管理費・修繕積立金36 駐車場の所有権の帰属に関する裁判所の事実認定(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、駐車場の所有権の帰属に関する裁判所の事実認定(東京地判平成29年2月29日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、区分所有マンション管理組合である原告が、区分建物の共有者である被告らに対し、管理費等及びその遅延損害金の支払いを求めた事案である。

【裁判所の判断】

被告らは原告に対し、各自、3503万6062円+遅延損害金をそれぞれ支払え。

【判例のポイント】

1 被告らは、N設計から本件駐車場の所有権を取得して、以後これを所有しているなどと主張するが、原告の管理組合規約では、共有部分である本件マンションの附属施設として本件駐車場も列挙されており(8条1項、別表2)、他方、本件駐車場の所有権が被告らに留保される旨の規定は存しない
被告らがN設計との間で平成11年11月30日に締結した基本約定書中にも、被告らが本件マンションの建築後に附属施設である本件駐車場の所有権を取得することをうかがわせるに足りる約定は存しないし、被告らがN設計との間で締結した土地信託契約書中にも、被告らが建築後の本件マンションの専有部分のうち合計150坪以上の部分をN設計から取得する旨の約定があるのみで(8条2項)、被告らが本件駐車場の所有権を取得することをうかがわせるに足りる約定は存しない
被告らとN設計の平成12年1月29日の打ち合わせ事項のメモ中には、N設計からの報告事項として、「駐車場に関しては、リフト式設備になると思いますが、Y1様の権利となるよう手続きをしてまいります。」との記載があるが、被告らが設置後の駐車場に関しどのような権利を取得するのかが明らかにされておらず、上記記載をもって被告らによる本件駐車場の所有権取得の事実の裏付けとみるのは困難である。
被告らの実父Bは、その証人尋問で、被告らがN設計に依頼して本件駐車場が設置されたもので、N設計の代表者との間で、本件駐車場の所有権を被告らに取得させる旨を合意したと証言するが、上記のとおり、土地信託契約書に盛り込まれていないことにかんがみると、少なくとも確定的な合意内容になっていなかったものといわざるをえず、被告らがN設計との合意に基づいて本件駐車場の所有権を取得した事実を認定できるものではない。
他方、原告は、平成13年以降本件駐車場の点検費用、補修費用を支出してきた事実が認められるところ、この事実は本件駐車場が本件マンションの共有部分であり、被告らがその所有権を取得したものでないことをうかがわせるものである。
結局、被告らが本件駐車場の所有権を取得したものとはいえない一方、原告は、被告らとの間で、本件駐車場の少なくとも2区画につき使用契約を締結したものであって、被告らは原告に対し、未払駐車場料金の支払義務を負う(以上につき,被告らの不可分債務)。

完全に事実認定の問題ですね。

裁判所がどのような事実に着目して判断しているのか、参考になります。

それにしてもすごい金額ですね。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。