Daily Archives: 2012年12月21日

解雇89(ジャストリース事件)

おはようございます。

さて、今日は、会社解散に伴う元代表取締役に対する解雇に関する裁判例を見てみましょう。

ジャストリース事件(東京地裁平成24年5月25日・労判1056号41頁)

【事案の概要】

Y社は、リース・割賦販売事業、債券売買等を事業内容とする会社である。

Xは、18年12月、Y社の取締役に就任し、20年2月、同代表取締役に就任した。

Y社は、22年2月、解散し、同年4月、特別清算が開始された。

Xは、解散決議日に、Y社の代表取締役を退任し、22年3月、Y社との間で「雇用契約書」と題する書面を取り交わし、Y社の「本社 管理職」の地位に就き、従前と同様に、部下3名のチームリーダーとして、途上与信管理、管理債権処理(債権回収を含む)等の業務に従事した。

その後、Y社は、Xに対し、就業規則45条1項4号(「会社の経営戦略あるいは組織の変更に伴い、社員の職務の必要性がなくなったと会社が判断したとき」)および5号(「前各号に準ずる事由のあるとき」)に基づき、解雇する旨の意思表示をした。

【裁判所の判断】

解雇は無効

不当解雇を理由とする損害賠償請求は棄却

【判例のポイント】

1 労基法9条の「労働者」とは、「事業に使用される者で、賃金を支払われる者」、すなわち他人(使用者)のために労務を提供しその対価たる賃金等を得て生活する者をいい、これに該当するためには、法的従属関係すなわち労務提供全般にわたり使用者の一般的な指揮監督を受ける関係(法的従属性)が存在していることが必要である。

2 ・・・以上によると本件契約書は、Xが、平成22年3月1日から本社において、所定の休日を除いた就労日に、所定の就労時間(午前9時15分から午後6時)、管理職としての業務に従事することを定め、これに対しY社が所定の支給日に月次給月額87万5000円をXに支払うことを約した契約書面であると認められ、そうだとすると本件契約はまさに「労働契約」そのものであって、特段の事情が認められない限り、本件契約の一方当事者であるXは、使用者たるY社のために労務を提供し、その対価たる賃金等を得て生活する者、すなわち労基法上の「労働者」に該当するものというべきである

3 整理解雇は、労働者に何ら落ち度がないにもかかわらず、使用者側の経済的な理由により、一方的に労働者の生活手段を奪い、あるいは従来より不利な労働条件による他企業への転職を余儀なくさせるものであって、これを無制限に認めたのでは著しく信義に反する結果を招きかねないばかりか、労働者の生活に与える影響は深刻である。このような整理解雇の特性等に照らすと使用者は、いわゆる比例原則に則り、雇用契約上、他の解雇にもまして労働者の雇用の維持に努め、可能な限り、その不利益を防止すべき義務を負っているものと解され、そうだとすると、その効力の判定は、(1)当該整理解雇(人員整理)が経営不振などによる企業経営上の十分な必要性に基づくか、ないしはやむを得ない措置と認められるか否か(要素1=整理解雇の必要性)、(2)使用者は人員の整理という目的を達成するため整理解雇を行う以前に解雇よりも不利益性の少なく、かつ客観的に期待可能な措置を行っているか(要素2=解雇回避努力義務の履行)及び(3)被解雇者の選定が相当かつ合理的な方法により行われているか(要素3=被解雇者選定の合理性)という3要素を総合考慮の上、解雇に至るのもやむを得ない客観的かつ合理的な理由があるか否かという観点からこれを決すべきものと解するのが相当である(なお当該整理解雇がその手続上信義に反するような方法等により実行され、労契法16条の「社会通念上相当であると認められない場合」に該当するときは解雇権を濫用したものとして、当該整理解雇の効力は否定されるものと解されるが、これらは整理解雇の効力の発生を妨げる事実(再抗弁)であって、その事由の有無は、上記就業規則45条3号所定の解雇事由が認められた上で検討されるべきものである。)。

4 ・・・確かにY社は、本件特別清算の開始決定時においては負債超過の状態にあった。しかし、本件解雇の直前のである平成23年2月末までには債権の回収が順調に進み、負債超過の状態から脱却に成功し、その後は資産超過の状態が継続していることが認められる。そうだとすると本件特別清算の予定期間が平成24年7月であることを考慮したとしても、本件解雇の時点(平成23年3月31日)では既に僅か4名しかいないY社従業員について人員整理を断行する必要性は既に消滅しているものと認めるのが相当である。してみると本件特別清算業務を円滑に遂行するために人員整理という最終的な手段を採用することが、客観的にみて合理性を有するものとはいい難く、本件解雇(整理解雇)は、その必要性に欠けるものといわざるを得ない。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。