解雇327 コミュニケーション能力不足を理由とする解雇(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、コミュニケーション能力不足等を理由とした試用期間満了時の解雇が有効とされた裁判例を見ていきましょう。

学校法人A学園(試用期間満了)事件(那覇地裁令和元年11月18日・労経速2407号3頁)

【事案の概要】

本件は、Xが、学校法人であるY社に日本語教師として採用されたところ、延長後の試用期間満了時に、主としてコミュニケーション能力の不備を理由に解雇されたが、債権者は必要なコミュニケーションをとり、また、このような指導はほとんど受けていなかったのであるから、同解雇には客観的合理性がなく、社会通念上相当ともいえないから無効であるとして、Xが、Y社に対して、労働契約上の権利を有する地位にあることの仮の確認並びに解雇された平成30年12月から令和元年7月分の賃金及び同年8月分以降、本案判決確定の日までの賃金の仮払いを求めた事案である。

【裁判所の判断】

本件申立てをいずれも却下する。

【判例のポイント】

1 ・・・上記の一連のやり取りだけでも、Z1及びZ2副学長が様々な角度からXのコミュニケーション上の問題点を伝えようとしているにもかかわらず、Xは自身の問題点を省みる姿勢に乏しく、話し手の意図を正しく受け止められなかったり、言葉尻を捉えた反論に終始して論破しようとしたり、議論の前提を踏まえた会話ができなかったり、自身の意見に固執する姿勢が見て取れる。このようなXの応答にZ1とZ1副学長は対応に苦慮していたが、Xはそのことすら認識していたか疑わしい
Y社は、本件会議の後、Xがミーティングの場で最低限の発言すらしようとせず、素っ気ない態度に終始したと主張しているが、前記のとおりのXのコミュニケーション上の問題点に加え、Xは、日本語ランチテーブルのミーティングで反対意見を述べたこと自体がZ1及びZ2副学長によって失礼と取られたと憤慨し、本件準備書面で、意見を述べたこと自体が失礼と扱われて不当であり、このため発言を控えるようにしていたと主張していることからすると(なお、Z1及びZ2副学長は、発言内容やその伝え方を問題にしているのであって、反対意見を述べること自体を咎めているわけではなく、むしろ、積極的に意見を交わすべきと伝えている。)、Y社の主張に近い状況にあったことが窺える。このような状況では、XがZ1に友好的な対応をとるとは考えにくいから、Xは、ミーティング以外でもZ1やXと非友好的な同僚とは積極的なコミュニケーションをせず、むしろ、自身が許容されると考える中で最低限度のコミュニケーションに終始したことが推認できる

2 Xのコミュニケーション及び上司や同僚との関係構築に向けた姿勢には数々の問題点があり、上記のとおり必要なコミュニケーションがとれず、むしろ試用期間の延長によって悪化したことが認められる一般的に本採用を目指して必要以上に努力し、同僚に気を遣いがちな試用期間ですら、Xは上司や同僚との間で種々の軋轢を生じさせてしまったといえる。これらの問題点は、いずれも試用期間を経て初めて発覚し得るものであるといえ、上記の経過によれば、Xが上司からの指導等によって上記の問題点を改善できる見込みは薄い。Y社が雇用を継続していれば、Xのコミュニケーション上の問題によって更に職場環境が悪化していくことが容易に想像できることからすると、本件の雇用が2年間の期間限定であることを考慮しても、債務者が試用期間終了をもって解雇を選択したこともやむを得ないといえる。

解雇を過度に制限的に考える裁判官に当たると、ほとんど非現実的な解雇回避努力を求められることがありますが、今回はそうではなかったようです。

実務においては、日頃のやりとりをいかに証拠化できるかが勝敗を大きく左右します。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。