管理会社等との紛争32 シーリング工事をシーリング再充填工法によって施工するとの合意があったにもかかわらず、意図的に「増し打ち」という不正を行ったことが不法行為にあたるとされた事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、シーリング工事をシーリング再充填工法によって施工するとの合意があったにもかかわらず、意図的に「増し打ち」という不正を行ったことが不法行為にあたるとされた事案(東京地判平成29年9月25日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、原告が、被告は原告が権利義務を承継した会社から発注を受けた工事につき真実は必要な工事を施工していなかったにもかかわらず、これを適切に施工したかのように装って同会社に工事代金を請求し、その旨誤信した同会社から工事代金をだまし取ったと主張して、被告に対し、不法行為に基づき、工事代金相当額の損害の一部563万3636円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求認容

【判例のポイント】

1 被告は、本件工事に含まれるシーリング工事を施工するに当たり、シーリング再充填工法によって施工するとの合意があったにもかかわらず、古いシーリング剤を十分に、あるいは全く撤去しないまま、新しいシーリング材をつぎ足す「増し打ち」という不正を行った上、シーリング再充填工法によってシーリング工事を施工したことを報告する写真集を作成してa社に提出するなどして本件工事を適切に施工したことを装い、本件工事代金5750万円(税別)を請求し、a社からその支払を受けている。
他方、a社はシーリング工事に関する不正施工の事実を認識していなかったことが認められる。a社がこれを認識していれば少なくとも本件工事代金のうちシーリング工事相当額を支払うことはなかったと考えられるから、a社による本件工事代金の支払は、本件工事を適切に施工したことを装って本件工事代金を請求するという被告の欺罔行為及びこれによるa社の錯誤の結果と認められる。
そうすると、連の被告の行為は詐欺というべきものであって、被告には不法行為が成立する。

2 被告は、本件工事後本件建物に不具合はなかったこと等を指摘して、原告に損害は生じていないと主張する。
しかし、a社がシーリング工事に関する不正施工の事実を認識していれば少なくとも本件工事代金のうちシーリング工事相当額を支払うことはなかったと考えられるところ、その支払それ自体がa社、ひいては原告の損害であると認められる。被告の上記主張は失当である。

3 本件は被告が本件工事に含まれるシーリング工事を施工するに当たり本来の合意を蔑ろにし、意図的に「増し打ち」という不正を行うなどして、a社から本件工事代金のうちシーリング工事相当額をだまし取った事案であることを踏まえると、当事者間の公平に由来する過失相殺を適用して本件の損害賠償額を算定するのは妥当ではないというべきである。

本件では、そもそも合意されていたシーリング工事の内容が争点となっていますが、被告作成の御見積書のシーリング工事の項目には「打替」と記載されており、この記載はそれ自体シーリング再充填工法を意味するものと考えられること等の理由から上記の認定となりました。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。