Daily Archives: 2013年4月22日

解雇104(N社事件)

おはようございます。  今週も一週間がんばりましょう!!

さて、今日は、競業会社と隠れて取引を行ったことを理由とする懲戒解雇に関する裁判例を見てみましょう。

N社事件(東京地裁平成24年10月11日・労経速2166号3頁)

【事案の概要】

本件は、Xが、Y社に対し、平成17年12月5日、同月19日をもって退職する旨の退職届を提出したにもかかわらず、Y社から同月9日付けで懲戒解雇されたことから、これが無効であり、退職届に基づく退職が有効であると主張して、(1)Y社の退職金規程に基づく基本退職金1028万円余、役付給付金437万円余、功労加給金42万円及び特別加給金492万円余の支払と、これらに対する遅延利息の支払を求めるとともに、(2)Y社が軽率にXの横領行為を理由とする無効な懲戒解雇をしたり、ドバイ首長国の警察署に対して上記横領行為の件を告訴してXに同国の刑事裁判を受けることを余儀なくさせたり、X・Y社間に雇用トラブルがあることを公にするかのような新聞広告を掲載してXの再就職等を困難にしたり、Xが告訴され旅券を取り上げられたて出国できないこと等を客先に対して殊更流布したりすることによってXの名誉・信用を毀損したことが不法行為に該当し、また、Y社が、新たな居住ビザ取得のために必要なビザキャンセル許可を拒否したことによって、Xが居住ビザや旅券を取得することが困難となり、IDカードの取得、アパートの賃貸や銀行口座の開設・預金の引き出し等、日常生活において困難を強いられたことが不法行為に該当すると主張して、これらに基づく不法行為に基づく損害賠償請求をした事案である。

【裁判所の判断】

懲戒解雇は無効

Y社はXに対し1466万円余及び平成18年3月1日から支払済みまで年6%の遅延利息を支払え

【判例のポイント】

1 一般に、使用者が労働者に対して行う懲戒は、労働者の企業秩序違反行為を理由として、一種の秩序罰を課するものであるから、具体的な懲戒の適否は、その理由とされた非違行為との関係において判断されるべきものである。したがって、懲戒当時に使用者が認識していなかった非違行為は、特段の事情のない限り、当該懲戒の理由とされたものでないことが明らかであるから、その存在をもって当該懲戒の有効性を根拠付けることはできないが、懲戒当時に使用者が認識していた非違行為については、それが、たとえ懲戒解雇の際に告知されなかったとしても、告知された非違行為と実質的に同一性を有し、あるいは同種若しくは同じ類型に属すると認められるもの又は密接な関連性を有するものである場合には、それをもって当該懲戒の有効性を根拠付けることができると解するのが相当である

2 Y社の就業規則においては、刑法犯となる可能性のある横領行為につき、「その疑いがあること」そのものを懲戒解雇事由と定めてはいないのであって、横領の疑いが、本件のように「許可のない自己営業に準じる不都合な行為」という懲戒解雇事由に該当すると主張するのであれば、その疑い自体が、相当程度の資料に基づく具体的かつ合理的なものでなければならないところ、そもそも本件懲戒解雇通知において、Y社側がXにつき横領の疑いを抱いたとする具体的事実や被害金額の摘示すらなく、懲戒解雇該当事由としては詳細があまりに不特定であったことなどに照らすと、懲戒解雇事由として、Xに横領の疑いありとするには早計であったといわざるを得ない

3 本件懲戒解雇は、Xによる退職の意思表示がY社に到達した後、それが効力を生じる前に、急遽なされたものであること、本件懲戒解雇事由について、Xに弁明の機会が与えられていなかったことを併せ考えると、本件取引中止宣言後もY社に隠れてN工業と取引を行ったという懲戒解雇事由が、34年8か月というXの多年の勤続の功を抹消してしまう程度に重大なものということまではできないし、Xを懲戒解雇として退職金を不支給とすることが、Y社の規律維持上やむを得ない場合にあたるということもできない

4 Xは、基本退職金、役付退職金の他に功労加給金及び特別加給金の請求権を主張しているが、前提事実に摘示したとおり、功労加給金については、Y社代表者が、直属所属長の申告に基づき、その裁量によって、特に功労ありと認めた従業員に対して支給するものであるから、Xにその請求権はないというほかはない。また、特別加給金については、労災法の適用基準により、業務上の直接原因による死亡又は通常の勤務に耐えられぬ事由により退職したときに支給されるものであるところ、Xにこのような事由を認めることはできないから、やはり、Xにその請求権はないというほかはない

基本給が高額のため、判決ではかなりの金額になっています。

懲戒解雇については、よほど慎重に進めなければ、本件のように会社側に手痛いしっぺ返しとなります。

また、退職金の減額や不支給についても、慎重に決定しないと、かなりの確率で訴訟になりますので注意が必要です。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。