労働災害60(萬屋建設事件)

おはようございます 一週間お疲れ様でした。 明日から3連休ですね。

普通に仕事をしまーす。
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もう少し近くにお店があったら、間違いなく毎週行っています。

今日は、午前中は、新規相談が1件入っています。

午後は、打合せが2件入っています。

今日も一日がんばります!!

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さて、今日は、過重業務により自殺した社員の遺族からの損害賠償請求に関する裁判例を見てみましょう。

萬屋建設事件(前橋地裁平成24年9月7日・労判1062号32頁)

【事案の概要】

本件は、Xの遺族が、Y社の従業員であったXが、Y社の過失及び安全配慮義務違反により、長時間労働等を過重な業務を強いられた結果、うつ病を発症して自殺をしたと主張し、Y社に対し、不法行為(民709条、715条)及び債務不履行(415条)に基づく損害賠償請求として、合計約9700万円を請求した事案である。

【判例のポイント】

Y社に対し約4000万円の損害賠償義務を認めた。

【判例のポイント】

1 Y社は、使用者としてXを業務に従事させていたのであるから、Xに対し、上記注意義務を負っていたと認定するのが相当である。また、Y社においては、時間外労働時間や休日労働時間について、自己申告制を採用していたのであるから、厚生労働省が策定した本件基準に照らして、Xに対し、労働時間の実態を正しく記録し、適正に自己申告を行うことなどについて十分に説明するとともに、必要に応じて自己申告によって把握した労働時間が実際の労働時間と合致しているか否かについて、実態調査を実施する等して、Xが過剰な時間外労働をして健康状態を悪化させないようにする義務(労働時間把握義務)があったというべきである
しかし、Y社は、Xを含む従業員が時間外労働及び休日労働をする際、Y社所定の手続をとらずに時間外労働や休日労働をしている従業員がいることを認識しながら、従業員が申告した時間と実際の時間が一致しているか否か調査しようともせず、むしろ月24時間を超える残業時間の申告を認めておらず、労働時間把握義務を懈怠していたというべきである

2 長時間労働の継続等により疲労や心理的負荷等が過度に蓄積すると労働者の心身の健康を損なうおそれがあることは広く知られていることであり、うつ病の発症及びこれによる自殺はその一態様である。
そうすると、使用者としては、上記のような結果を生む原因となる危険な状態の発生事態を回避する必要があるというべきであるから、当該労働者の健康状態の悪化を認識していなくとも、就労環境等に照らして、労働者の健康状態が悪化するおそれがあることを容易に認識しえた場合には、使用者には結果の予見可能性が認められるものと解するのが相当である。
そして、Y社は、Xの業務自体の過重性を認識しており、長時間労働については認識していなかったとしても、それはY社自身が労働時間把握義務を懈怠した結果であるから、本件において、Xが遂行していた過重業務により、通常うつ病に陥り、自殺を図ることを予見することが可能であったというべきである

3 身体に対する加害行為を原因とする被害者の損害賠償請求において、裁判所は、加害者の賠償すべき額を決定するに当たり、損害を公平に分担させるという損害賠償法の理念に照らし、民法722条2項の過失相殺の規定を類推適用して、損害の発生又は拡大に寄与した被害者の性格等の心因的要因を一定の限度でしんしゃくすることができる(最高裁昭和63年4月21日判決)。
この趣旨は、労働者の業務の負担が過重であることを原因とする損害賠償請求においても、基本的に同様に解すべきものである。しかしながら、企業等に雇用される労働者の性格は多様であることはいうまでもないところ、ある業務に従事する特定の労働者の性格が同種の業務に従事する労働者の個性の多様さとして通常想定される範囲を外れるものでない限り、その性格及びこれに基づく業務遂行の態様等が業務の過重負担に起因して当該労働者に生じた損害の発生又は拡大に寄与したとしても、そのような事態も使用者としては予想すべきものということができる。しかも、使用者又はこれに代わって労働者に対し業務上の指揮監督を行うものは、各労働者がその従事すべき業務に適するか否かを判断して、その配置先、遂行すべき業務の内容等を定めるべきものであり、その際に、各労働者の性格をも考慮するのは当然のことである。
したがって、労働者の性格が前記の範囲を外れるものでない場合には、裁判所は、業務の負担が過重であることを原因とする損害賠償請求において使用者の賠償すべき額を決定するに当たり、その性格及びこれに基づく業務遂行の態様等を、心因的要因としてしんしゃくすることはできないというべきである(最高裁平成12年3月24日判決)。

4 本件についてみると、Xは、責任感が強く人に頼みごとをしにくい性格であり、この性格も一つの要因となって、本件工事における、現場代理人としての職務について、Dに残業をするよう頼む等することができず、十分に業務を分担することができなかったと認めることができる。しかし、Dは、本件工事の前に担当していた工事を終えた直後に本件工事に配置されており、残業を前提とした業務分担を頼みにくい状況であったことや、D自身残業手当が出ないと考えており、残業をする意欲がなかったこと等に照らすと、必ずしも、Xの性格が同種の業務に従事する労働者の個性の多様さとして通常想定さ
れる範囲を外れるものであったために、Dと十分に業務を分担することができなかったと認めることはできない。そして、他にXについて過失相殺をすべき事情を認めることはできないから、Y社の主張は採用することができない。

残業や休日出勤について、自己申告制を採用している会社は、注意しましょう。

使用者は、従業員の労働時間を把握する義務を負っており、また、生命・身体の安全に配慮する義務を負っているという基本を忘れないことが大切です。

残業時間が多くなっている従業員がいたら、速やかに業務内容を見直し、残業時間を減らすように指導することをおすすめします。