管理費・修繕積立金34 管理費等の滞納を理由とする59条競売請求が認められた事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、管理費等の滞納を理由とする59条競売請求が認められた事案(東京地判平成29年5月25日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、原告が、①原告は、本件マンションの管理を行うために本件マンションの区分所有者全員をもって構成された、本件組合の理事長であり、管理者である、②被告の所有に係る本件マンションの504号室の管理費及び補修積立金は、平成10年6月1日以降、月額2万8510円及び月額1万5570円、合計4万4080円である、③本件マンションの管理規約では、管理費等は毎月28日までに当月分を支払い、遅延損害金は年15%とされている、④平成20年6月分から平成29年2月分までの504号室の管理費等の未払額の合計は、180万7360円であり、各月分の支払期限は経過した、⑤被告は、原告が長期間にわたり504号室の管理費等を滞納し、かつて本件組合の申立てを認容する旨の仮執行宣言付支払督促を得ても504号室の管理費等の滞納は解消せず、改めて滞納管理費等の支払を求める訴訟を提起し、その勝訴判決に基づいて強制執行しても、無剰余を理由に競売開始決定が取り消される可能性が高いことなどを理由に、504号室の管理費等の未払額を回収するには、区分所有法59条に基づく競売を請求するほかないと主張して、同条に基づき、被告に対し、504号室の区分所有権等の競売を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求認容

【判例のポイント】

1 区分所有法59条1項は、「第57条第1項に規定する場合において、第6条第1項に規定する行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しく、他の方法によつてはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるときは、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、集会の決議に基づき、訴えをもって、当該行為に係る区分所有者の区分所有権及び敷地利用権の競売を請求することができる。」と規定し、同法57条1項は、「区分所有者が第6条第1項に規定する行為をした場合又はその行為をするおそれがある場合には、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、区分所有者の共同の利益のため、その行為を停止し、その行為の結果を除去し、又はその行為を予防するため必要な措置を執ることを請求することができる。」と規定し、同法6条1項は、「区分所有者は、建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない。」と規定する。
管理費の支払義務は建物等の管理に関する最も基本的な義務であることに鑑みると、著しい管理費の不払は、同項にいう「建物の管理…(略)…に関し区分所有者の共同の利益に反する行為」に当たると解される
そうすると、管理費の長期間にわたる不払は、同法59条1項にいう「第6条第1項に規定する行為による区分所有者の共同生活上の障害が著し」い場合に当たると解される。
しかし、同法7条1項が「区分所有者は、共用部分、建物の敷地若しくは共用部分以外の建物の附属施設につき他の区分所有者に対して有する債権又は規約若しくは集会の決議に基づき他の区分所有者に対して有する債権について、債務者の区分所有権(共用部分に関する権利及び敷地利用権を含む。)及び建物に備え付けた動産の上に先取特権を有する。管理者又は管理組合法人がその職務又は業務を行うにつき区分所有者に対して有する債権についても、同様とする。」と規定していることを勘案すると、管理費の長期間にわたる不払が同法59条1項にいう「他の方法によつてはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるとき」に当たる場合とは、同法7条1項の先取特権の実行など他の民事上の法的手段では功を奏さない場合をいうものと解される。

2 原告は、〈ア〉被告は、平成13年12月分から504号室の管理費等の支払を遅滞するようになり、長期的にはその額が次第に増加した、〈イ〉本件組合は、平成24年5月分の一部及び同年6月分から平成26年9月分までの504号室の管理費等の支払を求める支払督促の申立てをし、東京簡易裁判所は、平成27年2月20日、本件組合の申立てを認容する旨の仮執行宣言付支払督促をしたが、504号室の管理費等の滞納は解消しなかった、〈ウ〉そこで、本件組合は、上記〈イ〉の仮執行宣言付支払督促に基づき504号室内の被告の所有に係る動産に対し強制執行したが、執行不能に終わった、〈エ〉504号室の区分所有権等の固定資産税評価額の合計は1933万2412円であるのに対し、504号室の区分所有権等については、債権額を3400万円とする抵当権が平成13年10月1日に設定されており、504号室の管理費等の滞納の状況に鑑みると、上記抵当権の被担保債権の元本はほとんど減少していないものと推認され、そうすると、滞納管理費等の支払を求める訴訟において勝訴し、その勝訴判決に基づいて強制執行しても、無剰余を理由に競売開始決定が取り消される可能性が高い、〈オ〉被告は、平成28年7月21日、都税事務所から差押えを受けた、〈カ〉本件マンションでは、平成29年に排水管の更新、更生工事を予定し、平成32年に大規模修繕工事を予定しているから、少しでも未収金を減らしておく必要があることを理由に、504号室の管理費等の未払額を回収するには、区分所有法59条に基づく競売を請求するほかないと主張する。

管理費等の滞納を理由とする59条競売請求の一般論がわかりやすく書かれていますので、是非、参考にしてください。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。