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ペット問題14 ペットの適切な管理を行わない区分所有者に対する59条競売請求が認容された事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、ペットの適切な管理を行わない区分所有者に対する59条競売請求が認容された事案(東京地判平成30年3月2日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、別紙物件目録記載の建物の管理組合の理事長(管理者)である原告が、他の区分所有者からの授権を受け、同建物の区分所有権を有する被告に対し、被告がペットの管理を適切に行わない、共有部分に私物を放置する、管理費等を滞納する、定期的な検査等に非協力的であるなどと主張して、区分所有法59条1項に基づき被告の区分所有権及び敷地利用権の競売の請求をするとともに、被告が区分所有権を有する部分の使用禁止及び共用部分である玄関ドアの補修作業を妨害しないことを求め、加えて、被告の上記行為が他の区分所有者に対する不法行為に当たるとして、共用部分の補修費用や慰謝料等の損害の賠償を求める事案である。

【裁判所の判断】

1 原告は、被告が所有する別紙物件目録記載の区分所有権及び敷地利用権について競売を申し立てることができる。

 被告は、別紙物件目録記載の建物内における被告専有部分を、判決の日の翌日から前項の競売による引渡し時まで使用してはならない。

3 被告は、別紙物件目録記載の建物内の701号室玄関扉について、別紙「御見積書」記載の補修作業を妨げてはならない。

 被告は、原告に対し、227万5900円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 被告は、本件居室に入居当初から、猫を飼育していたところ、現在に至るまで、本件申請書を提出していない。また、本件訴訟提起後の被告の主張を前提としても、口頭弁論終結時に飼育している猫の数が6匹、それ以前に少なくとも合計10匹を減らしたというのであり、一度に最低でも16匹の猫を飼育していたか、本件訴訟後に繁殖させた
また、本件物件の他の住民から、被告の飼育している猫による臭気、体毛による苦情が複数出ていた。さらに、大量のはえが発生し、これら住民が殺虫剤等ではえを処分する対策をとるも、抜本的には改善されなかった。
本件居室内の飼育環境として、キッチンや床、扉がひどく汚損し、腐食している部分が見られ、また、玄関ドアの下部が腐食している。
平成28年4月6日及び同月12日、臭気判定士により、本件居室前の臭気検査が行われたところ、いずれも、猫糞尿臭気を感知し、同月6日の検査で臭気強度4(強いにおい)、同月12日の検査で本件居室前廊下から1歩階段を下りた地点での臭気強度5(嗅いでいられないほどの強いにおい)という結果であり、臭気判定士は、この臭気が本件居室内の糞尿による臭気が玄関ドアの腐食した部分から室外漏出したことによるものであること、加えて、玄関ドア枠外側付近にも猫の尿が付着していることを指摘している(被告は、上記検査の信用性を否定するが、同検査は、臭気強度表示法(悪臭防止法4条2項)により行われており、環境省においても、当該方法は、規制基準を定めるための基本的考え方として用いられていると指摘されており、臭気判定士により行われた検査であることを踏まえ、信用できるというべきである。)。

2 これらの状況を併せると、現在においても、本件物件の被告以外の区分所有者の共同生活上の障害が著しいといわざるを得ない。
また、このような状況が、およそ10年にわたり続いてきたのであり、その間、本件管理組合としても、改善を求める書面を被告に送付したり、被告に総会への出席を求めたりしながら、何らかの解決の道を探っていたということができ、それでもなお、現状のとおり、解決が見られないというのであるから、他の方法によってはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるというべきである。
そうすると、原告は、区分所有法57条1項に基づき、本件居室について、競売の請求ができるというべきである。

3 原告は、本件の被告による不法行為による精神的苦痛は甚大であるとして、そのことによる慰謝料が発生する旨主張する。確かに、本件では、約10年間、原告を含む区分所有者は、本件の問題に悩まされ続けてきたものであり、上記玄関ドアの修理代だけで、その損害を慰謝できるという状況でないことは理解できる。
一方で、上記のとおり、本件居室自体は、競売請求が認められ、今後はそのような問題が生じない可能性が高く、それにより、精神的苦痛の一定の部分は解消されるということもできる。
その他、本件に顕れた一切の事情に鑑み、原告を含む区分所有者1戸当たりの慰謝料額を10万円とみて、本件で原告が請求できる慰謝料額は、140万円とするのが相当である。
そして、上記不法行為と相当因果関係のある損害としては、上記損害額の合計(206万9000円)の1割(20万6900円)をもって相当とする(これを超える部分は、相当因果関係がなく、原告の主張は採用できない。)。
なお、原告は、被告の不法行為の結果必要となった臭気鑑定費用9万8280円も本件の損害であると主張するが、被告の不法行為との間に条件関係はあるといえるものの、上記認定の弁護士費用を超えて、更に本件訴訟の主張立証活動のために要した費用までを相当因果関係があるということはできず、原告の主張は採用できない。

59条競売の大変さがよくわかります。

臭気鑑定は、騒音問題同様、専門家に測定してもらう必要がありますので注意が必要です。

本裁判例は、弁護士費用、慰謝料、臭気鑑定費用について、かなり厳しい判断をしています。

裁判体が異なれば、結論が異なる可能性は否定できません。

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ペット問題13 管理規約に飼育可能な犬種が列挙されている場合における当該犬種に該当しない犬の飼育の差止め・排除請求が認められた事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、管理規約に飼育可能な犬種が列挙されている場合における当該犬種に該当しない犬の飼育の差止め・排除請求が認められた事案(東京地判令和3年1月14日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、原告が、管理組合の管理規約に基づいて、本件建物の区分所有者である被告会社及び本件建物の占有者である被告Y2(以下「被告Y2」という。)に対し、被告Y2による本件建物内での別紙物件目録記載2の犬(以下「本件犬」という。)の飼育の差止め・排除を求めるとともに、上記管理規約に基づく違約金として88万円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

被告Y1株式会社は、被告Y2に物件内で目録記載の犬を飼育させてはならない。

被告Y2は、物件内で目録記載の犬を飼育してはならない。

被告らは、原告に対し、連帯して、30万円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 本件細則は、純血種の犬については飼育可能な犬種を列挙しているところ、ボーダーコリーが列挙されていないことは明らかである(なお、仮に雑種の場合の基準である体高と体重の積の値でみても、飼育可能な値ではないことは明らかである。)。
この点、被告らは、ボーダーコリーは中型犬である旨主張するが、本件細則は、一般的に「中型犬」と評価され得るかではなく、小型犬,中型犬のうち、列挙するもののみを飼育可能としているのであるから、被告らの主張は失当である。

2 被告らは、本件規約及び本件細則が無効である理由として、被告Y2が糖尿病網膜症を患っており本件犬が米国でいう情緒介助犬に当たるとして人格権に基づく保護が必要である旨主張する。しかし、被告らの主張は独自の主張であって本件規約及び本件細則を無効とすべき事情とは解されない。

3 原告は、本件規約に基づいて、被告らに対し、違約金としての弁護士費用及び差止め等の諸費用を請求することができるところ、実際に原告が弁護士費用として支払う金額が着手金として33万円、報酬金は55万円の予定であること、本件訴訟の内容、その他諸般の事情を斟酌すると、本件規約に基づく違約金としては30万円の範囲で認めるのが相当である。

管理規約の記載内容を尊重した判断となっています。

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ペット問題12 マンションの区分所有者である被告らが規約等によって動物を飼育することが禁止されているにもかかわらず、犬ないし猫を飼育するおそれがあると主張して、その飼育禁止を求めた事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、マンションの区分所有者である被告らが規約等によって動物を飼育することが禁止されているにもかかわらず、犬ないし猫を飼育するおそれがあると主張して、その飼育禁止を求めた事案(東京地判平成18年2月22日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本訴は、マンションの区分所有者全員により構成された団体である本訴原告が、同マンションの区分所有者である本訴被告らは、規約等によって、マンションの専有部分で動物を飼育することが禁止されているにもかかわらず、犬ないし猫を飼育するおそれがあると主張して、本訴被告Y1に対しては犬の飼育禁止を、本訴被告Y2に対しては猫又は犬の飼育禁止をそれぞれ求めている事案である。

反訴は、反訴原告らが、反訴被告に対し、反訴被告(本訴原告)による本訴の提起は反訴原告(本訴被告)らに対する不法行為を構成すると主張して、不法行為による損害賠償を求めている事案である。

【裁判所の判断】

本訴請求認容

反訴請求棄却

【判例のポイント】

1 原告は、ペットを飼育している居住者らの意見を聞く機会を設け、全居住者に対するアンケートを行うなどして、ペット飼育に関する本件マンションの居住者の意向を調査した上、本件臨時総会を開催したところ、同総会において、本件動物飼育禁止条項の改定案は否決され、ペット飼育を終了させるための措置に関する議案が可決された。
そこで、原告は、本件臨時総会の議決に従って、被告Y1に対しても、ペットの飼育を任意に終了させることを試みたが、同被告は、期限及び条件を遵守する旨の誓約書を提出せず、誓約書未提出者の意見陳述会にも欠席し、結局、同被告がペット飼育終了届を提出したのは、猶予期間から4か月以上経ってからであった。しかも、同被告は、その後も本件建物1で犬を飼育し、原告の当時の理事長や代理人弁護士からの飼育中止の要請に対して、一時的な飼育は禁止されていないなどと弁解して、これに従おうとしなかった。
以上の経過からすると、ペット飼育問題に関する被告Y1の対応は、不誠実なものといわざるを得ず、同被告は本件動物飼育禁止条項を遵守しようとする意識に乏しいものと認めざるを得ない。
これらの諸事情に照らせば、被告Y1には、今後も本件建物1において犬を飼育するおそれがあると認められる。

2 原告は、本件臨時総会の議決に従って、被告Y2に対しても、ペットの飼育を任意に終了させることを試みたが、同被告は、原告からの度重なる働きかけに対して何らの対応もせず、ペットを飼育していた区分所有者らの中で、同被告のみが未だにペット飼育終了届を提出していない。
そして、被告Y2は、本訴に係る答弁書において、「原告は今まで一度も話し合いに来たことはない。今までのペットに関する審議、議決には作為があり、一切無効である。責任者は辞任だ。ルールを決めてペット飼育を可能にしてはどうか。」などと、本件臨時総会に至る経緯や本件臨時総会での議決内容、更には原告からの度重なる働きかけを全く顧みない主張をしている。
以上のことからすると、ペット飼育問題に関する被告Y2の対応は、極めて不誠実なものといわざるを得ず、同被告は本件動物飼育禁止条項を遵守しようとする意識に乏しいものと認めざるを得ない。
これらの諸事情に照らせば、被告Y2には、今後も本件建物2において猫又は犬を飼育するおそれがあると認められる。

裁判所は、これまでの経緯、被告らの不誠実な対応を考慮し、犬猫の飼育禁止請求を認容しました。

なお、このような差止め請求は、具体的な実害の発生は要件とされていません。

また、判決に基づき強制執行をする場合には、間接強制によることになりますので注意しましょう(直接強制はできません)。

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ペット問題11 管理規約・使用細則に基づくペット飼育の全面禁止の有効性(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、管理規約・使用細則に基づくペット飼育の全面禁止の有効性(東京地判平成23年12月16日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、マンション管理組合である原告が、同マンションの区分所有者である被告に対し、管理規約(ないしこれに基づく使用細則)に基づき、上記マンション内における犬の飼育の差止めを求めるとともに、不法行為に基づき、弁護士費用相当損害金30万円+遅延損害金の支払を求めている事案である。

【裁判所の判断】

被告は、物件内で犬を飼育してはならない。 

被告は、原告に対し、20万円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 本件マンションの使用細則第1条1号では「他の区分所有者に、迷惑または危害を及ぼすような動物(犬、猫、猿等)を飼育すること」を禁止しているところ、これを素直に読めば一般的・抽象的に他の区分所有者に迷惑又は危害を及ぼす動物として犬、猫、猿を列挙しているものであり、特に猛犬などに限定している趣旨とは解されないし、実際、ある特定の犬、猫等が他の区分所有者に迷惑又は危害を及ぼすかどうかを個別具体的に判断することは困難であり、それによってマンションの住民間で紛争を生ずるおそれもあることから、上記使用細則を被告主張のように解することは相当でない。
したがって、被告が本件犬を物件内で飼育することは許されないものというべきである。
ちなみに、犬については、噛みつくなどの人などへの直接的な危害行為はもとより、その鳴き声、臭気、体毛の飛散等によりマンション内での飼育により他の住人が不快感を抱くこと(動物アレルギーの者もいることがある。)はしばしば起こり得ることであり、上記細則のような定めを設けることは十分な合理性がある。

2 被告は犬の飼育が本件マンションの使用細則に違反するものであることを知りながら犬の飼育を継続し、原告からのペット異臭改善勧告に対して誓約書を提出して迷惑行為事項の改善及び居住者からの苦情が再発した場合、直ちに本件マンション内におけるペット飼育を中止することを誓約したにもかかわらず、依然として原告に対する異臭の苦情が寄せられたが、被告は本件犬の飼育を継続したため、原告は弁護士に依頼して本件訴えを提起せざるを得なくなったものと認められ、被告の本件犬の飼育は原告に対する不法行為を構成する。
そして、本件事案の難易及び認容状況、訴え提起に至る経緯、被告の応訴の状況その他本件に顕れた一切の事情にかんがみると、上記不法行為と相当因果関係のある弁護士費用は20万円と認めるのが相当である。

本件裁判例も他の同種事案における裁判例同様、管理規約や使用細則の限定解釈はしていません。

上記判例のポイント1記載のとおり、他の区分所有者への危害・迷惑の有無を個別具体的に判断することは困難であることが実質的な理由です。

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ペット問題10 管理規約・使用細則に基づくペット飼育の全面禁止の有効性(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、管理規約・使用細則に基づくペット飼育の全面禁止の有効性(東京地判平成10年1月29日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、高層集合住宅の管理組合の管理者である原告が、右高層集合住宅の区分所有者である被告らに対し、管理規約・使用規則に基づき、ペット(犬、猫)の飼育禁止等を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求認容

【判例のポイント】

1 マンションその他の集合住宅においては、居住者による動物の飼育によってしばしば住民間に深刻なトラブルが発生すること、他の居住者に迷惑がかからないように動物を飼育するためには、防音設備、防臭設備を整え、飼育方法について詳細なルールを設ける必要があることから、集合住宅において、規約により全面的に動物の飼育を禁止することはそれなりに合理性のあるものであり、ペット飼育禁止を定めた本件使用規則の制定にあたり手続上の瑕疵が認められない以上、原告による本件ペット飼育禁止請求が権利の濫用にあたるとまでいうことはできない

2 たしかに、被告らにとって、ペットは、家族の一員であり、精神的な支えとなっており、ペットと別れての生活はおよそ考えられないことが認められる。
また、集合住宅においても、ペットの飼育は、運営如何によっては、充分可能であること、ペットの飼育を容認している集合住宅も珍しくないことが認められる。
しかしながら、これらの事情があるからといって、現実に再開発組合の定時総会においてペット飼育禁止の案件が多数決で可決されている以上、右決議の効力を否定してまで、ペットの飼育を容認することはできないものといえる。

他の裁判例と同様の判断がなされています。

上記判例のポイント2のような主張が被告から出されることがよくありますが、裁判所の考え方はご覧のとおりです。

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ペット問題9 犬猫の飼育を禁止する管理組合の規約を有効とした事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、犬猫の飼育を禁止する管理組合の規約を有効とした事案(東京地判平成6年3月31日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、犬猫の飼育を禁止する管理組合の規約の有効性が争点となった事案である。

【裁判所の判断】

被告らは、物件内で犬を飼育してはならない。

被告らは、原告に対し、各自40万円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 原告においては、規約24条に基づく細則の本件規定により、犬猫の飼育を禁止しているが、原告の構成員の多数が今なお本件規定の遵守を組合員等に求めていることが容易に認められるものであつて、ペットクラブの自然消滅を期し、厳格な管理の下に、ペットクラブ発足時の犬猫一代限りの飼育のみを承認するものとしている原告の構成員の多数の意思に反し、それ以外の犬猫を飼育する行為は、区分所有法6条1項所定の「区分所有者の共同の利益に反する行為」に該当するものとして、同法57条1項により差止(飼育禁止)請求の対象となるものというべきである。

2 被告らは、本件規定に違反して犬の飼育を続け、原告の再三の飼育禁止の申入れに応じなかつた。そのために、原告は、弁護士に依頼して、本訴を提起せざるを得ず、原告は、弁護士に訴訟の提起、追行を委任し、着手金として27万円、諸費用3万円、成功報酬として、30万円を支払うことを約したことが認められる。
そして、本件事案の難易、訴え提起に至る経過、被告らの応訴の状況、その他諸般の事情を斟酌すると、右弁護士費用のうち40万円は被告らの不法行為と相当因果関係に立つ損害と認めるのが相当である。

他の類似事案における裁判例と同様の判断ですね。

ペット飼育禁止の規約の新設又は変更をする場合には、既にペットを飼育している者に対する配慮から、いきなり全面禁止にするのではなく、飼育のルールを定めた上で、現在飼育しているペット「一代限りの飼育」と制限するのがバランスがいいと思います。

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ペット問題8 ペット飼育禁止の管理規約規定の新設(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、ペット飼育禁止の管理規約規定の新設(横浜地判平成3年12月12日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、マンションの一室の区分所有者(被告)が昭和60年3月に入居して以来現在まで犬を居室内で飼育し続けていたところ、管理組合は昭和61年2月に開催された臨時総会において、犬、猫、小鳥等のペット・動物類の飼育を禁止する管理規約を新設し、管理者である管理組合の理事長が原告となり、同規約に基づき被告による犬の飼育の禁止を請求した事案である。

【裁判所の判断】

請求認容

【判例のポイント】

1 マンションその他の共同住宅においては居住者による動物の飼育によってしばしば住民間に深刻なトラブルが発生すること、多くのマンションではこのようなトラブルを回避するために動物の飼育を規約で禁止しており、動物の飼育を積極的に認め、あるいは一定の条件を設定して動物の飼育を認めているマンションは、社会的な話題となってマスコミ等が取材に訪れるほど稀少な存在であること、動物の飼育を認める規約を有するマンションではトラブルを防止するため、飼育方法や飼育を許される動物の定義等について詳細な規定を設けていること、そもそも共同住宅で他の居住者に全く迷惑がかからないよう動物を飼育するには、防音設備を設けたり集中エアコンなどの防臭設備を整えるなど住宅の構造自体を相当程度整備したうえで、動物を飼おうとする者の適性を事前にチェックしたり、飼い方などに関する詳細なルールを設ける必要があることが認められ、以上の事実を総合すると、現在のわが国の社会情勢や国民の意識等に照せば全面的に動物の飼育を禁止した本件規約は相当の必要性および合理性を有するものというべきである。

2 旧規約には動物の飼育を直接制限する条項は存在しなかったことが認められる。しかしながら、本件入居案内に「動物の飼育はトラブルの最大の原因なので一応禁止する」旨の記載があること、被告は理事長から規約で禁止されているので犬の飼育はだめだと言われたこと、本件マンションにおいてはかつて小鳥を飼っている者が数名いたがそれらの小鳥は現在では処分されてすでにいなくなっており、犬や猫など小動物の範疇に属する動物を飼育しているのは分譲当初から現在に至るまで被告のみであること、マンションのうち動物の飼育禁止を管理規約で定めている所は約7〜8割にのぼるとの文献もあることが認められる。
そして以上の事実によれば、本件マンションの入居者の間には動物の飼育は原則として禁止されているとの共通の認識があったことが推認される。

このような管理規約の新設は、区分所有法31条1項との関係で問題となります。

今回の裁判例については批判もありますが、控訴審である東京高裁平成6年8月4日判決も同様の結論となっています。

【区分所有法31条1項】規約の設定、変更又は廃止は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議によつてする。この場合において、規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。

「特別の影響を及ぼすべきとき」の意義については最判平成10年10月30日が重要です。

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ペット問題7 複数の区分所有者がペット禁止規定に違反してペットを飼育している場合における請求権行使の衡平性(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、複数の区分所有者がペット禁止規定に違反してペットを飼育している場合における請求権行使の衡平性(東京地判平成13年10月11日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、管理組合である原告が、当該マンション内で犬を飼育している区分所有者の被告に対し、規約に基づいて犬の飼育の禁止を求めるとともに、不法行為に基づく損害賠償を求めている事案であり、後者の請求に係る付帯請求は不法行為後である訴状送達の日の翌日からの民法所定の割合による遅延損害金の支払請求である。

【裁判所の判断】

請求認容

*弁護士費用損害金30万円認容

【判例のポイント】

1 原告は、区分所有法30条1項に規定する規約である本件規約に基づく本件協定(使用細則)中の動物飼育禁止規定に基づいて、被告に対し、本件マンション及びその敷地内で犬の飼育をしないよう求めることができるというべきである。

2 被告は、本件マンションでは被告以外にも犬や猫等を飼育している者が存在する旨主張するが、仮にそのような事実があったとしても、そのことから直ちに、被告において本件マンション内で犬を飼育していることが正当化されるものではなく、被告の主張内容や本件全証拠を仔細に検討してみても、本件マンションにおいて、本件協定中の動物飼育禁止規定が空文化するほどに犬や猫等の飼育が広汎に行われているとか、原告において、被告と同様に動物飼育禁止規定に違反している者が他にも存在するにもかかわらず、何らか不当な目的をもって、あえて被告に対してのみ訴訟を提起したというような事情があるとは認め難いから、上記判断は左右されない。
したがって、被告に対し本件マンション及びその敷地内での犬の飼育の禁止を求める原告の請求は理由があって、これを認容すべきである。

上記判例のポイント2記載のような事情が認められる場合には、請求権行使が権利濫用として無効になる可能性がありますので注意が必要です。

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ペット問題6 隣室の居住者に対して、飼育犬の鳴き声による騒音のため平穏な生活が侵害されたとして慰謝料の支払を求めた事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、隣室の居住者に対して、飼育犬の鳴き声による騒音のため平穏な生活が侵害されたとして慰謝料の支払を求めた事案(東京地判平成21年11月12日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、Yの隣室に居住するXが、Yに対し、Yがその居宅においてダックスフント2匹を飼育し、本件飼犬の鳴き声による騒音のため平穏な生活が侵害されたとして、①本件飼犬をと殺すること、②本件訴状送達の日である平成21年1月9日から本件飼犬の飼育をやめるまで1日当たり5万円を支払うこと、③慰謝料50万円及び訴状送達の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求めて提訴し、本件事件係属中の同年2月1日、被告の長女が本件飼犬を連れて転居したため、上記①の請求に係る訴えを取り下げ、上記②の請求につき、同請求に係る期間を上記転居の前日までとし、上記③の請求を維持している事案である。

【裁判所の判断】

Yは、Xに対し、6万円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

Xの居宅において、48.1デシベルから59.7デシベルの値の本件飼犬の鳴き声が聴取されており、Xは、Yが隣室に転居してきた平成20年4月ころから、Yの長女が本件飼犬を伴って転居した平成21年2月1日までの間、本件飼犬の鳴き声によって、一定の精神的苦痛を感じたことが認められるというべきである。
本件マンションの管理組合規約の使用細則において、他の居住者に迷惑又は危害を及ぼすおそれのある動物を飼育することが禁止されており、Xが犬の鳴き声に対して好ましい感情を抱いていないことが推認されることのほか、Xの居宅において聴取された本件飼犬の鳴き声の程度、Yがその居宅において本件飼犬を飼育していた期間等を総合して勘案し、Xの上記精神的苦痛に対する慰謝料としては5万円、弁護士費用相当損害金としては1万円が相当と判断する。

裁判所が認定する慰謝料の金額の相場を知るにはよい裁判例です。

訴訟係属中に飼犬を連れて転居してしまったため、①については取り下げられていますが、仮に判決まで行っても請求は棄却です。裁判所は、飼育を禁止することはあっても「と殺する」ことを命じることはありません。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。

ペット問題5 区分所有者である被告が、複数の猫に継続的に餌やりを行ったため、糞尿等による被害を被ったとして、本件建物の原告管理組合及び同建物の区分所有者である個人原告らが、本件建物の敷地等での猫への餌やりの差止めを求めるとともに、個人原告らが損害賠償を求めた事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、区分所有者である被告が、複数の猫に継続的に餌やりを行ったため、糞尿等による被害を被ったとして、本件建物の原告管理組合及び同建物の区分所有者である個人原告らが、本件建物の敷地等での猫への餌やりの差止めを求めるとともに、個人原告らが損害賠償を求めた事案(東京地立川支判平成22年5月13日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、原告管理組合を除く原告ら及び被告は、区分所有法の適用のある本件タウンハウスに居住している。本件は、本件タウンハウスの一部の区分所有者である被告が複数の猫に継続的に餌やりを行い、糞尿等による被害を生じさせたことは、区分所有者の共同の利益に反し(同法61条1項)、本件タウンハウスの規約(原告管理組合規約)にも違反すると主張して、原告管理組合は同法57条1項又は原告管理組合規約に基づき、個人原告らは人格権に基づき、本件タウンハウスの敷地及び被告区分建物内での猫への餌やりの差止めを求めるとともに、原告らが不法行為に基づく慰謝料(原告管理組合を除く。)及び弁護士費用の損害金並びに遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

原告管理組合の差止請求認容

個人原告らの差止請求認容

被告は、次の各原告に対し次に記載の各金員+遅延損害金を支払え。
(1) 原告管理組合 30万円
(2) 原告X2 12万円
(3) 原告X3 9万円
(4) 原告X4 9万円
(5) 原告X5 9万円
(6) 原告X6 9万円
(7) 原告X7 9万円
(8) 原告X8 9万円
(9) 原告X9 3万6000円
(10) 原告X10 3万6000円
(11) 原告X11 12万6000円
(12) 原告X12 12万6000円
(13) 原告X13 15万6000円
(14) 原告X14 9万6000円
(15) 原告X15 15万6000円
(16) 原告X16 9万6000円
(17) 原告X17 12万6000円
(18) 原告X18 12万6000円

【判例のポイント】

1 原告管理組合の動物飼育禁止条項は、一律に動物の飼育を禁止しているものではなく、「他の居住者に迷惑を及ぼすおそれのある」動物を飼育しないことと定めているものではあるが、このような限定は、小鳥や金魚の飼育を許す趣旨は含んでいるとしても、小型犬や猫の飼育を許す趣旨も含むものとは認められない

2 野良猫に餌やりを行えばそれらの猫はその場所に居着いてしまうことを知っていたのに、被告は、平成14年11月ころ、原告X12から糞の被害等の申告を受け改善を求められた以降、Aの主導により猫の不妊去勢手術の費用を負担し、餌の選択、猫除けの装置の配布、里親探しを行ったとはいえ、各戸が壁を共有して接しており、一戸建て住宅が並んでいる住宅地における場合以上に話し合いが求められる本件タウンハウスにおいて(この点は、不法行為の成否の判断においても、地域性として考慮すべきである。)、最も合意の形成に努めるべき個人原告らとの話し合いの最大の機会である原告管理組合の総会のほとんどを欠席し(被告の仕事の関係で日曜日の総会に出席できないのであれば、他の曜日に話し合いの機会を持つことを提案すべきであった。)、平成19年11月に、地域猫活動で重要といわれている糞のパトロール及び猫用のトイレの設置を開始したものの、被告が行っている4匹の猫への餌やりは、住みかまで提供する飼育の域に達しているのに、被告北側玄関に現れることの多い猫2匹についてのトイレの配慮が十分でなく、糞のパトロールの回数も不十分であることに加え、餌やりの点でも、風で飛んでしまう可能性のある新聞紙等を使用する方法や餌やり終了後の始末が遅い点で更に改善を要する点があるなど、猫への餌やりによる個人原告らに対する被害は依然として続いているものであり、現時点での活動であっても、受忍限度を超え、個人原告らの人格権を侵害するものと認められる。

3 原告管理組合の差止請求については、原告管理組合規約違反に基づき、本件土地及び被告専有部分内において、猫に餌を与えてはならないことを認容すべきである。個人原告らの差止請求は、人格権侵害に基づき、本件土地において、猫に餌を与えてはならないことを求める限度で認容すべきである。

管理組合のみならず、組合員個人による差止め請求についても認容されています。

また、組合員個人(17名)につき、1人当たり3万円~13万円の慰謝料が認容され、合計金額ではかなりの金額になっています。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。