管理監督者31(セントラルスポーツ事件)

おはようございます。

さて、今日は、スポーツクラブ運営会社のエリアディレクターと管理監督者性に関する裁判例を見てみましょう。

セントラルスポーツ事件(京都地裁平成24年4月17日・労判1058号69頁)

【事案の概要】

Y社は、スポーツクラブの運営等を業とする会社である。

Xは、Y社に従業員として採用され、昭和56年からY社での勤務を開始し、平成15年10月からエリアディレクターに昇格したが、21年10月、副店長に降格した。

Xは、Y社に対し、平成19年11月分から21年9月分までの時間外手当等を請求した。

【裁判所の判断】

管理監督者性を肯定

【判例のポイント】

1 管理監督者とは、労働条件の決定その他労務管理につき経営者と一体的な立場にあるものをいい、名称にとらわれず、実態に即して判断すべきである。具体的には、(1)職務内容が少なくとも、ある部門全体の統括的な立場にあること、(2)部下に対する労務管理等の決定権等につき、一定の裁量権を有しており、部下に対する人事考課、機密事項に接していること、(3)管理職手当等特別手当が支給され、待遇において時間外手当が支給されないことを十分に補っていること、(4)自己の出退勤について自ら決定し得る権限があること、以上の要件を満たすことを要すると解すべきである

2 Xは、人事、人事考課、昇格、異動等について、最終決裁権限がないことを理由に管理監督者でないと主張するが、Xの主張するように解すると、通常の会社組織においては、人事部長や役員以外の者は、到底、管理監督者にはなり得ないこととなる労働基準法が管理監督者を設けた趣旨は、管理監督者は、その職務の性質上、雇用主と一体となり、あるいはその意を体して、その権限の一部を行使するため、自らの労働時間を含めた労働条件の決定等について相当程度の裁量権が与えられ、労働時間規制になじまないからであることからすると、必ずしも最終決定権限は必要ではないと解するのが相当である。

3 Xは、営業部長より、前日の業務について、翌日の午前10時頃に定時連絡をすることを指示されていること、また、マネージャー及びエリアディレクターはお客様を出迎えるために各スポーツクラブの開館時間頃には出勤しなければならないと指示していたことから事実上、出退勤時間が拘束されていたと主張する。
しかしながら、Xは、自己の勤務時間については、人事部に勤務状況表を提出するために部下であるCの承認を受ける以外、誰からも管理を受けておらず、実際にXが遅刻、早退、欠勤によって賃金が控除されたことがないことからすると、営業部長の発言の趣旨は、エリアディレクターとしてエリアを統括する以上、エリアの状況を当然に日々営業部長に報告することを指示したにすぎず、出勤時間を拘束する趣旨ではなく、また、開館時間についてもXは必ずしも開館時間に出勤していたとは認め難いことからすると、これをもって事実上出勤時間が拘束されたとはいえない
したがって、Xは出退勤の時間を拘束されていたものとは認められず、Xは自己の裁量で自由に勤務していたものと認められる。

4 Xが管理監督者であっても、Y社は深夜手当の支払は免れない。

5 以上のとおり、Xは管理監督者に該当するのであるから、Y社には故意に時間外手当の支払を免れようとした悪質性はなかったものと認められる。
したがって、付加金の支払を命じることは相当でない。

珍しく管理監督者性が肯定されてました。

エリアディレクターだから、というような形式的な理由ではありませんので、エリアディレクターでも管理監督者と認められない場合も当然あります。

上記判例のポイント2、3は参考にしてください。

人事に関し最終決定権限までは必要がないという判断です。 

原告側代理人がそう言いたくなるくらい管理監督者性の基準は厳しいのです。

管理監督者性に関する対応については、会社に対するインパクトが大きいため、必ず顧問弁護士に相談しながら進めることをおすすめいたします。