管理会社等との紛争29 マンション敷地の一部について囲繞地通行権が認められ、通行地役権は認められなかった事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、マンション敷地の一部について囲繞地通行権が認められ、通行地役権は認められなかった事案(東京地判令和3年11月16日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、原告らが、被告に対し、主位的に、原告X2が、その所有地が袋地であると主張し、公道に至るため、本件通路について囲繞地通行権を有することの確認を、予備的に、原告X2が本件通路に原告所有地を要役地とする通行地役権を有することの確認を、それぞれ求めている事案である。

【裁判所の判断】

原告らが、別紙物件目録1記載1の土地のうち、別紙図面3のアイ’ウ’エアの各点を順次直線で結んだ範囲内の部分について囲繞地通行権を有することを確認する。

【判例のポイント】

1 囲繞地通行権が認められる場所については、公道までの距離や接続の難易、対象地の形状の他、囲繞地の従前の利用状況等を総合して判断するのが相当であるところ、原告所有地の居住者が昭和32年頃から、継続して本件通路を通じて本件道路に出ていた経緯があること、原告所有地から本件道路が近接していること、他方で、昭和47年にはB1建物とB2建物の南側には植栽があり、B2建物の居住者が東側土地を通じて公道に出ることが常態化していたとまで認めるに足りないことからすれば、マンション敷地の本件通路付近に囲繞地通行権を認めるのが必要かつ最も損害が少ないといえる。
被告は、民法213条に基づき、囲繞地が発生した時点における譲渡人の所有地である南側土地(3559番の22)に囲繞地通行権が発生する旨主張する。
しかし、関連土地全体の移転、分筆時期や譲渡先が親族であること等に鑑みると、南側土地も他の土地とほぼ同時に譲渡されたと評価するのが相当である。
また、原告所有地の居住者が昭和32年頃から本件通路を継続して通行していたこと、Gが本件通路の土地を取得する前提で土地交換の話がされていたこと等に鑑みると、本件において民法213条を適用し囲繞地通行権を南側土地に限定すべきとの被告の主張は採用できない
また、被告が、原告らの通行によって被る迷惑として述べる事情は、いずれも原告らの通行自体に当然に付随する性質のものではなく、本件通路付近を通行することで本件マンションの居住者が損害を被るとはいえず、他に原告らの本件通路付近の囲繞地通行権を否定すべき事情は認められない。
原告らの囲繞地通行権の範囲については、通行権を有する者のために必要であり、かつ囲繞地のための損害が最も少ないものであるところ(民法211条1項)、本件では人や車椅子等が通行することのできる幅員が確保できる、別紙図面3のアイ’ウ’エアの各点を順次直線で結んだ範囲で足りるというべきである。

2 本件通路をGとその家族が利用することを前提に、本件通路と原告所有地の西側の同面積の土地を交換することが話し合われており、本件土地交換契約が成立していた可能性はある。
しかし、本件通路部分の土地の所有権をGに移転する合意と、通行地役権の設定をする合意とは性質が異なると言わざるを得ず、他に、通行地役権設定の黙示の合意を認めるに足りる事情はない
よって、原告らの予備的請求は、理由がない。

囲繞地通行権と通行地役権の両方が問題となった事案です。

似て非なるものですので、整理をしておきましょう。

なお、民法213条は、以下のとおりです。

1 分割によって公道に通じない土地が生じたときは、その土地の所有者は、公道に至るため、他の分割者の所有地のみを通行することができる。この場合においては、償金を支払うことを要しない。
2 前項の規定は、土地の所有者がその土地の一部を譲り渡した場合について準用する。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。