管理費・修繕積立金37 管理費等を滞納する区分所有者と協議を行わずに支払督促を申し立てたら違法?(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、管理費等を滞納する区分所有者と協議を行わずに支払督促を申し立てたら違法?(東京地判平成29年1月11日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、控訴人が、同人の居住するマンション管理組合の理事長である被控訴人から、マンション管理費等7万5000円及び弁護士費用3万2400円を支払うよう求める旨の支払督促の申立てを受けたところ、弁護士費用は、被控訴人が支払うべき費用であると主張して、被控訴人に対し、3万2400円の支払を求めた事案である。
原判決は、控訴人の主張する請求原因事実によっても、控訴人の被控訴人に対する3万2400円の支払請求権は発生しないとして、控訴人の請求を棄却したところ、控訴人は、これを不服として控訴し、前記第1のとおりの判決を求めた。
なお、控訴人は、当審において、本件請求は、被控訴人が控訴人に対して弁護士費用(3万2400円)を請求したことが不法行為に当たり、これにより控訴人が同額の債務を負担したことが損害に当たると主張するものであるとした。

【裁判所の判断】

控訴棄却

【判例のポイント】

1 控訴人の主張は必ずしも明らかでないが、これを善解すると、被控訴人は、控訴人からの話合いの申出に応じず、一方的に本件申立てを行ったものであり、このことは、被控訴人の本件管理組合の理事長としての職務の怠慢であると評価されるべきものであるから、本件申立てを行うためにかかった弁護士費用を控訴人に対して請求することは、控訴人に対する不法行為を構成するということのようである。
しかし、そもそも控訴人が、管理費等の支払について、被控訴人に対して話合いを求めていたことを裏付ける証拠はないし、仮にそのような事実が認められるとしても、被控訴人は、控訴人に対して滞納管理費等を請求するに当たり、支払督促を申し立てる前に控訴人との間で話合いを行うべき義務を負っているものではなく(本件管理規約においても、そのような定めはない。)、話合い等に応じずに本件申立てを行ったことが、不法行為法上違法な行為であると評価することはできない。
また、本件管理規約において、管理費等を期限までに支払わない区分所有者に対し、一定の場合に弁護士費用を請求することが認められていることに鑑みれば、本件申立てに係る弁護士費用を控訴人に請求することが、控訴人に対する不法行為を構成するということもできない

特に異論のないところかと思います。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。