日照権・眺望権8 マンション建設により原告らの日照権が侵害された等を理由とする日陰補償の請求は認められるか?(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、マンション建設により原告らの日照権が侵害された等を理由とする日陰補償の請求は認められるか?(東京地判平成29年6月2日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、原告らが、原告らの自宅の隣地にいわゆる分譲マンションを建設した被告に対し、①従前の建物の解体工事及び上記マンションの新築工事の騒音や振動が激しく、原告らの自宅建物に損傷が生じた、②上記マンションの日影により原告らの日照権が侵害された、③上記マンションの敷地に存する桜の木の根が原告らの自宅敷地に伸びてきていると主張して、不法行為に基づき、上記①に関する「工事迷惑料」78万円、上記②に関する「日影補償」478万円及び上記③に関する「桜古木の根撤去費」50万円の合計606万円(各原告につきいずれも303万円)の損害賠償+遅延損害金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 冬至日の午前8時から午後4時までの間に地盤面から1.5メートル地点において、本件原告建物にかかる本件マンションの日影の範囲は、午前8時及び午前9時の時点では本件原告建物の全部に日影がかかる状況であるが、午前10時の時点では本件原告建物の南東側面(本件マンション側)のやや奥まっている2分の1ほどが日照を得られ、本件マンション側に出っ張っている残りの2分の1ほどに日影がかかり、南西側面は4分の3ほどが日照を得られ、奥まっている部分の一部である残り4分の1ほどに日影がかかる状況であり、午前11時の時点では本件原告建物の南東側面の4分の3ほどが日照を得られ、残りの4分の1ほどに日影がかかり、南西側面は全て日照を得られる状況であること、正午の時点では本件原告建物はもちろん本件原告土地の全部において日照を得られる状況であることが認められる。

2 加えて、被告が本件敷地の近隣に居住する住民らに対して、平成26年7月5日に第1回近隣説明会を、同年8月2日に第2回近隣説明会を、同年9月18日に意見交換会を、同月27日に第3回近隣説明会を、同年11月15日に第4回近隣説明会を、同年12月13日に第5回近隣説明会を、平成27年2月9日にあっせん前の事前協議を、同年3月10日に第1回あっせん協議を、同月28日に工事説明会を、同年4月6日に第2回あっせん協議を、平成28年9月28日に本件マンションからの近接建物の見え方について近隣住民に公開する会を実施したことについては当事者間に争いがなく、また、本件敷地上に本件旧建物が存在していた頃には、冬至日の午前8時から午後4時までの間に地盤面から1.5メートル地点において、本件原告建物にかかる本件旧建物の日影の範囲は、午前8時及び午前9時の時点では本件原告建物の全部に日影がかかる状況であり、午前10時の時点でも本件原告建物の南東側面の4分の1ほどが日照を得られるが、4分の3ほどに日影がかかり、南西側面は3分の2ほどが日照を得られ、残り3分の1ほどに日影がかかる状況であり、午前11時の時点では本件原告建物の南東側面の4分の3ほどが日照を得られ、残りの4分の1ほどに日影がかかり、南西側面は全て日照を得られる状況であり、正午の時点では本件原告土地の全部において日照を得られる状況であること、したがって、従前の状況と本件マンション建設後の状況とを比較した場合に、少なくとも後者の方が前者よりも日照の環境が悪化しているとはいえないことが認められ、これらの事情に照らすと、本件マンションの日影により本件原告建物の日照が阻害される時間及び部分はあるものの、これが原告らの受忍限度を超えるものであると認めるに足りず、他に原告らにおいて本件マンションの日影により受忍限度を超える日照権の侵害がされたということのできるような事情を認めるに足りる証拠はない。

受忍限度を超える日照権の侵害の有無を判断するにあたり、裁判所が、被告が複数回にわたり説明会等を開催したことを考慮している点は参考にしてください。

日陰の範囲・時間等という結果だけでなく、プロセスも大切だということです。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。