Category Archives: 管理会社等との紛争

管理会社等との紛争24 区分所有者が、購入時から20年間、敷地の一部を占有して時効取得したとする主張が認められなかった事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、区分所有者が、購入時から20年間、敷地の一部を占有して時効取得したとする主張が認められなかった事案(東京地判平成30年11月15日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件マンションの区分所有者である原告らは、購入時から20年間、敷地の一部である本件土地1・2を占有して時効取得したとして、共有持分権に基づき、本件土地1・2につき、
(1)他の敷地である本件土地3・4の共有持分1万分の848を有する原告X1においては、昭和46年9月14日時効取得を原因として、(ア)本件土地1・2の各共有持分4分の1を有する被告甲山Y1及び同Y6に対して所有権の一部(持分4万分の848)移転の登記手続を、(イ)本件土地1・2の各共有持分8分の1を有する被告甲山Y2,同甲山Y3,同甲山Y4及び同甲山Y5に対して所有権の一部(持分8万分の848)移転の登記手続を、それぞれするよう求め、
(2)本件土地3・4の各共有持分1万分の1331を有する原告X2においては、同年8月26日時効取得を原因として、(ア)被告甲山Y1及び同Y6に対して所有権の一部(持分4万分の1331)移転の登記手続を、(イ)被告甲山Y2、同甲山Y3、同甲山Y4及び同甲山Y5に対して所有権の一部(持分8万分の1331)移転の登記手続を、それぞれするよう求めている。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 時効制度は、長期にわたって継続した事実状態を尊重し、これに適合するよう権利の得喪を生じさせることで、社会秩序の安定を図ること等を目的とするものである。
このため、取得時効の完成に必要な占有は、権利者がこれを認識して時効中断の措置を執り得ることで権利の得喪に正当性が付与されるよう、物が社会通念上ある者の事実的支配に属すると認められる客観的状態にあることという占有権の成立に必要な占有だけでなく、権利者による事実的支配を排除するなど、客観的に明確な程度の排他的な支配状態が継続することを要するものと解される(最高裁昭和46年3月30日第三小法廷判決)。

2 本件土地1・2は、その上に本件マンション2階の居室部分や2・3階の各バルコニー・ひさし部分があることが認められ、本件マンションの法定敷地といえるから(区分所有法2条5項)、原告らは、本件マンションの各居室の所有権を取得し、引渡しを受けた後は、他の区分所有者らと共に本件土地1・2を共同占有していたものといえる。
しかしながら、甲山Aや被告甲山Y1を含むその相続人らは、昭和46年頃から少なくとも平成25年頃まで、N興業に対して本件土地1・2を駐車場として管理するよう委託し、N興業を通じて上記駐車場の利用者から賃料を得ていたことが認められ、本件土地1・2の所有者ないし共有者もこれらを占有していたものといえるから、原告らを含む本件マンションの区分所有者らは、本件土地1・2につき、客観的に明確な程度の排他的な支配状態を有していたものとはいえないというべきである。
そうであるから、原告らは、本件土地1・2につき、直接占有や間接占有の成否を問うまでもなく、時効取得に必要な占有を有していなかったものといえる(なお、原告らが南青興業に対して本件土地1・2を管理するよう委託したことを認めるに足りる証拠もない。)。
したがって、原告らは、本件土地1・2につき、時効取得に必要な占有を有していない。

時効取得における「占有」に関する最高裁の考え方を押さえておきましょう。

その上で、上記判例のポイント2において、具体的なあてはめを参考にしてください。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。

管理会社等との紛争23 防犯カメラの設置に係る配線の所有権の帰属主体(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、防犯カメラの設置に係る配線の所有権の帰属主体(東京地判平成31年2月22日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、マンション管理組合との間で賃貸借契約を締結して防犯カメラ等を設置した原告が、マンション管理組合に対し、無断で防犯カメラ等が撤去された旨主張し、賃貸借契約の約定に基づき、解除に伴う違約金の支払を求めるともに、同管理組合、マンションの管理受託会社及び新たに防犯カメラ等を設置した会社に対し、防犯カメラの設置に係る配線等について、所有権に基づく引渡しを求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 ①本件賃貸借契約の契約書には、本件賃貸借契約の目的物として本件配線等が掲げられていないこと、②原告は、本件防犯機器の設置に際し、被告管理組合に対し、本件防犯機器の設置費と共に配線工事費を請求し、被告管理組合はこれを支払っていること、③本件配線等の財産的価値は、配線工事費に比して僅少であること、④本件配線等は、本件マンションの構造を踏まえ、防犯機器の設置箇所に適合するよう設置されたものであること、⑤本件配線等を撤去した場合、本件マンションにビスの痕や塗装の剥離等の物理的な損傷が生じること、以上の事実が認められる。
かかる事実に照らせば、本件配線等は本件賃貸借契約の目的物に含まれているとは認められず、被告管理組合は、本件配線等の設置費用のほか、本件配線等そのものの代金をも負担することにより、その所有権を取得したと認めるのが相当である。
仮に、被告管理組合が本件配線等の代金を負担していると認められないとしても、上記認定事実⑤に照らせば、本件配線等は本件マンションに付合しているというべきであるから、いずれにせよ、被告管理組合が本件配線等の所有権を取得したと認められる。
したがって、原告は本件配線等を所有していない。

形式的に見れば、①の理由だけでも勝負ありかと思いますが。

弁護士費用との関係でみれば、訴訟にまで発展するのは誰得な状況です。

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管理会社等との紛争22 管理組合等が建物の共同浴場等の使用を認めない書面を掲示したことが不法行為にあたらないとされた事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、管理組合等が建物の共同浴場等の使用を認めない書面を掲示したことが不法行為にあたらないとされた事案(東京地判平成31年3月7日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

原告は、区分所有建物の9階部分を共有により区分所有し、同階層において会員制の宿泊施設を営業している。
本件は、原告が、①原告の会員が同建物の管理組合である被告管理組合及び同被告から同建物の管理を委託された被告会社により、同建物の共同浴場等の使用を妨害されたことにより、会員による年会費の滞納や会員の退会が増加し、会員から徴収することができた年会費相当額の損害を被ったとして、被告らに対し、共同不法行為に基づき、上記の年会費相当額である1940万6700円+遅延損害金の支払を求めた事案と、②原告は、上記階層の共用部分について、月額3万円の維持管理費用を負担して清掃等の管理をしているが、被告管理組合は上記共用部分の管理をしておらず、これにより法律上の原因なく利得を得ているとして、不当利得に基づき、本件の訴え提起から過去10年分の管理費用相当額である360万円の返還+遅延損害金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 原告は、被告らにより、原告クラブ会員に対する共同浴場等の使用を認めない書面を掲示する使用妨害行為があった旨主張する。
しかしながら、原告は、別件訴訟の判決のとおり、平成19年3月以降の管理費及び修繕積立金を支払っていないこと、被告管理組合の駐車場使用細則2条及び共同浴場・サウナ室細則2条によれば、管理費等の未払いが3か月を超えた組合員等は、上記各施設を使用することができない旨定められ、また、滞納管理費等の標準督促取扱に関する細則3条4項によれば、管理費等の未払いが6か月にわたる組合員については、その部屋番号を記載した書面を温泉浴場等に掲示することができる旨定められていることが認められる。
また、被告管理組合において、上記のように、一定の場合に組合員による本件建物の共用部分等の使用を制限する旨の細則を定めることは、団体自治上許されるものというべきである。
そうすると、原告クラブ会員が共同浴場等の使用を制限され、その旨の書面が被告らによって掲示されたことがあったとしても、これは、原告の管理費等の未払いが上記各細則所定の期間を超えたことにより、各細則に基づく措置がとられたことによるものと推認することができる。
したがって、被告らにより原告クラブ会員に対する使用制限等があったとしても、その行為に不法行為上の違法があるとはいえない。

2 原告は、本件階層の廊下等の共用部分は、原告が費用をかけて管理しており、被告管理組合はその管理の負担を免れているから、被告管理組合は管理費用相当額の支出を免れることで法律上の原因なく利得し、これにより原告は同額の損失を被った旨主張する。
しかしながら、原告は、本件階層を購入した上で、旅館業の許可を取得してホテル等を営むことが予定されていたが、それが実現しないまま、宿泊施設類似の形態をとった原告クラブを営業していることが認められる。
このように、原告は、本件階層全体を宿泊施設として専用使用する予定であったものが、同階層内にも共用部分が残る状態で通常の区分所有建物として扱われ、実際には、本件階層内の共用部分についても、事実上、同部分を専有部分として使用しているといえる。
その上で、原告は、自ら本件共用部分の清掃等をしているのであって、被告管理組合に対し、清掃等の管理を求めたようなこともうかがわれないことからすると、原告は、被告管理組合の意向とは関係なく、任意に本件階層の共用部分を管理しているものというべきである。
そうすると、原告は、被告が本件階層の共用部分の管理をしないために、自ら同部分の管理をせざるを得ず、その管理費相当額の負担を余儀なくされているのではないから、被告が本件階層の共用部分の管理をせず、管理費相当額の支出をしていないことと、原告が自ら上記部分を管理することによりした支出との間に因果関係があるとは認められない。
以上によれば、その余の点につき判断するまでもなく、原告の被告管理組合に対する不当利得返還請求には理由がない。

上記判例のポイント1のような書面の掲示行為は、内容如何によっては名誉毀損を理由に損害賠償を請求される場合があります。

同種事案の裁判例を確認することにより、裁判所の判断傾向を知ることができます。

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管理会社等との紛争21 区分所有者がマンション内通路の補修及び植栽の剪定をしたことが事務管理にあたらないとされた事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、区分所有者がマンション内通路の補修及び植栽の剪定をしたことが事務管理にあたらないとされた事案(東京地判平成31年3月8日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、マンションの区分所有者である控訴人が、マンション管理組合である被控訴人に対し、共用部分であるマンション内通路の補修及び植栽の剪定をしたとして、事務管理に基づく費用償還請求又は管理組合規約に基づく費用請求として、上記補修及び剪定に要した費用相当額4万5396円の支払を求める事案である。

原審は、控訴人は、通路の補修及び植栽の剪定を行うに当たり、管理組合規約の定めに従った手続を履践していないとして、控訴人の請求を棄却したところ、控訴人がこれを不服として控訴した。

【裁判所の判断】

請求棄却(控訴棄却)

【判例のポイント】

1 控訴人は、被控訴人が管理すべき共用部分である本件マンションの通路及び植栽について本件補修等を行ったことをもって、被控訴人の事務を管理したものとして、当該費用の償還を請求するところ、上記事務の管理が被控訴人の意思に反することが明らかであるときは、民法上の事務管理は成立しないものと解される。

2 新規約によると、本件マンションの通常の管理に要する経費(第58条)については、区分所有者である組合員からの管理費及び修繕積立金や駐車場等の使用料を主たる収入とし(第56条)、これを適切に配分して会計年度ごとに支出され、内容については理事長が収支決算を行って監事の監査を終了した上、定期総会の決議を受けるものとされている(第57条、第61条)。
そして、通常の管理に要する経費としては、共用設備の保守維持に要する費用が掲げられており(第58条2号)、本件補修等のための経費もこのような通常の管理に要する経費に該当するものと認められる。
旧規約(甲45)においても、本件マンションの通常の管理に要する経費として共用設備の保守維持に関する費用が明示的には掲げられていないという差異はあるものの、区分所有者である組合員からの管理費及び修繕積立金等を主たる収入とし、共用部分の維持修繕については理事会の定めるところによるとされ、定時総会において収支決算の決議を受けると定められていることからすれば、本件マンションの通常の管理に要する経費やその支出について実質的に同様の規定が置かれていると認められる。
このような本件マンションの管理の在り方に照らすと、被控訴人は、管理組合の限られた予算の中で真に必要性のある作業を行うため、被控訴人において、作業を行う順序や頻度、内容等を検討した上で、適当な時期に一定の費用を支出して作業を行うという手続を踏む必要があることは当然であり、そもそも管理組合において、被控訴人がかかる手続を踏まずに経費を要する本件補修等を独自に行うことを容認するとは考え難い

3 また、被控訴人が管理行為として本件マンションの補修等を行う場合には、補修等に係る技術を有する専門業者に依頼するのが通常であり、偶然にも区分所有者の中にそのような専門業者がいる場合であって、他の区分所有者も当該業者に依頼することに異論がないような特段の事情でもない限り、本件マンションの区分所有者個人に対して費用を要する工事を依頼することも想定し難いし、本件においてそのような特段の事情があることを示す証拠は存在しない。
また、控訴人は、平成21年8月にも、事前に被控訴人に対する通知をせずに本件マンションの植栽の剪定を行い、控訴人が警察を呼ぶ事態に至っているほか、控訴人と被控訴人の理事会との間においては、本件補修等の以前から、管理費の支払等をめぐって軋轢が生じていたことからすると、現実に被控訴人が控訴人に何らかの事務を依頼したり、控訴人からの何らかの協力の申し出を容認したりするとはおよそ考えられないというほかない。
以上によると、控訴人が本件補修等を行うことが被控訴人の意思に反することは明らかであったというべきである。

裁判所がどのような事情を考慮して、管理組合の意思に反すると認定したかについて確認しておきましょう。

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管理会社等との紛争20 管理組合に対する排水管の更新工事費用の請求が棄却された理由とは?(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、管理組合に対する排水管の更新工事費用の請求が棄却された理由とは?(東京簡判令和元年5月22日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

原告は、本件マンション207号室の階下である1階駐車場の天井に配された共用部分である排水管の更新工事を訴外会社に実施させたところ、被告が共用部分であるにもかかわらず、その代金の支払をせず、原告がこれを支払ったことにより、原告が、被告に対し、不当利得返還請求、弁護士費用及び遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 本件排水管は、本件居室の区分所有者である訴外Cが排他的に使用することができる構造になっており、訴外Cが専用使用権を有していることが認められる。
本件マンションの管理規約第21条2項及び第2条8号によると、本件排水管は本件居室の区分所有者が専用使用権を有するというべきである。
そうすると、この専用使用部分の通常の使用に伴う管理費用は、本件居室の区分所有者が負担すべきと解される。
したがって、原告が行ったとする本件工事費用は、本件居室の区分所有者が負担すべきであり、被告には負担義務はない。

2 原告は、本件工事について、被告の理事又は関係者の事実上の承認を得て行われたと主張するが、これを認めるに足りる証拠はなく、被告の理事会においても本件工事を承認した事実は認められない。

排水管等に関する工事費用の負担が、管理組合か各居室の区分所有者かという争いは、まさに当該区分所有者が専用使用権を有するか否かがカギとなります。

物理的状況、管理規約での規定内容等から判断することになります。

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管理会社等との紛争19 マンション駐車場について瑕疵担保責任を理由とする損害賠償請求が除斥期間の経過を理由に棄却された事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、マンション駐車場について瑕疵担保責任を理由とする損害賠償請求が除斥期間の経過を理由に棄却された事案(東京地判令和元年8月30日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、本件マンション及びその敷地並びに付属建物の管理を目的とする団地管理組合法人である原告が、本件マンションの団地共用部分である本件駐車場に隠れた瑕疵があったことにより修補費用相当額の損害を被ったと主張して、本件マンションの共同売主の一社である被告に対し、民法570条に基づき、上記修補費用相当額の一部である1000万円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 瑕疵担保責任を理由とする損害賠償請求権を保存するには、その除斥期間内に、裁判上の権利行使をするまでの必要はないものの、売主の担保責任を問う意思を裁判外で明確に告げることを要するところ、原告は、本件売買契約上の約定除斥期間内(本件駐車場それ自体の引渡しを基準とすれば平成19年8月まで、本件駐車場を含む売買物件全ての引渡しを基準としても平成20年3月11日まで)に被告に売主の担保責任を問う意思を裁判外で明確に告げたことはなかった。
仮に(本件売買契約の定めにかかわらず)民法所定の除斥期間の規定(事実を知った時から1年以内。民法570条、566条3項)の適用が否定されないと解する余地があるとしても、原告は、平成22年頃に、仮にそうでないとしても、遅くとも平成26年、平成27年にはその主張に係る本件駐車場の瑕疵の存在を知り、被告に対し瑕疵担保責任を追及し得る程度に確実な事実関係を認識したのに、上記除斥期間内に被告に売主の担保責任を問う意思を裁判外で明確に告げたこともなかった
したがって、原告主張の瑕疵担保責任を理由とする損害賠償請求権は除斥期間の経過により消滅したというべきである。

通常、本件同様、売買契約書には、瑕疵担保責任の除斥期間について、例えば、引渡しから2年間等と規定されています。

上記「除斥期間内に、裁判上の権利行使をするまでの必要はないものの、売主の担保責任を問う意思を裁判外で明確に告げることを要する」という考え方をしっかり押さえておきましょう。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。

管理会社等との紛争18 管理組合法人に対する駐車場契約者以外の者の立入禁止請求が棄却された事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、管理組合法人に対する駐車場契約者以外の者の立入禁止請求が棄却された事案(東京地判令和元年9月5日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

1 立入禁止請求
ア 被告は、本件マンションの管理組合法人として、本件駐車場の所在する別紙添付図面のオレンジ色で囲んだ部分に、本件駐車場の契約者以外の者をして立ち入らせてはならない義務を負う。
イ よって、原告は、被告に対し、本件駐車場にその契約者以外の者の立入りの禁止を求める。

2 義務確認請求
ア 前記1アと同じ。
イ 原告は、長年にわたり、被告に対し、本件駐車場への第三者の立入りを禁止するよう善処を求めてきた。
ウ 本件駐車場内において事故が発生した場合には、原告は施設占有者ないし所有者として民法717条によりその責任を負うことになりかねない。
エ よって、原告は、被告に対し、本件訴えを提起した平成29年10月13日から本判決確定の日までの間に、本件駐車場内においてその契約者以外の者が事故に遭遇した場合、被告の責任においてこれを解決する義務があることの確認を求める。

3 費用弁償金請求
ア 前記1アと同じ。
イ 被告が前記1アの義務に違反したために、平成21年3月1日から本判決確定の日までの間、第三者が本件駐車場へ立ち入っており、原告は、本件駐車場の維持管理について、年間379万1549円の費用を負担している。
ウ よって、原告は、被告に対し、前記イの義務違反に係る不法行為に基づき、又は民法212条の類推適用により、平成21年3月1日から本判決確定の日まで1箇月当たり5万円の割合による費用相当額の損害賠償金の支払を求める。

【裁判所の判断】

1 原告の義務確認の訴えを却下する。

 原告のその余の請求をいずれも棄却する。

【判例のポイント】

1 原告は、被告の責任において本件駐車場内の事故を解決する義務がある旨を主張するが、「事故」や「解決」の意味が多義的であって、上記義務の内容は不明確といわざるを得ない。
そして、そもそも上記の確認の対象は、現在の法律関係ではなく、過去の一時点における法律関係であって、その確認を求める訴えにつき原則として確認の利益を認めることができないものであるところ、上記訴えにつき確認の利益を認めるべき特段の事情は見当たらない。
これらの点を措くとしても、本件駐車場内の事故が解決されることは、原告にとって事実上の利益にすぎず、上記事故が解決されなかったことによって、直ちに原告の法律上保護すべき権利利益が侵害されることにならないから、上記事故が解決しないことが被告の上記義務違反によるものであったとみる余地があると仮定しても、これが原告に対する不法行為に該当するものであるとして、被告が原告に対して損害賠償責任を負うことになるものではない
そして、確認の利益は、確認判決を求める法律上の利益であるところ、被告の責任において本件駐車場内の事故を解決する義務があることを確認する判決の効力は、上記義務に関する法律上の紛争の解決に資するものとはいえないから、原告に上記判決を求める法律上の利益はないというべきである。
したがって、原告が被告に対して本件駐車場内においてその契約者以外の者が事故に遭遇する場合に被告の責任においてこれを解決する義務があることの確認を求める訴えは、確認の利益を欠くものとして不適法であるというべきである。

2 本件駐車場の契約者以外の者は、本件マンション区分所有者又は占有者に限られない上、本件駐車場の契約者以外の者に対して本件駐車場への立入りを禁止する旨の規約が本件マンションの管理規約にあるとは認められないのであるから、被告は、本件マンションの管理組合法人であることによって、本件駐車場の所在する別紙添付図面のオレンジ色で囲んだ部分に立ち入った本件駐車場の契約者以外の者の行動を制御することができない
そして、原告が長年にわたり被告に対して本件駐車場への第三者の立入りを禁止するよう善処を求めてきたことを前提にしても、被告が原告に対し本件駐車場への第三者の立入りを禁止することを約束した旨の主張も立証もなく、被告が原告に対して前記の義務を負う法的根拠は見当たらない
したがって、その余の請求に係る原告の主張は、いずれも前提を欠き、採用することができない。

上記判例のポイント1のような確認請求では、確認の利益がないと判断され、訴えが却下されてしまいます。

確認を求める訴えを提起する場合は、確認の対象をどのように設定するかを慎重に考える必要があります。

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管理会社等との紛争17 各居住者に対するアンケートについての管理会社の妨害行為が不法行為に当たらないとされた事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、各居住者に対するアンケートについての管理会社の妨害行為が不法行為に当たらないとされた事案(東京地判令和元年10月3日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、原告らが当時居住していた集合住宅を一棟買いするために各居住者に対してアンケートを配布した際、被告が文書を掲示して同アンケートを妨害したことが、原告らに対する不法行為に当たるとして、原告らが被告に対し、不法行為に基づき、アンケートに対する妨害の禁止並びに損害賠償金+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 本件アンケートの内容からすれば、本件アンケートは、一般人の通常の注意と読み方を基準にした場合、国土交通省が居住者の同意を条件に原告X1による本件建物の購入に同意した旨が記載されていると認められる。しかしながら、本件建物の区分所有者であった公団は売却可能な賃貸住宅は居住者の同意を得て棟単位で売却に努めるとの方針が示されていたことや、原告X1は国土交通省の担当者に対し、本件建物1棟の価格を尋ね、居住者の同意を得て一棟買いの交渉に入る旨を述べ、さらには担当者との面会を求めたことが認められる一方で、そもそも国は本件建物の所有者ではないことも認められる。
そして、本件において国土交通省側が原告X1の上記申入れ等に対して何らかの返答をした事実を認めるに足りる証拠はない。
これらからすれば、国土交通省が居住者の同意を条件に原告X1による本件建物の購入に同意したという事実は存在しないものと認めざるを得ない。
そして、被告は機構から本件建物の管理業務を受託していることが認められる上、一般に賃借人にとって賃貸人たる所有者が変更になるか否かは重要な関心事項であるから、被告が本件文書の掲示によって本件アンケートに記載された事実は存在しない旨を各賃借人に周知した行為は、賃借人に誤解を与えないための管理者として正当な行為であると認められる。
そうすると、たとえ被告の本件文書の掲示により、原告が204戸中わずか9戸の住人からしか本件アンケートの回収ができなくなる等の不利益を被ったとしても、被告が本件文書を掲示した行為は、原告らに対する不法行為を構成しないものというべきである。

事案が少しわかりにくいと思いますが、事実と相違する内容のアンケート配布に対して管理会社が各居住者に対して周知活動を行ったという事案です。

裁判所は、管理会社の行為を正当な行為と認定し、原告の請求を棄却しました。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。

管理会社等との紛争16 マンションの建築工事を受注した建設会社の執行役員らが管理組合に対して行った住民集会の様子を撮影した動画の削除請求が棄却された事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、マンションの建築工事を受注した建設会社の執行役員らの管理組合に対する住民集会の様子を撮影した動画の削除請求が棄却された事案(東京地判令和元年12月19日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

原告らは、マンション管理組合である被告の構成員らが居住するマンションの建築工事を受注した建設会社の執行役員等であるが、被告は、当該工事に関する謝罪等を行うために開催された住民集会における原告らの様子を動画撮影し、その一部をインターネット上の動画投稿サイトに投稿して公開したほか、撮影した動画データをマンションの住民が閲覧可能なクラウドサービスに保存した。

本件は、原告らが、被告に対し、上記動画の撮影及びインターネット上での公開は原告らの肖像権を侵害し、不法行為に当たるとして、慰謝料として各100万円+遅延損害金の支払を求めるとともに、肖像権に基づく差止請求として、投稿動画のインターネット上からの削除、撮影動画のクラウドサービス上からの削除及びこれらのデータの廃棄を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 人は、みだりに自己の容ぼう等を撮影されないということについて法律上保護されるべき人格的利益を有し、ある者の容ぼう等をその承諾なく撮影することが不法行為法上違法となるかどうかは、被撮影者の社会的地位、撮影された被撮影者の活動内容、撮影の場所、撮影の目的、撮影の態様、撮影の必要性等を総合考慮して、被撮影者の上記人格的利益の侵害が社会生活上受忍の限度を超えるものといえるかどうかを判断して決すべきである(平成17年最高裁判例)。
また、人は、自己の容ぼう等を撮影された動画をみだりに公表されない人格的利益も有すると解するのが相当であり(同判例参照)、人の容ぼう等が撮影された動画をその承諾なく公表することが不法行為法上違法となるかどうかについても、上記同様に総合考慮して、被撮影者の人格的利益の侵害が社会生活上受忍の限度を超えるものといえるかどうかを判断して決するのが相当である。

2 本件集会は、本件マンションの集会室において、b社及びc社が本件マンションの雨水排水設備やくい施工の問題に関して住民に謝罪し、説明を行うために開催されたものである。原告らは、そのような集会に、b社の代表取締役に代わり、同社を代表する立場として参加し、その立場において、本件マンションの住民らに対して、上記各問題に関する謝罪や説明を行っている。
被告は、その際の様子を、集会に参加できない他の住民が後日に集会の状況を確認できるようにし、また、原告らの発言の内容を正確に記録するために、原告らの目の前で、その冒頭から集会の様子を撮影したものである。
以上のような本件集会の内容、目的や開催場所、原告らがこれに参加した経緯及び立場、撮影の態様及びその目的、必要性に照らすと、本件動画には原告らが立ったまま謝罪し、住民らから糾弾される様子が映っている部分が存在しているとはいえ、撮影が原告らの承諾なく行われたか否かにかかわらず、これにより原告らの人格的利益が社会生活上の受忍限度を超えて侵害されたと評価すべきものであるとは認め難い

3 また、本件投稿動画は、本件集会において、原告らが、b社を代表する立場として、くい施工に関する調査をする意向を示したにもかかわらず、後日になってこれを翻し、一向に調査を実施しないb社の法人としての姿勢を社会的に非難するために投稿されたものである。くい施工の調査は本件マンションの建物自体の安全性に関わる重大な事柄であることなどからすると、このような投稿目的には正当性が認められるというべきであるし、本件投稿動画は、前記の場面を中心に編集がされた長さ約3分30秒程度のものであり、当該目的を達するために必要な限度での公表にとどまるということができる。
適宜テロップを付したり、b社がくい施工の調査を拒否したことが記載された書面を示す映像を差し込むなどして、上記の投稿目的や動画の趣旨が明確となるような編集も施されている。
これらの事情や、上記に検討したところを併せ考慮すると、本件投稿動画の投稿による動画の公表についても、原告らの人格的利益の侵害の程度は社会生活上の受忍限度を超えているということはできない

4 本件動画のデータをクラウド上に保存することは、本件マンションの住民がいつでも閲覧できる状態にするものに過ぎず、以上に照らし、これが違法性を帯びることはない。

まずは、肖像権侵害に関する最高裁判決の規範を理解しておきましょう(上記判例のポイント1参照)。

その上で、本件におけるあてはめ部分を読むことによって、裁判所の判断方法を把握すると、実務で役に立つと思います。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。

管理会社等との紛争15 管理組合法人の代表者が総会決議を経ずに不動産売買契約を締結した行為につき、表見代理は成立せず無権代理により無効とされた事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、管理組合法人の代表者が総会決議を経ずに不動産売買契約を締結した行為につき、表見代理は成立せず無権代理により無効とされた事案(東京地判令和2年1月30日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、原告が被告(管理組合)に対し、売買契約について理由なく残代金支払期限を徒過したとして、違約金(1996万円)+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 被告は、本件マンション管理組合法人であり、その目的及び業務は、本件マンション並びにその敷地及び附属施設の管理とされており、不動産の購入は被告の業務に入っているとは解し難い。
したがって、被告代表者が業務を統括する権限を有しているといっても、本件駐車場の売買契約の締結は、被告の業務の範囲外であることは明らかであるから、被告代表者が本件契約を締結するには個別に理事会や総会の決議による授権が必要である。
また、被告の現在の管理費の積立金は9000万円余りであるところ、本件契約は、9980万円もの極めて高額な売買契約であるから、被告の業務に関する「重要事項」として、総会決議事項であると解される(本件規約52条16号)。
本件についてみるに、被告の理事会や総会において本件契約の締結について承認決議がなされたと認めるに足りる証拠はなく、被告代表者は、理事会や総会の決議を経ずに、本件契約を締結していることからすれば、本件契約は、権限を有しない被告代表者により締結されたものとして、無権代理により本件契約は無効である。

2 この点、原告は、本件契約締結の際、被告代表者が、被告の理事会の承認を得ているかどうか確認されたのに対し、絶対に大丈夫ですと回答し、理事会の承認を得ていると回答していたと主張し、原告従業員のDもその旨述べる。
しかしながら、被告代表者は、本件契約締結の際、応対したのは原告代表者であって、Dはその場にいたものの、特にやり取りはしていなかったと述べる。
また,被告代表者は,原告代表者との間で,被告の理事会や総会の承認があるかの確認をされたこともないと述べている。
 また、原告は、被告の法人理事を務めており、本件契約の締結について理事会や総会が開催されていないことも知り得る立場にあった。したがって、仮に被告代表者から、本件契約の締結について、理事会や総会の決議があると言われても、かかる決議の存否については容易に知り得る立場にあったといえる。
特に決議の有無については、議事録の提出を求めるなどして調査することも容易であったといえる。
この点、原告は、被告と対立していたため、被告の理事会や総会への出席を控えていたとも主張する。しかし、理事会決議、総会決議の有無は、理事会、総会への出席の有無とは関係なく、議事録の有無などを調べれば容易に判明することである。特に原告は、宅地建物取引業者であるから、本件契約の締結にあたっては高度の注意義務が課されているといえ、本件契約の締結にあたり、被告の理事会決議や総会決議の有無について、被告の理事長の発言を漫然と信じたということであれば、過失があるといわざるを得ない。
したがって、被告代表者が本件契約を締結するについて権限があると信ずべき正当な理由が原告にあったとは認められず、表見代理は成立しない

管理組合法人の代表者による無権代理行為について表見代理の成立が否定された事案です。

裁判所が、いかなる事情に着目して「被告代表者が本件契約を締結するについて権限があると信ずべき正当な理由」の有無を認定しているかを押さえておくといいでしょう。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。