Daily Archives: 2011年10月31日

有期労働契約24(トーホーサッシ事件)

おはようございます。

さて、今日は、60歳定年再雇用契約後の雇止めに関する裁判例を見てみましょう。

トーホーサッシ事件(福岡地裁平成23年7月13日・労判1031号5頁)

【事案の概要】

Y社は、サッシなどの製造販売を営む、従業員数約40人の会社である。

Xは、平成12年8月に51歳でY社に入社し、平成21年9月に定年を迎えたものである。

XとY社は、定年後、雇用期間を6か月ごとの更新とし、雇用継続は最大65歳の誕生日の前日までとする旨の記載がなされた確認書を作成した。

Y社は、平成22年8月、Xに対し、同年9月をもって、本件雇用契約を更新しない旨通知した。

Xは、本件雇止めは無効であると主張し争った。

【裁判所の判断】

本件雇止めは無効

【判例のポイント】

1 Xには、定年を迎えた後もY社での就労が認められ、少なくとも64歳に達するまで雇用が継続されるとの合理的期待があったものということができる。したがって、かかるXは、自らの就労能力が衰えるなどそれまでと事情が大きく変化しない限り、再雇用が続けられる期待を持つというべきであり、本件雇止めについては、労働契約法16条の解雇権濫用法理が類推適用されると解することが相当である。

2 いわゆる従業員代表との間の労使協定は、法律上明文がある場合に労働基準法等の法律上の規制を免除する効果を及ぼすものであるが、他の労働者に対して規範的効力が及ぶものではなく、そのような効力までは認めることは困難である

3 Xの陳述どおり、本件雇用継続制度にかかる協定書は公表されておらず、Xは平成22年8月の団体交渉で初めて知ったことを、一応認めることができる。
そうすると、いかに他の従業員との関係で統一的な運用をするためとはいえ、肝心の本件雇用継続制度を周知しないままにその基準を雇止めの要素として考慮することは相当とはいい難い。
したがって、本件基準を満たしているか否かを、本件雇止めが合理的理由を備えるか否かの判断資料とすることは相当ではなく、この点についてのY社の主張を採用することは困難である。

4 ・・・以上によれば、Y社の主張する事実を総合考慮したとしても、少なくともXの就労状況がこれまでに比べて大きく衰えたことを認めるに足りる的確な疎明資料はなく、また、Y社の経営状況がこれまでと比して大きく変動し、ワークシェアリング等の解雇回避努力を行っても、Xの雇用を継続することができなかったとまでは認め難いから、本件雇止めに合理的な理由があるとは認められない

賃金仮払いの仮処分が認められた事案です。

地位確認の仮処分は、従来通り、必要性を否定されています。

上記判例のポイント4ですが、継続雇用した従業員を雇止めする場合、ワークシェアリングまで検討し、解雇回避努力を尽くさなければならないとされています。

もちろん、本件では、Xに解雇事由がないため、整理解雇同様の要件を要求しているわけですが。

嘱託社員であろうとも、整理解雇をするには、厳しい要件を満たす必要があるわけです。

有期労働契約は、雇止め、期間途中での解雇などで対応を誤ると敗訴リスクが高まります。

事前に顧問弁護士に相談の上、慎重に対応しましょう。