労災49(大庄ほか事件)

おはようございます また1週間はじまりました。 今週もがんばっていきましょう!!

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今日は、午前中、富士の裁判所で労働事件の裁判です。

午後は、静岡に戻り、裁判が1件、新規相談が1件、医療事故の打合せが1件入っています。

夜は、刑事裁判の打合せをした後、後輩弁護士A君と食事に行きます

今日も一日がんばります!!
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さて、今日は、長時間労働と労災に関する裁判例を見てみましょう。

大庄ほか事件(大阪高裁平成23年5月25日・労判1033号24頁)

【事案の概要】

Y社は、大衆割烹店を全国展開している会社である。

Xは、大学卒業後、Y社に入社し、大衆割烹店で調理関係の業務に従事していたが、入社約4か月後に急性左心機能不全により死亡した(死亡当時24歳)。

Xの父母が、Xの死亡原因はY社での長時間労働にあると主張して、Y社に対しては不法行為または債務不履行(安全配慮義務違反)に基づき、また、Y社の取締役であるZら4名に対しては不法行為または会社法429条1項に基づき、損害賠償を請求した。

Y社側は、第1審判決を不服として、控訴した。

【裁判所の判断】

控訴棄却

【判例のポイント】

1 取締役は、会社に対する善管注意義務として、会社が使用者としての安全配慮義務に反して、労働者の生命、健康を損なう事態を招くことのないよう注意する義務を負い、これを懈怠して労働者に損害を与えた場合には会社法429条1項の責任を負うと解するのが相当である

2 勤労意欲の強い社員に対して、その社員の個人的利害を説く方法が相当であるとは考えられない。会社として早朝勤務を禁じるのであれば、その旨直截に伝える方法を採るべきであったのに、これを採らなかったのは、Y社において各現場店舗の責任者である店長や調理長に過重労働の問題性を認識させる措置がとられておらず、店長や調理長にも、その認識が乏しかったためであると考えられる。

3 当裁判所は、Y社が入社直後の健康診断を実施していなかったことが安全配慮義務違反であると判断するものではない。しかしながら、健康診断により、外見のみからではわからない社員の健康に関する何らかの問題徴候が発見されることもあり、それが疾病の発生にまで至ることを避けるために業務上の配慮を行う必要がある場合もあるのである。新入社員の健康診断は、必ずしも一斉に行わねばならないものではなく、適宜の方法で行うことが可能なのであるから、Y社が入社時の健康診断を自ら就業規則に定めながらこれを行わなかったことを、Y社の社員の健康に関する安全配慮義務への視点の弱さを表す事実の一つとして指摘することは不当ではない

4 当裁判所は、Y社の安全配慮義務違反の内容として給与体系や三六協定の状況のみを取り上げているものではなく、Y社の労働者の至高の利益である生命・健康の重大さに鑑みて、これにより高い価値を置くべきであると考慮するものであって、Y社において現実に全社的かつ恒常的に存在していた社員の長時間労働について、これを抑制する措置がとられていなかったことをもって安全配慮義務違反と判断しており、Y社取締役らの責任についても、現実に従業員の多数が長時間労働に従事していることを認識していたかあるいは極めて容易に認識し得たにもかかわらず、Y社にこれを放置させ是正させるための措置を取らせていなかったことをもって善管注意義務違反があると判断するものであるから、Y社取締役らの責任を否定する控訴人らの主張は失当である。なお、不法行為責任についても同断である

5 控訴人Aは管理本部長、控訴人Bは店舗本部長、控訴人Cは支社長であって、業務執行全般を行う代表取締役ではないものの、Xの勤務実態を容易に認識しうる立場にあるのであるから、Y社の労働者の極めて重大な法益である生命・健康を損なうことがないような体制を構築し、長時間勤務による過重労働を抑制する措置を採る義務があることは明らかであり、この点の義務懈怠において悪意又は重過失が認められる。そして、控訴人Dは代表取締役であり、自ら業務執行全般を担当する権限がある上、仮に過重労働の抑制等の事項については他の控訴人らに任せていたとしても、それによって自らの注意義務を免れることができないことは明らかである(最高裁昭和44年11月26日大法廷判決)。また、人件費が営業費用の大きな部分を占める外食産業においては、会社で稼動する労働者をいかに有効に活用し、その持てる力を最大限に引き出していくかという点が経営における最大の関心事の一つになっていると考えられるところ、自社の労働者の勤務実態について控訴人取締役らが極めて深い関心を寄せるであろうことは当然のことであって、責任者のある誠実な経営者であれば自社の労働者の至高の法益である生命・健康を損なうことがないような体制を構築し、長時間勤務による過重労働を抑制する措置を採る義務があることは自明であり、この点の義務懈怠によって不幸にも労働者が死に至った場合においては悪意又は重過失が認められるのはやむを得ないところである。なお、不法行為責任についても同断である。

この事件の第1審判決については、以前、ブログで取り上げました。 こちらをどうぞ。

大阪高裁は、Y社側の控訴を棄却しました。

金額が金額ですし、役員の責任も認められていますので、会社側は大変です。

会社を経営している社長のみなさん、同じ過ちを繰り返さない