害又は侵害のおそれがあるものとして原告に対する権利侵害がある旨を確認することは、確認訴訟の対象として適切であるとはいえない
また、当該行為によって生命・身体に対する侵害又は侵害のおそれが具体的に存する場合には、当該行為の相手方に対し、別個に給付訴訟を提起すれば足り、それにもかかわらず、被告との間で、前記確認訴訟によることが適切であるとはいえない。
そうすると、原告の確認請求について、いずれにしても確認の利益が認められない

上記判例のポイント2のとおり、確認の訴えについては、事前に確認の利益が認められるかを吟味する必要があります。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。